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【オピニオン】
中国のサイバースパイ行為、情報活用力の不足で経済的実利なし
2012年 8月 3日 16:18 JST
中国のサイバースパイ行為はほとんどの人が想像する以上に侵略的だとの説が浮上している。米通信社ブルームバーグが先週伝えたところによると、中国は欧州連合(EU)の当局者らが債務危機に関して取り交わしていた複数の電子メールをサイバースパイ行為により入手したという。ほかにも特許関係を専門に扱う弁護士らの顧客の申請書が、また石油関連会社の事業に関わる地図などが狙われてきた。
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AFP/Getty Images
中国のサイバースパイ行為は増え続ける被害者の間に怒りを噴出させたが、驚きはほとんどなかった。しかしどの程度心配しなくてはならないかを理解するため、最近起きたサイバースパイ事件を、中国と情報のぎくしゃくした関係という幅広い枠組みでとらえることには価値がある。
中国の政策立案者や国有企業の経営者らの中のパラノイア(妄想症)患者は、ありふれた風景の中に潜む価値ある市場の情報を利用することを断固として拒絶し、その代わりに秘密の策略が進行中であるにちがいないと想像することを選ぶ。仮に米喜劇俳優のチコ・マルクス氏が、「誰を信じるのか。私かそれとも自分自身の目か」との有名な質問を中国にぶつけたら、どちらも違うと答えるだろう。開かれた市場では通常、「自分自身の目」が賢明な回答だ。
このことが最も如実に現れのが、それだけで最も価値ある市場の情報である「価格」だ。しかし中国は資源関連で日常的に各種の価格を無視している。市場が自国のニーズを提供するとの信頼や、自国の需要は理に適っているとの一貫したシグナルの送信の代わりに、独自の重商主義的な資源政策で動くことを選択する。
目に見える形で現れている結果は、鉄鉱石や銅、石炭、その他の国内資源の増え続ける貯蔵と、一連の外国資源会社の高額の買収だ。直近のものでは、中国海洋石油(Cnooc)がカナダの石油関連大手ネクセンを151億ドル(約1兆1800億円)で買収した。買収プレミアムは60%だった。市場価格を気にしていさえすれば、結果は違ったかもしれない。
これと同じパターンがサイバースパイ行為にも繰り返されているのではないだろうか。中国が行ったサイバースパイ行為のなかで最も目を引くものでさえ、その実利については疑わしい。例えば、ブルームバーグが先週報じていた、ファンロンパイ欧州理事会常任議長に対するハッキング行為だ。
理論上、同議長の電子メールは、その当時の欧州危機に関する意味深い内部情報を中国にもたらす。しかし実際には、そこにどんな意味があるのか。中国は、危機に関する洞察を集めるためにほかの国が行っていることと同じことをすれば、うまくいくだろう。つまり、欧州域内の債務問題によって変動する金利を注視することだ。
自由に入手できる情報を利用することに、中国がどれだけの困難さを抱えているかを考えると、収集した個人情報をどれだけ上手く扱うことができるのか、疑念の声が上がるのはもっともだ。中国は自らの目を信じていないということがスパイ行為の大前提であり、そうした意味において、この見方はより信憑性を持つ。パラノイアは理論的な説明にはならない。
サイバースパイ行為のターゲットの一部は、中国の観点からすると理に適っているように見える。たとえば、6月に報道されたカナダの法律事務所を狙った、中国によるものと思われるハッキング行為だ。この法律事務所は、中国企業が関わっていた買収案件に関与していた。軍と関連のあるセキュリティー違反もそうだ。ただ、特許関係の案件を専門とする弁護士をハッキングしたことなど、ほかのケースでは別の疑問がわいてくる。秘密を知ることと、それを効果的に利用することは別のことだ。前者が自動的に後者にむすびつくわけではない。
西洋諸国と日本の高速鉄道のリバースエンジニアリング(分解して模倣する)を試みた中国の設計士に聞いてみるといい。彼らは鉄道の仕組みを正しく理解することに失敗し、昨年の温州市での鉄道事故を引き起こした。ハードウエアを正確に再現する能力が不足していることは、問題のほんのわずかな部分にすぎない。それよりも大きく欠落しているのは、ハードウエアを入手した後、それを使うオペレーション面でのノウハウだ。
この比較的初期のデータで、中国がネットを介して集めたデータで何をやろうとしているのか、確実なことを言うのは時期尚早かもしれない。しかしどちらにも同じ原理があてはまる。盗難可能な情報は市場経済を動かす力のただの一部にすぎない。
データを効果的に使う能力は、議論の余地はあるにしても、ほぼ間違いなく最重要だ。この点において、中国のサイバースパイ行為の皮肉は、スパイ行為を動機づけている、自由に入手できる情報に対する偏執なまでの不信感が、経済的な成功と著しい対照をなしているということだ。西側諸国の企業には秘密があるにしても、結局これらの企業は開かれた市場で価格というシグナルを伴い、創造的な立案者の間の自由な連携、また自由な協力態勢のなかで成長する。産業に関わる秘密には価値がある。しかしその価値は、中国が気づくより短命なのだ。
中国のサイバー脅威を軽視しているわけではない。ハッカーは日ごとにより洗練され、一部成功を収めている。特に心配すべきは、中国軍との接点について不明なところが多いハッカーが、電力発電所といった重要なインフラを運営するコンピューターにアクセスできているのかもしれないという報道だ。
だが、この新しいサイバー脅威がもたらすトラブルはあっても、これは中国の強みではなく弱みを示唆するものであることを思い起こすことには価値がある。ジェームズ・ボンド風の神話は別にして、成功を収めている国は、これほどまでのスパイ行為を行わない。パラノイアを捨て、商機をとらえるために自身の目を信じることで、より実践的な方法を見つけて成功を収めているのだ。
記者: Joseph Sternberg
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