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http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120409/230736/?P=2
「北の核ミサイルは日本を向く」 北朝鮮が核武装したら韓国は…(日経ビジネス)
周辺各国の圧力は全く効かず、北朝鮮が近くミサイル実験を行う見通しだ。これにより、数カ月以内に核実験に踏み切る可能性も高まった。しかし、韓国社会の関心は4月11日投票の総選挙に集まり、仮想敵国の核ミサイルを本気で阻止する空気はない。日本のすぐ隣の朝鮮半島に核保有国が登場するのも時間の問題だ。
北は自信、南は金縛り
北朝鮮は4月12日から16日までの間に衛星発射──ミサイル実験を実施すると発表している。成功に相当な自信を持っているようで外国の専門家や記者を参観に招いた。
実施すれば3回目となる核実験だが、今回は成功する可能性が高い、と専門家の多くは見る(「北朝鮮、ミサイルの次は核実験?」参照)。もし、北が核保有国になれば東アジアの安全保障の環境は大きく変わる。ミサイルの成功よりも政治的衝撃ははるかに大きい。
一方、韓国では北のミサイル発射準備と並行して国会議員選挙が繰り広げられた。だが、そこでは北に関する論争はまったく起きなかった。保守系紙、朝鮮日報は4月4日付で「北のミサイルを見ぬふりする与野党の恥ずかしい姿を見よ」との社説を掲げた。3月20日付の社説「選挙に没頭の政党、北のミサイルも得票の損得でしか見ず」に続く警告だ。「南」は金縛りになっている。
「米国こそ約束違反だ」
「本当に核まで実験するのか?」──。北朝鮮がミサイルに続き核実験に踏み切る可能性があると言うと、こんな疑問が寄せられる。
2月29日に発表した米国との合意で北朝鮮は食糧(栄養剤)援助と引き換えにミサイル実験を中断することを受け入れた。しかし、「衛星発射」を約束違反と非難されるや否や「これはミサイルではない。衛星まで止めると約束していない」と反論した。確かに、合意発表文には「衛星はダメ」とは明記していない。
一方、核実験の中断に関してはこの「合意」で北朝鮮も明確に約束している。「本当に核実験まで突き進むのか?」と疑う人がいるのも無理はない。
注目すべき点がある。「ミサイル実験すれば食糧援助はしない」との米国の発表に対し、北朝鮮が一連の反論の中で「人道主義的問題と政治を関連させないことを約束した朝米合意の核心に違反する」(朝鮮中央通信=3月31日)と強く非難したことだ。
米国は、北がミサイルを発射したら食糧援助を止めるのはもちろん国連を通じたさらなる対北制裁に乗り出すだろう。これを受けて北が「米国こそが合意を破った」と世界に宣伝し、責任を転嫁しつつ核実験に乗り出す可能性が極めて高い。北朝鮮の最大の国家目標は核の保有だ。たぶん、合意当時から以下のように計算し、ミサイル発射をもくろんでいたのだろう。
「保有に向け核実験はこれからも繰り返したい。だが、下手に核実験すれば中国などからも圧力がかかりかねない。それならいったん米国との取引に合意しておき、その直後にミサイル実験を行えば米国を怒らせ『約束違反』を引き出せる。これを名分に核実験を実施すればよい」──。
約束を破ってこそ国の格が上がる
「そんな詭弁をもって約束を破るなんて、世間に通ると思っているのだろうか」──。多くの日本人からはこんな疑問が寄せられるに違いない。答えは簡単、「通ると思っている」である。
同民族の韓国を見てもそれは理解できる。発効したばかりの米韓FTAに関し、野党第一党の民主統合党は「破棄」を宣言した。自らが与党の時に「我が国を貿易大国に飛躍させる」、「グローバル化競争で日本に勝つ」と鳴り物入りで結んだ条約だのに、である。今になっての破棄の理由は「締結当時はFTAが韓国に及ぼす問題点に気がつかなかったから」
興味深いのは韓国社会で同党の変節を責める声は多いが、国際的な信義違反との批判は起きないことだ。このため米韓FTA賛成派の新聞が「発効したばかりの条約を破棄したら国際社会では信用を落とすものだ」とわざわざ“世界の常識”を国民に説明したほどだ。
日本や西欧と比べ、韓国・朝鮮社会では契約や約束は尊重されない。それどころか人前で堂々と約束を破るほど「力がある人」とあがめられる傾向にある。例えば日本人は「韓国はなぜ、従軍慰安婦など決着済みの問題を何度も蒸し返してカネを要求して来るのだろう。自らの信用失墜を懸念しないのか」と不思議に思う。しかし韓国では無理筋の要求を日本や米国など大国に飲ませてこそ、あるいは言い募るだけでも「国の格が上がる」と考えられている。
今後数カ月が千載一遇の機会
こうした精神構造は「北」も同じだ。米朝合意を破り、世界中の反対を押し切ってミサイルや核実験を強行する──。若くて実績のない新リーダーである金正恩最高司令官を北の人々の前で持ちあげる、これ以上の手口はない。
韓国の保守派の中に「敵に塩を送る結果になるから、ミサイル実験に反対すべきではない」という人が結構多いのもそのためだ(注1)。様々の意味で、米朝合意は核実験の歯止めになるどころか、加速材料になりかねないのだ。
「2つの『実験』が実績のないリーダーを権威付けするためであるのは分かった。でも今「ミサイル実験」を行使しておき、例えば数年後、その効き目が薄まった時に「核実験」を繰り出す手もあるのでは?」──。こんな疑問も浮かぼう。
北朝鮮が核実験するにあたって、ここから数カ月間が千載一遇の時期だ。まずは中東の緊張だ。イランの核保有を阻止するため核施設への先制攻撃を辞さない、とイスラエルは公然と表明している。軍事関係者の間では「年末の米大統領選挙の間近になるほどに米国からの協力が得にくくなる。攻撃日は、5月か6月の新月の夜だろう」といった情報が流れている。
イスラエルが「イラン戦争」を始めれば、米国は支援のために空母機動部隊を送るなど中東にかかりきりになる。その時、北が核実験を行っても米国は懲罰的な威嚇に回せる軍事的余力を持たない。
今回は核実験を予告?
軍事評論家の惠谷治氏は「北はこれまでの2回の核実験は実施後に発表したが、次回は予告してから実施するのではないか」と言う。ただ、予告するものの実施日は明らかにしない。すると米国は中東に加え、北朝鮮周辺にも核実験の情報収集や威嚇のための部隊を配備し続けねばならなくなる。イランと呼応し米国に期限のない2正面作戦を強いることで、軍事的にも政治的にもいっそう米国を振り回せる──という読みだ。
「ここ数カ月」という、もうひとつの理由は周辺各国が政権交代期に入り、能動的な外交をとりにくくなっていることだ。今年末の大統領選挙で再選を狙うオバマ米大統領は、仮にイランの核問題がなくとも、第2次朝鮮戦争の勃発を選挙民に想起させる手荒な手段には出られないだろう。
韓国の李明博大統領は残りの任期が1年を切り、民主化以降の歴代の韓国大統領がそうだったように統治力を完全に失っている。与党からさえも過去の不正を追及され始めた。中国も来年の政権交代を前にクーデター説が飛び交うほど揺れている。ロシアも権力交代期であり、日本は毎年、首相が代わっている。
逆に、来年初めになれば米中ロ韓と新たな指導者がそろい踏みし、北の核実験を抑え込む包囲体制作りに動くかもしれない。核保有国に名乗りを上げたい北朝鮮としては、今年中、それも早めに核実験に成功しておく必要がある。
「今、核実験を実施すれば、今年12月の選挙で韓国に対北強硬派の大統領が誕生するのでは?そうなれば南からの援助も貰えなくなる。北はその損得勘定を見積もっているのか?」との疑問もある。
答えは、日本人には意外かもしれないが「北が核保有国になっても、韓国に対北強硬派の政権が生まれるとは限らない。むしろ、北の核を目にした韓国の次期政権は融和策をとらざるを得ない」
「民族の核」に高揚感抱く韓国人
2006年10月9日の北朝鮮の初の核実験の後、ソウルを歩いた。新聞はどの国でも建前を書くものだから、保守系紙は「強い憂慮」を表明していた。しかし、多くの韓国人は高揚感を抱いていた。タクシーの運転手氏は「我が民族がついに核を持った。大したものだ」とハンドルを握りながら興奮していた。知識人たちは外国人記者に高揚感を気取られまいとしつつも、それを隠せなかった。
彼らに被爆国の日本人のような核コンプレックスはない。それどころか数千年間常に周辺大国から苛められて来たとの悔しさがあり、北のみならず南の人々も「核さえ持てば」との思いを抱いている(「『中国に屈従か、核武装か』と韓国紙社説は問うた」参照)。
ただ、四半世紀前までだったら「敵国が核を持つなんてとんでもない」と韓国人は口をそろえただろう。しかし、1997年の民主化以降「軍部が独裁政権を続けるため、北を野蛮な敵国と決めつけていた」との認識が広まった。独裁への反発から今や韓国人の相当数が「北は敵ではない。こちらが手を出さなければ戦いを挑んで来ない」と信じるようになった。
『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』
2010年3月の哨戒艦「天安」撃沈事件は「北の仕業ではない」と考える韓国人が20歳代では2〜3割に達する。同年11月の延坪島砲撃事件も「南が挑発したから北がやむなく応戦した」という北発の宣伝が結構信じられている。
こうしたムードを醸し出すのに大いに寄与したのが民主化以降、続々と作られた民族和解をうたいあげる映画だ。保守派に言わせれば「北の意向を受けたものばかり」である。
典型的な作品が1993年に小説として出版された『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』(=邦訳、金辰明著、徳間書店)。南北が合同軍を作り、北の開発した核兵器を日本に撃ち込み屈服させる、という筋書きだ。100万部売れたとされ、映画化されて賞も受けた。韓国人にとって実に心躍るストーリーだったからだ。
「日本や中国に向ける核だ」
次の核実験後、北朝鮮や韓国内の親北勢力は「北の核は同族には使われない。独島(竹島)の領有権を不法に主張する日本向けだ」と宣伝するだろう。すると相当数の韓国人が「ムクゲ……」と同様に喝采を叫び「核の恐怖」への心理的保証を得ようとするだろう。
あるいは「北朝鮮経済の弱体化に付け込んで植民地化を図る中国を威嚇するためにこの核を持った」といった「見方」がネットなどで流されると思われる。中国による北支配を恐れる南の人々の耳に、これも心地よく響くに違いない。
韓国人の多くが密やかだが「同族の核」に心躍らせる時、大統領候補者がそれを「北の核」として強く批判できるかは疑問だ。社会全体が左に傾いた韓国で北朝鮮を下手に批判すれば「軍事独裁政権の残党」、「第2次朝鮮戦争の誘発者」と見なされる可能性が高い。
もちろん、北の核武装を真剣に憂い“強硬策”──例えば、開城工業団地を閉鎖して事実上の外貨援助を完全に中断すべきだと考える人もいる。ただ、大統領候補がその票をあてにできるほど層はなしていない。今年の総選挙で左派の民主統合党はもちろん中道保守のセヌリ党さえ、北のミサイル発射問題にはほとんど言及しなかったことを思い起こす必要がある。
「でも、選挙戦はともかくも保守派が大統領に就任すれば北に毅然とした態度をとるのではないか?」──という疑問もあろう。答えは「よほどのリーダーシップを持った大統領でないと難しい」。
なぜなら、米国は「核・ミサイルを実験した北」をいったん非難するだろうが、軍事行動で解決する覚悟がない以上、結局は「ワシントンに届くかもしれない核を持った北」と関係改善に動くからだ。たぶん、その交渉は韓国に十分な相談なしで行われるだろう。今年2月の米朝合意も、韓国には発表直前まで詳しい内容が知らされていなかった模様だ。
米朝が「核保有国同士」の対話に乗り出した時、韓国が援助中断など対北強硬策をとり続ければ蚊帳の外に取り残されてしまう。「韓半島の平和を話し合う場から疎外されている」、「北と対話せよ」という声が、面子を失した韓国に満ち溢れるだろう。保守派が次の政権を握っても北が核保有国になれば、援助拡大など対北支援策をとらざるを得なくなると思われる。
北の核保有が東アジアに起こす玉突き
中国の台頭と米国の退潮を引き金に、両大国の勢力争いが再開していたアジア。北朝鮮の核保有はそのゲームを複雑にする。北の始める「玉突き」がどう連鎖を起こすのかまだ不明だ(注2)。しかし、中国大陸から日本に吹き寄せる「風」が一気に強まることは間違いない。日本は“元寇以来の危機”に直面するかもしれない。人々は平和で穏やかな島国で、いまだに眠りこけているけれど。
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