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西日本新聞社説
2013年10月09日(最終更新 2013年10月09日 10時34分)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/45152
増え続ける非正規労働者の待遇改善や労働者の権利の保護が、どんどん後退してしまうのではないか。
雇用制度改革をめぐる政府の産業競争力会議や規制改革会議での論議を見ると、そんな懸念を拭えない。
企業が従業員を解雇しやすくする「解雇特区」や、原則禁止になっている「日雇い派遣」の全面見直しなど雇用の規制緩和が色濃く打ち出されているからだ。
規制緩和を通じて民間活力を引き出すという安倍晋三政権の成長戦略を受けたものだが、雇用の安定や働きがいの確保など、労働者側の視点が希薄すぎる。労働者の雇用不安を助長することのないよう慎重な論議を求めたい。
解雇特区は、特定の地域で規制緩和する「国家戦略特区」の一環で提起されている。具体的には入社時に結んだ解雇契約の条件や手続きに沿えば、企業が従業員を解雇できる。有期契約で5年働いたら無期契約に転換できるというルールを適用しなくてもいい−などである。
政府は制度の対象を創業5年以内のベンチャー企業や外国人の社員が多い企業に限定する考えで、全国一律では難しい規制緩和を「特区」で先行する狙いだ。
だが、働き方のルールに地域格差を認めるのは不適切ではないか。まして有期契約5年での無期契約転換は、今春の改正労働契約法で実現したばかりだ。その理念をほごにするのは疑問である。
「特区」とはいえ、運用次第で不当な解雇の横行を招きかねない。従業員が無理な働き方を余儀なくされる恐れもある。雇用の安定とはとても相いれない。
契約期間が30日以内の日雇い派遣は、民主党政権下の改正労働者派遣法により、2012年10月から原則禁止された。企業の都合による「派遣切り」の増加が社会問題化したからだ。
以来わずか1年というのに、規制改革会議は「抜本的な見直しが必要」と原則禁止の撤廃を提起している。朝令暮改のような政策転換は、理解に苦しむ。
同会議は、見直しの狙いについて「多様な働き方ができる」とメリットを強調するが、果たしてそうだろうか。企業側が雇用の需給調整をしやすくなる分、労働者の雇用の不安定化は避けられまい。
このほか、政府は勤務地や労働時間を限った「限定正社員」制度の導入など、労働市場の流動化に積極的だ。しかし、いずれも、派遣労働や非正規労働の固定化を招く不安が付きまとう。
総務省によると、12年の国内の非正規労働者数は2千万人を超え、雇用者全体の38・2%に上る。厚生労働省の13年版労働経済白書は一家の所得が年300万円以下で世帯主など稼ぎ頭が非正規労働者の人を約150万人と推計した。
今必要なのは、非正規労働者らの支援であり、劣悪な労働を強いる「ブラック企業」へのチェックの強化である。労働者を軽視するような政策が、消費拡大や社会の安定につながるとは思えない。
=2013/10/09付 西日本新聞朝刊=
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