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毎日新聞 2013年09月20日 00時16分
http://mainichi.jp/opinion/news/20130920k0000m070138000c.html
「原子力発祥の地」茨城県東海村の任期満了に伴う村長選(9月8日投開票)は、同村の日本原子力発電東海第2原発の再稼働問題が争点となった。無所属新人同士の一騎打ち。両陣営の主張は「中立」対「脱原発」だ。「中立」を掲げた前副村長の山田修氏(52)が1万1758票を獲得し、8500票以上の大差をつけて初当選した。「まずは村民の声を聞く」と小規模な単位で意見交換会を行い、村民の声を集める考えを示した。原発30キロ圏内の人口を見ると、同原発は全国最多の約98万人。再稼働問題は近隣市町の住民も関心が高い。早急に意見交換会を行い、東京電力福島第1原発事故以降、再稼働を巡る全国初の住民投票を実施してほしい。
同村では、1963年、日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)が日本初の原子力発電に成功。商業用原発の東海発電所は98年に運転を終了し、国内初の原子炉解体計画が進んでいる。東海村には日本の原子力研究をリードする研究施設も集積している。5月に放射能漏れを起こした加速器実験施設「J−PARC」(ジェイパーク)もその一つだ。
福島第1原発事故後、脱原発を主張した村上達也村長は2012年12月、世界最先端の研究拠点をアピールする「TOKAI原子力サイエンスタウン構想」を打ち出し、原発の交付金に依存しない“科学立村”を目指した。民間でも脱原発依存の動きが出始めている。例えば、石油販売業や電気工事業など村内7事業者は13年3月、「東海村メガソーラー株式会社」を設立し、村経済の活性化を目指す。山田新村長も、この構想を継承する考えだ。
◇原発に反対は村否定の意識
しかし半世紀以上、原発とともにある村だ。ある村議は「原子力は村の文化」と話す。原発に反対すれば、村を否定することにつながるという意識もある。人口約3万7000人のうち、原発メーカーの日立製作所社員も含め、3分の2は原子力関係者とされる。かつては「松林とサツマイモの村」といわれた寒村では、原子力に関係する多くの研究者や職員、作業員が生活を営んでいる。
福島第1原発事故後に村内の主婦を中心にしてできた市民団体「リリウムの会」は、原発問題を考える勉強会や集会を開催しているものの、顔ぶれは毎回ほぼ同じ。同会の主婦(42)は「『近所付き合いがあるので行けない』と言われたことがある」と打ち明ける。夫が原子力関係施設に勤める会員もいる。隣近所の目が気になり、自由に原発を論じることができないのが現実だ。
http://mainichi.jp/opinion/news/20130920k0000m070138000c2.html
そうした事情は原発推進派にもある。村議会原子力問題調査特別委員会(12年4月〜13年5月)では、市民団体から提出された東海第2原発の再稼働中止を求める請願を審査した。推進派と見られる村議の多くは意見表明を控えた。「脱原発と言えれば楽だよ」と漏らす。
原発に依存する村の経済と、人間関係。さまざまなしがらみと、原発に対する不安がない交ぜになって苦しんでいる村民は多い。安全であるはずの原発で事故が現実になった今、脱原発が初めて市民権を得た一方、原発問題の論議はタブー化したままに見える。今回村長選の投票率が51.38%と過去最低だったことも、その表れではないか。
◇意思示さねば村に自治ない
とはいえ、再稼働問題は避けては通れない。稼働34年の東海第2原発は本格的に廃炉を検討すべき時期を迎えており、今、再稼働か廃炉かの意思表示をしなければ、村は国策に翻弄(ほんろう)され、そこに自治はない。原発再稼働問題、原発事故の被害と影響は一自治体にとどまらないが、まず、東海村民が意思を明確に示すべきだと思う。村長選では、その他の行政課題なども考慮した投票行動もあっただろう。原発の是非に対する村民の意思表示には、住民投票の実施が必要だ。
福島第1原発事故以降、原発立地自治体の静岡県、新潟県で再稼働の是非を巡る住民投票条例案が提案されたものの、県議会で否決された。東海村長選と同じ投開票日となった茨城県知事選で6選を果たした橋本昌氏(67)は「安全性が確認され、地元の合意が得られるなら再稼働すべきだ。それ以外の原発は止めるべきだ」と主張してきた。
「ゆかしい歴史と原子の火に生きる」と村民憲章にうたう東海村の住民投票の意義は大きい。原発立地自治体の住民も、大都会などの原発立地以外の住民も、それぞれが今、原発と自らの暮らしぶりを問い直している。住民投票の結果は、さらに国全体で原発のあり方を考える一つの指標になるはずだ。
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