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「普天間返還の計画をめぐって」(BBC・時事・沖縄タイムスの記事)
http://www.asyura2.com/12/warb10/msg/883.html
投稿者 無段活用 日時 2013 年 4 月 10 日 18:54:26: 2iUYbJALJ4TtU
 

(US to return Okinawa air base area to Japan : BBC News Asia)
http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-22039186


2013年4月5日最終更新12:55GMT

米国、沖縄の飛行場区域を日本に返還へ


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在沖基地・部隊のこれまでのことをめぐり、日米関係は緊張を続けている


日米両国は、沖縄の嘉手納米軍飛行場近くの土地を日本に返還する計画に合意した。

この動きにより、多くの米軍部隊が日本国外に移転されるものと見られる。

日本はまた、論争の的となっている普天間米軍飛行場移転のスケジュールを見直すことも発表した。2014年までに移転するという当初の計画は、地元の反対のために行き詰まっていた。

第2次世界大戦中の沖縄侵攻から、米軍は沖縄に駐留を続けている。

この計画では、沖縄にあるいくつかの施設と区域の即時返還を求めている。

米軍の声明によれば、代替施設が建設され、米海兵隊の大派遣部隊が日本国外のグアムやハワイに移転した後に、追加して返還される区域もある。

どれだけの部隊が配置転換となるか、米国は述べていない。

この計画が実施されれば、約1,000ヘクタールの土地が日本に返還されると見られる。




沖縄の年表

■1429年:尚巴志王が琉球王国を建国。
■1609年:南日本の薩摩藩が侵攻。
■1872年:日本、琉球王国を領国化。1879年に吸収。
■1945年:沖縄戦で100,000人(推定)の沖縄人が死亡。日本降伏。米国が沖縄を統治。
■1972年:沖縄の日本復帰。米軍基地は残留。

概要:沖縄




争いは続いている

新たな計画の下で、普天間基地は2021年より後に移転されるだろう。

那覇市近郊のこの基地のために、日米両国のこれまでの同盟関係は気まずいものとなっていた。

地元住民たちは、軍事施設が都市に近すぎると危険だし騒音も酷いと語っており、島外に全面移転して貰いたいと考えている。

時折、米軍軍人による不品行や犯罪行為の事象が広く報道され、憂慮の念に油を注いだ。

2006年の日米合意の声明によれば、普天間基地は米軍部隊の配置転換前に移転することになっている。しかし、2011年、両国はこの2つの課題を「切り離す」ことで合意した。

その2006年の合意に基づき、米国は普天間閉鎖後に8,000人の海兵隊をグアムに移転させると語ったが、10,000人は沖縄に残ることになっている。

この取り決めは、普天間の移転候補地で住民が抗議する中、行き詰まっている。

米国は日本に、全体で約50,000人の軍人を配置している。



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(時事ドットコム)
http://www.jiji.com/jc/zc?key=%c9%e1%c5%b7%b4%d6%ca%d6%b4%d4&k=201304/2013040500652


普天間返還、22年度以降=辺野古移設が条件、日米合意−安倍首相「最短期間で実現」


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握手するルース駐日米大使(左から3人目)と安倍晋三首相(同4人目)=5日午後、首相官邸


日米両政府は5日、沖縄県の米軍嘉手納基地(嘉手納町など)以南の施設・区域の返還計画で合意し、安倍晋三首相とルース駐日米大使が同日夕に首相官邸で共同発表した。焦点の普天間飛行場(宜野湾市)跡地は、同県名護市辺野古への移設を前提に2022年度以降に、沖縄の要望が強かった牧港補給地区(浦添市)の一部は13年度以降にそれぞれ返還するとした。

首相は発表の中で、「沖縄の負担軽減にとって極めて有意義だ。最短の期間で実現できるように計画を着実に実施していく」と強調。ルース氏は「在日米軍基地を持続可能な方法で維持でき、日本の国防にとっても非常に重要だ」と述べた。

同席した菅義偉官房長官は、計画実行に向け沖縄関係閣僚会議の下に局長級ワーキングチームを設置する意向を表明。日米は今後、返還状況を検証し、計画内容を3年ごとに更新、公表する。小野寺五典防衛相は6日に沖縄県を訪問し、県側に返還計画を説明する。

計画では、普天間飛行場は辺野古移設が実現すれば「22年度またはその後に返還が可能」とした。政府は移設先の公有水面埋め立て工事を県に申請しているが、仲井真弘多知事の承認を得るまでにかかる期間として最低1年を見込んだ。小野寺防衛相は首相官邸で記者団に「埋め立ての了承を頂ければこの(返還計画の)スケジュールで進むということだ」と語り、仲井真知事の承認に期待感を示した。

牧港に関しては、北側進入路が13年度にも、倉庫地区の大半は25年度以降にそれぞれ返還される。 

返還計画について仲井真知事は、「沖縄の過重な基地負担の軽減につながるものであり、実施に当たっては十分に地元の意向を踏まえるべきだ」とのコメントを発表した。

嘉手納以南の施設・区域返還は、06年の在日米軍再編計画ロードマップ(行程表)に盛り込まれたが、普天間移設の難航で返還計画の策定が遅れていた。首相は2月の日米首脳会談で計画策定を急ぐよう要請。これを受け、外務・防衛両省が米側との協議を進めてきた。

協議では、日本側が「沖縄の負担を軽減するためにもスケジュールを明示したい」と強く主張したが、米側が返還期限の設定に難色。このため全ての施設・区域の返還時期に「またはその後」との文言を加え、予定よりも遅れる余地を残した。

(2013/04/05-20:39)


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(沖縄タイムス)
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-04-06_47673


普天間返還、最短で9年 日米合意


政治   2013年4月6日 09時53分


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嘉手納基地より南の土地返還


【東京】米軍嘉手納基地より南の普天間飛行場を含む6施設・区域について日米両政府は5日、普天間の返還を「2022年度またはその後」などとする統合計画に合意した。全体1048ヘクタールのうち普天間より先に返還されるのは全体の6%(65ヘクタール)にとどまり、大部分が返ってくるのは普天間の返還後。返還時期はいずれも「最善のケース」と見込まれており、3年ごとの計画の更新で遅れる可能性もある。

最も早く返還が見込まれる牧港補給地区の北側進入路は、13年度以降とされ、来月にも測量などを始め今秋にも返還完了を見込む。 「県内移設後」とされた区域はすべて移設先が示され、普天間飛行場(481ヘクタール)は名護市辺野古の「キャンプ・シュワブへの移設」が返還条件とされた。

那覇港湾施設(56ヘクタール)は、28年度以降で「浦添ふ頭地区への代替施設への移設」が条件。経済的価値が高いとして早期返還の要望が高い牧港補給地区(キャンプ・キンザー)は、倉庫地区を含む129ヘクタールが25年度以降で、陸軍倉庫のトリイ通信施設への移設などが条件とされた。

一方、「海兵隊の国外移転後」とされたのは24年度以降の牧港補給地区の一部(142ヘクタール)と、時期は示されていないキャンプ瑞慶覧の追加的な部分。海兵隊のグアム移転の時期は見通しが立っておらず、「その期間を考慮していない」ため返還時期は不透明だ。

返還計画は、安倍晋三首相が5日、ルース駐日米大使と首相官邸で会談し、了承。安倍首相は「目に見える形で沖縄の負担の軽減が進むことになった」と計画を評価した。今後、3年ごとに日米両政府で検証し返還時期の妥当性を確認・公表するほか、沖縄関係閣僚会議の下に、官房副長官と外務、防衛両省の局長級らのワーキングチームを設置し、最短期間での返還に向けて取り組む。


県、地元要望集約へ

仲井真弘多知事は5日夜、嘉手納より南の6施設・区域返還計画が発表されたことについて「沖縄の過重な基地負担の軽減につながるものであり、実施にあたっては十分に地元の意向を踏まえるべきだ」とした上で「今後、丁寧に関係市町村長の話を聞き、県と市町村の考え方をまとめたい」とする談話を出した。

県は、6施設・区域の所在市町村や、米軍機能の受け入れ側の市町村と意見交換し、跡利用などを見据えた地元の要望を集約して政府に申し入れる考えだ。統合計画への評価も市町村の意向を踏まえ検討する。


[ことば]

普天間移設問題 宜野湾市の市街地にある米軍普天間飛行場は安全性の面から地元の返還要望が根強い。

1995年の米兵暴行事件を機に、日米両政府は96年に返還合意。続く2006年、名護市辺野古沿岸部を埋め立て、滑走路を建設する方針でも合意した。

民主党政権時代に政府方針が迷走し、沖縄側は反発。安倍晋三首相とオバマ米大統領は今年2月の会談で日米合意した移設を早期に進める考えで一致し、政府は3月、公有水面埋立法に基づく辺野古埋め立て申請を県に提出した。



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(沖縄タイムス)
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-04-07_47711


社説[砂上の返還計画]現実と遊離し不可能だ


政治 2013年4月7日 09時30分



小野寺五典防衛相は6日来県し、嘉手納基地よりも南にある普天間飛行場など六つの米軍基地の返還統合計画について、仲井真弘多知事や関係市町村長に説明した。

今回の返還計画は、地元の反対が根強い中で、(1)実現を担保するものがなく、(2)返還期限の設定もあいまいで、(3)普天間の返還時期が『2022年度またはその後』とされ、事実上、固定化を認める内容になっている。

さらに、(4)ほとんどが県内移設を前提にし、(5)嘉手納以北の住民からすれば、基地の拠点集約化に伴う大幅な負担増になっており、(6)将来は、嘉手納基地を中心とする中部の基地群と辺野古を中心とする北部の基地群が半永久的に固定化されるような内容だ。

那覇港湾施設(那覇軍港)は「28年度またはその後」に返還とある。日米が那覇軍港の返還に合意したのは1974年のことである。仮に計画通り実現したとしても、合意から半世紀以上もかかって県内移設することになる。

県内玉突きによって負担を沖縄内部で完結させようとするこれらの返還計画は、理不尽で、不公平で、無理があり、不条理だ。なぜ本土ではだめなのか、まともな説明を一度も聞いたことがない。

米国は期限設定に難色を示し続けた。無理に数字をいれさせたのは安倍晋三首相の意向である。安倍首相は日米首脳会談で牧港補給地区の先行返還をオバマ大統領に要請したといわれるが、実現していない。

この計画は「砂上のプラン」というしかない。

    ■    ■

96年の普天間返還合意以来、沖縄の人たちは、日米政府の二転三転する計画に振り回され続けてきた。地域が、家族が、親戚が、賛成と反対に分かれていがみ合うこともあった。

普天間の返還時期はこれまで何度も変わった。ころころ計画が変わっても地元自治体はいつも蚊帳の外。自治体や住民の政府に対する不信感は根深い。

日米両政府が返還統合計画を発表した5日、名護市では「辺野古埋め立て申請の撤回を求める緊急市民集会」が開かれた。

返還合意から今年で17年。市民投票や県民投票、各種の首長選挙や国政選挙、ほとんどの選挙で示されたのは移設反対の民意である。

埋め立て申請を承認するということは、民意に背くだけでなく、過去17年の、県民の血のにじむような叫び、異議申し立てを、何もなかったかのように、水に流すようなものである。あってはならないことだ。

    ■    ■

普天間飛行場へのオスプレイ配備によって訓練負担が著しく増えた地域の一つは宜野座村城原区である。同区の大嶺自孝区長は言う。

「北部は無人島じゃない。今以上に増強して『負担軽減』なんて、政府は何を考えているのか。怒りで体がガタガタ震えて止まらない」(6日付社会面)。大嶺さんの叫びは両政府に届くだろうか。

辺野古移設を前提とする限り、返還統合計画は袋小路から抜け出せないだろう。


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(投稿者より)

普天間返還に動きがあり、BBC・時事・沖縄タイムスと、記事を並べてみました。東京は大喜びですが、沖縄の反応は厳しいようです。誤訳があるかもしれません。ご容赦ください。

沖縄タイムスは、今回の動きに対する米国メディアの論調米国平和団体の意見なども丹念に拾っています。

米国防長官は、今回の動きにより沖縄の兵士数を削減できることを強調しています。一方、仲井真・沖縄県知事は、普天間飛行場返還までの期間が「長すぎる」と述べ、地元首長は県内移設を返還条件にした計画に不満や戸惑いを表明しています。自民党・沖縄県連も普天間飛行場の辺野古移設は「事実上不可能」と考えているようです。

外務省サイトから、この計画の概要を付しておきます。  

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コメント
 
01. 2013年4月10日 19:36:18 : rQjXkNypGM
「またはその後」は流行語大賞にすべき
沖縄には悪いが、大爆笑してしまった
この文言は、アメリカが譲らなかったので、外務官僚が直前で頭をひねったのだろうが、ひねりすぎて一周回った感じ

問題は、この無様さでなお、6時のニュースに合わせて安倍政権の成果として大々的に報道させようとしていたこと
各メディアも、そのつもりだったこと


02. 2013年4月10日 20:11:45 : xEBOc6ttRg

>2006年の合意に基づき、米国は普天間閉鎖後に8,000人の海兵隊をグアムに移転させると語ったが、10,000人は沖縄に残ることになっている。
この取り決めは、普天間の移転候補地で住民が抗議する中、行き詰まっている。
米国は日本に、全体で約50,000人の軍人を配置


日本駐留の兵士の多くや、人事管理者を、日本人採用にできると、雇用対策にもなるし、不祥事が起こっても摩擦は少ない

思いやり予算への風当たりも減る

グリーンカード兵士もいるのだから、米軍が特例で規制緩和してくれるとできそうだが、有能な人が集まるか、配置転換で戦地派遣を覚悟できる日本人がどれだけいるか、など問題も多いな



03. 2013年4月12日 00:12:43 : xEBOc6ttRg

米軍基地の沖縄撤退を一番望んでいるのは中国だ
緊張する朝鮮半島情勢にも政党の基地問題議論は旧態依然
2013年04月12日(Fri) JBpress
 4月7日放送の『中山泰秀のやすトラダムス』(Kiss FM KOBEで毎週日曜24:00-25:00放送)では、中山氏が沖縄米軍基地問題や安倍政権の経済政策、財政再建をめぐる話題などについて語った。

メディアが報道しない沖縄の反米・反基地活動家の実態

中山 沖縄県嘉手納基地より南にある米軍施設の返還計画について、メディアで様々な報道がなされています。

 そうしたなか、米海兵隊広報部が発行する機関紙「Okinawa Marine」の3月29日付1面に、「Small protests create unsafe gate conditions(PDF)」という記事が載っています。

 反戦運動や米軍基地撤廃運動を行う抗議活動家たちが、米軍基地のゲートを出入りする海兵隊員やその家族、日本人の従業員たちに妨害行動をし、それが危険なレベルになっているという内容です。同記事には米軍車両の中に身を乗り入れてメガホンで叫ぶ男性の姿が写っています。

 また、どの新聞も報じていませんが、こうした活動家が石や砂を投げつけ、それによって海兵隊員2名が目にケガを負ったという話も寄せられています。

 彼らが現地の宜野湾警察署に被害届を提出したところ、警察は受理を拒否。その後、今度は米軍の憲兵と弁護士が同伴して警察を訪れましたが、それでも全く取り合ってくれなかったとのこと。

 ここまでいくともはや暴力の範囲ですし、もし同じ行為を日本人に対して行った場合は立派な犯罪でしょう。ケガをした海兵隊員は兵士である前に1人の人間です。「戦争反対」を唱える人たちが、それを暴力に訴えるのは大きな問題だと私は思います。


「在日米軍基地も射程圏内」と、北朝鮮は3月21日警告した。(写真は無人攻撃機の実弾訓練を視察する金正恩第1書記(撮影日・場所不明、2013年3月20日配信)。〔AFPBB News〕

 垂直離着陸輸送機V-22オスプレイについても、凧や風船で飛行を妨害する行為があったそうですが、かえって墜落の危険が増すだけです。

 こうした現実があるにもかかわらず、嘉手納以南返還をめぐっては各政党が相変わらず旧態依然の議論を続けている。与党がこう言うから野党が反論したり、政局ばかりを気にした言動を繰り返したり・・・もはやそんな場合ではないんです。

 米側は年限を切って基地を返還しようとしているわけですから、我々がやるべきことは、それが円滑に行えるように政党の枠を超えて準備を整えること。そして返還までの間、外敵からの侵略をいかに防ぐかという防衛面の議論を深めることではないでしょうか。

 沖縄から米軍が出ていって一番喜ぶのは中国です。朝鮮半島が緊迫した情勢にある今、日米安全保障条約に支えられている日本が、自らガードを下げてしまって果たして良いのか、真剣に考えるべきだと思います。

 確かに、日本国内に外国の基地があることが真の独立とは言えないのも事実です。しかし同時に、今の日本の軍事力・防衛力だけで沖縄を含めた我が国の本土防衛を行うのは現実的に厳しいわけです。

 憲法の縛りや軍事装備面での懸案事項など、議論すべき問題は山積していますが、軍事的要衝である沖縄のあり方をしっかりと検討することが求められます。

安倍政権の好スタートを「幸運」と捉えるのは間違っている

 第2次安倍(晋三)内閣が発足してから、4月4日で100日が経ちました。この100日間で日本はどう変わったのでしょうか。

 まず、先の衆議院総選挙前、日経平均株価は約9500円でしたが、つい先日には1万3000円を突破しました。相対的に見て為替が円安傾向になり、デフレ経済が克服されつつあるという空気感が数字にも表れ始めています。


東京外国為替市場の為替トレーダー(2013年4月8日撮影)〔AFPBB News〕

 もちろん「安倍首相の発言で円安・株価上昇が起きただけで、現実にはまだまだ厳しい」という声も上がっており、これもまさしく正論だと思います。

 ただ、「安倍政権が好スタートを切ったのは、円安株高というラッキーに支えられたからだ」という意見には疑問があります。

 なぜなら、6年前の2007年には日経平均株価が1万8000円台でしたが、民主党政権の3年3カ月で半分以下にまで下落してしまい、民主党はそれを上げようと思っても結局できなかったのですから。

 安倍首相は「期待の変化」を作ったと思いますし、それを幸運だというのは本質を見誤っている気がします。この点について、竹中(平蔵)氏が東洋経済オンラインのインタビューにこう答えています。

 「故・速水(優)元日本銀行総裁に教わったのだが、鴨長明の『方丈記』の中に、景気とは“空気の景色”という説明が出てくるそうだ。まさしく、景気は“気”から。経済学的にはエクスペクテーション(期待)だ。それが今高まっている。それを高めたのは安倍首相の功績だ」と。

 私も竹中氏の意見に全く同感です。安倍政権は大胆な金融緩和、機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略という「3本の矢」を放つことで景気浮揚を目指していますが、その答えが出るのは早くて1年半後でしょう。

 そして蒔いた種以上の果実が実り、それが富として国民に配分された時に初めて成功と言えるのです。

 いずれにせよ過去の歴史を振り返っても、自民党政権を含めてこれだけ大きなチャレンジをしようとしているのは初めてのこと。グローバル化が進み、市場が一体化して個人間の競争も激化する今の世界の潮流において、日本という小さな島国に住む我々が今後をどう見据えるのか。虫の目と鳥の目の2つの視点で経済を読み解くことが重要です。

財政赤字を毎年1%改善するには大きな負担が伴う


中山 泰秀(なかやま・やすひで)氏 衆議院議員(自由民主党所属)。1970年大阪市北区生まれ。電通勤務を経て政治の道へ入る。2003年衆議院総選挙で初当選、2007〜2008年8月まで外務大臣政務官を務める。自民党青年局長代理・国防部会長(撮影:前田せいめい)
 この春から電気やガス、小麦や食用油など様々な生活必需品が値上がりします。これに対して「増税や値上げは国民全体の収入が増えてから踏み切るべきではないか。値上がりしたことで消費意欲が下がり、またデフレが悪化するのでは」という意見を耳にします。

 例えば、消費増税をめぐっては政府内でも大きく意見が割れているのが現状です。今の日本が成長戦略によって景気を回復させ、それによって税収を増やすべきなのは大前提ですが、今政府が増税に踏み切ろうとするのには理由があります。

 2013年度の基礎的財政収支の赤字は、国内総生産(GDP)比で6.9%に達します。政府の目標通り、2020年度までにこの赤字をゼロにするならば、単純計算でも今後7年間毎年1%ずつ改善する必要があるわけです。歳出削減であれ増税であれ、毎年それだけの負担をかけるのは大変なことです。

 中長期での財政シナリオがまだ見えていないことに不安を感じる方も多いでしょう。私は、20年度までに赤字をゼロにするというこの財政再建計画の達成時期を、ずらすことも必要だと思います。

 先にも述べたように、景気は空気の景色です。皆が悪いと言いだしたら悪い方のスパイラルに陥るだけですから、皆の気で景気を上げていくことが大事です。

 日本の財政再建には針の穴に糸を通すような難しさが伴いますが、名目GDPが1%でも増えれば税収は3〜4%増えますから、うまく続けば財政再建につながる可能性も出てきます。その辺りを踏まえながら、安倍政権の経済政策に注目すべきではないでしょうか。

 


 
紛争地帯で教訓学び、慎重になる中国企業
2013年04月12日(Fri) Financial Times
(2013年4月11日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 中国のエンジニアリング企業でダム建設では世界最大手の中国水利水電建設集団(シノハイドロ)が2008年にリビアでマンションの建設を始めた時、20億ドル規模のプロジェクトはこれ以上ないほど安全に見えた。国をしっかり掌握していた今は亡きムアマル・カダフィ大佐の政府に委託された事業だったからだ。

 だが、それから3年後、リビアが内戦に陥ると、シノハイドロは慌てて従業員を避難させる羽目になった。

 中国企業は何年にもわたって新興国に次々進出し、その過程で厳しい環境に置かれたプロジェクトを手がけるという評判を築いたが、リビアのような経験から、リスク評価のあり方が変わりつつある。中国政府の後押しも受けたこの変化は、中国企業がベクテルや現代建設、レイトンなどの国際的な建設会社と競争するようになったタイミングと重なる。

リスクの高いプロジェクトにはもう手を出さない

 「涙を流すよりは我慢した方がいい」。シノハイドロの取締役会秘書、ワン・ジーピン氏は、外国メディアとの初のインタビューで本紙(英フィナンシャル・タイムズ)にこう語った。

 経営トップの1人であるワン氏は、シノハイドロ本社のがらんとした部屋で、リスクのあるプロジェクトの受注に成功して後で悔やむよりは、最初から見送ると説明する。幹部5人を従えたワン氏は、シノハイドロは5年ほど前に慎重な方針を採用することを決めたと言い、「当時はリスクを防ぐ意識が低かった」と語る。

 中国の三峡ダムを建設したシノハイドロは過去10年間、海外で事業を急拡大しており、2011年には国外での契約案件が売上高183億ドルの47%を占めた。世界60カ国でプロジェクトを手がける同社は世界第14位の大手建設会社で、鹿島建設や大林組といった日本企業の上を行く。

 中国政府によると、中国のエンジニアリング企業は昨年、中国国外の案件から1170億ドルの売上高を上げた。過去10年間で10倍に増えた格好だ。また、業界誌のエンジニアリング・ニューズ・レコードによると、世界の上位10社の建設会社のうち、今や5社が中国企業だという。

 中国の建設会社は技術力で競えるが、政治的なリスクへの対処という大きな課題に直面する。リビアやマリ、アフガニスタンなど戦火で荒廃した地域での誘拐事件を通じ、身をもって教訓を学んだ後は特にそうだ。

 鉱山や道路から発電所、サッカー競技場に至るまで、シノハイドロが海外で手がけるプロジェクトの多くは、ホスト国に対する中国の融資で資金が賄われ、融資は原油などの資源で返済される。

 このモデルは、融資がなければ必要なインフラの建設を見送ったかもしれない財政難の政府の助けになったものの、その結果、中国企業は世界の紛争地帯の多くで危険にさらされることになった。

 「リスクが高すぎたら、(今は)とにかく行かない」とワン氏は言う。「我々の最大の懸念は、武力紛争を含め、海外市場の政治的リスクが招く不安定さだ」

 シノハイドロの「警戒」リストには、イラク、アフガニスタン、ミャンマーが入っている。ミャンマーでは2011年に、軍事政権が36億ドル規模の水力発電プロジェクトを一方的に打ち切った。

 同社の姿勢は、例えばイラクのプロジェクトで主導的な役割を担い始めた石油企業などの中国国営企業より若干保守的だ。

 シノハイドロによれば、政治的な不確実性は現地で利益を上げるのを難しくしかねないため、株主は会社側のリスク回避姿勢から恩恵を受けるという。シノハイドロは上海市場に上場しているが、今も国の一部門で、株式の65%を国有企業の親会社が握っている。

大きな犠牲を払って得た教訓

 こうした態度の変化は、大きな犠牲を払って得た教訓を反映したものだ。ワン氏によれば、リビアでの紛争により、シノハイドロは契約中断で12億ドル、評価損で2億ドルの損失を被ったという。

 「それも推定の数字にすぎない」とワン氏は言う。「その他の損失、例えば車が何台爆破されたとか、物理的な資産で正確にいくら損害が生じたとか・・・正確な数字をつかむのは非常に難しい」

 シノハイドロはほかの紛争にも巻き込まれ、南スーダンとアフガニスタンでは従業員が殺害されたり、誘拐されたりした。また、現在のマリの紛争では、同社の水力発電プロジェクトの1つが台無しになる恐れがある。

 警戒を強めるシノハイドロの姿勢は、ほかの中国企業にも広がっている。中国政府が注意を促していることも、その一因だ。商務省は最近、海外での契約について新たな規制を発表した。より厳格な環境基準や新しい汚職防止規則などを盛り込んだもので、中国が海外で商業的な存在感を急激に高めたことに伴う問題を暗に認めた形だ。

 中国の建設会社は当初、「外へ出ろ」という中国政府の走出去政策を支えるために用意された潤沢な政府保証付き低利融資によって海外進出を促された。政府との密接な関係は、各社が市場シェアを獲得する助けになった。

 例えば、米国の環境団体インターナショナル・リバーズが集計したプロジェクトのリストによると、シノハイドロが海外で手がけている204件の水力発電プロジェクトのうち、80件が中国の銀行の融資を得ている。

先進国に目を向ける中国企業

 シノハイドロは今、新興国の枠を超えて事業を展開したいと考えている。そうすれば、政府保証の融資に対する依存度を下げることにもなる。「欧州市場と米国市場が国際事業の次の焦点だ。我々は世界に通用する建設会社になりたいと思っている」とワン氏は言う。

 だが、先進国への進出は常に容易だとは限らない。中国企業数社は欧州のプロジェクトで苦しんだ。中国中鉄の子会社である中国海外工程集団(COVEC)は、ポーランドの幹線道路建設の入札を勝ち取ったが、プロジェクトの途中で切られた。

 こうした問題にもかかわらず、多くの専門家は、中国企業が最も競争が熾烈なエンジニアリング市場で成功すると考えている。アジア開発銀行の投資専門家、木村寿香氏は、中国勢が技術的に洗練されてきたことがその理由の1つだと言う。楽観的な向きは、今では世界最大級に数えられる韓国と日本のエンジニアリング企業も「安くて快活」であるところからスタートしたと指摘する。

 中国のインフラ案件に助言するピンセント・メイソンズの弁護士、ソーラブ・ラヒリ氏は「30年、40年前に英国と米国の企業が世界のインフラを建設し、その後、日本と韓国の建設会社が台頭したように、中国企業も同じトレンドをたどっている」と言う。

By Leslie Hook


04. 2013年4月12日 19:01:25 : xEBOc6ttRg

日米、TPP交渉入りで正式合意 日本は7月にも参加へ
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 安倍晋三首相は12日、日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加に向けた事前協議で米政府と合意したと発表した。オバマ政権は近く、日本のTPP交渉への参加を米議会に通告する。日本は7月にもTPP交渉に参加できる見通しになった。

 安倍首相はTPP関係閣僚会議の後、記者団に「日米の合意については、日本の国益はしっかりと守られている。しかし、本番はこれからであって、早く正式に交渉に参加をして、日本主導でTPPを進めていきたい。そのことで日本の国益の増進を図っていきたい」と述べた。

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時論公論 「基地返還合意と沖縄の失意」
2013年04月10日 (水)

西川 龍一 解説委員
日米両政府が今月5日にまとめた、沖縄県の嘉手納基地より南のアメリカ軍施設の返還計画。地元沖縄では、早くも実現可能性を疑問視する声も上がっています。
きょうの時論公論は、今回の返還計画について沖縄の人たちの受け止め方を中心に考えます。


「合意ができたと言っても、進まないのが、基地返還の歴史だ。」
返還計画を公表した翌日の今月6日、小野寺防衛大臣と那覇市で会談した際の仲井真知事の発言です。
仲井真知事は、返還計画について一定の評価をしながらも、普天間基地の県外移設を求める姿勢に変わりはないことを強調しました。この発言は、沖縄に集中するアメリカ軍基地の返還合意の時期や条件がたびたび変更されてきたことへの不満やいらだちを象徴しているように聞こえます。

今回合意した返還計画は、どういうものなのか。
今回、対象になるのは、沖縄本島の嘉手納基地より南にある施設のうち、普天間基地など6つの施設の13の区域です。もっとも面積が大きいのは、普天間基地で、およそ481ヘクタール。基地の全域が返還の対象です。また、地元で返還を求める声が強かった牧港補給地区は、およそ129ヘクタール。6つの施設をあわせると、1000ヘクタールを超える土地が返還の対象となっています。しかし、条件なしでの返還はおよそ65ヘクタールに過ぎません。


ここで、沖縄の基地の現状を見てみます。
アメリカ軍施設は、沖縄全体では、総面積、2万3800ヘクタール。日本に駐留するアメリカ軍専用施設の73.8%に当たります。日本の国土面積に対する沖縄の面積の割合は、わずか0.6%です。アメリカ軍の施設がいかに沖縄に集中しているかがわかります。
実は、今回の返還計画が実現したとしても、沖縄の占める基地負担の割合は、73.1%と、0.7ポイントしか下がりません。返還と言いながら沖縄からほとんど基地は減らないという実状。「1000ヘクタールの返還と聞いて本土の人は、基地返還が相当進むと思ってしまうのではないかむしろ心配」というのが、沖縄の人たちの心情なのです。


今回の返還計画は、予定通り進むのでしょうか。計画には地元にとって納得できない点が2つあります。
一つは、返還時期の問題。そもそも計画には2022年度以降などと時期が盛り込まれていますが、いずれも年度の後に「またはその後」という文言が付けられています。これでは、時期を明記したとは言えないのではないかという声があります。条件次第でずれ込むことが前提となっているのですから、何も言っていないのと同じと言われても仕方がありません。仲井真知事が、小野寺防衛大臣に「いつになるかわからないとしか読めない」と疑問をぶつけたのももっともなことです。
もう一つは、多くの施設の返還が、沖縄県内のほかの地域への移設が前提条件となっていることです。施設の負担を玉突きで、県内で順繰りにまわすようなものです。返還される方はよくても、移設先から反発が出ても仕方がありません。牧港補給地区が返還される一方で、那覇港湾施設の移設先にもなっている浦添市のような地域もあります。移設先が決まらなければ、返還も先送りになります。


県内移設を前提とした返還計画に不安や不満の声が上がる背景には、これまで沖縄が日米両政府の計画に振り回されてきた経緯があります。
沖縄のアメリカ軍基地返還への取り組みは、1995年に起きたアメリカ軍兵士による少女暴行事件をきっかけに広がり、日米両政府は、翌年、「沖縄に関する特別行動委員会」で、普天間基地返還に合意するなど、11の基地の返還を目指すことになりました。いわゆるSACO合意です。しかし、大半が施設の県内移設が条件となったため、返還されたのは、5か所にとどまっています。


また、肝心の普天間基地は、SACO合意で、7年以内とされていた返還時期が、2007年に、2014年までに先送りになり、おととしの日米安全保障協議委員会では、2014年の返還時期を断念しました。


ここまで何度も返還時期が変わったのに、地元の意向はほとんど反映されない状態。地元は自治体、住民ともに、いつも蚊帳の外に置かれているのが実状です。
今回の返還計画についても、県民の間からは、「まだやっているのか」「実現可能性はほとんどないのではないか」という冷めた見方が聞かれます。
政府が、先月、普天間基地の移設先として名護市辺野古沿岸部の埋め立て申請を行った直後にこの計画をまとめたことに、ほかの施設の返還と引き替えに辺野古への移設を実現しようという政府の思惑は、沖縄の人たちに見透かされているという声もあります。


では、今回の返還計画、実現可能性を少しでも高めるために必要なことは何なのでしょうか。
一つは、多少なりとも沖縄の負担が減るということであれば、国は、できるところから返還を進めること。返還計画の発表を受けて、那覇市の翁長市長は、今回の計画と普天間基地の移設問題は切り離して考えるべきという見解を示しました。現実問題として、仲井真知事は、普天間基地の県外移設を目指すことに変わりはないという考えを示したまま。県内41市町村が反対している状況に変化はありません。国の埋め立て申請を受けた知事の判断すらめどが立たない状態が続いています。去年4月、当時の民主党政権は、アメリカ政府との間で、普天間の移設とほかの嘉手納より南の施設の返還を切り離して取り組むことで合意しています。政権が変わったとは言え、これを反故にして、普天間の移設が進まないことを理由に、ほかの施設の返還が進まないという、言わば条件闘争のような事態は避けなければならないと思います。
そうした上で、返還計画は、沖縄の基地負担軽減を目指すためのものだという、この問題の原点に立ち返って対応を考えることが必要です。今回の返還計画にも盛り込まれた、那覇港湾施設は、1970年代に日米両政府が返還に合意しています。40年近くも今の状態が放置されていることを棚に上げて、県内への負担のつけ回しで県民感情の分断を図るようなことになれば、沖縄の人たちは納得できるのでしょうか。基地の県外や国外への移転を含め、抜本的な軽減策を模索する必要があります。


今回の返還計画について、沖縄県内の市町村長の中には、「半歩か一歩は前進したのでは」と、国の対応を評価する発言も聞かれました。一方で、普天間基地の問題に関わってきた人たちの中には、元々基地の撤去を要求してきたのに、いつの間にか移設が前提となってしまっていると憤りを隠せない様子で話す方もいます。普天間返還に日米が合意してから17年。返還計画を再び期待はずれに終わらせない術は、目の前にアメをぶら下げ、沖縄だけに我慢を強いるような政策ではないことを、日米両政府は本気で認識する必要があります。

(西川 龍一 解説委員)


05. 2013年4月13日 02:36:50 : xEBOc6ttRg
JBpress>日本再生>国防 [国防]
普天間基地問題「日米合意」の薄っぺらさ
日本の戦略的思考の欠如に米国はあきれている
2013年04月12日(Fri) 北村 淳
 4月5日に、普天間基地移設をはじめとする沖縄アメリカ軍施設に関する日米合意がなされた。それによると、在沖縄アメリカ海兵隊の普天間航空基地は辺野古へ移設され、その移設を前提として2022年度以降に普天間基地跡地が返還されることとなった。

 アメリカ軍関係の報道では「海兵隊普天間飛行場は早ければ2023年までに閉鎖され、沖縄島内の低開発地域の海岸沖飛行場に移設される」(“Stars and Stripes”、4月5日)という日程が紹介された。

 ただし、少なくとも筆者周辺の米軍関係者や研究者などでこの日米合意の日程を真に受けているものはほとんど見当たらない、というよりは、もはや日本側の“約束”にはあまり関心を示さなくなってしまっている。

普天間基地移設問題の解決は日米同盟の強化につながるのか?

 2月にアメリカで実施された安倍晋三首相とオバマ大統領との首脳会談を、安倍政権とそれに追随する多くの日本のマスコミは大成功のように宣伝し、日米同盟が復活したと自画自賛している。そして、日本の民主党政権によって暗礁に乗り上げさせられてしまった普天間基地の辺野古への移設問題こそが日米同盟にとっての最大の懸案事項であるかのように錯覚し、あたかも普天間基地移設問題をうまく処理さえすれば、尖閣諸島をはじめとする領土問題でも日米同盟が有効に機能するとでも思い込んでいるようである。

 普天間基地移設問題は確かに在沖縄アメリカ海兵隊の主要施設に関する問題であり、それをどこにどのような形で移設するかは重要な問題であることは否定できない。

 しかしながらグローバルな国防戦略の一環として日米同盟を捉えているアメリカにとって、普天間基地移設問題は戦略的根幹に関わる中心的課題というわけではない。普天間基地移設問題より深刻な戦略的課題が山積しているからである。また、アメリカ国防当局が日米同盟を維持しているのと並行して日米同盟が不調になった場合のオプションを何通りか用意しているのは、いかなる軍事戦略担当部局にとっても常識と言える。

 それに対して、日本側が普天間基地問題をまとめ上げることが日米同盟の強化と考えているようでは、日米同盟を実質的に強化させることなどできない相談である。そもそも、日米同盟を国際政治のレベル、そして軍事戦略の問題として考えているアメリカ側が、日本政府が普天間基地移設問題を国内政局あるいは地方政治の問題レベルでしか捉えられないのではないのか? という不信感を抱いても不思議ではない。

 日本側が、普天間基地移設問題を解決することによって日米同盟を強化しようというのならば、在沖縄アメリカ海兵隊をはじめとする在日米軍や自衛隊の作戦行動を飛躍的にプラスにするような新機軸の提案を日本側からアメリカ側にぶつけるくらいでなければ、「日本側は、いつまでたっても“国防戦略や東アジア戦略”といった視点で日米同盟を考えることができず、“不動産利権の問題”程度しか考えることができない」といった印象を捨てさせることができない。

米海兵隊に沖縄に駐屯してほしいのが歴代日本政府の願望

 日米合意がなされたとは言っても、普天間基地が辺野古にいつ移設するのか? そしてそもそも予定通り移設できるのか? いまだに確定的な答えは見えない状況である。

 いずれにせよ、安倍政権は在沖縄アメリカ海兵隊に、普天間基地なり辺野古基地なり、とにかく沖縄に陣取っていてもらうことこそ抑止力の維持であるという大前提に立っている。もちろん、アメリカ海兵隊第3海兵遠征軍司令部が沖縄に設置されていて、第31海兵遠征隊を含む実働戦力が沖縄を本拠地にしていることは、日本の抑止力となっていることは間違いがない。その抑止力を手放したくないから、何が何でも沖縄に駐屯していてほしい、というのが歴代日本政府の願望と言えよう。

 このような発想には、日本自身の自主防衛能力を強化して自前の抑止力を構築するという決意が欠落している。

 在沖縄アメリカ海兵隊が日本にとって大切な抑止力ならば、「外国の軍隊にそのような抑止力をいつまでも任せていないで、それに取って代わる日本自身の抑止力を構築しよう」と考えるのが“真の独立国”の政府と国民の姿であろう。

「強い日本」はただのかけ声か

 在沖縄アメリカ海兵隊はアメリカの軍隊である。いくら日本側が様々な経費を負担しているからといっても、在沖縄アメリカ海兵隊自身の経費(兵器や装備、将兵の人件費、燃料費や補給費用など)はアメリカの国家予算である以上、何らかの事情により沖縄駐留が中止になってしまうかもしれない。

 もし沖縄からアメリカ海兵隊が引き揚げてしまっても、日本自身が在沖縄アメリカ海兵隊に取って代わる軍事組織を保持していれば、そのまま抑止力は存続することになる。

 水陸両用戦能力と緊急展開能力それに特殊作戦能力を身につけ、陸上戦闘部隊と航空部隊が一体化しているアメリカ海兵隊の実動部隊に匹敵する陸戦部隊は自衛隊には存在しない。したがって、抑止力を自前で維持するには、このような軍事組織を構築しなければならない。

 ただしアメリカ海兵隊は陸上部隊と航空部隊が密接不可分なだけでなく海上部隊とも緊密に行動している海・陸・空統合軍事組織である。したがって、もし在沖縄アメリカ海兵隊と全く同じ組織構成と兵員規模と装備体系を持った日本独自の軍事組織を誕生させ、錬成の度合いも同等に仕上げたとしても、それだけでは抑止力としては十分ではない。海兵隊部隊と行動を共にする海軍部隊(在沖縄アメリカ海兵隊の場合、佐世保を本拠地にするアメリカ海軍第11水陸両用戦隊)も日本独自で編成しなければならない。

 日本自身がこのような自前の抑止力を構築する努力を惜しむのならば、未来永劫アメリカ海兵隊とアメリカ海軍に日本に留まってもらい、日本の抑止力として外国の駐留軍に頼るという国防姿勢を継続していかねばならないことになる。

 安倍政権は「強い日本」を標榜している。政治的側面における「強い日本」の基本は、日本の国防は第一義的には日本の自主防衛能力で実施することにある。今回の普天間問題交渉からは、日本自前の自主抑止力を構築するという強い決意は微塵も伺えず、アメリカの抑止力にすがっていこうというこれまでの歴代政権の基本姿勢が色濃く読み取れる。

辺野古移設で日本の抑止力は弱体化する


アメリカ海兵隊「F/A-18ホーネット」(写真:USMC、以下すべて)
 もう1つの問題点は、在沖縄アメリカ海兵隊が日本にとって重要な抑止力であると言っていながら、その抑止力が弱体化してしまう辺野古への移設を何が何でも推進しようという態度は、まさに戦略的思考の欠落と言える。

 上述したように、アメリカ海兵隊は陸上部隊と航空部隊が密接不可分な軍事組織である。アメリカ海兵隊は、このような組織構造を「MAGTF」(マグタフ)と呼んでおり、海兵隊の最も重要な組織的特徴としている(MAGTFにつては拙著『アメリカ海兵隊のドクトリン』を参照されたい)。

 そして、海兵隊にとり最も頻繁に利用する航空部隊は陸上戦闘部隊の移動手段としての「CH-46」あるいは「CH-53」といったヘリコプターや「MV-22オスプレイ」であり、平時におけるこれらの航空機の運用は、辺野古に建設が予定されている滑走路があれば全く問題は生じない。


アメリカ海兵隊「EA-6Bブロウラー」
 しかし、海兵隊はそれらの航空機以外にも、「F-35B」「AV-8B」「F/A-18」といった戦闘攻撃機、「KC-130J」(輸送機・空中給油機・地上支援ガンシップ)、「EA-6B」(電子戦機)など多様な航空機を使用している。そして、それらの航空機の運用は普天間から辺野古に移設することによって、とりわけ戦時には、大きな制約が生ずることになってしまう。

 もちろん、沖縄には広大な嘉手納基地があるため、戦時には空軍機と海兵隊機が嘉手納基地を共用すればよいのであるが、戦時ともなれば空軍自体の航空機運用ボリュームも増加し、海兵隊との共用はそう容易ではない。つまり、辺野古への移設は、軍事的には海兵隊が諸手を挙げてハッピーな状況というわけではないのである。


アメリカ海兵隊「KC-130Jスーパーヘラクレス」
 日本の抑止力が間違いなく弱体化する辺野古移設を何が何でも推進するからには、日本政府はその弱体化する抑止力を補強するような方策を併用する必要がある。

 せっかく在沖縄アメリカ海兵隊をつなぎ留めても、抑止力自体が弱体化するのでは、日米同盟の弱体化ということになる。これでは「やはり日本政府は地方政治レベルの思考回路しかなく、日本の国防や東アジア戦略状況といった視野は持ち合わせていない」とアメリカだけでなく国際社会から見なされても致し方ないことになる。

信頼されていないのが幸い

 今回の普天間基地移設問題に関する日本政府との合意についてアメリカ側が信用しているなどと考えることは、大いなる誤りである。

 1996年の日米合意では「2003年頃までには」普天間基地は沖縄東海岸に移設することになったが、日本側の都合により約束は反故となった。2006年の日米合意では「2014年頃までに」普天間基地は辺野古に移設されることになった。だが、やはり日本側の都合により約束は反故となった。2009年には日本の首相が「普天間基地は最低でも沖縄県外へ移設」といきなり言明した。

 このような経緯をたどれば、今回の日米合意(ただしアメリカ側は国務長官も国防長官も出席しなかったのだが)で「早くても9年後以降に」普天間基地は辺野古に移設されることになったといっても、これを真に受ける国防当局者がいたら、それはお人よしを通り越している。

 しかし、幸か不幸か、このように日本政府の普天間基地移設問題に関する“約束”は信頼性が極めて低い。つまり、何らかの戦略的に再考するに足る「普天間基地移設に関する代替案」を日本側が提案する余地が残されている。

 実際に筆者も含めてだが筆者の周りの学者・研究者や米軍関係者たちの中には、海兵隊の抑止力を弱体化させない移設案や、日本側の自主防衛能力も高め、かつ海兵隊にとってもメリットが生ずる移設案などを(もちろん私的研究なのだが)構想している人々が少なくない。

 「強い日本」を希求する安倍政権、そして日本国防当局は、日本政府が信頼されていない状況を逆手にとり、日本の国防戦略そして日米同盟を真に強化するような普天間基地移設案を再考できるチャンスを無駄にしてはならない。


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