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ヒトの女性器は、他のサルに比べてシンプルな作りになっている。大陰唇や小陰唇、腟、子宮、卵巣と、個体発生的に見て原始的だ。しかしその機構には、したたかな繁殖戦略が隠されているのだ。
ベイカーとベリスの研究
1.女性は、排卵前の妊娠確率の高い数日間に夫とセックスしたあとで愛人ともセックスする傾向がある(*1)。
2.愛人とのセックスの時、オーガズムを経験する傾向がある(*2)。
3.女性は、オーガズムの反応で夫の精子を子宮から掻き出し、愛人の精子を吸いこむ(*2)。
4.女性は、一日のうち夫と離れている時間が長ければ長いほど、浮気をする頻度が高くなる(*3)。
5.夫は、一日のうち妻と離れている時間が長ければ長いほど、セックスした時多数の精子を射精する(*3)。
受精のしくみ
1.吸引された精子は、子宮の粘液の海を泳いで、子宮の左右にある卵管峡部(らんかんきょうぶ)に到達する。
2.卵管峡部の上皮細胞は精子をつなぎ止め、栄養を与えて生かし、授精能を与える。夫と愛人の精子は、ここで待機する。排卵すると、精子はいっせいに放たれる。
3.精子たちは広大な表面積をもつ卵管膨大部(らんかんぼうだいぶ)の粘膜を泳いでたったひとつしかない卵子を探し求める(*4)(「卵管の精子選別」参照)。
4.卵子は透明帯と放線冠によってバリアーを構築している。これを突破して授精するには、多くの精子の共同作業が必要である。
精子競争
これらを考えてみると、妻は夫と愛人の両方から精子を受け、運動能力のより高いより多くの精子を放出する男の子を産もうとしている。夫は、せっかく射精しても愛人とのセックスで生じるオーガズムによって掻き出されてしまうから不利ではあるが、せいいっぱい精子数を増やして対抗しているのである(「ヒトの精子競争」参照)。
意識と性行動
ここまで、あくまで生物学的な機構について述べてきた。これは遺伝子の論理なのである。これを良いとか悪いとかいやらしいと評価するのは、文化や個人の思想なのだ。こうした遺伝子のたくらみがそのまま男や女の意識にのぼるわけではない。だから倫理的に個体を非難するのは的外れだ(*5)。ただ、こうした生物学的背景があることを頭に入れて人間の性を語る必要があるだろう。
(*1) Bellis MA, Baker RB (1990) Do female promote sperm competition? Data for humans. Animal Behaviour 40(5): 997-999.
(*2) Baker RB, Bellis MA (1993) Human sperm competition: ejaculate manipulation by females and a function for the female
orgasm. Animal Behaviour 46: 886-909.
(*3) Baker RB, Bellis MA (1993) Human sperm competition: ejaculate adjustment by males and the function of masturbation. Animal Behaviour 46: 861-885.
(*4) 粘膜というのは、いつも粘液で覆われている表層をなす膜である。その粘液のなかを精子が泳いでいく。
(*5) わたしはここで遺伝子の繁殖戦略を述べている。ちまたでは、しばしばこれを個体の繁殖戦略と混同して、「浮気することが自然だ」などと言う勝手な理解をする人がいる。これは、まったくの誤りである。人は、遺伝子を入れている袋には違いないが、自分のもつ遺伝子とでさえ、利害が完全に一致するわけではない。たとえば、たとえ「レイプの遺伝子」があったとしても、罰をくらうリスクが大きすぎるから、個体にとってレイプは避けるべきである。同様に、遺伝子が女性を浮気するよう動機づけるとしても、姦通罪に問われて死刑になる文化のもとでは、避けるのが個体にとって有利なのだ。当たり前のことなのだが、遺伝子がどうであろうと、人は自分の行動に責任をとらなければならないのである。
http://homepage2.nifty.com/anthrop/sex_organ.htm
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