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笑止千万!北朝鮮が「脅威」のわけがない
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34763
2012.03.19 古是 三春 JBpress
1990年代後半以来、より正確に言うなら北朝鮮で「建国の父」金日成主席が死去してから、日本の世論は同国によるミサイル発射実験や「核」開発に振り回され続けてきた。2011年12月に死去した「2代目」金正日総書記による“瀬戸際外交”にヒヤヒヤさせられることがしばしばだった。
日本海に向け、次々に開発される「ノドン」「テポドン」のような弾道ミサイルを発射するデモンストレーション。とうとう2009年4月5日には、我が国の東北地方上空を越えて太平洋までミサイル(北朝鮮側は「人工衛星の打ち上げ」と発表)が飛ばされた。
日本側では、弾道ミサイル迎撃が可能な「ペイトリオットPAC3」対空ミサイルやイージス艦を東北地方と周辺海域に配置するなど、かつてない警戒態勢を取ったが、世論はそれ以上に沸騰した。
そして、2010年3月は韓国海軍艦艇「天安号」撃沈事件が起き、11月には境界線が未確定の韓国〜北朝鮮周辺海域での米韓合同演習への「報復」としての大延坪島に向けた北朝鮮軍の多連装ロケット弾砲撃事件が発生。
振り返ってみるなら、金正日氏の執権末期に向かってますますキナ臭い状況が進んできたように思える。
■ミサイル1発で日本が崩壊する?
筆者は、金正日政権時代、そして後を継いだあまりに若い金正恩大将の執権の下での北朝鮮が北東アジアの安全保障情勢を揺さぶる存在であり続けていることを否定しない。しかし、ここ十数年の我が国での北朝鮮に関するマスコミ報道やテレビ出演する「軍事評論家」(?)のコメントを見聞して、筆者としてはうんざりさせられることが多い。
経済的不振から国内に飢餓状況まで生まれてあえいでいる北朝鮮について、まるで「何をしでかすか分からない危険な軍事国家」というイメージばかりが語られるからだ。
「北朝鮮のミサイルが日本に飛んできて落下すれば、日本は崩壊する」
これは、それなりに有名な「軍事評論家」がコメンテーターとして出演して述べた言葉そのものだ。こんな発言を公の場で発言する者が、なぜ「軍事評論家」、いわば専門家呼称を名乗るのか、まったく理解に苦しむ。
だいたい、特定の兵器がいかに強力な大量破壊兵器の範疇に入るものであり、それをある国家が保有したとしても、それだけでその国家が真の軍事的脅威となり得るわけではない。軍事行動は開始と共に「終了」のシナリオなしには始められるものではなく、それはミサイル1発を撃って終わる話ではないからだ。
相手側に物理的あるいは心理的打撃を与えながら、総合的に作戦を進め、相手国の中枢部を脅かしながら休戦に持ち込むか、完全に制圧する──。こうしたシナリオを実行する実力がない国家には、決定的な軍事行動を始めることができない。
これは軍事的実力のみならず、外交・政治力、さらには国内経済のサポートによる継戦能力も含めた国家の総合力が問われる問題である。
■日本の方が核ミサイルを早く実用化できる
弾道ミサイルとは兵器の一分野に属するもので、それだけで戦争を勝利させる効果を持つものではない。やはり、核弾頭を搭載できる弾道ミサイルが、数あるミサイルの中では使用する場合だろうと、保持することで抑止力を発揮させることを狙うのであろうと、一番効果が期待できるものだ。
しかし、核ミサイルを戦力化できるかどうかは、当該国の総合的な科学技術力が問われる問題だ。核爆発の原理を認識しても、それを実地再現することは容易ではない。
北朝鮮は2005年と2009年に地下核爆発実験を行ったと目されているが、いずれも成功したかどうかは疑わしいと見られている。
既に空中核実験は国際的に禁止されているが、世界の主要核兵器保有国(米国、ロシア、英国、仏、中国)は禁止以前に相当な核実験を繰り返し、地下核実験を含めて膨大なデータを蓄積した。
これに代わるものとして臨界核融合実験が考えられるが、この実験を実施するには高度な先端技術をつぎこんだ施設が必要で、財政力の乏しい北朝鮮などは持ちようがない。
他に巨大な爆発力を発揮させる核融合を限られたスペースの核弾頭内で起こさせるためには、核物質の全周囲から均質に爆圧をかけるための高度な起爆装置が必須である。実は、この装置こそ核兵器の要で小さく作ろうとすればするほど、より高度な加工技術や複雑な計算に基づく緻密な設計が求められる。
核弾頭の大きさを決めるものは、起爆装置その他の制御装置であるが、核開発初期段階にある国家はだいたいにおいて4トン前後の重量を持つ核弾頭を実用化できるにすぎない。「核先進国」である米国、ロシアはこれを数十キログラムの重量内で製作することが可能だが、この技術格差は半世紀くらい他国を引き離しているものだ。
北朝鮮に4トンのペイロードを持つミサイルは存在しない。最新で射程6000キロメートル以上と見られている「テポドン−2」でも250〜300キログラム前後だ。一方、日本が開発した「H−2A」ロケットの弾頭ペイロードは4トンで、初歩的な実用核弾頭を搭載できるレベルだ。
技術的可能性という面で見るなら、北朝鮮よりも日本の方が核ミサイルを短期間で実用化できる可能性が高いのである(実際、IAEAはそう評価している)。
■北朝鮮に「戦争力」はあるのか
もう1つ問題にしなければならないのが、旧態依然とした北朝鮮のロケット技術そのものだ。
北朝鮮が何度か発射した長射程ミサイルのロケットエンジンは2液式の液体燃料使用タイプで、これは発射前に相当な時間をかけて燃料充填を行うことを余儀なくされる。
現在、周辺各国の軍事筋は、可能性はないと見ているものの、北朝鮮がミサイル使用に踏み切ろうとした場合、その準備状況を偵察衛星その他の情報収集で察知できれば、容易に事前攻撃で阻止できると見ている。これでは、実用攻撃兵器として話にならない。
ミサイル兵器を実用化している諸国では、各種システムによる精密誘導によるピンポイント攻撃能力の実現を課題としている。中国が開発を表明した対艦攻撃弾道ミサイル(ASBM)やロシアの中射程対BMDミサイル(弾道防衛システム基地をピンポイント攻撃する高速ミサイル)、米国のレーザー誘導式ミサイル等がそれだ。
これら先進的ミサイル兵器は、開発国が有する総合的な技術力、資金力があって初めて実用化されるものであり、資力も技術的蓄積も乏しい北朝鮮では現状では逆立ちしてもマネできる状況にない。
核ミサイル分野だけを見ても、問われるのは国家としての総合力なのだ。軍事行動の実施、いやそれ以前に本当に有効な兵器を実用化し装備するためには、国全体としての「戦争力」が必要であり、それを裏打ちする実力はもはや北朝鮮にはない。
■北朝鮮の軍事力は「張り子の虎」である
北朝鮮の「戦争力」を問題にする場合、軍事分野では必須の「燃料調達力」(北朝鮮の石油精製能力はせいぜい年間200万トン程度)や食料、人員を含めた継戦体制などをも評価すべきだが、簡単に言って工場操業もままならないエネルギー状況は誰でも知っているところだ。これでは、軍事面のサプライが不十分なことは容易に推測できるだろう。
「北朝鮮内部事情は、複雑で見えない」「情報が乏しい」という俗説をよく聞く。その作られた「無知状況」に付け込んで、マスコミの場では自称「軍事評論家」が「脅威」「危険性」を叫び、北朝鮮について虚像を作り上げていく。
問題は、軍事なら軍事、と視野を狭くして偏った情報だけで判断してしまう思考スタイルである。どうも、「クロか、シロか」的なマスコミ報道のあり方によって醸成された日本国民の判断の仕方に、この面が大きく影響しているように思える。
大事なことは、ある問題の側面を評価するためには、誰でも容易に判断し得るレベルの情報にまで問題を関連づけて解析し、さまざまな角度から対象をながめることである。
燃料、食料、それから資金と技術力・・・これらを欠いた軍事力というものは、実際的なものではない。どんなに数字的なデータで大きかろうと、それは「借り物の軍隊」「張子の虎」にすぎない。
分かりやすく北朝鮮の軍事力を特徴づけて、締めくくろう。
北朝鮮は大砲やミサイルのような「飛び道具」をふんだんに持っている。しかし、これを使う時は北朝鮮が国家として「自殺」する時だけである
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