http://www.asyura2.com/12/warb9/msg/878.html
Tweet |
(ニューヨーク)−シリア政府軍は過去3週間に、アレッポ県内で少なくとも10軒のパン屋とその周辺を空爆/砲撃し、パン屋前で行列していた多数の一般市民を殺傷した、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。
こうした攻撃は、少なくとも重過失(reckless)の無差別な攻撃に該当するといえるが、そのパターンと頻度からして、政府軍が一般市民を標的にしていることを示唆している。重過失による無差別攻撃も意図的な一般市民への攻撃も、いずれも戦争犯罪に該当する。
2012年8月16日にアレッポ市内で行われた攻撃では、60人も殺害され、70人以上が負傷。他に8月21日に同市内であった攻撃でも、少なくとも23人が殺害され、30人が負傷している。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ緊急対応部門の調査員ウレ・ソルバン(アレッポでの現地調査を終えたばかり)は、「来る日も来る日も、アレッポ県の人びとは家族のためにパンを求めて並ぶ。そうして、パンを手に入れるかわりに、政府軍の爆弾や砲弾の破片に体を貫かれている」と述べる。「パン屋が10軒も攻撃されたのは偶然ではない。政府軍は一般市民の命を完全に軽視しており、更には標的にしていると見られる節がある。」
ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査陣は、攻撃を受けたパン屋のうち、次に挙げる6軒を訪れ、目撃者に聞き取り調査を実施した:
* アレッポ県北部Maareのパン屋(攻撃日は8月22日)
* アレッポ県北東部Al-Babのパン屋(攻撃日は8月21日と22日)
* アレッポ市内Bab al-HadidのAqyuolパン屋(攻撃日は8月21日)
* アレッポ市内Qadi AskarのAl-Zarraパン屋(攻撃日は8月16日)
* アレッポ市内al-MaysarのKanjouパン屋(攻撃日は8月16日)
* アレッポ市内al-Halwaniyaのパン屋(攻撃日は8月16日)
またヒューマン・ライツ・ウォッチは次に挙げるパン屋4軒に対する攻撃についても攻撃に関する信頼性の高い情報を入手した:
* アレッポ県北部Manbijのパン屋(攻撃日は8月24日)
* アレッポ市内al-QaterjiのHusseinパン屋(攻撃日は8月16日)
* アレッポ市内Tariq al-Babのパン屋(攻撃日は8月10日)
* アレッポ市内al-Sheikh Sa’id地区のパン屋(攻撃日は8月11日)
アレッポ県における政府軍と反体制派「自由シリア軍」の何週間にもわたる戦闘のために深刻な小麦粉不足に陥ったことから、多くのパン屋が閉店を余儀なくされた。営業を続けているパン屋の外には、市民がパンを求めて長い列を作っていることが多い。
ヒューマン・ライツ・ウォッチが調査して取りまとめた政府軍による攻撃は、マンビジ(Manbij)のパン屋への攻撃を除き、すべて地元住民が列をなして待っている際中に行われた。使用されたのは砲弾、ロケット弾、爆弾などで、列にかなり近い地点に着弾。弾薬の破片が人びとのいる所まで飛び散り、多くを殺傷した。列で待っていた人びとが戦闘機の接近する音を聞き、攻撃の前に逃げたケースもあった。
こうしたパン屋に対する攻撃の目撃者全員が、政府軍による事前警告はなかったと証言している。
10軒のパン屋は住宅地や町中にあり、攻撃前/攻撃時にその周辺で戦闘は起きていなかった。目撃者らの証言によると、自由シリア軍数名が秩序維持とパン配給の補助のために標的となったパン屋に待機していたケースが多く、大勢において自由シリア軍兵士が負傷したことはなかったという。
あるケースでは、自由シリア軍の施設がパン屋からおよそ150メートル離れた所にあったが、その施設は被害は受けなかった。ヒューマン・ライツ・ウォッチが調査した残りのケース5件では、数名の自由シリア軍戦闘員が秩序の維持をしているのが目撃されたのを除き、攻撃対象となった地域内における軍事目標は皆無だった。
多数の一般市民が現場に存在したことを考慮すれば、パン屋に戦闘員数名が存在しても攻撃は正当化されない。そこにいた少数の戦闘員を標的にするための措置や、一般市民への危害を最小限に抑えるための措置を、シリア政府は一切講じていないと見られる。いくつかのケースでは、攻撃前に当該地域上空をヘリコプターがホバリング(空中停止)しており、一般市民が存在していることをわかっていたはずである。
中でも最大の犠牲者を出した攻撃のひとつが、8月16日にアレッポ市内カディ・アスカール(Qadi Askar)居住区で行われた攻撃だった。午前5時45分ごろ、自由シリア軍の拠点が複数存在するカディ・アスカール居住区の広場に1、2発の砲弾が着弾。軍拠点のひとつが広場近くにあり、パン屋からは約150メートルほどだった。同軍の施設や隊員に被害はなかった。しかしその15分後、更に3発の砲弾が、数分間に連続して着弾。それは、数百の人びとがパンを求めて待つパン屋に更に近い場所だった。
3発目の砲弾はパン屋から数メートルしか離れていない通りに着弾し、列をなす人びとに破片を浴びせかけた。犠牲者の正確な数を把握するのは困難であるが、ヒューマン・ライツ・ウォッチが確認したダル・アルシファー(Dar Al Shifaa)病院の記録によると、身元の確認された遺体は49体、未確認の遺体は11体、ならびに負傷者は76人だった。ダル・アルシファー病院はこの攻撃による死傷者の大半を受け入れた病院である。
8月21日の攻撃では、アレッポ市内バブ・アラディド(Bab al-Hadid)にあるアキュオル(Aqyoul)パン屋の前にできていた行列を、ヘリコプターから投下された爆弾が直撃。少なくとも23人が殺害され、30人超が負傷した。その攻撃で負傷した仕立て屋の“ファイ”(44歳)はヒューマン・ライツ・ウォッチに次のように話した。
「パン屋の入り口の近くに立っていたら、爆弾が落ちた。両手で頭をかばいながら、命からがら逃げたよ。隣の店にかけ込んだ時になってはじめて、けがをしているのに気づいた。わき腹と左腕だ。」
「あたりはどこも黒い煙と割れたガラスでいっぱいだった。爆弾は通りの角に落ちて、破片がまっすぐ飛んできたんだ。だからそこにいた人は殺されたか、ひどいけがをしたよ。足がない男の人がひとり倒れていて、もうひとりは腕がなかった。それに知り合いの16歳、ラファト・マキク・ハラク(Rafat Makik Halak)の頭がふっとんでいるのも見た。いとこのひとりアフメドも腕と足をふきとばされて、その後死んだ。僕の姉(妹)もひとりけがをして、まだ病院にいるよ。」
(上記の攻撃を含む攻撃に関する更に詳細な情報については、文末をご覧ください)
国際人道法(戦争法)は、一般市民と民用物(軍用物でないものすべて)に対する直接攻撃および無差別攻撃を禁じている。戦争法は軍事行動の際、一般住民に被害を及ぼさないよう常に配慮し、偶発的な人命の犠牲と民用物の損壊を回避、または最小限に抑えるべく、「実行可能なあらゆる措置」を講じることを、全紛争当事者に義務づけている。こうした予防措置には、攻撃目標が文民あるいは民用物ではなく、軍事目標であることを確保するために実行可能なすべての手段を取ること、状況が許す場合に攻撃の「実効ある事前警告」を行うことなどが含まれる。
軍指揮官は、軍事目標を直接狙える攻撃法を選択する義務があり、一般市民に対する偶発的被害を最小限にとどめなければならない。使用する兵器の精度が低いために一般市民に対する被害の多大な可能性を含まずには軍事目標を狙えない場合には、それらの兵器を使用してはならない。「比例性原則」に觝触する攻撃もまた禁じられている。攻撃から期待される具体的かつ直接的な軍事的利益と釣り合わない、偶発的な文民の犠牲や民用物の損失が予想されうる攻撃は比例原則に反する不相応な攻撃に該当する。
重大な戦争法違反には、一般市民に危害をもたらす意図的攻撃、無差別攻撃、不相応攻撃が含まれる。犯意を持って―意図的あるいは重過失をもって―行われた違反行為は戦争犯罪にあたる。こうした攻撃を命令、ほう助あるいは共謀した司令官や文民の指導者は、戦争犯罪の刑事責任を問われる可能性がある。また、戦争犯罪行為が行われていることを知り、あるいは戦争犯罪が行なわれると知るべきであったにもかかわらず、戦争犯罪行為を防せいだり、責任者を処罰するための十分な措置を取らなかった場合も、上官責任を問われ、戦争犯罪で訴追される可能性がある。
10軒のパン屋は一般市民にパンを提供しており、この点において明らかに民用物だった。
前出のソルバン調査員は次のように指摘する。「パンを求めて並んでいた市民の列に意図的にロケット弾を撃ち込んだすべてのパイロット、そしてそのような命令を下したすべての指揮官が、自らの犯した罪で裁かれるべきだ。」
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ロシア政府と中国政府に対し、国連安全保障理事会によるシリア国民の保護活動を妨害しないよう強く求めた。安保理はシリアの事態を国際刑事裁判所(ICC)に付託すると共に、シリア政府に対する武器禁輸措置、ならびに人権侵害に関与した政府高官を対象とした制裁措置を発動すべきである。
http://www.hrw.org/ja/news/2012/08/30
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。