02. 2013年3月27日 11:53:15
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JBpress>日本再生>国際激流と日本 [国際激流と日本] 米国で囁かれ始めた在日米軍撤退論 「日本は米国の防衛負担を引き継ぐべきだ」 2013年03月27日(Wed) 古森 義久 日米両国間の安全保障関係の現況はどうかと問われれば、日本側では「良好」と答える識者がきっと多いだろう。 日本の民主党政権が日米同盟をガタガタにした後に登場した自民党の安倍晋三首相は、防衛費を増やし、米国との安保協力の強化を求め、日米同盟を増強する言動を次々に取った。米国側でもオバマ政権は「アジア最重視」策を唱え、尖閣諸島についても日米安保条約の適用対象であることを確認し、安倍政権の防衛重視の姿勢を歓迎するという動きが見られるからだ。 だからワシントンでも日米安保関係を前向きに語ろうという感じの出来事が多い。2月の安倍首相の来訪自体がその前向きな姿勢の表明だった。 共和党議員が「在日米軍を撤退させた方がよい」と主張 ワシントンの大手研究機関アメリカン・エンタープライズ・インスティテュート(AEI)が日本国際問題研究所との共催で3月中旬に開いたセミナーも、日米同盟の重要性を論じることが主眼に見えた。「行動における米日同盟=妨げるべき脅威、捕捉すべき機会」という会合のタイトルが示すように、日本と米国が既存の同盟をますます強化していこうという共通意志が基盤のようにも思えた。 日本側からは元外務次官で同研究所の理事長の野上義二氏や、これまた元外務省の論客の岡本行夫氏らが参加していたことも、日米同盟への前向きアプローチの象徴として映った。 だからこそ米国側から次のような発言が出たことにはショックを受けた。 「昨夜、米国下院のある共和党議員と懇談したところ、その議員が、米国はもう日本や欧州から米軍を撤退させた方がよい、という意見を述べました。米国はこの財政緊縮の時代に他国の防衛を60年以上も引き受けるというのはもう無理だから、日本は自国の防衛には自国で責任を持つべきだ、というのです」 そんなことを語ったのは、このセミナー全体の司会役を務めているAEI日本研究部長のマイケル・オースリン氏だった。エール大学の准教授からAEIに入った同氏はかなり名の知られた日本政治研究の中堅学者である。日米同盟の強化論者としても知られてきた。 そんな人物が日米同盟破棄論に近い主張を、いかに他者の意見だとしてもあえてその場で紹介することは奇異であり、驚きだった。 日本の防衛をいつまでも負担するのは無理 オースリン氏が、日米同盟を今後も堅持し、増強していくべきだからこそ、その種の否定的な意見にも対処しておくべきだという趣旨で在日米軍撤退論を紹介したのだということは、すぐに分かった。 しかしその時点で私が想起させられたのは、「ニューヨーク・タイムズ」の3月5日付に大きく掲載された「カムホーム、アメリカ」という寄稿論文だった。同じように在日米軍撤退の勧めだったからだ。この論文の筆者は、若手の歴史学者としていま知名度を高めているエリザベス・コブス・ホフマン・サンディエゴ州立大学教授だった。 ホフマン教授の論文は明確な在日米軍撤退論だった。ただし日本とドイツを同列に置いて、米国がその両国から駐留米軍を引き揚げるべきだと主張するのだった。 その骨子は次のようだった。 「イラクとアフガニスタンからの米軍撤退というならば、ドイツと日本からの撤退はどうだろうか。ドイツと日本に駐留する米軍はそもそもソ連の脅威に備えるとともに、ドイツと日本の軍事台頭を抑えることがその駐留の目的だった。だがその政策も思考もすっかり時代遅れとなった」 「日本はもう自国を防衛する能力だけでなく、周辺の諸国の防衛までを支援する能力を持つに至った。米国から見て信頼に足る同盟国でもある。いまの米国の財政赤字を見れば、米国が経済的に豊かな日本の防衛をいつまでも負担するのは無理なことは明白となる。日本は米国の防衛負担を引き継ぐべきだ」 「米国は予算の強制削減で今年だけでも850億ドルを減らし、しかもその半分が国防費の削減となるだろう。こんな時代に、なお外国の防衛に米国自体の巨額な経費は使い続けることはできない」 共和党の下院議員とニューヨーク・タイムズは、大ざっぱに言えば、いまのアメリカでは典型的な保守とリベラルである。その両翼から、米国による日本防衛の縮小あるいは終結が唱えられたのだ。 オバマ政権の「アジアへの旋回」は言葉だけ? ごく少数の極端な意見と言えるだろうが、共通するのはいまの米国の財政危機を主要な理由とする点と、日本の防衛はもう日本が自国で担えと求める点である。 膨れ上がる財政赤字を抑えるためにオバマ政権が進める政府予算の強制削減の最大の切り込み先が国防費となっている現実を見れば、理屈としてこんな主張が出てくることも不自然ではない。 中国の尖閣諸島への軍事威嚇を伴なう攻勢や北朝鮮の核とミサイルの脅威の切迫で、日本側でも国防の意識は高まっているように見える。しかし主体はあくまで日米同盟、つまり米国の軍事力への依存だろう。それが戦後の日本のあり方そのものなのだ。だが米国のごく一部にせよ、米国は日本の防衛をもう負担するなという声が出てきたことは知っておくべきである。自国の防衛は自国で、という提唱なのだ。 日本側ではオバマ政権の「アジアへの旋回」策で日米同盟も強化されるという認識がいま主流だろう。だがAEIでのこのセミナーでヘリテージ財団のアジア専門家ブルース・クリングナー研究員が「このアジア旋回策は言葉だけで、米軍の実際の強化措置はなにも取られていない」と指摘した。オバマ政権の「アジア最重視」戦略への疑問だった。 その延長で見ていくと、オバマ政権が日米同盟を実はそれほどは重視していなかったという真実もやがてさらけ出されるのではないかという心配にふっと襲われた。 日米同盟の大きな曲がり角は意外とすぐそばまで来ているのかもしれない。
2013年 3月 26日 11:30 JST 日韓、関係改善を模索―米国が後押し By YUKA HAYASHI IN TOKYO AND ALASTAIR GALE IN SEOUL Associated Press 李明博・前韓国大統領(2012年)
日本と韓国は米国当局者に背中を押される形で、傷ついた両国関係をためらいつつも修復しようとしている。米側は、中国が東アジアで影響力を高め、一方で北朝鮮が好戦的なレトリックをさらに強めるなかで、日米韓が一致して対応できる態勢を維持することを求めている。 日韓とも新政権が発足したほか、第2次大戦後に未解決で残った問題をめぐる両国の対立が繰り返し表面化することに米国がいら立ちを示すなかで、両国の関係に雪解けの兆しがみられるようになった。 領土問題の対立によって昨年夏からトップ外交がストップした状態だが、両国の政権交代につながった選挙から間もない今年1月から関係修復を模索する動きが出ていた。 米国の当局者らは、戦時中の日本の行為に対する根深い怨嗟(えんさ)がアジアの安全保障戦略を狂わせないために、韓国の朴槿恵政権と日本の安倍晋三政権との関係改善に向けて際だって大きな役割を果たしている。 朴大統領が2月末に就任した時には、日本の副総理と国会議員30人、それに元首相3人が式典に参加した。その1週間後、大統領と安倍首相は電話で会談し、2月12日に核実験を行った北朝鮮に対する新たな国連制裁の実施に向けて協力することを約束した。 関係正常化に向けた機運は今後数カ月で高まる可能性がある。両国と中国の高官は26日、ソウルで、3カ国の自由貿易協定(FTA)締結交渉を開始する。日本と韓国の間ばかりでなく、日本と中国との間でも緊張が高まるなかで、FTA交渉のイニシアチブは崩れなかった。 3カ国の首脳はまた、5月に韓国で、例年開いている会合に出席すると見られる。これに続いて夏にかけてアジア地域でさまざまなイベントが予定されている。 岸田文雄外相は先週、韓国の尹炳世・外交通商相と電話会談したあと記者団に対し、「日本と韓国は重要な隣人同士で、価値と利益を共有している。頻繁に連絡を取り合いたい」と述べた。同外交通商相は、日本は「北東アジアにおける平和と協力のために力を合わせる重要な隣人だ」とし、両国はお互いの新政権発足の機会を捉えて、信頼に基づく協力を拡大すべきだと付け加えた。 こうした言葉には、李明博・前韓国大統領が昨年夏の終わりに、同国が実効支配するが日本も領有権を主張する諸島を訪れて、これらの島には「われわれの命を捧げる価値がある」と強調した際に起きた激しい非難合戦からの変化の跡が見られる。当時の日本の首相は、韓国は同諸島を「違法に」占拠していると非難し、日本の国会は同諸島訪問を非難する決議を可決した。 両国の対立悪化は、その軍事力拡張と領土面での強力な主張が東アジアの一角に不穏な空気を生み出している中国に対抗するという米国の目的を難しくさせている。また、ますます挑発的になっている北朝鮮を阻止することも一段と難しくなっている。北朝鮮は最近では何十年も前の朝鮮戦争停戦協定の破棄を通告するなどしている。 朴槿恵大統領の就任は日本に韓国サイドへのアプローチのチャンスを与えた。一方で、北朝鮮が数週間前の核実験に成功したとみられることで、両国関係の修復が一段と緊急性を増した。 加えて、米政府の圧力がある。日本が中国と韓国ともつれ合っている悪影響を受け、昨年の総選挙戦における安倍氏とその自民党によるタカ派的政策の宣伝を懸念した米当局者は、韓国との関係を正常化させるよう日本に繰り返し求めた。 安倍首相が韓国慰安婦問題をめぐる過去の謝罪を撤回する可能性のあることを示唆した直後の今年1月半ば、当時のキャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は2人のオバマ政権高官を伴って日本を訪れた。関係筋によれば、米側は韓国との過去の歴史に関連した微妙な問題を持ち出さないよう、日本の当局者に警告し、こうしたことは対韓関係をさらに複雑なものにすると述べたという。 安倍氏は全般的に、首相の座に就いてから歴史問題には口を閉ざし、日本経済をどうデフレから脱却させるかという問題に焦点を当てている。さらに、1月初めには自民党の有力議員がソウルを訪問。その後、大人数の議員団も韓国に向かった。 しかし、雪解けの兆候の裏側には依然として深刻な相互の敵意が残っている。高官同士の会話には、戦時中の日本の行為をめぐって大きな見解の相違を示す言葉が含まれている。ソウルにある北朝鮮大学院大学の梁茂進教授は「両国政府は協力したり相手に譲歩したりすることはとてもできない。譲歩すれば国内で政治的なリスクを背負うことになるためだ」と述べた。 |