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国際激流と日本
発覚!米軍兵器に巣食う大量の中国製偽造部品ヘリコプターのレーダーから高度なミサイル迎撃システムまで
2012.05.30(水)
古森 義久:プロフィール
近代兵器と言えば、なんといっても唯一のスーパーパワーたる米国が世界の先頭に立つ。ところが最近の米軍の各種兵器には、偽物の電子部品が多数まぎれこんでいるという。
偽造部品はミサイルや軍用機というような兵器の性能を大きく狂わせる危険がある。しかも、その偽造品の大多数は米国に挑戦する中国の製品だというのである。
米国から兵器を購入する日本にとっても他人事ではない。なんとも奇妙な、そして恐ろしい話ではないか――。
1800件の偽造電子部品を発見
米国の近代兵器の電子部品の多くが中国製の偽造品だというブラックジョークのような話は、米国上院の軍事委員会がつい最近の5月下旬に公表した調査報告の結果だった。この委員会が多数の専門家を投入し、1年以上もの時間をかけて実施した調査の総括である。
上院軍事委員会と言えば、委員長は民主党のカール・レビン議員、共和党側の筆頭委員はジョン・マケイン議員という、ともに大物である。連邦議会全体でも最も重みのある委員会の1つなのだ。
「国防総省の供給系統での偽造電子部品の調査」と題するこの報告書の内容を紹介しよう。
まず総括である。
「当軍事委員会は2009年から2010年までの2年間の国防総省への兵器供給を対象とした調査で、合計1800件の偽造電子部品を発見した。この偽造品は部品の個数だと100万以上となった」
「これら偽造品の製造源に関して、当委員会は約100件を追跡調査した。するとその70%以上が中国であることが確認された。その他の国としてはイギリスやカナダも浮上したが、そもそもの製造国から転売された形跡が濃く、ここでも世界の偽造品大国である中国の影が大きい」
ひとまずこの総括を読むと、いくつもの疑問が浮かびあがる。まずはこんなことが現実にあるのか、という疑いだろう。世界に冠たる米軍が誇る近代兵器の電子部品に偽造品が多数、使われているなどということが本当なのか。
偽造品というからには特定メーカーの名称を偽り、違法業者が違法に製造した品物だろう。なぜそれがすぐに分からないのか。そんな電子製品がそもそもきちんと機能するのか。兵器を使う側も簡単には分からなかったのだから、偽物の部品も偽物なりに一応の機能はするということなのだろうか。
様々な兵器の中枢部分に偽造部品が
報告書は個別の兵器の偽造部品について詳述していた。その要旨は以下のようだった。
【海軍ヘリコプターの前方直視赤外線システム】
「2011年9月、米海軍のヘリコプター『SH60B』の前方直視赤外線システム(FLIR)内部の電磁妨害濾波器(EIF)3基に偽造電子部品が組み込まれていたことが判明したとの通報が、FLIR調達元の米国大手軍事企業のレイセオン社から海軍当局になされた。
対潜水艦、対水上艦の戦闘や偵察を任務とするSH60BヘリのFLIRは暗視やミサイル発射照準の機能を有するが、その内部のEIFに欠陥があれば、ミサイル発射や夜間偵察の戦闘能力を削がれる。
上院軍事委員会はその偽造品が中国・深センの企業によって製造され、他の2国と米国内の3州を経て、レイセオン社のテキサス州の下請け企業から同社に調達されたことを確認した」
【軍用機用表示盤のメモリーチップ】
「2010年11月、米国軍事部品企業のL3ディスプレー・システムズ社は自社製の軍用機用表示盤500基以上に偽造品のメモリーチップを内蔵させてしまったことを察知した。
同表示盤は米空軍の輸送機C130J(主要調達はロッキード・マーティン社)やC27J、C17、米海兵隊のヘリコプターCH46に装備され、パイロットにエンジンや機体、燃料の状況を知らせる。欠陥メモリーチップは表示盤の機能を削ぎ、重大な危険をも招くが、この偽造チップ使用は米軍当局には翌2011年9月まで通報されなかった。
L3ディスプレー・システムズ社は偽造品をカリフォルニア州の下請け企業から調達したが、その下請け企業は中国・深センの中国企業(前記の企業とは別)から買ったことが判明した。同軍事委員会の調査では、L3社は2009年から2010年までの2年間に同じ中国企業製造の偽造電子部品を合計8万4000個も購入し、その多くが米軍の兵器に実際に使われたことを確認した」
【対潜・対艦戦闘用軍用機の氷付着探知モジュール】
「2011年8月、ボーイング社は対潜・対艦戦闘用の軍用機として開発し、試験中の自社製『P8Aポセイドン』の氷付着探知モジュールが、中古品を新品のように装った偽造部品だったことが判明したとして、米海軍当局に緊急通報した。
その偽造部品は試験飛行ですでに壊れた実例があり、即時、交換の必要が生じたという。
同部品をボーイング社に納入していた下請けのBAE社は、同種の偽造中古部品数百基の混入に気づき、2010年1月にボーイング社に通告していた。だが、ボーイング社は海軍当局への通報を1年半以上も遅らせた。
BAE社は偽造部品をフロリダ州の下請け企業から、テキサス州の下請け企業を通じて購入したという。軍事委員会は同部品の製造元が中国・深センの企業(上記の2社とは別)だったことを確認した。同モジュールが完全に機能しないと、同軍用機の機体に付着した氷の発見が難しくなり、飛行に支障が起きる」
上院軍事委員会の報告書の核心は以上の通りだった。なんともショッキングな実態である。米軍の兵器の製造や調達のずさんさと同時に、中国側の偽造品・模造品のグローバル規模での横行ぶりのすさまじさが明らかになったと言える。
極めて高度なミサイル防衛網にも
軍や政府のそんな実態を立法府の機関が徹底して調べ、警告を発する点は、米国の強さと言えるだろう。だが、さらに注視されるのは、同報告書が日本にも影響のあるミサイル防衛網にも中国製の偽造部品が組み込まれていたと、指摘したことである。
「中国の偽造電子部品は米陸軍の配備するミサイル防衛システムにまで入り込んでいた。ロッキード・マーティン社が開発して、すでに配備を始めたミサイル防衛局のTHAAD(終末高々度防衛ミサイル)のミッションコンピューターにも偽造電子部品が使われていたことが判明したのだ」
こんな調査結果だった。
このTHAADは、敵の発射した弾道ミサイルがその飛行の最終段階で大気圏に突入してくるのを捕捉して、地上から迎撃し、破壊するというミサイル防衛システムである。日本にはまだ配備されていないが、その可能性が米国側で論議されたこともある。
こんなに高度な兵器システムにまで中国製と見られる偽造、模造の部品が侵入しているというのだ。
見えてこない中国の本当の狙い
果たして中国は、とにかく偽造品を大量に作って、売りまくるという利益追求の違法行為の結果として、こんなことを起こすのか、あるいはもっと深慮遠謀があって、米軍の近代兵器を骨抜きにするために偽造品を流通させているのか、まだ結論は出せないようである。
同報告書は総括として、米軍当局に対し、今後兵器類の調達に際して、製品や部品の製造企業の実態の調査を厳しく実行し、警戒を強めることなどを勧告していた。当然の勧告だと言えよう。
また報告書は同時に米国の政府や軍部に対し、中国のその種の動向への注意や監視を増すことをも強く求めていた。
今、軍事面で対立を深める米国と中国は近代兵器の電子部品という特殊な領域でも、このようなせめぎ合いを強めているのである。
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