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日本の対中国防衛は“アメリカにおんぶに抱っこ”では済まされない (週プレNEWS) 
http://www.asyura2.com/12/warb10/msg/613.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 1 月 21 日 10:55:00: igsppGRN/E9PQ
 

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130121-00000705-playboyz-pol
週プレNEWS 1月21日(月)9時10分配信


多くの不確定要素を抱える極東アジア情勢。ここに国家を構えている限り、望むと望まざるとにかかわらず、日本も「不確定要素」に対応できる体制を整えていかなければならない。

なかでも尖閣諸島をめぐる日中間の緊張は、年が変わっても高まるばかり。中国人民解放軍総参謀部が1月14日に「戦争に備えよ」と全軍に通達したことも、尖閣問題を念頭に置いていることは明らかだ。

中国は1990年代に「2010年までに九州から沖縄、台湾、フィリピンそしてボルネオ島にいたる第1列島線を、2020年までに伊豆諸島から小笠原諸島、グアム・サイパンそしてパプアニューギニアにいたる第2列島線を支配する」という計画を立てた。現在、5年ほど遅れているが「2040年にはハワイ以西の覇権を確立する」という大目標は変わっていない。

絶え間なく続く中国海洋監視船による領海侵犯、そして周辺をパトロールする自衛隊機や米軍機に対する「殲10」などの戦闘機のスクランブル発進に対し、日本も安倍総理が海上保安庁の人員や巡視船の増強、防衛予算の上積み方針を表明。さらに、陸上自衛隊習志野空挺団では島嶼奪還訓練が行なわれるなど、有事への準備が進んでいる。

では、中国に対する最強の“抑止力”として期待される同盟国・アメリカは、現状をどう見ているのだろうか?

「確かに日本はアメリカから見れば、急速に軍事費を拡大させて外洋に進出してきた中国を叩くための前線基地です。ただし、中国の弾道ミサイルのことを考えると、“太平洋のキーストーン”とされる沖縄だけにポツンと部隊を配備するのは危険。むしろ、中国を大きく取り囲むようにハワイ、グアム、オーストラリアなどに分散・再配置させる方向にあります。そのため、対中国に関しては、今まで以上に日米の役割分担がはっきりしてくると思います」(軍事評論家・谷三郎氏)

また、アメリカには軍事費の削減という難題も降りかかっている。谷氏が続ける。

「中国の国防費が毎年10%以上も伸び続ける一方、2011年度の軍事費が6895億ドル(約61兆円)で世界トップのアメリカは、今年2月中に財政赤字削減策がまとまらなければ10年間で4900億ドル(約43兆円)もの軍事費削減が必要になるとされています。単純計算で、日本の年間防衛費に匹敵する約4兆円もの削減を毎年続けていかなければならないということです」

日本の防衛はもう“アメリカにおんぶに抱っこ”では済まないというわけだ。

(取材・文/本誌軍事班[協力/世良光弘 小峯隆生])

■週刊プレイボーイ5号「火種だらけ! 安倍ジャパンが直面する極東軍事地図」より


 

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01. 2013年1月21日 14:29:36 : Pj82T22SRI
中国「米は言行慎め」 尖閣 日本支持に反発
産経新聞 1月21日(月)7時55分配信
 【北京=川越一】中国外務省の秦剛報道官は20日、クリントン米国務長官が先の日米外相会談後の記者会見で「日本の施政権を害そうとするいかなる行為にも反対する」と述べ、沖縄県・尖閣諸島をめぐり中国に強く自制を求めたことに対し、「強い不満と断固とした反対」を表明、「米国は言行を慎むように」などとする談話を発表した。

 秦報道官は尖閣諸島について「中国固有の領土。歴史を証拠とし、法律を根拠とする。これは何人も否定できない」と主張。尖閣諸島をめぐる日中間の対立の根本的原因が、日本政府による国有化と挑発行為にあると、一方的に日本側に責任を押し付けた。その上で、尖閣諸島をめぐる問題に関し「米国は歴史上の逃れられない責任がある」と戦後処理の問題を指摘しつつ「責任ある態度で対応することを促す」と、米国が積極的に関与することを牽制(けんせい)した。

 秦報道官は「米国が実際の行動によって、(アジア)地域の平和と安定、中米関係の大局を維持し、中国国民の信用を得るよう促す」とも強調。尖閣問題で米国が日本を支持することに、強い危機感を抱いていることをうかがわせた。

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最終更新:1月21日(月)11時56分

尖閣沖の領海に中国の監視船3隻侵入
読売新聞 1月21日(月)9時24分配信
 第11管区海上保安本部(那覇市)によると、21日午前7時2分頃から同15分頃にかけ、沖縄県石垣市の尖閣諸島・南小島沖の領海内に、中国の海洋監視船「海監」3隻が相次いで侵入した。

 今年に入り、中国監視船の領海侵入は4回目。海上保安庁の巡視船が領海の外に出るよう警告している。

 3隻のうち2隻は19日にも領海内に侵入した。

最終更新:1月21日(月)9時24分

中国と対立するなら露朝韓と組め

田中 宇 | 国際情勢解説者

2013年1月19日 8時0分
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北朝鮮が、経済発展のためにドイツと組もうとしている。北朝鮮の政府関係者がドイツを訪れ、独の企業や学者らを集めて、北朝鮮の経済発展に必要な投資や、法や制度の整備についてのアドバイスをくれるなら、ドイツ企業が北朝鮮で儲けられるような特権をあげると提案した。(North Korea's New Master Plan)

北朝鮮経済の発展や開放というと、すぐに連想されるのが「中国式経済改革の導入」だ。だが北朝鮮政府は、中国に席巻されて属国になることを嫌がっている。現在、投資や貿易、操業など、北朝鮮と関係している外国企業のほとんどが中国企業というのが実態だが、北朝鮮政府はこの実状を認めたがらず、欧州など世界中の企業が北朝鮮とつき合いたがっているという構図を見せることに躍起だ。昨秋、中露国境に近い羅先経済特区で開かれた国際交易会にも、欧州やロシアの企業が多く参加していたが、実際に羅先で操業する外国企業のほとんどは中国企業だ。(北朝鮮で考えた)(北朝鮮の中国属国化で転換する東アジア安保)

中国の言いなりになりたくない北朝鮮は、誇張によるイメージ作りを脱して実体的に欧州企業に来てもらいたい。それが、北朝鮮がドイツで説明会を開いた背景だった。北朝鮮側は「われわれは、経済特区を作ってその中ですべての外国企業に自由な経済活動を許す中国式でなく、われわれが選んだ外国企業に全土での自由な経済活動を許すベトナム式の経済開放をやりたい」と語っている。先日、グーグルの会長が米国の訪朝団に混じって北朝鮮を訪問したが、こうした動きも、一本釣りで外国企業を誘致したい北の動きに呼応するものかもしれない。金正恩が正月に、北の指導者として19年ぶりにテレビ演説し、経済政策に力を入れると宣言したが、これも一本釣り戦略と関係していそうだ。(Google head and former US governor in North Korea visit)(North Korean leader vows `radical' economic shift)

この手の話に接するたびに私が思うのは「日本が中国と対立し続けるつもりなら、中国に席巻されたくない北朝鮮を日本が敵視し続けるのでなく日朝関係を改善し、在日朝鮮人らの力も借りながら、ドイツなどでなく日本が北朝鮮の経済発展や改革に協力し、日本の対中牽制の道具として北朝鮮を使うべきだ」ということだ。日朝関係の改善を止めている拉致問題は、もともと日本政府が「遺骨のDNA鑑定」というインチキなテーマを北にぶつけて関係改善を阻んだものだ。日本が拉致問題の解決の仕切り直しを北に提案すれば、北は応じるだろう。拉致問題の解決は難しくない。(北朝鮮6カ国合意と拉致問題)

日本政府が拉致問題を解決したがらないのは、北朝鮮が日本の敵国であり続けることで、在日米軍の駐留を柱とする日本の対米従属を維持しやすいからだ。昨年末の北の人工衛星発射に際し、米当局が「ミサイルでなく人工衛星だ」と発表したので、日本政府はしかたなく「人工衛星」と認めたが、できれば「日米にとって大きな脅威であるミサイル」と言い続けたかっただろう。北の脅威を妄想的に大きく見せるほど、官僚機構は「日本は対米従属が必要だ」と言いやすい。日本にとっては、中国との対立自体が「日本が米国と組んで中国を包囲する」という、受動的な対米従属策の一環なのだから、日本が能動的に北朝鮮と組んで中国と対峙するなどという余計なことをしない方が良いというのが、官僚機構の姿勢だろう。(北朝鮮の衛星発射と中国の尖閣領空侵犯)

▼ロシアも日本に接近したいが・・・

中国は、北朝鮮だけでなく、その隣のロシアの極東地域でも、経済を席巻しつつある。民族的な資質として、朝鮮人は中国人に負けない商魂を持っているが、ロシア人はおしなべて商売が下手だ(露経済はユダヤ人が握っている)。冷戦後、政府資金が入ってこなかったロシア極東の荒廃した状況下に、中国から商人や労働者が入り込み、商売を牛耳っている。ソ連邦やロシア帝国を、社会主義でなく資本主義で復活させたい、ナショナリズム重視のプーチン大統領は、米国の覇権に対抗する世界戦略として中国との関係強化を推進してきた。だがプーチンは同時に、ナショナリズムの観点から、自国の極東地域が経済面から中国人に握られていることに脅威を感じている。(日本をユーラシアに手招きするプーチン)

そこで出てくる考え方は、日本が中国との対立構造を維持するつもりなら、北朝鮮だけでなく、ロシアとも戦略的協調関係を強めるべきだということだ。ロシアや北朝鮮が「中国が偉そうな態度をとるなら日本と組むぞ」と言えるようにしてやれば、日本は露朝に恩を売って経済的な利得を得られるし、中国が日本を尊重せざるを得ない状況を作れる。プーチン自身、日本と関係強化して中国を牽制する戦略を以前から持ち、折に触れて日本に秋波を送り続けてきた。プーチンはナショナリズムの観点から、北方領土問題で日本に小さな2島より多くを返すつもりがない。尖閣諸島は日本が実行支配しているが現在無人島だ。北方領土は、ロシアが実行支配している上、ロシア人の島民が住み、ロシア政府は数年前から国後・択捉のインフラ整備を急速に進めている。核武装しているロシアから、日本が国後択捉を取り戻すことは事実上不可能だ。(メドベージェフ北方領土訪問の意味)

半面、北方領土問題で日本が2島返還による解決を了承するか、継続審議にして事実上棚上げすれば、中国牽制の目的で日露が接近できる。安倍首相は今春にロシアを訪問予定で、露払いの特使としてロシアを訪問する森喜朗元首相が訪露を前に、国後歯舞色丹を返してもらう「3島返還」の構想を表明した。国後が返還されるとは思えないので、これは2島返還を落としどころとする日露交渉の日本側の開始点を示したようにも見える。

とはいえ、ここでも日本政府は、拉致問題を解決せず北朝鮮を敵視し続けるのと同様、北方領土問題を解決せずロシアと対立的な関係を続けるのも、自国周辺に敵が多い状態を維持して米国に頼らざるを得ない対米従属を続けるためにやっている観がある。日本政府(官僚)にとって実は、北方領土が返ってこない方が、米国という「おかみ」の下で官僚が民主主義(政治家)無視の独裁を敷けるための対米従属を維持できる。(多極化と日本(2)北方領土と対米従属)

プーチンは国家間のパワーポリティクス(国際政治力学)という国際政治の常識に基づき、日本は地政学的に中国と対立せざるを得ず、ロシアと組みたいだろうから、国後択捉という小さな島々をあきらめるのと考えているようだ。だが実は、日本の権力機構(官僚)にとって、世界の常識たるパワーポリティクスよりも、日本が対米従属を続けられることの方が重要だ。

プーチンにとって、日本のあり方は非常識だろう。逆に、多くの日本人にとって、プーチンが依拠するパワーポリティクスはなじみがない。「日本の常識は世界的な非常識。世界の常識は日本の非常識」と言われるが、北方領土問題はそれを象徴している。日露関係だけでなく、日朝関係も基本的にちぐはぐだ。国際的な日本人の頓珍漢さの元凶は対米従属だ。対米従属の国策を国民の目から隠すために官僚傘下のマスコミが「別の解説」を行い、その見方(日本の常識)を国民が軽信する結果、頓珍漢になる。対米従属を続ける限り、国際政治の常識から見て日本はお門違いで不可解な存在であり続ける。常識を知った上で非常識を意図的にやるなら期待できるが、今の日本は無知に基づく非常識なのでまずい。(多極化の申し子プーチン)

日本政府は以前から、中国との敵対維持を前提としたロシアとの関係改善を模索しているので、安倍政権下で日露関係改善が実現するかもしれない。その場合、ロシアに対する日本人の分析と理解や不足していることが、次の問題になる。日本の「ロシア通」として、商社や学界、マスコミのロシア専門家がいるが、彼らは外務省を頂点とする「ロシア関係者村」の村人である。日本外務省は、対米従属を重視するあまり、プーチンを権力欲ばかりの冷酷な独裁者、悪者とだけみなし、ロシアが持つ国際政治力学的な感性や、それに基づくロシアの戦略を見ないようにしてきた。商社マンや学者といった「村人」たちは、外務省様の言うとおりでございますと追従し、プーチンの悪人ぶりを心から憎む(そぶりをする)必要があった。「村」が小さいだけに、それをしないと仲間外れにされ、商談や研究を妨害される。だから、日本ではロシアに対する分析や理解が深まらないできた。以前、私がプーチンの戦略について書いた時には「また田中宇宙が妄想してまっせ」といった言い方がロシア担当の商社マンの間で流行ったそうだ。(プーチンの光と影)(プーチンの逆襲)(プーチンを敵視して強化してやる米国)

中国に関しては、前近代からの漢学の伝統の上に、戦後の田中角栄以来の日中友好を基盤とした、中国を理解しようとする動きがある。近年「中国を信用してはならない」というマスコミの論調が席巻し、日本人が中国について理解することをタブー視する対米従属の裏面としての新状況になってからは、中国に対する日本人の分析力が低下しているが、それ以前の知的な蓄えがあるので、まだ何とかなっている。ロシアについては、そのような昔の蓄えが少ない。

【長すぎてシステム的に1回でアップロードできないので、次回に続く】


この記事は「中国と対立するなら露朝韓と組め」の続きです。

▼対米従属が日韓協調を阻んでいる

アジアでは日本と並び、韓国も対米従属の国策を持っている。米政府は、国力が隆々としていた時には、日韓を別々に対米従属させる「ハブ&スポーク戦略」を採っていたが、国力が落ちてきた近年は、日韓に協調を強めさせ、米国の負担を減らす戦略に転換している。昨春、調印直前まで進んだ日韓で軍事情報を交換する、史上初の日韓安保協定も、背後に米国の希望があった。

だがここでも、日本そして韓国の対米従属の国策が邪魔している。日韓双方の権力中枢で根強い対米従属派は、日韓の協調が深まることで米国に関与を減らされることを恐れている。そのため、日韓安保協定の締結直前、韓国の李明博政権が竹島や従軍慰安婦、歴史教科書といった、日韓の対立が激化する問題を蒸し返しつつ韓国の反日ナショナリズムを扇動し、昨年8月には李明博が韓国大統領として初めて竹島を訪問した。日韓協定は棚上げされたが、これは対米従属を維持したい日本政府にも好都合だった。(◆李明博の竹島訪問と南北関係)

韓国に対する日本人の理解が深まる日本の「韓流ブーム」は、日韓を戦略協調させて米軍が存在感を薄めても問題ないようにしたい米国政府の思惑に沿っていた。しかし、韓国の竹島や慰安婦、日本の朝鮮学校攻撃などによる日韓の相互敵視の拡大が、韓流ブームを乗り越えて敵対状況を涵養している。日韓の対米従属の思惑が、米国の思惑を乗り越えている。

安倍首相は昨年末の選挙期間中、中国だけでなく韓国に対しても敵対をいとわない強硬姿勢を貫く態度を見せていたが、首相就任後、韓国とだけは敵対を解く姿勢に転換した。これは、対米従属を強く重視し官僚の傀儡となる色彩が強い安倍政権が、日韓の対立を好まない米政府の意を受けたものと考えられる。

「日韓を支配し続けたい米国が、日韓での軍事プレゼンスを低下させたいはずがない。田中宇は間違っている」と考える人も多いだろう。しかし、日韓を傘下に入れておきたい米国の最大の思惑は軍産複合体のものだ。彼らは、日韓が米国製の高価な兵器を買い続けてくれるなら、直接的な軍事プレゼンスが減ってもかまわないと考えている。たとえば、90年代の末に、米軍が沖縄の下地島空港への駐留を検討したときがあった。下地島空港は定期便がなく、3千メートル級の滑走路があるのにほとんど使われていない。下地島は、中国大陸への距離が沖縄本島より数百キロ近く、対中有事の際に米軍が使いやすいとの理由だった。(アメリカのアジア支配と沖縄)

しかし結局、米政府は中国との関係性を重視し、米軍を下地島に駐留させなかった。代わりに今、日本の自衛隊が、尖閣諸島の防衛力を強化するため、下地島空港への駐留を検討している。尖閣諸島の対立で、日本は米国製の兵器をどんどん買い増してくれる。米国側としては、米軍が命を張って日本のために下地島に駐留、そのための費用を思いやり予算などで日本政府に出してもらうよりも、自衛隊が下地島に駐留し、その兵器や装備の多くを米国から買う方が、低リスクで同じ儲けを得られる。

米政府が「中国包囲網」に言及し、すでに沖縄などアジアにいる小規模な米軍部隊を日本から東南アジア方面に巡業(ローテーション)するだけで、日本や東南アジア諸国が「米国が中国を包囲してくれる」と喜び、こぞって米国製の武器を買い増してくれる。軍産複合体にとって、今のやり方が効率的だ。米政府のアジア重視(中国包囲網)戦略は、米政府が財政難で軍産複合体の兵器を買えなくなっている分をアジアに売り込むためのものだとする指摘が国際的に出ている。(US pivot sparks Asian arms race)

▼尖閣を奪われた方が対米従属に好都合

尖閣問題などで、日本が中国と本当に対峙する気があるなら、表向き敵対的な態度を示さず穏便にしつつ、敵のことをよく知ろうと中国研究を加速すべきだ。だが、今の日本がやっているのはこれと正反対で、表向き敵対的な態度を充満させ、中国を敵視する人しか専門家として生きていけない状況を作っている。最近、北京などの大気汚染が国際問題になり、日本にも汚染された大気が漂ってくるのでないかという話で、テレビでは「中国は大国なのだからしっかりしてほしいですね」といった、中国を大国として扱った上で揶揄する態度が主流だ。その背景には「中国と米国は大国だが、日本は小国です」という姿勢がある。これは対米従属の一環だが、日本が自立した国家として中国と対峙しようとする姿勢が欠けている。

尖閣の土地国有化で中国との対立を煽ったのは日本の方であり、尖閣で中国と対立するのは日本の戦略だ。だが、中国は大国で日本は小国という態度の中には、中国と一戦交える覚悟を持つ際に必要な姿勢が欠けている。おのれを知らなければ、誰とも渡り合えない。日本は、戦略的、心理的な準備を全くせず、中国との敵対を煽っている。

この日本の準備不足は、尖閣問題を煽る日本側の思惑が、日米が一緒に中国と対峙する対米従属の強化にあることから起きている。しかし、中国軍が尖閣を奪いに来た場合、米国は、日本の自衛隊だけに応戦させ、米中戦争になることを懸念して米軍を繰り出さない可能性が大きい。日本は、いずれ尖閣諸島を中国に軍事的に奪われかねない。(中国は日本と戦争する気かも)

しかし実のところ、日本が尖閣を中国に奪われることも、対米従属の観点からは、むしろ望ましいこととも考えられる。尖閣を奪われた場合、中国の脅威が石垣島のすぐとなりまで迫ってくることになり、日本の官僚機構は、沖縄への米軍駐留や対米従属が絶対必要だといいやすくなる。日本が尖閣を中国に奪われることは、いざというときに米軍が日本を守ってくれないことから起きるのだが、そうした最重要の視点は報じられず、上からの解説を鵜呑みにするだけの大方の日本人は疑問にも思わず「中国は怖い。米国だけが頼りだ」と悲壮に思う心境が日本を席巻する。安倍政権は、尖閣を守れなかった責任をとらされるかもしれないが、喜んで官僚の傀儡になって首相になりたい政治家は無数にいるので、官僚機構としては、ほかの政権にすり替えるだけですむ。

対米従属策や対中敵対策の問題は、米国の覇権が衰退しつつあり、覇権構造が多極化し、アジアの覇権国が中国になりつつある点だ。08年のリーマンショック以来、米国(と世界)の金融システムは巨大な債券バブルの崩壊過程にあり、連銀のドル過剰発行(QE)によって何とか延命しているにすぎない。米政府は、自国の覇権衰退の状況をある程度把握しており、いずれ中国と和解する策に転じるだろう。日本はその時、対米従属できなくなり、自立的に中国と渡り合わねばならない。日本が今のうちにロシアや北朝鮮、韓国と協調しておくなら、中国と渡り合う場合の戦略がいろいろ考えられるが、ロシアとも北朝鮮とも韓国とも仲が悪いまま、対米従属できなくなって独自に中国と対峙せねばならなくなると、全く窮してしまう。

マスコミは安倍政権の経済政策を絶賛するが、日銀に円の過剰発行(量的緩和)を迫ったり、財政赤字を急増させたりするアベノミクスは、企業の投資など景気の好転を招かないだけでなく、連銀の量的緩和策がドルと米国債の自滅につながるのと同様、円と日本国債の急落やひどいインフレを起こしかねない。

官僚機構(マスコミ)の安倍礼賛のプロパガンダはとても強力なので、アベノミクスを途中でやめさせることは無理だ。小沢一郎も仲間と思っていた同僚政治家に騙されて潰されてしまった。鳩山は訪中時に尖閣問題を客観的に述べた罪で国賊扱いだ。対米従属を逃れようとする政治的ベクトルは、今の日本に皆無だ。日本は、円と日本国債の自滅まで行き着くだろう。

この自滅の後か先に、米国が政治的に中国敵視をやめるか、ドルと米国債の自滅が起きる(ドル崩壊は円崩壊より後だろう)。それらを経て、米国の覇権が瓦解し、日本は対米従属できなくなって行き詰まるだろう。

こんな風にお先真っ暗なことを書くと「祖国をけなしてうれしいか」という「国賊扱い」の反応があるだろう。しかし米国と日本と世界の現実をよく見れば、アベノミクスは素晴らしいなどと言っているマスコミの方が、自国を自滅に至らせる国賊行為だということが見えてくるはずだ。


田中 宇
国際情勢解説者
独自の視点で世界を斬る時事問題の分析記事を書いています。

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02. 2013年1月21日 23:39:56 : Un17GcMvis
カール・ユングが第二次世界大戦の直後に書いた「破局のあとで」の中で、人間の狂気が無意識の中で人々に伝染すると書いている。 現在のようにあっちこっちで紛争が続いていると、人々は無意識のうちに暴力的な事件にならされてしまい、終いには政治・経済の指導者たちの狂気によって破滅への道に踏み込むのじゃないだろうか。 現状から見て、中国の軍事指導者達にその狂気が生じつつあるような気がする。 尖閣諸島を奪取することは、極めて小さくて安全な冒険のように思えるかもしれないが、日本人はこのような冒険主義にかなりシビア―に反応しつつあるようである。 引っ込みがつかなくなり、艦艇やジェット戦闘機などを持ち出して来れば、今の安倍政権でならこれまでより強硬な反撃を可能にすることも考えられる。 今回紛争を仕掛けているのは中国側だから、中国が航空機の領空侵犯や艦船の領海侵犯をやめれば事態は収束する。 中国内部に起きている権力闘争が原因であれば、そう簡単にやめるわけには行かないのかもしれない。 狂気が自国民に伝染し、内戦や暴動に発展することだって考えられる。 冷静な判断を望みたいが、難しいのかもしれない。 暴力の狂気は東アジアだけではなく、世界中に広がりつつある。 筆者のように老いぼれて人生には飽きてしまったものにとっては、もうどっちでもよい。 しかし若い人たちが気の毒でならぬ。 N.T

03. 2013年1月22日 12:03:49 : IOzibbQO0w
<山口公明代表>尖閣問題棚上げを示唆 22日から訪中
毎日新聞 1月21日(月)20時24分配信

山口那津男・公明党代表=藤井太郎撮影

 公明党の山口那津男代表は22日からの訪中を前に21日、香港・フェニックステレビに出演し、沖縄の尖閣諸島問題について「将来の知恵に任せるのは一つの賢明な判断。しばらく静かにしておくのも大きな知恵だ」と述べ、事実上棚上げすべきだとの考えを示した。

 与党幹部として日中両政府に冷静な対応を求めた。一方で、山口氏は「特に両国の軍用機がこの島に近づき合うのは不測の事態を招きかねない。空はお互いに入らないという合意に至ることも重要だ」とも述べた。日本政府は尖閣諸島について「領土問題は存在しない」としており、尖閣諸島の空域での自衛隊機の活動を巡る中国政府との合意に言及したことは問題になる可能性もある。

 昨年12月の安倍政権発足以来、与党首脳の訪中は初めて。山口氏はこれまで3回、習近平総書記と会談しており、19日の首相との会談後には「首脳会談に結びつけたい。首相もそれを望んでいると伝える」と語った。

 しかし、中国側は、今月15〜18日に訪中した鳩山由紀夫元首相が、日本政府の見解に反して尖閣諸島での領土問題の存在を認めた発言を大きく取り上げ、鳩山氏を称賛した。山口氏に対しても、尖閣諸島について明確な見解を示すよう求める可能性もある。【吉永康朗、福岡静哉】

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<写真で見る>尖閣諸島
最終更新:1月22日(火)10時15分

山口那津男(やまぐちなつお)
所属院 選挙区 政党:参議院 東京都 公明党
プロフィール:1952年7月12日生 初当選/1990年 当選回数/4回
(写真提供:時事通信社


04. 2013年1月23日 09:28:10 : S57QJHub3w
>>01氏のコメントいいですね。
田中宇の分析には個人的に?と思うところもあるが、敵の敵は味方という考えは国際外交においては当然のことであり、中国との付き合い方で北朝鮮とどう向き合うかを日本は拉致問題の解決も含めていいかげん厳しく対応すれば北のほうから降りてくるなどと思わず胸襟を開いて交渉すべき、それしか交渉の余地がないことをわかっていながら決断できない我が国政府の外交音痴ぶりは、政権が変わって更に酷くなったといわざるをえない。
北との交渉は強い態度で臨むほうが結果的には進展すると安倍政権の政策に期待する声もある。
だがそれは甘すぎると俺は思う。外交の基本は「相手が最も欲しいものと相手が最も嫌がるものをテーブルに並べ、お互い値切りあい(交渉)する」である。
安倍に、いや今の日本外交にはこういう斬った張ったを望むのは不可能だ。
安倍の外交基本はアメリカ一辺倒、アメリカについていさえすれば、風が吹けば桶屋が儲かる方式でオコボレが回ってくるなどと思っているのだから話にもならない。


05. 2013年1月23日 21:21:29 : xEBOc6ttRg
JBpress>日本再生>世界の中の日本 [世界の中の日本]
沖縄(琉球)が独立する日−国際的に正当性を訴える
龍谷大・松島泰勝教授にきく(上)
2013年01月22日(Tue) 川井 龍介
 日本国内にある米軍基地の74%が集中する沖縄。生活環境の悪化、“特権”を持つ米軍関係者の犯罪など、基地が存在することによる弊害を長年にわたって甘受してきた沖縄で、いま“独立論”が広がりつつある。

 学際的な研究と同時に国際的に独立をアピールしていく動きが出ている。この担い手として自治・独立への学問的研究と運動を進める、龍谷大学経済学部教授、松島泰勝氏に、沖縄(琉球)独立の理念と実現性について聞いた。

 穏やかな語り口ながら、日本と沖縄の間には差別と植民地化の構造があると批判する松島氏は、世界の独立例を踏まえて、その実現性とメリットを語る。かつての琉球国の存在やまとまりを意識して「沖縄」とは言わず「琉球」という名称を使う。

「琉球独立総合研究学会」立ち上げに向けて


松島 泰勝(まつしま・やすかつ)氏
1963年石垣島生まれ、南大東島、与那国島、沖縄島那覇で育つ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒、同大学院経済学研究科博士課程履修単位取得、経済学博士。97年から99年までグアムの在ハガッニャ日本国総領事館、99年から2000年まで在パラオ日本国大使館で専門調査員として勤務。東海大学海洋学部海洋文明学科助教授を経て、現在、龍谷大学経済学部国際経済学科教授。NPO法人「ゆいまーる琉球の自治」代表。著書に『琉球独立への道−植民地主義に抗う琉球ナショナリズム』(法律文化社)をはじめ『沖縄島嶼経済史―一二世紀から現在まで−』『琉球の「自治」』(ともに藤原書店)、『ミクロネシア―小さな島々の自立への挑戦』(早稲田大学出版部)
――これまで沖縄の中で「沖縄は独立すべきだ」という論はありましたが“居酒屋談議”の域を出ないとも言われてきました。それが最近現実的な議論になってきました。

松島 私は『琉球独立への道−植民地主義に抗う琉球ナショナリズム』(法律文化社2012年2月刊)という本を出しました。

 ここではこれまで思想的、文学的に論じられてきた独立論を、脱植民地化の国際的な動きを研究することで、国連や国際法と関連して、具体的なプロセスを含めて論じました。こうした動きがいま出てきています。

 1996年には、ジュネーブの国連欧州本部に行って、国連人権委員会の中の先住民族作業部会で先住民族として琉球での植民地主義の問題について発言し、世界の先住民族と交流しました。琉球と世界との関係も強くなり、独立論が地に足が着いた具体論として語られるようになりました。

 また、仲間と「琉球独立総合研究学会」というのを4月に立ち上げる予定です。政治学、経済学、国際法、言語学など学際的な視点から独立の可能性、プロセスを研究し発表していく考えです。

――なぜ、国連を通して国際的に訴えようと思ったのですか。

松島 国際法に基づいて世界の先住民族とネットワークをつくろうと思ったきっかけは、大田昌秀・元沖縄県知事が行った代理署名訴訟(米軍用地の強制使用に必要な代理署名を拒否できるかどうかで国と当時の大田知事との間で争われた)で、96年8月に最高裁で大田知事が敗訴したからです。

 これでは国内では基地問題は解決はできない、常に国内問題に矮小化され、今後も裁判所、国会、行政府に握り潰されてしまうと考え、国際問題として認知してもらうことにしたのです。国連の人種差別撤廃委員会は、琉球人は先住民族であり、基地の押しつけは人種差別であることを認めて日本政府にも勧告しました。国際人権規約委員会でも差別の問題として見ています。

 こうして、国際的なネットワークを使って日本、アメリカ政府に責任を問う。これがいままでの独立議論と違うところです。

琉球併合から独立論は続いてきた


『琉球独立への道−植民地主義に抗う琉球ナショナリズム』
――これまでも多くの独立論がありました。過去に遡ってその変遷や違いについて教えていただけますか。

松島 独立論には、実践の面と思想の面があります。実践面で言うと、琉球併合によって琉球王国がなくなった後に、王国の元の家臣が清国に亡命して、琉球王国の復活運動を行うわけです。これは実践的独立論です。それが日清戦争で日本が清国に勝って、運動は衰退していきます。

 戦後、日本の統治が終わったときには、独立を掲げた政党が出てきます。大きな流れとしては日本への復帰運動が起きる中で、復帰が近づくと沖縄人の沖縄を考える会とか琉球議会とか、復帰後に経済的に不況などの不利益を被りそうな人が独立を求めたことが一時期ありました。

 その後いろんな政党ができたり、「うるまネシア」といった自立、独立を問う文化誌が発行され議論されてきました。

 1996年からは国連を通じた脱植民地化の動きが始まります。はっきり独立とは言いませんが、脱植民地化を明確に訴えています。また、個々人の独立論や運動はいろいろあります。高良勉さんという詩人は、エッセイの中で80年に独立論を訴えていました。

 CTS(石油備蓄基地)反対運動のリーダーだった安里清信さんはパラオに行って、琉球は独立すべきだと考えたという話もあります。太平洋の島々を参考にそして連携して独立を論じるという考えも出てきました。同じ島であって人口がずっと少なくて独立しているところがあるからです。

 また、奄美では新元博文さんらが奄美独立革命論を書いています。彼もパラオに行って影響を受けています。

グアムとの共通課題として脱植民地化を 


琉球人独立を議論する雑誌「うるまネシア」
――独立を研究する新たな学会はどういう経緯で立ち上がることになったのですか。

松島 2012年5月にグアムのチャモロ民族3人を琉球に招き沖縄国際大学で、琉球・グアムの脱植民地化シンポジウムを開きました。グアムはアメリカの属領ですが、植民地と言えます。

 そのため脱植民地化の動きがあり、2014年を目標に、国のあり方について国民投票の準備をしています。そこには3つの選択肢があります。完全独立、パラオなどのような自由連合、それと、アメリカの州になることです。

 独立派を中心に委員会がつくられ、連合を組んで独立のプロセスを検討しているほか、それぞれの派にも構想があります。人口20万弱のグアムがこうした試みをできるのだから140万人の琉球でも独立を前提とした議論ができるだろうということになりました。

松島 最初に、友知政樹さんという沖縄国際大学の准教授が学会を提案し、これに賛同した、主に復帰後に生まれた人が中心となって準備が進みました。この中には、学者もいれば学生もいるし編集者や農家、新聞記者、ビジネスマン、主婦、NPOなどメンバーはいろいろです。学者だけが議論をするのではなく、学問的なスタイルを取って一般の人も参加して議論することになっています。

 琉球人の中には、独立を前提とした意見だけでなく、独立に関心があり、議論をしていく中で考えようという意見や、独立には反対だが現状はおかしいという認識に立ち議論に参加したいなど、いろいろな意見があります。これらすべてに門戸を開いて、議論し切磋琢磨して、「独立阻止」を主張する人とも平和的に議論していきたい。

神聖な場所での米軍の実弾演習

――グアムについて言えば、沖縄の海兵隊をグアムに移転させることにもなっていますが、グアムもまた基地反対、独立の動きがあるのですね。

松島 私も2年間グアムの日本総領事館で働いていたので分かりますが、琉球以上に植民地だなと感じました。島の3分の1が米軍基地。グアムでは軍用地主に地代も払われていない。また、アメリカ大統領を選べないし、グアムからの議員は発言権はあっても投票権はない。連邦政府、連邦議会がグアムに対する決定権を持っています。

 また、現地の観光業は日本資本が牛耳っている。グアムはもともとチャモロ人のものですが、マゼランが来て16世紀以降はスペインに支配され、1898年以降はアメリカ、戦時中は日本、そしてまた戦後はアメリカに統治されます。1950年になってようやく市民権が与えられました。にもかかわらず米議会や政府がグアムの事情を決めてしまいます。アメリカ本土のようには扱わないということを身をもって感じました。

 グアムで勤務したのち私はパラオで1年間働きました。パラオは独立して大きな権限を持っています。見た目はグアムの方が発展しているように見られますがグアムは内実は植民地です。であれば琉球からの海兵隊のグアム移転はおかしい。

 最近では特にパガットという村で建設されようとした米軍の実弾演習場が問題になりました。チャモロの遺跡もある古代の村であり精神的にも神聖なところで、実弾を海に向けて発射するという計画です。

 住民は激しく反対し裁判に訴え、この案は棚上げになりましたが、軍に対する強い反発が生まれています。また、空軍と陸海軍がある上に海兵隊がやってくることで、レイプなどの琉球で起きたような事件が女性の間で心配されています。

「これが復帰40年後の現実か!」

――ここ数年の沖縄の米軍基地をめぐる政府や日本の対応への不信と不満が、いままでのように、政府の言いなりにならないという気持ちを高めたのでしょうか。

松島 2012年11月に宮古島で開かれた九州市長会で、ある市長が沖縄県へのオスプレイ配備撤去の決議を出すことに反対しました。自分のところに来るかもしれないことに反対してのことです。こうしたことで、琉球人はますます自分たちが差別されていることを感じています。

 オスプレイの配備については、県議会、市町村議会の反対決議があっても押しつけられた。また、レイプ事件などが発生しても日米地位協定を変えようとはしない。これが復帰40年の現実なんですね。われわれが求めていた復帰とはこんなものだったのかと、かつて復帰を推進してきた人もいま言っています。

 本土復帰に尽力し、復帰後に最初の知事を務めた屋良朝苗さんという有名な政治家がいますが、彼の秘書的存在だった石川元平さんも最近地元紙の論壇で、独立をすべきだと言っています。元教員で復帰論者だったんですが、いまは独立を主張しています。

 当時は、日本国憲法は平和を掲げているし、基地もなくなり事件事故も少なくなるだろうと思っていたんですが、実際はそうならなかった。

価値観を共有していない、琉球人と日本人


返還決定を伝える当時の新聞・号外(沖縄市戦後文化資料展示室内で)
――地位協定といえば、驚いたのが一昨年に見直しされることになった1956年の合意です。その内容は、アメリカの軍人・軍属が公の行事で飲酒した後に自動車を運転した場合も公務扱いになるというものでした。

 こうした非常識なことが長年行われていたことは沖縄以外の日本に伝わっていないですね。

松島 日本国民の大部分にとって、基地、日米地位協定は自分の問題として考えられていません。琉球に住んでいると分かるのが、琉球人と日本人との感覚が大きく違うことです。

 ともに同じネイション(民族)なのかと思うほどです。価値観を共有するのがネイションだと思いますが、これを共有していません。

 イタリアにある米軍基地と琉球とはずいぶん違います。イタリアでは米軍機が墜落したときイタリア政府が調査、回収を行います。また、戦闘機などの飛行の角度、回数が制限されていて、住宅地を回避しているし、イタリアでリポーゾというお昼寝時間は飛行機はエンジンを切ることになっています。でも、琉球の基地にはこうした配慮はありません。

 戦争で負けたことに対する負い目が日本側にあるとともに、米軍基地があるからこそ日本は守られている、基地を置くために米軍やその家族に対しては優遇的な措置を取るという考えが政治家、官僚、一般国民にもあるのでしょう。反対に琉球からの要求は無視されています。

――原発立地・建設における中央と地方との構図も似ていますが、基地の場合は日本政府のほかにアメリカからの支配という、複雑な構図がありますね。

松島 これは本当に琉球にとってやりにくい。日本政府に対して基地の問題を質すとアメリカが関係するからどうしようもないと言い、アメリカに聞くと国内の問題だと言われることがある。両方とも責任逃れ、あたかも自分には責任がないように、軍人の考えをそのまま伝えるようなことをする。抑圧された琉球人にとっては抵抗の相手が2つあって簡単にはいかないという気がします。

――恩恵を受けるため、中央の要求を受け入れざるを得ないような状況もありましたか。

松島 中央、都市部ではいらないものを周辺に押しつけ、その見返りに交付金などを与える。しかし、補助金、交付金以上に基地があることの経済的な損失は大きいし、また犯罪などお金で換算できない犠牲、コストといったマイナス面もたくさんあります。

 中央では、地政学上重要だから基地のあることは諦めてくれと言います。これついては反証できる調査も行われています。例えば琉球の米軍が中東に出るときは佐世保に寄ってから出ていきます。琉球はサンゴ礁に囲まれていていい港がないからです。だから海兵隊はハワイとグアムとダーウィンに移設できるわけです。また、米軍はローテーションで動いているから、常に日本を守っているわけではありません。

返還後の土地は基地より大きな経済価値を生む

――基地がなくなったら経済的に困るでしょうという意見があります。しかしこれまでの基地返還後の土地の利用価値、経済効果を見ると、基地より大きいのが明らかだというデータが出ていますね。

松島 そうです。年間の県民総所得のたった5%しか基地経済は生み出していません。跡地利用を見ると、おもろまち(那覇市)や北谷町美浜をはじめほとんどすべての基地跡地は何十倍、場合によっては100倍以上も経済効果を生んでいます。

 基地の跡地は、商業・文化施設になったりしています。例えば読谷村では紅芋畑で栽培した芋を材料にして紅芋タルトというお菓子を作ったり、やちむん(焼き物)の里ができ、琉球陶器やガラス細工など工芸品も作って文化の里になっています。いま米軍基地の中のスーパーで働いたり、警備員、通訳などの技能を持った人が働ける機会は基地の外にもあります。


返還後の土地にできたショッピングとアミューズメントタウン、アメリカンビレッジ
 ですから基地反対、基地返還はかつては革新勢力の人が主張していたのが、いまでは保守派や産業界からや、稲嶺前知事、仲井真知事など政界も保革問わずオール琉球としても、なるべく早く返してくれと言う声が上がっています。「基地があるから潤っている」という話はもう通用しません。

――雇用については、基地の有無はどう関係するでしょうか。那覇の専門学校では軍関係への就職をPRしているところも見られます。現状は基地内での雇用を積極的にとらえているようですが。

松島 いま、9000人ぐらいが軍関係で雇用されています。これは琉球の全就業者数60万人の一部であり、全基地が撤去されてもこの雇用は吸収できます。

 専門学校も以前よりも宣伝はしなくなりました。準公務員としての扱いはありましたが、労働条件を見ても裁判になったり、ハラスメントも生まれています。以前に比べて軍で働くことが魅力的ではなくなっています。

 若い人の中にはレイプ事件などによって、軍事基地があることは自分たちの生命や家族、恋人などの生命が危険にさらされているという意識が生まれています。沖縄市などでは青年団がいま自警団を組んで町を回るという動きも出てきています。基地は生活を不安にするという思いが若者の中から生まれています。

日本から離れる覚悟のある人が増えている  

――こうなると、琉球に対する処遇を手厚くする、つまり“もっとアメをあげないとまずい”という見方が出てきますが、これに対してはどう思われますか。

松島 さまざまな補助金や優遇措置といった“アメ玉”が、これまでと同じであれば失敗が繰り返されるだけです。1995年に少女がレイプされて、そのあとずっとものすごいお金が特に米軍基地のある市町村に投じられました。名護市にも600億円くらい投じられましたが、効果は薄かった。

 政府はこれまで国土の0.6%で140万人しかいない小さなところに対して、なんでもやりたい放題してきた。しかし、独立論が具体的になって現実味を帯びてくると、琉球の価値、意味を日本全体が考えるでしょう。日本から離れる覚悟がある人が増えているという実態を見ると、対等な相手として見るようになるかもしれませんし、琉球人としては日本政府に対して政治的な地位を変えるための交渉ができる可能性があります。


沖縄戦で、沖縄本土に上陸したアメリカ軍
松島 1999年にスコットランドはイギリスから分権化して独自な政府と議会をつくったんですが、沖縄県議会、県庁なども、外交の一部を担うような分権化の議論を日本政府と交渉できると思います。

 日本政府、そして日本人は、米軍基地を取るのか琉球を取るのかということを選択しないといけないのではないでしょうか。

 米軍は日本のほかのところで引き受けるから、琉球は日本のままに、というのなら分かりますが、このままだと「沖縄差別」が永続化すると、保革問わず琉球では言っています。

根底に異質なものとして沖縄は見られている?    

――基地の存在や地位協定の実態は、「差別」を反映しているということですが、この根底には沖縄という地方に対する意識の上での差別があると感じますか。


松島氏
松島 1879年に琉球処分で沖縄県が誕生したときに、日本への同化政策で差別が行われてきて、戦争中には琉球の言葉を使っただけでスパイ容疑で処刑されたこともありました。

 講和条約後は日本から切り離されて米軍の統治下になり、それからずっと基地を押しつけられてきました。これらは差別です。

――意識の上での差別はどうでしょう。石垣島出身のアコースティックバンド、BEGIN(ビギン)の3人にインタビューをしたとき聞いた話ですが、1980年代終わりに彼らが東京に出てきていて、あるときアルバイトをしようとして多数の人に交じって現場に集合したとき、「君たちはこっち」と言われ外国人たちの集団に入るように言われたそうです。

松島 私は石垣で生まれて、高校、浪人までは那覇で勉強して、日本人として何の疑いもなく来ました。しかし東京へ来てみると、色は黒いし言葉がちょっと変だとかで、周りのヤマトンチュ(日本人)から「どこの国から来たのか」と言われ、同じ日本人とは思われませんでした。

 当時、沖縄県人材育成財団の寮に住んでいたのですが、そこに住む同じ大学生の中にはそうしたことがショックで、寮から出られなかった人がいました。1980年代半ばのことです。琉球の人を異質な者と見ている普通の日本人は多いなと感じました。

 あるいは、もしかしたらあえて異質な者と名指しすることで、相手を支配下に置こうとしているのではないかと思えました。これはショックでしたが、いい機会でもあり改めて琉球の文化や歴史を学んで、足元を深く掘り下げて議論していく気になりました。琉球にずっと住んでいたらこういうことはなかったかもしれません。外に出ていくことで、自分は何者かを知ることになりました。

――御著書の中に「人類館事件」のことが出ていますね。かつての差別に関する複雑な事例です。

松島 琉球への差別であるのと同時に、あの事件に関して琉球が屈折しているのは、自分たちは帝国の臣民であり、自分たちより下の人を差別するということがあった。差別の螺旋階段を琉球人自身が作ろうとしてしまっていたわけですが、これではいけない。

★注:人類館事件:
1903(明治36)年、大阪で開かれた内国勧業博覧会の「学術人類館」なるところで、アイヌ、琉球女性、朝鮮人、台湾先住民らが、生身で「展示」された。人類学的なものという名目だったが実際は見世物的で沖縄からは抗議の声が上がった。しかし、その内容は沖縄人は日本国民なのにアイヌら他民族と同様に展示されたというもので、のちに沖縄内でもこの主張に批判が出た。

(下につづく


龍谷大・松島泰勝教授にきく(下)
2013年01月23日(Wed) 川井 龍介
前編はこちら

 日本国内にある米軍基地の74%が集中する沖縄。生活環境の悪化、“特権”を持つ米軍関係者の犯罪など、基地が存在することによる弊害を長年にわたって甘受してきた沖縄で、いま“独立論”が広がりつつある。学際的な研究と同時に国際的に独立をアピールしていく動きが出ている。

 この担い手として自治・独立への学問的研究と運動を進める、龍谷大学経済学部教授、松島泰勝氏に、沖縄(琉球)独立の理念と実現性について聞いた。

 穏やかな語り口ながら、日本と沖縄の間には差別と植民地化の構造があると批判する松島氏は、世界の独立例を踏まえて、その実現性とメリットを語る。かつての琉球国の存在やまとまりを意識して「沖縄」とは言わず「琉球」という名称を使う。

戦争が起きたらまず巻き込まれるのは、また沖縄だ


松島泰勝(まつしま・やすかつ):1963年石垣島生まれ、南大東島、与那国島、沖縄島那覇で育つ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒、同大学院経済学研究科博士課程履修単位取得、経済学博士。97年から99年までグァムの在ハガッニャ日本国総領事館、99年から2000年まで在パラオ日本国大使館で専門調査員として勤務。東海大学海洋学部海洋文明学科助教授を経て、現在、龍谷大学経済学部国際経済学科教授。NPO法人「ゆいまーる琉球の自治」代表。著書に『琉球独立への道−植民地主義に抗う琉球ナショナリズム』(法律文化社)をはじめ『沖縄島嶼経済史―12世紀から現在まで−』『琉球の「自治」』(ともに藤原書店)、『ミクロネシア―小さな島々の自立への挑戦』(早稲田大学出版部)
――尖閣諸島をめぐる中国との緊張関係などを見ると、安全保障の点から沖縄はより重要な防衛の拠点だという論が根強いと思います。

 沖縄の独立論はこれをどう乗り越えていきますか。沖縄独自のナショナリズムは日本のナショナリズムとどうぶつかっていくのでしょうか。

松島 まず琉球人にとっての安全保障と日本人にとっての安全保障は違います。過去の戦争での捨て石の作戦を見れば分かるように、沖縄戦は本土決戦を遅らせるためのものでした。

 琉球人にとっては押しつけられた沖縄戦によって15万人近くが死んで、その後は米軍統治が行われ基地ができました。

 琉球の島々を捨て石にすることで日本を守るというのが日本の安全保障だと思います。米軍は琉球を守ってくれない。それどころかレイプなどの事件や、ヘリコプターの落下事故などを起こしています。

 私は、2004年に沖縄国際大学に米軍ヘリが落ちたとき現地にいましたが、その時感じたのは、米軍は琉球人を守ることができるのか、という疑問でした。ヘリの残骸の調査も米軍が行い、事故調査結果は日本に報告されていません。

 現場の米兵の中にはトランプをしながら談笑していた者もいました。自分たちが起こした事故に対して責任感もない人たちが琉球人を守れるはずはないでしょう。

 遠くから見れば、ああ世界最大の軍だから守ってくれると思うかもしれませんが、現場にいればそれは無理だと分かります。日米の上下の関係の中で、彼らがどうして自分たちの血を流してまで守るでしょうか。

松島 もし島の中で戦争が起きたら住民は必ず巻き込まれ、自分たちの文化も歴史も失ってしまうのは目に見えている。日本軍は戦時中、琉球人をスパイにして殺して、自国民を守らなかったという教訓もあります。


『琉球独立への道−植民地主義に抗う琉球ナショナリズム』
 島には軍隊がない方がいい。世界には先例があります。大国の力がせめぎ合うバルト海のオーランド諸島のように、琉球を永世中立の島にすることによってかえって周辺の国々の緊張緩和につながるのではないでしょうか。

――しかし、最近の中国の様子を見ると、そんなことは言っていられないという意見もあるでしょう。

松島 領海侵犯などが起きていますが、歴史を遡ると島嶼防衛という形で、宮古、八重山諸島に自衛隊の配備を始めたのは日本政府です。東京都による購入計画と国有化が行われ、これに中国が反発した。

 両国とも40年前に日中国交平和の議論にあったように棚上げにして平和的に解決するということに合意してきたのに反している。

 私は、尖閣列島はコモンズ、つまり共有地にした方がいいと思います。永世中立の島にすることによって米軍基地も引いていくということを目指す。

中国は琉球を侵略したら瓦解する

――非武装でやっていける、と言うと反論は大きいでしょう。独立国となった場合、中国に対してどういう外交政策を取りますか。中国の中には沖縄はもともと中国のものだという論もあります。

松島 すぐやられるぞと、私もよく言われます(笑)。では、琉球が独立したら中国が本当に攻めてくるかということですが、もしそうだとしたら中国が得ているすべての国際的な地位を失う。国連の常任理事国、第2位の経済大国、これらが琉球独立を侵略するという野蛮なことによって、国連憲章に反し世界中から反発を招くでしょう。

 チベットとかウイグルとかで独立の動きもありますから、琉球を侵略したら中国自体が瓦解する。また、世界には50万人の琉球人もいますし、これらのネットワークによる反発を考えれば、そこまでの危険を冒して中国はどれほどの利益を得るのでしょうか。


琉球人には世界中にネットワークがある。(一昨年、世界のウチナーンチュ大会パンフレットより)
 琉球は、琉球王国時代に明、清に朝貢的な関係を持っていましたが、これはあくまで儀礼的なもので、内政に影響力を及ぼしたことは一度もありません。

――沖縄では5年に1度、沖縄からこれまで世界中に移民した人たちが集まる「世界のウチナーンチュ大会」があります。広島など多数の移民を送り出している県はほかにもありますが、こうした大会は沖縄だけですね。

松島 世界に約50万人いるウチナーンチュのつながりは強く、例えば戦争で被害に遭ったとき、ハワイにいるウチナーンチュが琉球に豚を送ってくれるなど支援してくれました。同時にハワイのウチナーンチュからは独立した方がいいという声も少なからずありました。

 イリノイ大の名誉教授で宮古島出身の平恒次さんは有名な独立論者です。琉球内にはいろいろな独立論があります。こうした独立論や自立についての議論をする「うるまネシア」という雑誌も出ています。

仲井真知事も中国系〜日本とより長い中国との関係

――ところで、もし琉球が独立した場合、琉球は中国とどういう関係をつくっていくのでしょうか。

松島 琉球と中国の関係は、日本と中国のそれより長くて深いものがあります。明朝時代に閩人(びんじん)三十六姓という現在の福建省出身の人たちが明の皇帝によって琉球に派遣され、その後、久米村の地域に中国人が住んで外交や貿易の仕事に携わってきました。

 彼らは琉球人とまじわっていて、そういう人はたくさん生まれました。例えば、仲井真(弘多)知事も中国系です。政界、財界、あらゆるところに関係者がいて中国との人脈があります。

 琉球人には門中(もんちゅう=父系の血縁集団)がありますが、同様のものは中国系という共通の先祖を持っている華僑がいるベトナム、マレーシア、シンガポールにもあり、こうしたところと連携して独立すれば、長い歴史を踏まえて今後経済的にも文化的にもつながりができます。

 独立したからといって、日本から離れて孤立するのでなくかえって付き合いが広がっていきます。与那国も台湾とうまく付き合えないという壁がなくなります。

――総選挙前後から右寄りの論調が強まり、中には核武装をして対米依存脱却という論も出てきました。こうした論と沖縄の基地とはどう関係してくると思いますか。

松島 橋下(徹)大阪市長が琉球に来て街頭演説で言ったのは、普天間基地の代替として辺野古しか選択肢がないということでした。基地は必要だということで、これまでの日米安保を堅持するやり方と変わらないし、石原(慎太郎)さんも変わらないでしょう。

 小沢一郎さんが日本から米軍基地を撤廃して、時々軍隊を置くという形にしようと言うと、官僚に反対され、マスコミから叩かれたという状況があります。米軍依存脱却ができないのは右寄りでも同じだと思います。

 私が言いたいのは、日本のナショナリスト、愛国者が本当に琉球人を日本人と思うのなら、米軍依存、脱却に二の足を踏んでいることはおかしいということです。柳田國男は、「海上の道」を通って日本人がやって来たと言っていますが、古代の文化を残す琉球はそこで重要な役割を果たしたとされています。その琉球にいま異国の軍隊と基地がある。同じ日本国民が危機にさらされていることを日本の右寄りの人は納得できるのでしょうか。

 私は琉球人は日本人とは違うネイションだと思っていますが、日本の民族右翼はどう考えるでしょうか。彼らは場合によって同国、異国と使い分けているように感じます。

――日本のメディアの沖縄問題の扱い方についてはどう感じますか。沖縄の新聞が偏っているという見方をする識者もいます。

松島 琉球の新聞の1面に出ても全国紙には載らないこともあるし、オスプレイの琉球配備の時も1面に載せない新聞もあります。だから琉球の人は大新聞をあまり読まない。

 本来は琉球の基地は国際問題であるのに、日常の事件、事故の本質をとらえていないのではないかと思います。バラエティー番組では観光の島、癒やしの島という1つのパターンで琉球を見て、こういった島でなければならないといった視点で琉球は遊ぶところとして見ているなと思います。

グローバル化の中でどう生き残るか

――独立に関連した経済、交易についてお尋ねします。今日グローバル経済の中に入っていかないと取り残されていく危険性があり、一方で浸食される恐れもあります。島にとってどういう政策が考えられますか。

松島 島嶼地域ではグローバル経済というのは、マイナスの形で働いています。地場企業は競争の仕組みの中で衰退に追い込まれています。琉球が40年前に日本に復帰したとき、いわばグローバル化となり、関税で守られていた琉球の企業は、日本の企業に席巻され、特に地元のみそ、醤油などの製造業が衰退しました。


フェンスの向こうには広々とした基地が。沖縄では至る所に見られる光景だ
 琉球の経済政策は、東京に拠点を置く昔の沖縄開発庁に、いまは内閣府の沖縄担当部局に決められています。グローバル化に島社会も乗らないといけないと言われ、特別自由貿易地域、IT特区、金融特区などが設けられました。しかしほとんど失敗しています。

 さらにグローバル化と口では言いながら中身は中央集権体制で、官僚が特権を握っています。税金は安い、規制は緩和されているといっても、本当の意味の緩和ではないので企業は投資しない中途半端な政策で、琉球にアメ玉をしゃぶらせて不満を和らげるためのものとして定期的に出てくるものです。

 2012年の秋から始まった一括交付金という仕組みも自由に使えそうで、最終的には官僚が決定権を持っています。基地を受け入れなければ恩恵がなく、いろいろな恩恵は基地を押しつけるための方法になっています。

――望ましいグローバル化とはどんなものでしょう。

松島 琉球は島社会で、人が住んでいる島は大小40くらいありますが、島によって同じ経済政策は取れません。都市型の経済が必要な島もあれば自給自足的な島もあります。西表島のようにジャングルがあるところや与那国のように台湾に近いところなどそれぞれ特性があります。同じような経済政策を当てはめようとするのがおかしい。不適切な開発によって赤土による珊瑚の破壊などの問題を引き起こしてしまう。

 琉球の島々の間での連携、アジア、太平洋の島々との連携が必要です。例えばパラオとの関係を考えると、人々は大きなマンゴーを日本へ輸出したいと考えていましたが害虫がいて日本には出せない。しかし琉球には害虫を駆除する技術がある。これをパラオに伝えれば連携の道が開かれる。

 また、与那国島は台湾と110キロ位の距離にありますが、大きな障壁があって行き来ができません。もしもそれがなくなれば交流が深まります。

パラオの外国投資法などから学ぶ

――与那国島は台湾との交流、公益を目的とした“特区”の構想がありましたが、認められなかったですね。

松島 そうです。港の広さや貨物取扱量など全国一律の基準を与那国島にあてはめてみて、税関、検疫所などは置けないということでした。日本政府の中国、テロリズム脅威論があって、閉めてしまえという考えもあったと思います。

 その一方で政府は法務局や気象台の測候所などを閉鎖して、どんどん人が住みにくい島にしている。自衛隊しか住めないという防人の島にするというメッセージが感じられます。島嶼防衛の対象となっている宮古、八重山も基地としての位置づけが強まれば人々は出ていき、島の文化、歴史が継承されない。琉球人にとって最悪のパターンを政府が進めている。

松島 日本政府の政策が失敗に終わったというのは、本気で琉球の経済を自立化させるための政策がなかったということです。独立して基地撤廃後は、琉球の企業が投資して、外国資本との提携によって地元企業が生き残れるようなものを目指すべきだと思います。

 パラオの例を見れば分かります。国内の企業や雇用を守る外国投資法という法律があって、日本、アメリカ、台湾企業が押し寄せて食い荒らされるのを防いでいます。

――パラオの法律を沖縄にあてはめることはできるでしょうか。

松島 パラオは資本主義の国ですが、外国企業は土地を所有できないんです。これらの制度を市場経済と調整しながら行っています。琉球でも同様なことが可能でしょう。

 これまでの40年間は日本の仕組みが、亜熱帯であり島嶼によって構成され、独自な風土をもつ琉球にあてはめられ、ヤマトの企業によって開発され、移住者によって支配されてしまいました。

ヤマトの投資家が軍用地を買うというひどい話


松島氏
――とは言っても、これまでは沖縄の人の中でも土地を沖縄以外の企業などに売却してきました。

松島 そうです。しかしそれよりいま問題なのは、琉球の中で(琉球の地主が米軍に貸している)軍用地をヤマトの投資家に売るという問題が起きています。不動産屋には軍用地の売り買いの案内が出ています。

 軍用地を持てば毎年値上がりする地代を地主は手にします。この地代を目当てにした投資が増えると永久に琉球に基地はあった方がいいということになります。日本に住んでいれば基地の被害を受けず利益もあるというひどい話です。

 琉球人の側が売らないという覚悟を持つ必要があると思いますが、それを実践している島もあります。竹富島では一度バブルの前後に島の3分の1を島外の人に売ってしまったため、これではまずいと竹富島憲章という合意事項を設けました。

 売ってしまった土地はその後星野リゾートが買い取って、一定期間後、土地を公民館に譲るということになっています。また、久高島には久高島土地憲章という土地の総有地制をうたった合意事項があり、リゾート開発を阻止しました。

独立のメリットにイマジネーションを膨らませる

――独立については、果たしてやっていけるのだろうかという不安やデメリットを先に考えてしまいがちですが。

松島 琉球の経済界では中小、零細企業が多く、いまは公共事業でも受注する企業の5〜6割は日本の企業で、琉球の企業は下請けに回っていて、自分たちの島の事業を受注できないという不満を持っています。

 観光業でも大手のリゾート会社などが資本の力で支配しているため、琉球の会社は苦境に立たされている。しかし、独立したら民族産業、地場産業を守り育てることができる。

 独立したときのデメリットを考えるのではなく、「もし日本に属していなければ自分たちはどういう発展の仕方があるのか」というイマジネーションが必要です。パラオでは2万人でも独立してパラオの企業、雇用は守られています。

 ほかのさまざまな事例を見れば分かりますが、(独立していないことで)なんと自分たちは損しているのか、独立すればもっと得られたはずの利益をいまは失っていることが、合理的に考えてみれば分かります。

世界各地で独立への動きが盛んに

――昨今の世界各地での独立の動きはこれからどうなるでしょうか。

松島 いま世界的に独立が盛んです。2014年にはスペインのカタルーニャやスコットランドで独立を問う住民投票が行われます。ヨーロッパでは、民主主義の母国(イギリス)でも独立問題は現代的な課題になって行動にも移されているのです。

 住民投票の後は、憲法を作って国内の体制を固めていく。そのうち国家として世界中の国から承認してもらう。国連総会で認められた後、安保理で正式に認められる。まずは地域の中の意思の確認をすることです。スコットランドではスコットランド国民党が政権を取っている。カタルーニャでも自治州議会の過半数は独立派が占めています。つまり、独立はいまや夢物語ではなく具体的な選択肢の1つになっています。

 今後、太平洋の島々でもニューカレドニア、仏領ポリネシアやグアムなどでも独立を問う動きが出てきます。国連が認めている世界中にある非自治地域という、いわば独立してしかるべき植民地が現在16あります。

 グアムはこの1つです。世界中には琉球のように、リストに載ってはいないが植民地状態にあるところがあります。琉球はまずこの非自治地域リストに登録されることが必要です。

――1994年に独立したパラオは、その後うまくいっているのでしょうか。

松島 パラオはミクロ的に見てうまくいっていると思います。しかし、マクロ的に見ればアメリカに大きく依存しているし、日本、台湾、その他の国々からの政府開発援助(ODA)に頼っているところがあります。

 しかし、見方を変えれば、外交権があるわけですから立場を利用して外国からの支援を主体的に引き出すことができているとも言えます。琉球も外交権を使って同様のことができるでしょう。

 また、パラオにも米軍基地はありますが、オープンで、のどかで、基地とも言えない基地です。それも独立しているからこそ本格的な基地は造らせないという政治力の表れです。

――具体的に今後議論の中でどのあたりの地域をモデルにしながら考えていきますか。

松島 パラオは、島の人、企業、自然を守るという点で参考になります。それからかつては王国で、琉球併合と同じようにイギリスに併合されたスコットランドは1920年代あたりから独立運動が盛んになり、民主主義に基づいた独立運動を展開してきた点で参考になります。

 また、EU内の国家のあり方は、孤立化せずに周辺諸国と経済的、政治的な関係が保証されるモデルになると思います。琉球が独立しても東アジア、東南アジア、太平洋諸島と連携する枠組みを模索する必要があるでしょうね。

普天間飛行場の返還後に描く青写真とは


米軍や基地に対する一般人の不満が爆発したコザ暴動を伝える当時の新聞(沖縄市戦後文化資料展示室内で)
――自治、独立に関連して、文化的には沖縄でどういう動きがありますか。

松島 那覇市役所では素晴らしい試みをしています。窓口で男の人が来たらハイサイ、女性が来たらハイタイという挨拶をする。市役所の職員採用の面接の際に琉球語(ウチナーグチ)を取り入れることにしました。政治的な脱植民地化だけでなく、精神的な意味でも脱植民地化を図ろうとしています。

――具体的に独立した場合のビジョンが見えてくると面白いと思いますが、1970年に起きたコザ暴動に関わった沖縄国際大学野球部監督の安里嗣則さんに以前話を聞きました。

 元県高野連の理事長でもある安里さんは、返還された土地の利用も含めて気候温暖な沖縄をスポーツの国際的なイベントの島にしたらいいだろうというビジョンを描いておられました。基地が撤去された場合には今後どんなビジョンが描けるでしょうか。

松島 2012年の8月に沖縄国際大で集中講義をしたときに、普天間飛行場が返還されたらどうしますかと学生たちに聞いたら、沖縄国際大を大きくして、さまざまな学部をつくって平和研究とか平和思想を世界に発信したいという意見がありました。そうした思いで普天間飛行場を見ているのかと気づきました。

 いまは基地があって金網の向こうには行けないのですが、それがなければもっと大学の敷地は広がって、騒音といつ何かが落ちてくるかもしれないという不安の中ではなく、もっと安心して青空の下で勉強できるのにという気持ちが分かり感動しました。

――基地問題が、国際関係であり安全保障という全国的な問題であるなら、もっと沖縄以外の若い人が沖縄の歴史を勉強すべきでしょう。

松島 そうすればもっと差別もなくなるでしょうし、基地は琉球にあるしかないという一方的な根拠のない議論に惑わされないで済むでしょう。

――戦争体験のある人もほとんどいなくなってきました。戦争の実態が何かを知ることなく、互いに脅威論が盛んになっているように思います。

松島 脅威を解くのは軍事力ではなく、人間と人間の関係性です。そのためにも琉球は平和の島にすべきで、それを米軍基地は阻んでいます。人を殺すという、異常な状態の中で生きている人々が小さな島にいて、基地の外へも出ていくという状況が何十年も続いている。これが異常なのです。


06. 2013年1月23日 21:22:44 : xEBOc6ttRg
JBpress>海外>The Economist [The Economist]

身構える中国と日本:開戦を告げる太鼓の音
2013年01月23日(Wed) The Economist
(英エコノミスト誌 2013年1月19日号)

東シナ海に浮かぶ小さな島嶼を巡る武力衝突が近くに迫ってきている。


尖閣諸島を巡り日中間で不測の事態が起きかねないとの懸念が高まっている〔AFPBB News〕

 最近、中国のテレビを見ている人は、日本が尖閣諸島、中国が釣魚島と呼ぶ島々を巡り、日本との戦争が始まるのは時間の問題だという結論に至るかもしれない。それもあながち間違いではないかもしれない。

 日本が昨年9月、民間人が所有していた3島を「国有化」すると宣言して以来、長らく島嶼に対する日本の主権に異議を唱えてきた中国は、島の支配権を維持する日本の決意も試すようになった。

 その結果、双方が島を所有していると主張し、双方が島が自国の施政下にあるように振る舞っている。

 1月半ば、中国はすべての島と岩礁の測量・地図作成を実施する計画を発表した。このままの状況が続くはずがない。

「頭を冷やす」よう求める米国

 ムードの悪化に対応し、オバマ政権で国務次官補を務めるカート・キャンベル氏は1月半ばに東アジアに飛び、「頭を冷やす」よう求めた。今はむしろ頭に血をのぼらせることが流行っている。日中両国における最近の指導者交代が緊張を和らげるかもしれないという期待は、落胆に終わった。

 日本総合研究所国際戦略研究所の田中均氏は、右派の国家主義者である安倍晋三氏が昨年9月に自民党総裁に選ばれたことは、日本は中国に対してもっと強硬な態度を取る必要があるという意識に影響されたと指摘している。安倍氏はまさにそれを約束した選挙戦を経て、12月に首相に返り咲いた。

 それ以降、中国も島々に対して一層強く出るようになった。既に、退任を控えた胡錦濤国家主席が昨年11月、5年に1度の中国共産党大会の演説で「海洋大国を築く」という中国の野心を宣言している。中国の意図がここまではっきり明言されたのは初めてのことだ。

 胡錦濤氏の後を継ぎ3月に国家主席に就任する予定の習近平氏は胡氏ほど無表情ではないが、米国との折衝にあたり前任者たちのような慎重な態度を貫くかどうか分からない。多くの中国人が嫌う日本に妥協することに何の利益も見いださないことは確かだろう。そして軍事経験がほとんどない習氏は強い最高司令官と見られたいはずだ。

 こうした事情を背景にして、中国で軍事学者のテレビ出演が流行している。時事問題を扱う番組では、実戦経験のない軍人たちが釣魚島についてもったいぶって解説している。新聞は武力衝突の可能性が高まる状況について、一様に主戦論的な分析を喧伝している。


1月10日には、日中両国が戦闘機を緊急発進させる場面もあった(写真は昨年12月、尖閣諸島の上空を飛ぶ中国国有機)〔AFPBB News〕

 彼らは作り話をしているわけではない。先月は、中国の国家海洋局所属の小型機が、日本が尖閣諸島上空の自国領空と見なす空域に侵入した。

 日本の地上レーダーに探知されないほど低く飛行したために確認が遅れ、F15戦闘機8機の緊急発進(スクランブル)は効果を発揮できなかった。その後、日本は空中警戒管制機(AWACS)を配備した。

 1月7日には、中国の巡視船数隻が13時間以上にわたり島の近辺を巡回した。日本の当局者によれば、かつてない長さの滞在時間だという。そして1月10日、島の近くを飛ぶ中国の飛行機を阻止するために日本のF15戦闘機2機が緊急発進した時には、中国側も自国の戦闘機を緊急発進させた。

警告射撃は「開戦の1発目」?

 日本の航空自衛隊は現在、中国機が領空に侵入してきた場合に警告射撃を行うか否かを検討している。実際に行えば、1987年に旧ソ連が領空侵犯した時以来初めてとなる。

 中国軍事科学院の彭光謙(ポン・グワンチエン)少将は中国のウェブサイトの座談会で、警告射撃は「開戦」の1発目を意味すると話し、そうなれば中国は「遠慮なく反撃」すべきだと述べた。日本の報道によると、米国も日本に警告射撃を行わないよう忠告したという。

 激しい論調にせよ広く読まれている北京の新聞「環球時報」は、日本は思いとどまらないかもしれず、「我々は最悪の事態に備える必要がある」と主張した。記事によると、日本は「中国封じ込め」という米国の戦略の「先鋒部隊」になったという。

 これが意味することは、中国は、論争の的の島々が日米安全保障条約の適用対象であることを明確にした米国との戦いにも備えるべきだということだ。

 戦闘の危険性はめったに中国の視聴者に説明されない。武力衝突に発展した場合、総じて中国が挑発者と見なされるだろう。また、中国にとって日本は世界で2番目に大きい貿易相手国であり、対中投資も世界トップクラスだ。

 武力衝突の波及効果としてアジア地域で中国に対する不安感が高まり、インド、ベトナム、フィピンなど、やはり中国との領土紛争を抱えている国々は、これまで以上に熱心に米国に支援を求めるようになるだろう。

失うものが多すぎる

 日本との紛争が対米関係に深刻な亀裂をもたらすリスクは、一部の中国外交官の頭を悩ましているはずだ。その多くは、米国との間に亀裂が生じたら、尊敬される世界的大国になるという中国の野望が挫折すると考えている。このため結局は冷静な意見が通るかもしれない。

 戦闘が失敗に終わった場合、中国の国家主義者の感情を煽り、彼らの目に映る無能さのせいで、国家主義者が共産党に背を向ける恐れがある。中国軍は近年、急激に最新鋭の武器を購入してきたが、戦闘に勝つ力に自信を持たせてくれるかもしれない実戦経験がない。

 また、戦力投射について言えば、問題の島嶼は中国本土よりも日本の方に近い(同じく領有権を主張している台湾も、中国本土より島に近い)。

 しかし、最近の中国の外交政策の動きは、以前にも増して予想しにくくなっている。政府高官の多くは、中国が強くなる一方で、世界金融危機や国を消耗させる戦争で米国が弱体化したと考えている。

 また対外的な強さは国家主義者である習氏に、国内問題に対処する際に多少のリスクを取る余地を与えるかもしれない。ここ数週間、習氏は前任者たちよりも多少柔軟性があると思わせる兆候がいくつか見られた。

 多くの国民に支持され比較的リベラルな新聞社の記者たちがストを起こした最近の重大局面では、関与した記者たちにこれといった処罰もないまま解決に至った。1月半ばに北京その他の都市で息が詰まるほど深刻なスモッグが発生した時には、中国の報道機関はいつになく自由に大気汚染について不平を書いていた。

 政策立案に対する習氏の掌握力は測り難い。中国共産党の最高意思決定機関である政治局常務委員会で、誰が外交政策の日々の運営を担うのか(また担う人がいるのか)は、まだ数週間ははっきりしないだろう。過去10年間は、常務委員会には外交政策を専任で扱う人は不在だった。

 日本との緊張の高まりが、継承を巡る権力闘争によって指導部の意識が散漫になっている表れである可能性もある。明確な方向性を欠く中、官僚たちが自分たちを強く見せようとしているのかもしれない。

 一方、安倍氏は1月16日、首相就任以来初の外遊でベトナム、タイ、インドネシアの歴訪に向けて日本を発った。訪問先にベトナムが入っているにもかかわらず、安倍政権の関係者は、民主的な友好国との関係強化を図る「価値観外交」について語っている。

メドが立たない緊張緩和

 この外遊は表向き、急成長を遂げる地域との経済的な関係を強化することが目的だったが、中国の脅威に対抗することも同じくらい差し迫った動機だと思われる。日本の一部の専門家は、3カ国訪問は過度に挑発的だと考えている。中国は恐らく安倍氏の外遊を、外交的な対中包囲網を敷く試みと見なした。

 たとえ武力衝突が避けられたとしても、緊張は続く。田中氏は、少しでも緊張を緩和させるために欠かせない3つの要素を挙げた。すなわち、国民感情を鎮めること、2国間関係の重要性について再確認すること、そして尖閣諸島について話し合う方法を見つけることだ。今のところ、どれ1つとしてメドが立っていない。


07. 2013年1月23日 21:23:54 : xEBOc6ttRg
内向きになるオバマ大統領、不安を募らす同盟国
2013年01月23日(Wed) Financial Times
(2013年1月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


米ワシントンで2期目の大統領就任宣誓を行ったバラク・オバマ大統領〔AFPBB News〕

 米国の大統領は2期目に入ると、国際社会の舞台で活躍しようと決意するケースが多い。

 リチャード・ニクソンは中国との関係改善に乗り出した。ビル・クリントンは中東和平プロセスの虜になった。そしてジョージ・W・ブッシュはその中東での戦争にはまり込んだ。

 バラク・オバマ大統領がこの例外になろうとしていることは明白だ。2期目の就任演説では国外の話にほとんど時間を割かなかった。

国内問題で足跡を残したいオバマ大統領

 大統領は明らかに、自分の足跡を国内問題で残したいと思っている。銃規制、移民制度改革、財政赤字問題、景気回復といったことがオバマ大統領の最重要課題なのだ。

 外交問題については、外国にいる米軍兵士を帰還させた大統領になることが最大の目標になっているように思われる。2期目の就任演説では「戦争の10年間は終わろうとしている」と言い切った。1期目にはイラク戦争を終結させており、2期目にはアフガニスタンの部隊を完全撤退させる計画だ。

 オバマ大統領の考えは、その発言のみならず行動にもはっきり表れている。リビアの内戦への介入はまさに不承不承だったし、この紛争に一定の距離を置く米国の態度からは「背後からの指導」という有名な表現も生まれた。

 チャック・ヘーゲル氏を次期国防長官に指名したことも、オバマ大統領が本能的に不干渉主義であることを示唆している。

 ヘーゲル氏はリビアでの作戦行動に反対し、アフガニスタンへの増派にも反対した。イランへの軍事攻撃にかなり懐疑的であることも明言している。

 西アフリカのマリで内戦が起きているのはムアマル・カダフィを支配者の座から引きずり下ろしたことの間接的な結果であるとの見方が一部にあることも、「ヘーゲル派」の警戒感を強めこそすれ弱めることはない。ヘーゲル氏を支持するこうした人々は、軍事介入というものは仮に成功したとしても、危険で予期せぬ結果をもたらすことが多いと考えている。

 米国が以前ほど介入しなくなれば、その影響は世界の国々にとって劇的なものになり得る。ブッシュ政権時代には、欧州の指導者たちは米国の実力行使について文句ばかり言っていた。だが皮肉なことに現在では正反対の問題に頭を悩ましている。つまり、米国が様子見を決め込んで、問題が悪化するに任せるということだ。

ブッシュ時代とは正反対の問題に頭を悩ます欧州諸国

 第1の証拠はシリアだ。米国がこの国の争いに介入するのを嫌がっていることは誰の目にも明らかだ。そして、その米国からの働きかけや支援がなければ、軍事力ではるかに劣る欧州諸国は間違いなくシリアとかかわろうとしないだろう。

 それでも、戦略面から見ても人道面から見ても事態は急速に悪化している。死者の数は6万人を超えており、バシャル・アル・アサド大統領に反対する人々の間では聖戦主義の武装組織が支持を得つつある。ばつが悪いことに、この地では小国カタールの方が米国や北大西洋条約機構(NATO)よりも大きな影響力を行使している。

 残念ながらシリアの事例を見ていると、地政学が真空地帯を忌み嫌っていることがまざまざと思い出される。無政府状態に陥った地域の秩序回復を西側諸国が支援できない時には、いずれほかの勢力が台頭するのだ。マリの聖戦主義勢力しかり、アフガニスタンで復活しつつあるタリバンしかりだ。

 米国は、マリの軍事行動は欧州の大国が主導すべきだという考え方で構わないとしている。しかし米国は、フランスにはまだいかなる軍事支援も承認していない。

 もしフランスが苦境に陥っても、米国はフランスを支援する部隊の派遣には乗り気にならないだろう(かつて、四苦八苦していたフランス軍の作戦を支援したことから米国がベトナム戦争にはまり込んでいったことを思い出す人もいるかもしれない)。

「米国の偉大さ」からの撤退

 フランスは欧州連合(EU)の仲間に支援を求めるかもしれないが、米国が必ず指摘するように、軍事予算は欧州各地で削られているのが現状だ。したがって、北アフリカと西アフリカにおける聖戦主義勢力の脅威に対処するために軍事力を動員することはできない、と西側が判断することもあり得るだろう。

 2期目のオバマ政権で軍事予算が減らされること、そして米国が外国での軍事行動を縮小させようとすることは既に明らかだ。

 その結果、オバマ大統領は、米国の偉大さからの撤退を進めていると非難されている。だが大統領には、こうした批判に対する理路整然とした反論がある。世界における米国の強さの基盤は国内経済の強さであり、「国内での国造り」を優先させない限り、米国の世界的な指導力は腐った基盤の上に成り立つことになる、というわけだ。

 それに加え、米国民は外国での戦争にうんざりしており、大統領が国内で国民生活を向上させてくれることを望んでいる。

 経済・社会改革に専心するというオバマ大統領の野心の問題は、それが不名誉だということではなく、非現実的かもしれないことだ。しばらくの間、世界が落ち着いてくれたら大いに都合がいい。しかし、国際的な危機は避けられず、慎重で不干渉主義の政権でさえ引っ張り込まれることがある。

最も危険な危機は日中の武力衝突

 近年、そうした危機をもたらしてきたのは概して中東だった。オバマ大統領の2期目について言えば、やはりイランが明白な候補だろう。だが、最も大きく、最も危険な危機は東アジアで生じつつあるのかもしれない。尖閣諸島(中国名・釣魚島) を巡る論争で日中間の戦争の話が危険なレベルに達しているからだ。

 米国は既に、事態の沈静化を図るために何度か緊急使節団を送り込んだが、中国が島を攻撃した場合には、日本の防衛に対する米国の保証の引き金を引くことも明確にしている。

 国内での社会改革と外国での戦争の終了に専心するオバマ大統領にとっては、自分が米国を中国との紛争に導く羽目になる事態など、ほとんど想像を絶することに思えるに違いない。しかし、小さいとはいえ、リスクは存在する。

 オバマ大統領は、英雄視する人物の1人、フランクリン・ルーズベルトがやはり危機時に米国経済を救うために大統領に選ばれ、就任当初の数年間、大規模な社会改革を推し進めたことを思い出すといい。だがルーズベルトは結局、戦時の大統領になった。同じことはオバマ大統領にも起き得るのだ。

By Gideon Rachman


08. 2013年1月23日 21:26:53 : xEBOc6ttRg
JBpress>海外>ロシア [ロシア]
日本の鎖国を支えた中国の対ロシア政策
ロシアと中国(2)〜最初の条約
2013年01月23日(Wed) W.C.
前回の記事はこちら

 コサックのペトリンが北京を訪問してロシアと中国が初めて出合ってから、ほぼ20年が経った。その1636年に、満州(今の東北3省)の地に興った女真族は国号を「大清」と改めて、南の明への侵攻作戦を進めていく。

 そして、同時に北方へも勢力圏を拡大して、1630年代にはアムール河(黒竜江)中流・上流での支配権を確立していた。

 その頃に、このアムール河へ探検家のポヤルコフがロシアの遠征隊を率いて到達する。それに先立って彼らのコサック軍団はもっと北の地域を東に進んでいたのだが、オホーツク海が見えると東はこれで終わりだと思い込んで、目指す方角を南に変えた。その行き着いた先がアムール河である。

ロシアと中国、最初の戦争が勃発

 学者の調べでは、オホーツク海に出ればラッコの毛皮が手に入ることにロシア人が気付いたのは、それからおよそ100年も後のことらしい。初めからそれが分かっていたら、中国との付き合いはもっと遅れていたのかもしれない。

 ポヤルコフはアムール河周辺で毛皮の取り立てを行った。ちょうど清が明王朝を倒す作戦の真っ最中だったから、運よくその行動は中国側には目立たずに終わる。だが、明が清に取って代わられた直後の1649年に、別の探検家のハバロフ(その名が今のハバロフスクに残る)がアムール河畔に現れると、目立たないでは済まなくなる。

 広大なシベリアから極東に向けて延々と進んできたロシア人にとっては、原住民の激しい抵抗さえなければ(いや、あったとしても多分)どこもかしこも土地は無主物で、先に自分の物と宣言した者が支配権を得るという発想しかない。

 だから、アムール河沿岸で食糧確保のための農地の獲得を始めると、ハバロフは誰にも挨拶することなく要塞を築いてしまう。それに、現場にやって来た面々が、それまでに征服してきた少数民族と中華帝国に昇格した清とで、どれだけの違いがあるのかをよく分かっていたとも思えない。

 まさか、それが虎ならぬ龍の尾を踏む結果になるなどとは思いもよらなかっただろう。だが、この頃までに清は満州の支配権を固めていたから、その鼻先にこんな要塞を造られたら煩わしいことこの上ない。

 1652年にハバロフと清の地方責任者との間でとうとう戦闘が始まった。中ロ間での初めての軍事紛争である。少数でも火力に優るコサック兵に最初は清も苦戦したが、朝鮮(1637年に清の属国となる)から急遽鉄砲隊を派兵させ、この助けで押し返し始めた。

 当時の朝鮮は銃の供給が可能だった。日本による朝鮮半島侵攻(1592〜1598年の文禄・慶長の役)で、投降した日本兵からの知識を基に火縄式銃の生産を始めていたからだ。双方とも似たような性能の銃で撃ち合うなら、結局は物量が戦闘の帰趨を決めることなる。

 それにしてもコサックたちは、それまで出会ったシベリアの原住民とは違って清が銃を持っていることに痛く驚いただろう、「あいつら、一体どこから銃を手に入れたんだ?」。まさか日本の製造技術が遠因だったとは、である。

 一方で戦闘が続く中で、ロシアからの初めての正式な(つまり皇帝が派遣した)使節団が中国に到来している。清にしてみれば、「北方で騒ぎを起こしておきながら、一体どの面(つら)下げてやって来たのか」であるが、辺境地での状況を遥かかなたのモスクワが十分に掴んでいたはずがない。

 独立愚連隊たちとの意思疎通や現地との物理的な距離は、ロシアにとっては今も昔も、である。およそ200年後でもオホーツクからサンクトペテルブルクへの旅は4カ月と10日を要しているから、それ以前なら皇帝に指示を仰ぐ使いを出しても、返事が戻ってくるのはどんなに急いでも1年後だっただろう。

賢帝の誉れ高き康熙帝が即位


青年時代の康熙帝(ウィキペディアより)
 もたついている間に、清ではいよいよ賢帝の誉れ高き康熙帝が登場する。彼が本格的な北方討伐に乗り出せば、物量作戦で勇猛果敢なコサックたちにも勝ち目は薄い。それにロシアは、この頃はまだ極東方面で積極的に領土を拡張する意図を持っていたわけではなかった。

 極東の手前の東シベリアですら、行政組織の恰好はつけてみたものの、中央制御が簡単には利かない番外地そのものだった。過酷な自然環境から農民の植民も進まない。

 そもそものこうしたことの始まりから、今日のロシアが抱える東シベリア・極東での悩みの性格はどうもあまり変わり映えするものではないようだ。

 だから、さらに遠隔の極東で清と本格的な戦闘をやらかそうなどとは考えも及ばない。清の側にもそれなりの事情があり、ともかく両者が妥協して、1689年にネルチンスク(現・ロシア/ザバイカリエ地方内)条約が締結された。ロシアは、ピョートル大帝の時代である。


中国とロシアの国境(出典はこちら)
 この条約でアムール河に流れ込むアルグン河と外興安嶺を国境と定め、アルグン河の南からロシア人は退去させられた。

 中ロ外交でのそれぞれの公式な「中ロ関係史」は、このネルチンスク条約から始められている。

 中国は、この平和裏に締結されたネルチンスク条約から1世紀半後に帝政ロシアの対中侵略が始まる、としている。一方のロシアは、この条約が清の武力圧力の下でロシアが無理やり締結させられたものであり、それ以前の40年以上にわたりロシア人が平穏理に居住していたアルグン河南岸地域を奪われた、と主張する。

 さらにロシアの学者は、その後の1800年代のロシアによる清領“奪取”は奪取ではなく、かつて清に奪われたロシア本来の領土の回復に過ぎない、と弁解する。かなり苦しい。日本にとっても聞き覚えのあるストーリーのような・・・。

 ネルチンスク条約は、清がヨーロッパの国家と初めて締結した対等な条約と言われる。だが、この条約から200年ほど下った1800年代後半でも、清はヨーロッパで生まれたウェストファリア体制以降の外交原則(国家間の国際法)を理解していなかった。ならば、国家間の「対等」などという理解が1600年代末の清にあったはずがない。

 日本の専門家の分析によれば、形式面でいくつか玉虫色を残すものの、この条約の実態は清から見た朝貢貿易だった。清の政府内ではこの条約について、国内の藩部と朝貢国を専門に扱う理藩院(要は蛮族対応の部局)が扱っていた。ロシアもしょせんは清から恩恵を受けて平伏すべき北方蛮族の1つ、として捉えられていたに過ぎない。

 ここで中国の華夷思想(尊華卑夷)に突き当たる。自国を中華、周辺を夷狄と捉えて、周辺は中華に従属することが当然で、それが天地の道理であるという考え方と解される。はるか紀元前の「春秋」の時代からとも、漢代に始まる朝貢の歴史の中で根付いたものとも言われる。

中国の華夷思想を育んだ理由

 周辺を自国より低い面々と見なす考え方は、取り立てて中国の専売というわけではない。古代ギリシャ以来、どの国の国民でも多かれ少なかれ他民族や余所者に対して示す態度であった。自らへの原始的な自信過剰や外界への無知の産物である。

 だが、東アジアは、一時期の北方民族の国家を除けば、永らく中国に匹敵する大国が併存しない世界だった。「中国&その他大勢」という配列・序列が結局は続く。だから、その中で中国が、自分と周りの序列を固定化して考えるようになったのも自然の流れだった。

 そして、同じ大国でもローマ帝国は持っていた「外交」という概念が中国では希薄になる。決まった序列の中では、対等な立場での交渉事などあり得なくなるからだ。

 この中国の華夷思想は、支配階級の満州族が漢民族へ同化し、漢民族の意識が昂揚したとされる後の乾隆帝の時代に最高潮に達した。「中国人は世界の4分の3が自分のものだと思い込んでいる」とカトリックの宣教師に評された時代である。

 多くの周辺民族が華夷思想を受け入れていったとすれば、その理由は実益だった。中国の大国としての余裕がバラ撒きをやってくれるからだ。頭さえ下げていれば、朝貢貿易で中国は寛大にも相手を大いに儲けさせてくれる。

 そして、中国にとってこうした慰撫費用は、周辺国を大人しくさせておくことを可能にする必要経費だった。

 何やら、今の中国と経済関係を持つ国々の在り様に似ているようでもある。自国の経済規模が拡大してその恩恵に他国も与っているなら、そこにかつての中華とその他大勢の構図を中国人が重ね合わせたとしても不思議はない、ということなのだろうか。

 周囲が中華を慕うという序列社会が出来上がれば、当時の中国はそれで満足していた。それは曖昧な秩序ではあったが、機能していた。そしてその曖昧さが、国境という概念を厳密化する考え方を中国王朝の頭から消してしまう。これが後の時代に隣国との問題を起こす遠因にもなっていく。

 ロシアも、ネルチンスク条約によって清との交易の道が開けることになった。この頃までにはロシアも毛皮の売り込みだけではなく、先進国である清の諸産物の魅力もよく分かっていた。この貿易の利益維持のために、ロシアはその後条約遵守の姿勢を保った。従って、中ロ交渉の第2ラウンドは引き分けといったところだろうか。

 康熙帝の晩年には露清の交易が一時途絶えた。清がロシアからの毛皮に魅力を感じなくなってきたことがその理由だったようだ。他国を惹き付ける品揃えができません、は今のロシアの対中貿易を見ると、これも昔からの伝統であるように思えなくもない。

 しかし、ロシアは毛皮の販路と清からの製品輸入を何としても確保し続けたい。その執念がどうやら実って、別の条約を締結することで何とか交易再開を果たした。ロシアの主力輸出品はその後も毛皮で、ヨーロッパ向けを追い抜いて清はその最大の輸出先になった。逆に清からは、綿布、絹織物、それに茶がロシアへ輸出された。

シベリア経由で品質の高い中国製品が欧州へ

 ちなみに、ロシアが輸入した中国産の茶は、1800年代になってもサンクトペテルブルクやロシア全土で、ヨーロッパのそれより品質が良いことが賞賛されたという。中ロ国境から欧露部までの陸路が、中国から喜望峰回りでヨーロッパに行き着く海路より短いことがその理由だったのだろう。

 今のウランウデ(シベリア鉄道とモンゴル方面へ向かう鉄道との分岐点)からサンクトぺテルブルクまでが鉄路で約6300キロ、これに対して極東から喜望峰回りでハンブルクへは海路でおよそ3万キロ弱だからその差は大きかった。保温技術を持たずに赤道を2度も越えなければならない海路では、輸送途上での茶の品質劣化は避けられまい。

 こうして中ロ間におおむね静かな通商だけの時期が続いた。ロシアが1856年にクリミヤ戦争で英仏土の連合軍に敗れ、当時の「東方(トルコ)政策」の挫折を余儀なくされてから目をもっと東に向けるまでの160年ほどの間である。

 ロシアとの接触が始まってから後、清ではロシア語の教育機関として俄羅斯(ロシア)文館が設置された。従って、付き合いの初期段階では清政権もある程度の注意はロシアに対して払っていたのだろう。

 1700年代初めに康熙帝の使者が、ロシアの南シベリアとウラルを通って今日のカルムイキヤ(カスピ海沿岸)との間を往復している。そこで得られたロシアの現地情報は、帰国後皇帝に詳細な報告として提出された。それを読んで康熙帝は呟いたかもしれない、「どうでもいいが、エライ田舎じゃのう」。

 だが、皇帝の外を知ろうとするこうした姿勢が清国政府の末端にまで広がらない。俄羅斯文館も1700年代には開店休業で放置された(ずっと後に、今の北京大学の一部になっていく)。清のロシアに対する関心は結局高まっていかなかった。

 1800年代初期にはロシアからもヨーロッパ事情を伝えるかなりの文献が清王室に献上されたのだが、開店休業の俄羅斯文館ではロシア語からの翻訳もママならず、手付かずで宝の持ち腐れに終わっている。

 清は「平和ボケ」に陥っていたのだ。だから、まともな海外情報が蓄積されず、1800年代に入ってロシアが極東攻勢をかけてくるまでは、ロシアとモンゴルのはっきりとした区別すらついていなかったと言われる。

 中国がこうした姿勢を根本から覆すには、1900年を挟む日清戦争と日露戦争を待たねばならなかった。和蘭風説書に然るべき注意を払っていた江戸幕府とは確かに違う。

 話が脇道にそれるが、1738年にロシアの千島探検隊が初めて千島南部へ足を踏み入れ、翌1739年にはシパンベルグが日本本土を初めて海から視察している。彼らが期待したのは日本からの食料調達であった。アラスカからの毛皮輸出事業(予想したほどには順調に進まなかったらしい)が、常に食料の補給を必要としていたからである。

 正式に通商を求めるエカテリーナ2世の使者としてラクスマンが根室に来航したのは1792年で、ロシアが明に通商を求める使いを送ってから175年ほど、そして日本がロシアの存在をモスコビエンとして和蘭風説書(1649年)で知ってから150年ほど後だった。

 清の存在がロシアの動きを北に大きく迂回させ、それが日本の鎖国政策を保障していたとは確かにその通りだったようだ。

(つづく)

これまでの連載:
第1回「アジアへの恐怖がもたらしたロシアの膨張政策」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36928
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36977


09. 2013年1月24日 00:38:26 : xEBOc6ttRg
日中間の緊張ますます高まる

衝突なら深刻な事態に

2013年1月24日(木)  The Economist


 中国と日本は、いつの間にか戦争への道を進んでいる。両国の紛争の元となっている島々の領海と領空で、中国はここ数十年間にわたる日本の実効支配に挑むべく、挑発行動をエスカレートさせている。この件を扱う中国メディアの表現は刺々しさを増してきた。中国日報は、日本が「世界にとって真の危険国であり、脅威である」と報じた。環球時報(人民日報が発行する国際紙)も、両国間で軍事衝突の「可能性が高まっており…我々は最悪の事態に備える必要がある」と書いている。中国は、両国間で70年ぶりとなる軍事衝突に備えている様子だ。


 歴史と領土に対する日中の認識の違いは広く知られている。現在切迫しているのは、東シナ海に位置し、日本が「尖閣諸島」と呼んで実効支配する5つの小島を巡る問題だ。中国はこれらの島々を「釣魚島」と呼び、自国の領有権を主張している。経済が深く関わり合う両国の指導者に求められる理性ある対応は、双方の食い違いを解決するか、あるいは問題を棚上げして波風を立てないことだ。少なくとも、以前はこれが日中間における了解事項となっていた。

 だが、その状態は昨年9月に崩れた。当時の野田佳彦首相が、日本がまだ所有していなかった3つの島を国有化したからだ。これは、昨年10月まで東京都知事を務めていた中国嫌いの右翼政治家・石原慎太郎氏の手に島が渡るのを阻止しようと日本政府が講じた苦肉の策であった。

 しかし中国は、国有化は領有権に関する主張を強化しようとする日本の反中的な陰謀だと主張した。そして、これらの島をとりまく領海と領空に対する日本の占有状態を潰しにかかった。中国は、まず複数の監視船を送り込んだ。12月には偵察機1機を島々の上空に飛ばした。これに対して日本は戦闘機を緊急発進させた。この月、日中両国の航空機は島々の領空近くで追跡劇を演じている。

 新聞の報道によれば、日本は、中国が次に領空侵犯をしたら、警告射撃を命じる構えだという。中国のある将官は、そのような事態になれば「実際の戦闘」の開始として受け取ることになると述べている。中国が島々の支配権を争う限り、両国関係は一触即発の状態となり、軍事衝突が危ぶまれる。

 米国の高官は今週慌てて東京入りし、タカ派の安倍新政権に対して警告した。日本が武力攻撃を受けた場合、米国は日本の防衛に駆けつける義務を負っている。中国との紛争に巻き込まれるのは、米国にとって考えるのも耐え難い事態だ。

 だが度重なる中国の進入を受けている日本の反応は理解できる。安倍晋三首相は、10年間削減が続いた国防費を増額すると発表した。1月の第3週、安倍首相は東南アジア諸国を歴訪し、中国の拡大路線に対する懸念を共有する各国との関係強化を図った。

 東南アジアにおける安倍首相の狙いはいかにも露骨だった。しかし中国は、尖閣諸島(釣魚島)を中国に引き渡さない限り、日本が何をしても満足しないのかもしれない。同じく1月の第3週、中国日報は社説で日本が中国との関係改善を図っていることを認めた。だが、その直後、日本のこの努力を「表裏ある戦略」の一環だとしてはねつけている。中国は日本が脅威であると言う。だが、日本は中国と異なり、1945年以降は軍事行動を起こしていない。

 中国の外交官は、中国が国内の諸問題にあえでいる隙を突いて、日本が中国をやり込めようとしていると非難している。そして、中国による尖閣諸島への幾度にもわたる進入が、弱体政権や経済不振などに悩む日本の弱みにつけ込むものだとの考えには不満を露にする。中国は他の視点や利害に目を向けるつもりはなさそうだ。この熱狂的愛国主義がどこから出てくるのか、はっきりとはわからない。もしかすると、インターネット上で激化している超愛国主義的な国民感情に中国政府が応えているのかもしれない。

アジアの悲惨な歴史を繰り返すな

 今の状況は1世紀前の東アジア情勢と非常によく似ており、見過ごすことはできない。当事、横暴な態度に出ていた日本は、大陸への拡大を正当化するため、愛国主義という危険な思想を身にまとった。外国への侵略に道理を与え、同時に被害者ぶりをアピールした。現在、中国が海洋における拡大を追求する中で犠牲者としての表現を使うのは、当事の日本のそれと驚くほど似通っている。中国は日本と軍事衝突する可能性に言及している。もしそんな事態になれば前回と同様の悲惨な結果を招くだろう。それは中国及び周辺地域の平和、そして経済成長を危険にさらすことになる。

 米国をはじめとする世界は、たとえ「陰謀」と受け取られようとも、手遅れとなる前に中国に警告を発する義務がある。今、中国国内で展開している狂乱状態に対して、中国内の誰が異議を唱えるのだろうか。

©2013 The Economist Newspaper Limited.
Jan 19th 2013, All rights reserved.

英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。


英国エコノミスト


1843年創刊の英国ロンドンから発行されている週刊誌。主に国際政治と経済を中心に扱い、科学、技術、本、芸術を毎号取り上げている。また隔週ごとに、経済のある分野に関して詳細な調査分析を載せている。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130122/242641


10. 2013年1月24日 01:57:12 : xEBOc6ttRg
【第139回】 2013年1月24日 莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
小惑星の接近撮影に成功した探査衛星
急速に進歩を遂げる中国の宇宙技術
 2年前の夏、富士箱根伊豆国立公園の一角にある伊豆・天城高原で開催された「天城会議」に出席した。そのとき、小惑星「イトカワ」を探査してドラマチックな地球帰還を実現した衛星「はやぶさ」の開発にかかわった技術者と、1989年から気仙沼に流れ込む川の上流にある山で植林活動を続けてきたNPO法人「森は海の恋人」の代表を務める畠山重篤さんの講演を聴かせていただいた。そのうち、「はやぶさ」の話が宇宙の神秘の一端を覗かせてくれた。

 2003年5月9日、鹿児島から打ち上げられた「はやぶさ」は、地球から約3億kmも離れた、直径がわずか540mの小惑星イトカワを探査する使命を受けていた。その「はやぶさ」は数々のミッションを達成したのち、化学エンジンの燃料漏れ、イオンエンジンの異常停止など、予期せぬさまざまな苦難を乗り越えて、ようやく2010年6月13日に満身創痍の状態で地球へ帰還した。

拡張ミッションを
成功させた探査衛星

 最近、中国からも同じく宇宙探査の神秘を覗かせてくれる話が届いた。月探査衛星「嫦娥2号」の予想外の長旅である。

 嫦娥2号はもともと同じ月探査衛星である嫦娥1号の予備機として、1号機のミッションが遂行できなくなったときに、それを補うための存在だった。しかし、2007年10月、嫦娥1号は無事、任務を終えた。それで、予備機としての嫦娥2号の任務は月探査プロジェクト第二期の先導機とし、月面軟着陸の鍵となる技術の検証に切り替えられた。

 2010年10月1日、新たな使命を担った嫦娥2号が月に向けて打ち上げられ、月軌道への直接投入や、Xバンド周波数帯での観測実験、月面の高解像度撮影などの任務を完遂し、同年12月、地球から38万km離れた月でのミッションは成功裏に終了した。そこで月の軌道から150万km離れたL2点を目指し、さらに遠方の宇宙探査をし、拡張ミッションを行うという新しい任務を与えられた。

 その新しい探査目標は、L2点からさらには700万km離れたトータティスという小惑星だ。嫦娥2号がトータティスに接近し、そのトータティスに対する観察を行うのが新しい任務だ。

 戦いの神トータティスにちなんで命名されたこの小惑星は、約4年に1度の頻度で地球のそばを通過する。現在までに最も接近した時の距離はわずか88万kmであった、という。ネット上では「2012年の世界滅亡は戦いの神の仕業では?」などと騒がれたことを覚えている読者の方がいらっしゃると思うが、その騒ぎはまさにこの小惑星トータティスをめぐって巻き起こったものだ。

 12月13日、嫦娥2号がトータティスにフライバイ(接近通過)して光学撮影を行い、そのミッションを無事成功させ、2年あまりにわたる嫦娥2号のミッションはこれで成功裏に終わった。その成功によって、中国は初めて惑星間探査機を手にし、地球から700万km離れた宇宙での軌道設計と制御技術を掌握することになった。

 中国のメディア人民網日本語版によれば、月探査プロジェクトを担当する呉偉仁(ウー・ウェイレン)総設計師は、「嫦娥2号」が達成した成果を以下の4点にまとめている。

 @2度目の拡大実験により、米国、欧州宇宙機関(ESA)、日本に続き小惑星の観測に成功した。A衛星の小惑星探査の軌道設計と飛行制御技術について、技術的難題を解決し、38万kmから700万km以上へと飛行距離の飛躍を実現した。B初めて天体望遠鏡を総合的に利用したトータティス周回軌道の正確な測定を実現し、国際天文学連合(IAU)の観測データをさらに検証・充実化した。C1回の打ち上げで月、L2点、小惑星といった複数任務を実施するプロジェクト形態の先駆けとなったなど。

中国の宇宙開発関係者に
大きな自信

 一方、嫦娥2号は予備機から先駆者へ、月探査機から太陽系人工小惑星へ変身し、その寿命はもともとわずか6ヵ月だった設計寿命を越えて、すでに二十20数ヵ月が経っている。トータティスへフライバイした後も、毎日10万kmのスピードでさらなる飛行を続けている。1月21日の報道によれば、嫦娥2号はまだ燃料を5kgほどもっている。順調に行けば、3月に飛行距離が2000万kmを突破することになるだろうと見られる。

 嫦娥2号の予想外の健闘は、中国の宇宙開発関係者に大きな自信を与えた。嫦娥2号に対するコントロールで、新たに建設されたカシュガルとジャムスのコントロールネットワーク局、上海の超長基線電波干渉計(VLBI)観測局に対してテストを行い、中国の天体観測のレベルと能力を検証し、将来の宇宙探査活動、とりわけ小惑星探査分野のために堅固な基礎を築いたと言えよう。

 現在、月面着陸の任務を担う「嫦娥3号」は、実機(フライトモデル)の開発が順調に進められており、今年下半期にも打ち上げられる見通しだ。「嫦娥3号」は、中国の宇宙探査機として、初めて地球外の天体にソフトランディングする任務を背負っている。


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