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体制デモが発生した昨年3月の時点でアサドが反政府勢力と話し合いを行なえば、ここまで事態が悪化することはなかったことは間違いない。丸腰のデモ隊にいきなり発砲し、多数の市民を殺害した上に、その葬儀の列にも発砲を加えてさらに殺害した。これはリビアで起きたこととまったく同じである。こうした一連の過剰な暴力の行使が現在のシリア内戦に至る要因となっており、その責任はアサド大統領にあることは明白である。
事態がここまで悪化した以上、双方が話し合いのテーブルにつく可能性は限りなく小さい。アサドは反体制デモを軽く見ていたふしがある。反体制デモは短い間にシリア全土に拡大した。これもアサド派の過剰な暴力行使が引き金となっている。アサドは反体制デモなど銃撃を加えれば簡単に沈静化できると踏んでいたのだろう。ところがシリア国民の怒りはアサドの想像をはるかに超えるほどに増大していたということだ。
アサドは、父にならって武力鎮圧できると思ったのだがそうはならなかった。父の元アサド大統領の時はハマという1つの都市だけの闘いだったが今は違う。今はシリア全土が戦場となってしまった。シリア国民の74%を占めるスンニ派が自由シリア軍を支援している。事態はすでに宗派戦争となっているのだ。
ここにアルカイダ勢力が加わったことで事態は複雑化した。アルカイダの最高幹部であるアイマン・ザワヒリはシリアでアルカイダ勢力が活動していることを明言した。すでに政府庁舎などを狙った大規模な自爆テロ事件が数件起きている。欧米は反政府勢力を支援することでアサドが倒れた場合、シリアがアルカイダ系列のイスラム過激派の活動拠点となることを恐れている。
反政府勢力がまとまっていないことも欧米の介入を難しくしている。国民評議会はシリア国内に基盤を持っていないし、自由シリア軍も統一した司令部を持っていない。ロシアは中東における唯一の拠点を守るために国連安保理決議で拒否権を行使してきたし、これからもするだろう。
米国は腰が引けている。米国民の大多数が介入に反対しており、大統領選を控えたオバマには介入という選択はありえない。欧州各国も介入には慎重だ。リビアと違ってシリアには石油がないし、ユーロ危機の深刻化という状況にあっては介入どころではない。
当面、シリアの内戦は継続するだろう。アサド派にはロシアが武器を供給し、イランが志願兵を送り込んでいる。自由シリア軍にはトルコ経由やイラクのスンニ派などから武器の供給も含む支援が行なわれている。自由シリア軍が保有する武器は自動小銃やRPG止まりだが、シリア軍の戦車を撃破するだけの威力は充分ある。考えられるシナリオはNATO軍による武力介入だが、そこに至るまでにはかなりの時間と犠牲が必要となるだろう。
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