http://www.asyura2.com/12/warb9/msg/847.html
Tweet |
ジャーナリストの山本美香さんがシリア北部アレッポで殺害された。山本さんはアレッポでシリア政府軍による爆撃・砲撃・銃撃によって、アレッポの一般市民に多くの犠牲者が出ていることを取材し、報道することを目的としてアレッポに赴いた。しかし、何者かの武装集団からの銃撃を受け、殺害された。その後の司法解剖で山本さんの身体には計9発の銃創の跡があったことが明らかにされた。
ジャーナリストの殺害で利益を得るものは誰かを考えてみる。
この事件には2つの味方が存在する。1つは、反アサド派が、アサド派の非道さをでっちあげるために山本さんを殺害し、アサド派によって殺害されたように見せかけたという、反アサド派による陰謀であるという見方だ。2つ目の見方は、山本さんはアサド派によって殺害されたという見方である。
1つ目の反アサド派による陰謀説を検証してみよう。確かにジャーナリストを殺害すれば、非戦闘員を殺害したことになり、アサド派は見境なく殺戮を行なっているということを主張することができる。しかし、この方法にはインパクトがない。大きな話題になるのは殺害されたジャーナリストの出身母国のメディアだけである。その母国での報道も最初の事件の場合は扱いが大きいが、最初だけである。それ以外の国では三面記事になるか、無視されるかのいずれでしかない。それどころか、内戦状態の中ではジャーナリストが戦闘に巻き込まれて犠牲となっても、ある程度は仕方のないことであるという見方さえされる。山本さんの出身母国である日本でさえそうである。
今回の事件では山本さん以外に同時に3人の反体制派の人々も殺害されている。反アサド派がこれだけの犠牲を払っても、ジャーナリスト殺害によって、アサド派の非道さを世界にアピールするだけの効果を得ることができないのが現状である。
2つ目のアサド派が殺害したという説を検証してみたい。アサド政権はジャーナリストの入国は認めているが、その行動の自由は大幅に制限している。移動の自由さえない。常にアサド派が同行し、許可された場所での撮影しか許されない。事実上、アサド派の側からの取材は閉め出された状態である。アサド派にとって都合の悪い報道をさせないために厳しい取材制限を課していると疑われても否定できない。そのため多くのジャーナリストが自由な報道ができるトルコ国境から越境し、自由シリア軍などとともに行動し、取材しているという現状がある。シリア内部からの取材発信は世界中で報道されている。その報道の多くは、アサド派の無差別爆撃、砲撃、銃撃で一般市民におびただしい人数の死者が出ていることを報道するものである。この報道はアサド派にとっては最も知られたくない事実である。
反アサド派がジャーナリストを殺害しても利益は少ない。それどころか、アサド派の非道ぶりを世界中に伝えてくれる大切な発信者を失うことになり、マイナス面が大きい。一方、アサド派がジャーナリスト殺害によって得る利益は大きい。アサド派がどのように一般市民を無差別に殺害しているかが世界中に知れ渡ることを未然に防ぐことができるからである。
ジャーナリスト殺害で利益を得るものはアサド派なのだ。そして殺害の責任を反アサド派がやったことにできれば、反アサド派を悪者にすることができてまさに一石二鳥なのである。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。