01. 2013年2月25日 00:41:57
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緊迫する朝鮮半島、韓国新政権はどうなる、日本はどうする『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』の著者、鈴置高史氏に聞く 2013年2月25日(月) 田中 太郎 北朝鮮の核実験によってにわかに緊迫の度を増した朝鮮半島。2月25日に船出する韓国の朴槿恵(パク・クネ)新政権は難しいかじ取りを求められる。今後、朝鮮半島は、東アジアはどうなっていくのか。日本はどのように対応したらよいのか。日経ビジネスオンラインで連載中の「早読み 深読み 朝鮮半島」を大幅に加筆・修正して『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』をまとめた鈴置高史・日本経済新聞編集委員に聞いた。 (聞き手は田中太郎) 『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』は、米国との同盟から離れ中国にすり寄る韓国の動きを通して、アジアの勢力図の激変を描いています。鈴置さんが韓国の「離米従中」を確信したのは、いつ、どんな出来事がきっかけだったのでしょうか。 「我が国は属国だったのだから……」 鈴置:2000年のことでした。当時、香港に勤務していましたが、韓国外務省のチャイナスクールの1人から異常ともいえる中国賛歌を聞かされたのです。「中国は広い。中国人は優秀だ。偉大な中国が世界をリードする時代が来る。韓国も日本も中国の下で生きるしかない」といった感じです。 鈴置 高史(すずおき・たかぶみ)氏 日本経済新聞社編集委員。1954年、愛知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。77年、日本経済新聞社に入社、産業部に配属。大阪経済部、東大阪分室を経てソウル特派員(87〜92年)、香港特派員(99〜03年と06〜08年)。04年から05年まで経済解説部長。95〜96年にハーバード大学日米関係プログラム研究員、06年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)ジェファーソン・プログラム・フェロー。「中国の工場現場を歩き中国経済のぼっ興を描いた」として2002年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。(撮影:佐藤久) 特定の国にのめり込んでいる姿を見せるのは外交官としてはもちろん好ましくない。でも、この人はそんなことはお構いなし。日本の外務省のチャイナスクールも中国べったりと批判されています。ただ、日本の「べったり」は中国屋としての利権がベースにある。これに対し、この韓国外交官のそれは「位負け」といいますか、精神的な劣後感が根にありました。中韓関係の特殊さという言葉では言い足りません。「先祖返り」という単語が頭に浮かびました。
決定的に確信したのは2006年のことです。台頭する中国の傲慢さに話題が及んだ際、韓国の友人が「我が国は属国だったのだから中国に従うのは仕方がない」と述べたことです。その頃から他の韓国の友人たちも「属国だったのだから……」と一斉に言い始めたのです。『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』のプロローグでもこの話は書きましたが、当時の私にとってかなりの驚きでした。 覇権国家が生まれそうになると周辺国が団結して抑えようとする――といった国際政治学の理屈で世の中を見ていたからです。でも、人の世というものはそんなに単純ではない。過去のいきさつ――つまりは歴史ということなのでしょうがこれがあり、また地理的な問題――地政学的要因もあります。 『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』(鈴置高史著、日経BP社) そうした背景を持つ韓国人が、台頭する中国を目のあたりにした時「昔のように従うしかない」と考えるのは当たり前のことなのでしょう。そして少し前までだったら、その思いを外国人に隠そうとしましたが、今や「米中の間では等距離外交」を前提に議論を進める韓国人がほとんどです。まだ、米韓同盟は存在しているのですがね。
聞かれもしないのに「国が滅ぶかどうかの瀬戸際で(米韓)同盟など裏切るのは当然だ」と日本人に演説する人も登場しました。彼らの意識は急速に変化している最中なのです。 北の核実験で加速する「従中」 鈴置さんの前作『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社、2010年)も読ませていただきました。この作品は未来予想小説という体裁をとっていますが、同じ「離米従中」をテーマにしています。小説に現実が追いついてきた感じですね。当初、どうやって「離米従中」の構図を予想したのですか。 鈴置:『朝鮮半島201Z年』を書いた2010年の段階では、すでに「離米従中」の兆しが出ていました。その小さなファクトを時系列に沿ってすこしずつ膨らませたのです。 この小説の粗筋は、日本から通貨スワップを打ち切られた韓国が外貨繰りに窮し中国頼みになる。それを手始めに韓国は中国にどんどん傾斜していき、最後は中立化する――です。幸か不幸か、前半分――「外貨は中国頼み」の部分――は2012年末までに現実となりました。 小説を書いた2010年の段階で韓国には「我が国は発展した。日本にもう頭を下げる必要はない。経済的にも一番世話になっているのは中国だ」という空気が生まれていました。さらには「日本から独立した韓国」を実感するためにも満座の中で日本を卑しめてやりたい、という思いもひそかに高まっていました。 そこで私は、いずれ韓国の「卑日」が始まるだろう。そうなったら日本人は「通貨スワップを打ち切れ」と言い出すだろう。韓国はそれを契機に中国陣営に走るだろう、と予測したのです。 実際、李明博前大統領は竹島上陸や日王(天皇)への謝罪要求――満座の中で日本を卑しめるイベント――を実行し、それらによって日韓スワップは打ち切られました。そして韓国は中国とのスワップの恒久化に動きました。 このように現時点までは予測通りに動いてきました。「当たりましたね」と言って下さる人もいるのですが、韓国の数年先の展開を読むのはそんなに難しいことではないのです。韓国人は思ったことをなんでもしゃべってしまうので、韓国の空気を嗅ぎ分けるのは、例えば日本と比べれば容易なのです。 さて『朝鮮半島201Z年』の後半部分で、韓国は軍事的にも中国ににじり寄ります。それは北朝鮮の核武装が契機です。国の安全を確保するには、米国よりも中国が頼りになると韓国人が考えるのです。 現実の世界でも、2月12日に北は3回目の核実験を実施しました。過去の実験が失敗だったとされるのに対し、3回目は相当な規模の爆発が起きたようです。「北の核武装」により、韓国がどう動くか目を離せません(「早読み 深読み 朝鮮半島」の「北の核保有で笑うのは中国」の項参照)。 ここからが日本の正念場です。なるべく多くの日本人に『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』を読んで急速に変わるアジアを認識してもらえれば、と思います。そして「早読み 深読み 朝鮮半島」で毎日の動きを追っていただければ幸いです。 情報の空洞化が日本の最大の問題 鈴置さんは、ソウル、香港、米国に合計4回の海外赴任を経験しています。日本から離れた場所から東アジアを見た経験が生かされているのでしょうか。逆に日本から見ているだけでは、中国を中心とするアジアの新しい勢力図が見えなかったかもしれない可能性があるでしょうか。 鈴置:ご指摘通り、日本という温室に住んでいると、中国という暴風雨の激しさや針路に気がつきにくい。例えば1997年の香港人の心境を考えて下さい。選挙権はないけれど英国の下で人権を保障された生活を楽しんでいた。それが香港返還で、政府がいとも簡単に自国民を殺す、中国の人民にされてしまう――。当時は天安門事件から10年たっていなかったのです。カナダなどへ大量の移民が出たのも当然です。でも、残った多くの人は「怖い北京」と折り合うことで住みなれた香港に生きていく覚悟を固めたのです。 2000年ごろの台湾人。製造業が中国に移り、職を得るには大陸で働くしかなくなった。経済的に中国なしではやっていけない台湾が、中国から政治的に独立し続けるとは思えなくなりました。そして北朝鮮人や韓国人。彼らも日に日に強大化する中国の言うことを聞くしかないと覚悟を固めました。 一方、多くの日本人はいまだに「20年前のアジア」を見ています。そのうえ、アジアの人々の心境変化にも気がついていない。中国周辺の国民は皆、中国を軸に動くようになっている。それなのに、ピンボケにも日本主導を念頭に「アジア共通の家を造ろう」と呼び掛ける日本の首相が登場したりする。 日本の劣化は色々な面で指摘されています。私はこの情報の空洞化こそが最大の問題ではないかと考えています。 日ごろ情報収集や、その情報を基にして“早読み 深読み”する際に心がけていることはありますか。 鈴置:普通の人々がどう考えているか、を観察することが非常に大事になっていると思います。李明博前大統領の竹島上陸がなぜ2012年になって起きたのか、中国の尖閣への恒常的な侵犯がなぜ2012年から始まったのか――。 韓国人や中国人の「日本は大した国ではない」という新たな認識と「弱った犬を水に落として叩いてみたい」という新たに沸き上がった心情が、韓国や中国という国家の2012年の行動の根にあります。 政治が国民の感情によって左右される時代です。普通の人々の心情の変化を読まないと、先が読めないのです。外交というものが国のトップによってコントロールされた時代なら、チェスの駒の動きを読むように、国と国の利害得失だけを計算に入れて論理的なゲームとして考えればよかったのでしょうけれど。 モイジ(Dominique Moisi )というフランス人の記者が『The Geopolitics of Emotion: How Cultures of Fear, Humiliation, and Hope are Reshaping the World』という本を書いています(注1)。世界を「感情圏」で分類するというコンセプトの本です。「感情というものを重視しないと国際政治は分析できない」と考える人がやはり増えているのだな、と思います。 (注1)邦訳は『「感情」の地政学』(訳・櫻井祐子、早川書房)。 こうした意味で、例えばネットで韓国の新聞を読む時も記事よりもむしろ読者の書き込みの方が参考になることがあります。そこに韓国人の本音がのぞけるからです。新聞記事はどうしても建前で書かれますからね。 日本と韓国、メンタリティーの大きな差 この本を読んでいると、「韓国という国やそこに住む人たちはなぜ、こんな行動に出るのだろうか」と理解に苦しむことが出てきます。例えば、日本との軍事協定を断りすぐさま中国に協定を申し込む。こんなに近い国なのに、日本人と韓国人の間には、メンタリティーに大きな差があるのでしょうか。 鈴置:確かに、中国への向き合い方において、日本人と韓国人のメンタリティーの差は極めて大きい。国土を陸で接するか否かの差と、それによる歴史的な体験の差によるものでしょうね。 『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』にも書きましたが、明治時代まで日本人は本だけで中国を理解していました。江戸時代の日本の漢学者は江戸から長崎に旅して「中国に近づいた」と喜んだ。生の中国を知らないため、その恐ろしさも傲慢さも知らず、観念的な中国像を造っていた。 半面、韓国。中国の歴代王朝の宗属国だったので生身の付き合いがある。李朝の高級官僚が清に出張した時の記録が残っています。『熱河日記』といいまして邦訳もあります(注2)。 (注2)邦訳は『熱河日記1』『熱河日記2』(著・朴趾源、訳・今村与志雄、東洋文庫) 当たり前の話ですが、お供を連れて馬で行くのです。毎日のように清国の知識人と議論を交わしながら北京まで旅する。江戸時代の漢学者が読んだら、中国との「近さ」をさぞ、うらやんだことでしょう。 でも、近いがゆえに「中国による厄災」も韓国人は経験している。韓国の歴史ドラマにも時々、中国の傲慢さが顔をのぞかせます。だから、中国が力を強めた時には韓国人はじっと我慢して頭を低くして耐えるのだと思います。 日本の2つの選択肢 北朝鮮の核実験によって「離米従中」がさらに進む中、日本はどのような対応が必要になるでしょうか。 鈴置:日本はどう対応すべきか――。難しい質問です。大きく分けて答えは2つあります。まず、日本と米国はできる限り韓国を海洋勢力側に引きつけておく、という対応です。現在、実行しているのがそれでしょう。 米国も日本も、韓国に対しては不満もある。でも、中国にすり寄り始めた以上は、あまり刺激すると中国側に押しやりかねない。そこで我慢している。 ただ、問題は中国の引力が増す一方なのに、海洋勢力側の引力は薄れるばかり、ということです。韓国と日米との経済的な緊密さは、中国とのそれと比べどんどん落ちている。 軍事的にも、先ほども申し上げましたように、核を持った北朝鮮から韓国が身を守るには、米国よりも中国を頼りにした方が確実ではないか、という考え方が生まれかねない状況です。 「自由と民主主義という価値を共有する」ことを引力にしようという人もいます。でも、すぐ隣の席の“怖い人”から「俺の組に入れ」と言われた際に「あなたとは価値観が違いますから」と断れるはずもない。『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』で使った表現をもう一度使えば、「体育館の裏に呼ばれた」感じなのです。 そこで、もう1つの答え――中国に向かう韓国は放置する――になるのです。韓国は中国が世界一の国になると考えているから中国サイドに傾いている。中国が米国を超えないと分かったら、また、戻って来るだろう、との考え方です。 ただ、中国は1度取り込んだ韓国を決して放そうとはしないだろう。つまり、海洋勢力が大陸にかけたツメをいったん離せば、2度と大陸の橋頭堡は造れないだろう、と考える人もいます。 いずれにせよ、これからが日本の勝負どころです。知力と胆力を振り絞って外政にあたるしかありません。なにせ元寇以来初めて、中国の艦船が日本に押し寄せてきているのですから。
中国、ヤバいのは空気だけじゃない
環境対策、経済成長に追いつかず 2013年2月25日(月) 張 勇祥 今月初めに北京に行く機会があったので、まずその時の感想から。 飛行機のタラップを降りると、オイルのような匂いがした。大気汚染のニュースが飛び交っていたので身構えたが、「まあ、飛行機のエンジンも近いし」とも思った。 空港の建物に入ると、誰かがタバコを吸っているのではないかと思った。匂いはかすかではあったが。周囲を見回しても、灰皿すら置いてなかった。 北京の空気が汚いのは、ずいぶん前から言われてきたことだ。それでもやはり、中国の大気汚染が深刻度を増していることは間違いないと感じた。結局、北京を離れるまで、このタバコのようなわずかな匂いをずっと感じていた。 少し時間があったので、天安門広場に移動してみた。春節(旧正月)前なので、地方から来た観光客が多くいた。「どう?やっぱり空気よくないよね」と尋ねてみると、「(地元の)西安だって同じようなものさ」という答えが返ってきた。確かに、中国の大気汚染に関するウェブサイト(例えば、こちらのサイト)などを見ても、程度の差はあれ、いずれも悪いデータが並んでいる。 天安門に近い繁華街、王府井でも状況は同じ。皆が皆、マスクを付けているわけではないが、人通りは控え目。「あまり気持ちよくショッピングする気分にならない」。北京に住む人からは、ごくまっとうな感想が帰ってきた。中国では高級レストランの売り上げが2割も前年を下回ったと伝えられている。新しくリーダーになった習近平・総書記が「倹約令」を出したためとの解釈が一般的だが、人々が汚染を避けて外出を控えた影響もあるだろう。 春節中は落ち着いていた大気汚染も、メーカーの生産再開などに伴って再び深刻さを増してきている。報道は減っているが、抜本的な解決に至っていないのは明らかだ。 実は、中国で「ヤバい」のは空気だけではない。水も、土地も、かなり汚染が進んでいる。中国のビジネス誌「新世紀」の1月26日号に詳細なリポートが掲載されているので、少し紹介したい。 「イタイイタイ病」の富山より汚染された大地 ・甘粛省、白銀市の民勤村。ここでは50歳以上の村民の多くが膝関節や骨の痛みに悩まされているという。彼らが食べているのは地元でとれたトウモロコシや小麦、ジャガイモなどだ。 専門家は、川の上流にある工場から流された排水が怪しいとにらむ。土壌のカドミウム、水銀、ヒ素はすべて国が定めた基準を超え、耕作に適さない。1998年の調査では、カドミウムの濃度は土壌1000グラム当たり10.36ミリグラムに上り、イタイイタイ病が発生した当時の富山県神通川流域(1000グラム当たり2.27ミリグラム)の約4倍に上るという。 当然、何とかしなければならないが、値段の高い黄河の灌漑用水は、地元の貧農には手が出ない。多くの農民は痛みに耐えながら日々を過ごす。 ・内モンゴル自治区、パオトウ。鉱山の廃石が山と積まれた地域がある。そこから染み出た有害物質で井戸水が汚染され、畑の収量が大きく低下した。「打拉亥上村」という村では土壌のアルカリ化が進み、ほぼ全域で耕作ができなくなった。 打拉亥上村の住民が提供したデータによると、1999年から2006年の8年間で61人がガンで死去した。村の人口は1000人足らずなのに、だ。「ガン村」という不名誉な名前を戴いている。 汚染を引き起こした鉄鋼大手、包頭鋼鉄は地元住民に賠償することで合意した。しかし、移住先として包頭鋼鉄が用意した住戸は質が低く、実際に転居したのはごく少数にとどまる。また、一時金も多くが未払いのままだ。 ・貴州省、赫章県では1980年代まで続けられたずさんな亜鉛精錬による土壌汚染が今も残る。甘粛省の事例と同様、土壌の重金属は基準を大きく上回る。農作物にも安全基準の3倍以上のカドミウムが含まれているという。この地の青菜で作られる漬け物は、地元の名産品の1つだ。 ある鎮(中国の行政単位)では、農民の平均年収は3300元(約5万円)に過ぎない。住民の多くはリウマチのような症状に悩むが、医者にもかかれない。鎮痛剤で何とかしのいでいる。別の村では、100人あまりの村人のうち、「リウマチ」に苦しむのは30人を超すという。 対策を打てど、追いつかず 中国政府が環境汚染に全く手を打たなかったとは思わない。上海や北京、広州などではクルマのナンバープレートの発給を制限し、新車販売を事実上、規制している。工場の排気、廃水の基準も年々、厳しくなっている。住民の監視も鋭くなり、王子製紙の江蘇省・南通工場は計画の見直しを迫られた。 それでも環境汚染は止まらない。止まらないどころか、状況は日々悪化している。 もちろん、経済成長こそが人事考課の対象となってきた共産党幹部が、環境対策を後回しにしてきた弊害は大きい。官僚の不正によって、環境対策の実効性が弱められたケースも見聞きしてきた。しかし、経済規模がここまで大きくなると、いかに対策を打っても追いつかなくなっているのではないか。 名目GDP(国内総生産)を例にとっても、2012年が52兆元弱(約780兆円)だったのに対し、2000年は9兆9000億元ほどと10兆元にも満たなかった。この間、インフレが激しかった時期も多かったが、名目ベースで経済規模が5倍にも広がれば、環境に与える負荷も相応に増していることは容易に想像がつく。 同様に、2000年には2000万台に満たなかった中国の自動車保有台数は、2011年に1億台を超え、2020年には2億台を大きく上回るのが確実視されている。これでは、いかに燃費を改善し、実質的に環境負荷を低くしても焼け石に水だ。 もしかすると、中国ではついに環境への負荷が、経済成長を持続不可能にする水準に到達したのではないか。中国経済はしばらく慣性で走り続けることができるだろうが、このまま拡大すれば、国民の健康被害が甚大になり、経済にブレーキをかける要因になる。 今後の中国経済を見通すうえで、高齢化とともに、環境問題への対策が重要なポイントになりそうだ。 張 勇祥(ちょう・ゆうしょう) 日経ビジネス記者 |