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米国のオフショア戦略には、もう亀裂が大きく入り揺らいでいる
http://www.asyura2.com/12/warb9/msg/142.html
投稿者 DOMOTO 日時 2012 年 3 月 24 日 22:29:40: VRQtq/0DZtRLQ
 

(回答先: ゲイツ国防長官がウェストポイントで行ったスピーチで、オフショア・バランシングを「アメリカの次の大戦略である」として提唱 投稿者 TORA 日時 2012 年 3 月 24 日 13:01:34)


DOMOTO
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735
http://www.d5.dion.ne.jp/~y9260/hunsou.index.html


クリストファー・レイン著『幻想の平和』は私も図書館で貸りて読んだが、今年3月20日付けの記事だというのに奥山真司氏のこの認識は「遅れた情勢分析」になっている。というより「月刊日本」というサイトが掲載した、5年以上も前の本の翻訳書の宣伝といったところだろう。

レインの『幻想の平和』は2006年の出版。この本の内容はアラブの春(2011年1月)が起こる1年以上前までにしか通用しない。奥山氏はそこを大きく省略している。アジアでオフショア・バランシングが推進されてきたのはその通りではある。しかし、3月22日のTORA氏の投稿で引用した「巨額の経常赤字と財政赤字を抱える国が、長期間にわたって海外における覇権を維持することは不可能」(ギルピン:プリンストン大学)という見方はアメリカ保守派に広がっており、アメリカによるオフショア・バランシング自体が大きく揺らいでいる。

>中国の台頭に対して、アメリカは責任を負わず、アジア各国に責任を持たせるという方向に進む。

米国のリアリストのグループがこのような主張もしているようだが、オフショア・バランシング、オフショア戦略は奥山氏が述べているようなものだけではない。アメリカが最重要視している「アジアにおける経済的権益」は、奥山氏のオフショア論では解決されない。オフショア戦略には民主党の中にもいろいろな考え方があるし、共和党のようにより軍事的レベルの高いオフショア戦略もある。

中国対米国、アメリカ次期政権が構想する「アジア版NATO」―冷戦型軍需経済の復活−(2011年10月 拙稿)
http://www.asyura2.com/11/senkyo120/msg/722.html

アメリカのアジア重視発言はリップサービスなどではなく外交軍事的な大目標なのだが、財政上の理由でそのプレゼンスを低下させている。昨年2月にゲイツ前国防長官がウェストポイントでスピーチした、「オフショア・バランシングはアメリカの次の大戦略である」といった戦略にはすでに亀裂が走っている。オフショア戦略は中東のみならず、アジアでも今後、戦略として脆弱性が高くなる恐れがすでに出てきている。それは財政赤字による国防費削減の規模が甚だしくなっているからだ。国防費の削減は現時点で今後数年間さらに進む(オバマ再選の場合は確実)。最近のアメリカの国防費削減により、どれだけ酷い軍備縮小が計画されているかが、ワシントン在住の日高義樹氏の最新著作レポート『帝国の終焉』(2012年1月刊)に掲載されている。

オフショア戦略の亀裂はイラン情勢を見れば容易に想像がつくだろう。ゲイツ前国防長官とオバマ政権の外交・軍事スタッフは対中国・アジア政策にシフトし過ぎていて中東情勢を半ば放置していた。国防政策委員でオバマ政権のロバート・カプランなどの政策スタッフ達は対中国・アジア政策を最重要視し中東情勢を軽視していた。2011年8月リビアの首都トリポリが制圧された直後、自分達の政策路線が大勝利しているなどと自画自賛していた。しかし同年11月にはイラン問題が急浮上してしまう。これはつまり「東(アジア)は攻略を進めていたが、西(中東)のことは忘れていました」というような、考えられないようなお粗末をやっていたという事だ。この重大な政策上の欠陥は当時、米共和党系シンクタンクから懸念されていた。

Libya, Obama and the triumph of realism (2011年8月28日)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/a76d2ab4-cf2d-11e0-b6d4-00144feabdc0.html?ftcamp=rss#axzz1YAso3jcW

現在アメリカの中東政策は混乱しているが、この中東政策の混乱と今後のアメリカの国防予算の大幅削減が相まって、アジアでの対中国政策が脆弱化し、混乱する可能性が出てきている。前述の日高義樹氏もアメリカの軍事外交戦略は国防予算の大幅削減とともに混乱が始まっていると述べている。

ウェストポイントでのゲイツ前国防長官の演説も、奥山氏の5年以上も前の本の内容の紹介記事も1年遅れの情勢認識だ。そんな間接的で幾分古ぼけた情報や論説の収集の仕方をしなくても、毎日アメリカのシンクタンクから山のように高質な英文情報が、インターネットで提供されている。


参考記事(拙稿):
米国による中東からアジアへの軍事力シフト―米国のオフショア戦略(4)―(2011 年 9 月 24 日)
http://www.asyura2.com/11/senkyo119/msg/775.html

 

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