01. 2013年3月18日 15:37:27
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焦点:中国新体制が尖閣問題で沈静化模索か、タカ派と一線 2013年 03月 18日 12:59 JST [香港 17日 ロイター] 尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題をめぐり、過去数カ月にわたって強硬姿勢を示してきた中国。だが、習近平・国家主席による新体制の下、態度を軟化させる兆しも見え始めた。14日の習氏の国家主席就任を前に、同氏と近い関係にある中国人民解放軍(PLA)総後勤部の劉源・政治委員(上将)は、対日戦争の危険性を訴えるコメントを繰り返し発した。こうしたコメントは、好戦的な発言を行っている軍のタカ派とは一線を画するものだ。 加えて、複数の海事専門家は、海洋監視の権限を国家海洋局に集中させるという発表は、東シナ海の領土問題をめぐる争いにおいて、前線への支配力強化を狙ったものだと指摘する。 安全保障の専門家によると、これまで海洋監視の権限が分散されていたために、同海域で中国の監視船が日本の沿岸警備隊や海軍と偶発的に衝突するリスクが高まっていた。 確かに、劉氏の冷静さを求めるコメントは概して同氏の個人的見解とも取れるが、コメントの頻度やそのタイミング、習氏との親しい間柄を考えると、中国が政策を転換した可能性があると専門家は指摘する。 中国外交政策が専門の米ブルッキングス研究所のSun Yun研究員は「新指導部が対米関係や外交政策について検討している段階にあり、中国が海洋領有問題に対して以前より強硬ではなくなりつつあるようだ」と指摘する。 中国の国家主席を務めた故劉少奇の息子であり、習氏と同じく中国共産党の「小君主」である劉氏は14日、軍の公式ウェブサイトで、兵士には国を守る義務があり、戦いに勝利しなくてはならないが、それは最後の手段だとコメント。「長い間、平和を享受してきたため、多くの若者は戦争がどういったものか分かっていない」とし、「他に問題を解決する方法があるなら、極端な暴力という手段に訴える必要はない」と述べている。 またこれより先、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)に合わせて行われた記者会見で、劉氏は尖閣問題を解決する上で平和的手段を取ることが双方の国にとって最大の利益となると発言。報道によると、「中日両国民の友好関係は永遠に続く」と述べたという。 PLA有力幹部の劉氏によるこうした発言は、政府のお墨付きを得て外交や軍事問題で強硬路線を訴えているとみられる約20人のタカ派グループとの決別をはっきり示すものと言える。 <軍の汚職を取り締まり> 軍事専門家によると、劉氏は習氏と長年の友人であり、多くの考えを共有しているという。劉氏は15日、国営メディアとのインタビューで習氏を称賛。党中央軍事委員会主席として軍部も率いる習氏のリーダーシップの下、中国は軍事力を今後も強化し続けるだろうと述べた。 劉氏はまた、軍部の汚職を取り締まってきた人物でもある。2300万人強の兵士を抱えるPLAでは、過去20年以上にわたり増加の一途をたどってきた軍事費が、収賄や浪費のまん延といった問題を生み出していた。 劉氏は先月、人民日報系の環球時報に対し、中国にとって重大な時期に起きた先の日本との戦争は、自国の発展を大いに中断させることになったと指摘。中国の経済回復は今、重大局面を迎えているとし、「不慮」の戦争は回避しなければならないと強調した上で、「米国と日本はわれわれが追い付くのを恐れており、中国の発展を阻止するために何でもするだろう。われわれはだまされてはいけない」と述べた。 劉氏の警告は、中国の軍部や政治指導者の幹部らの中に、日本との軍事衝突が共産党にとって政治的緊張を高めることになりかねないと懸念している者たちがいることを示唆している。とりわけ、米国が同盟国である日本を支援して介入した場合にだ。 しかし、中国は数十年にわたり反日教育を徹底しており、政治的反発なくして中国が日本と領土問題で妥協することは困難だろう。 劉氏のこうした国内向けの発言は、政府が日本と柔軟に交渉できるよう意図したものである一方で、自己宣伝に長けた軍幹部のタカ派的発言は、中国が領土問題に対して本気であるとの印象を対外的に与えていると、一部の中国軍事専門家は指摘する。 実際、国営メディアは最近まで、東シナ海への監視船配備や海上軍事演習、自国領土への断固たる防衛を訴える評論などを連日のように伝えてきた。 一方、上海にある復旦大学の安保政策専門家、沈丁立氏は「予期しないような正反対の結果にもなり得る」とし、「野心的な軍幹部らの発言は国内受けがいい。劉源氏のような穏健的な考え方を圧倒している」と指摘する。 <第一線から退くタカ派> しかし、中国政府がタカ派を抑え込もうとしている別の兆しとして、軍部の中でも強硬派として知られる羅援元少将が、政府の最高諮問機関である中国人民政治協商会議資料庫のメンバーから外れたことが挙げられる。 ブロガーでメディアのコメンテーターも務める羅氏は昨年、中国と台湾が協力し、尖閣諸島を爆撃訓練場として使用すべきだと発言して注目を浴びた。とはいえ、こうした好戦的な発言で知られる羅氏も海洋管理の権限統一を求めていた。 中国の軍事や安全保障の専門家は、同国政府が5つあった海洋関連部門の4つを統合し、国家海洋局の支配下に置くという決定を歓迎している。 劉氏も、海洋管理の権限統一は日本との軍事衝突を避ける上で役立つだろうと述べている。 ブリュッセルに拠点を置くシンクタンク、国際危機グループは昨年発表した報告書の中で、互いに非協調的な中国の海洋関連部門が領土問題を悪化させていると警告していた。 前出のブルッキングス研究所のSun氏は「これは良い方向だが、やり遂げるにはまだすべきことがある」と指摘。同氏や他の安保政策専門家は、中国政府が軍や外務省などを含む海上保安に関与する全ての省庁間の連携を向上させる必要があるとみている。 ただ、領土問題が依然として危険な火種となり得ることに変わりはない。中国国家測絵地理信息局の副局長、李朋コ氏は12日、国営テレビで、政府は尖閣諸島に調査チームを派遣する計画だと語った。これに日本政府が反発するのはほぼ間違いないだろう。 (原文執筆:David Lague、翻訳:伊藤典子、編集:橋本俊樹)
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