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中国、メディアで連日の“戦争指示” 日本は宮古島市にF15常駐検討 (ZAKZAK) 
http://www.asyura2.com/12/warb10/msg/598.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 1 月 15 日 13:26:00: igsppGRN/E9PQ
 

          中国の習近平指導部は尖閣諸島強奪に向け、戦争準備を始めたのか


中国、メディアで連日の“戦争指示” 日本は宮古島市にF15常駐検討
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20130115/frn1301151142003-n1.htm
2013.01.15 夕刊フジ


 中国人民解放軍を指揮する総参謀部が全軍に対し、2013年の任務について「戦争の準備をせよ」との指示を出していることが明らかになった。14日付の軍機関紙「解放軍報」などが伝えた。中国の主要メディアも、沖縄県・尖閣諸島をめぐる軍事衝突を想定した番組を連日放送しているという。一方、日本の防衛省は、中国機による尖閣周辺での領空侵犯に対処するため、同県宮古島市の下地島空港にF15戦闘機を常駐させる案の検討を始めた。

 解放軍報によれば、総参謀部が全軍に向けて出した13年の「軍事訓練に関する指示」の中で、「戦争準備をしっかりと行い、実戦に対応できるよう部隊の訓練の困難度を高め、厳しく行うこと」と記されている。総参謀部は昨年も訓練指示を出していたが、今年のような戦争を直接連想させる表現はなかった。

 同紙は今年の訓練目標について、昨年11月に就任した習近平・中央軍事委員会主席(総書記)の重要指示に基づいて作成したと解説している。

 国営中央テレビ(CCTV)など官製メディアも今年に入り、日本との戦争を想定した特集番組を連日放送し、軍事的緊張感をあおっている。

 対日強硬派として知られる中国軍事科学学会の副秘書長、羅援少将や、元海軍戦略研究所長の尹卓少将ら多くの軍関係者がメディアに出演し、主戦論を繰り広げる一方、日本と外交交渉を通じて尖閣問題の解決を主張する学者らはほとんど呼ばれなくなったという。

 こうしたなか、防衛省は尖閣諸島の警備態勢を強化するため、下地島空港にF15戦闘機を常駐させる案を検討している。

 現在の防空拠点となっている航空自衛隊那覇基地(那覇市)は尖閣までは約420キロあり、F15が緊急発進しても到着まで15〜20分かかるとされる。下地島空港は尖閣まで約190キロと近いうえ、3000メートルの滑走路があり、防衛省は「利用価値は非常に高い」(幹部)と評価している。

 昨年12月に中国機が尖閣周辺の領空を侵犯した際、空自は那覇基地からF15戦闘機8機を緊急発進させたが、到着時には中国機は領空を出ていた。安倍晋三首相は今月5日、防衛省幹部らに領空・領海の警備態勢の徹底を指示。防衛省は具体策の検討に着手した。

 ただ、日本政府は下地島空港について、沖縄返還前で米軍統治下の1971年に当時の琉球政府の屋良朝苗主席と「民間航空以外の目的で使用しない」とする覚書を締結。沖縄の本土復帰後、西銘順治知事とも同様の確認書を交わした経緯があり、地元との調整が必要となる。

 中国は最近、「日本は琉球(=沖縄)を中国から強奪した」と主張し始めており、尖閣が奪われれば八重山列島や宮古列島だけでなく、沖縄本島まで覇権を広げてくる可能性がある。

 ある日本研究者によると、最近北京で行われた尖閣問題に関するシンポジウムで「論争の中心は対日戦争を小規模にとどめるか、全面戦争に突入するかが焦点になりつつある。小規模戦争を主張する人はハト派と呼ばれ、批判されるようになった」という。

 中国は、尖閣をきっかけに、日本を新たなチベットや新疆ウイグルのようにする気なのか。


 

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コメント
 
01. 2013年1月15日 14:41:04 : Pj82T22SRI

中国、近く衛星破壊実験か 破壊能力向上? 米国の大きな脅威に 米専門家
2013.1.15 11:40 [中国]
 【ワシントン=佐々木類】中国が高軌道上で、米国の衛星を破壊する能力を向上させているとして、米当局が警戒を強めている。ロイター通信が14日、昨年末までに米当局がまとめた極秘文書をもとに伝えた。中国が近日中に軍事衛星破壊実験を行う可能性が高いと指摘する専門家もいる。実験が高軌道上で行われて成功すれば初めてで、高軌道を周回する軍事衛星に情報収集を依存する米国にとって大きな脅威となる。

 現在、米国はGPS(衛星利用測位システム)用の衛星を上空1万1千マイル(約1万7700キロメートル)で運用し、軍事用の通信衛星と早期警戒衛星はその2倍に当たる2万2千マイルの高軌道で運用している。

 実験は、弾道ミサイル発射探知用の米早期警戒衛星が周回する高軌道上の衛星破壊が目的とされる。

 中国は宇宙空間における軍事活動の拡大を狙い、2007年と10年に低軌道の気象衛星破壊実験に成功している。07年の実験の際、破片など1万個以上の宇宙ゴミを出して国際社会の批判を浴びた。

 一方、米軍は中国を牽制(けんせい)する目的で、08年2月に北太平洋上の海軍艦船から衛星破壊実験を実施して成功させている。

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北方領土4島の主権に疑義なし ロシア外務省 日本側にくぎ刺す
2013.1.15 08:20 [ロシア]
 北方領土問題をめぐり菅義偉官房長官が「4島の(日本)帰属が確認されれば、実際の返還の時期は柔軟に対応していく」と述べたことに対し、ロシア外務省のザハロワ情報局次長は14日、官房長官発言はよく知られた日本の公式見解だとしつつも、4島に対するロシアの主権への疑義は「受け入れられない」と強調した。

 メディアの質問への回答として発表した。ザハロワ氏は、事実上の安倍晋三首相特使として訪ロ予定の森喜朗元首相が「3島返還」で決着を図ることも選択肢だとの認識を示したことなども念頭に、1956年の日ソ共同宣言がうたう「平和条約締結後の色丹島、歯舞群島の2島引き渡し」以上を求める日本側の姿勢にくぎを刺した。(共同)

北方領土4島帰属確認なら柔軟対応「3島返還」めぐり菅官房長官

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02. 2013年1月15日 19:06:38 : YxpFguEt7k
孫崎享 講演会「戦後史の正体」から読み解く日米関係
◆主催 口丹 自然のくらし協議会
http://kuchitan.info/lecture/mago/

日に日にきな臭くなる今日この頃だからこそ、日米の関係を見直してみたいものです。


03. 2013年1月15日 19:28:17 : I5yknRfdOk
何としてでも日本を戦争に巻き込みたい
基地外ねとうよがどうして毎日こうも「大漁」なんだ
くだらん妄想に浸ってないで外に出て雪かきでもしろ

04. 2013年1月15日 22:26:30 : aQq0UGoaxY
産経は、日中戦争を煽っているが、さて誰が得をするのでしょうか。

1.中国→自国内にある日本企業の工場を没収→経団連発狂→日本人は大陸で棄民
2.韓国→日本企業に替わって中国に入り込む→統一教会
3.統一教会→安倍(不正選挙)キックバック
4.安倍キックバック→産経に裏金(謀略報道ご苦労様)

ほら繋がった。
死ぬのは中国人と日本人で、儲かるのは朝鮮人(CIA傀儡)でした。

謀略報道お疲れ様です。


05. 2013年1月16日 00:52:52 : Pj82T22SRI
JBpress>日本再生>国際激流と日本 [国際激流と日本]

米中が余儀なくされる「ぎこちない抱擁」
悲観的にならざるを得ない米中関係の見通し
2013年01月16日(Wed) 古森 義久
 21世紀の米中関係はどうなるのか――。

 オバマ政権の中国への対応は甘すぎるとする警告がワシントンで波紋を広げ始めた。その契機は2人の気鋭の中国研究者による本だった。本のタイトルは『ぎこちない抱擁=21世紀の米国と中国』、著者は元国防総省中国部長のダン・ブルーメンソール氏と元財務次官補のフィリップ・スワゲル氏である。2012年末に大手シンタンクのAEIから刊行された。

 内容は共著者の経歴が示すように、中国の実態、そして米中関係の展望を安全保障と金融・経済の両面から分析し、予測したものだ。同時にオバマ政権の対中政策を鋭く批判し、政策上の提言を供していた。両氏ともワシントンでは広く知られた実績の多い政策提言者でもある。

 米中関係は、超大国の米国にとって最も気になる二国間関係である。その米中関係が今後どう動いていくのか。その行方のほとんどは中国の出方にかかっている。なぜなら国際関係、特にアジアの情勢については、米国は基本的には現状維持派だからだ。しかし、中国はまさに急速に台頭する勢力であり、今後どのような対応をしてくるのかは分からない。その中国の動き次第で米国の出方が変わってくる。そしてその結果、米中関係が形成されていくわけだ。

米国の目標は中国の言動と世界観に変化を起こさせること

 「ぎこちない抱擁」という同書のタイトルは米国と中国との今後の心地のよくないハグを表現している。米中両国は安全保障や政治的価値観でいかに激しく対立しても、経済面や対テロ闘争などでは協力をしなければいられない。お互いを抱きしめることも必要となる。ただしその抱擁が、仕方なく、心地悪く、ぎこちない表面だけのポーズとなる見通しも十二分にあることになる。そんな見通しへの思いを込めたのがこの書のタイトルなのだ。

 共著者のブルーメンソール、スワゲル両氏は本書の内容について、多様なメディアで発言し、寄稿している。寄稿の中で最も長文だったのが政治雑誌「ナショナル・インテレスト」2012年12月号に掲載された「中国そして、ぎこちない抱擁」と題する論文である。この論文は本書の骨子とそれに基づくオバマ政権への警告を明確に記している。その重要点を紹介して、米中関係の今後への指針としよう。

 同書は中国の今後の政策の重要部分として対日政策もたびたび指摘している。言うまでもなく米中関係の動向はわが日本にも重大な影響を及ぼすのである。

 同書はまず米中関係の基本について以下のように要旨を述べる。

・米国にとって中国は敵でも友でもない。経済面でのパートナーであると同時に安全保障面での競合相手なのだ。中国は米国を深い疑惑の目で眺め、自国の領域外での行動がグローバルなインパクトを発揮することを理解していない。このダイナミックな中国の動きにうまく対処することこそ米国にとっての極めて重要な挑戦なのだ。米中両国はぎこちない抱擁を余儀なくされる。一方では両国は共通の経済上の利害に結ばれ、その一方、安全保障上は互いにナイフを突きつけ合っているからだ。

・米国の対中政策の目標は、中国の言動と世界観に変化を起こさせ、米国や国際社会全般にとって好ましい方向へ動かすことだ。そのためには戦略的な思考と軍事力が必要になる。中国人民解放軍は過去20年以上、毎年、国防費の顕著な増額を得て、世界でも最も強力なミサイル戦力や潜水艦戦力を発展させてきた。有事には米軍部隊の接近を阻止し、平時でも近隣諸国を威嚇することができる。米軍は海や空でもっと戦力を強化しないと、この中国軍への均衡が取れなくなる。

・米中間の経済関係は両国に利益をもたらす。中国からの安い輸入製品は米国の消費者を利するし、米国の企業は中国での生産活動で利益をあげる。米国政府は自国の債券を中国側に購入させることで巨額の資金を得る。中国はその結果、国内経済の高度成長を可能にして、国民の不満を抑えることができる。

中国がたどる「穏やかなシナリオ」と「悲観的なシナリオ」

 以上のような現状から今後はどうなっていくのか。

 ブルーメンソール氏らは中国の今後の動向として次のような3つのシナリオを提起した。中国共産党がこれからの中国の国民一般の不安や期待をどうさばけるか、によって、中国という国家の命運は大きく左右されることになる、というのだ。その進路は大別すると2種類あるという。

(1)穏やかで、円滑なシナリオ

 中国共産党政権は国内の経済と社会の圧力への対処に成功していく。経済面では従来の輸出全面依存型から国内経済の活性化を進め、情報の規制も緩和し、市民の自由もいくらか増す。米国にとってこのシナリオは中国がグローバルな経済システムへのより深い融合と、より自由な政治制度の発展させることを意味する。その結果、中国は対外的にも法の統治や紛争の平和的解決をより尊重し、国際的な規則を順守するようになる。軍事力も脅威や威嚇よりも平和と安定の保持に使おうとする。米国は中国がこの方向へ進めば、さらにその加速のために種々の支援をすることになる。

(2)より悲観的なシナリオ

 中国共産党は現在までとあまり変わらない経済への広範な介入を続け、資源の誤った配分、金融の抑圧が生産性を抑えることを継続させる。政治面での自由化は進めず、知識を基礎とする情報関連分野の発展が阻まれる。政治や経済の基本的な改革はないため、経済成長も停滞するが、恐慌は起きない。ただし指導部は国内の不満を抑えるために、対外的な姿勢を高圧的、攻勢的にする。その結果、米国への安全保障上のチャレンジは増す。日本に対しても尖閣諸島を巡る緊迫を強め、国内経済がさらに悪化すれば、国民の反日の感情をさらにあおる。

(3)非常に悲観的なシナリオ

 中国の改革の失敗が経済危機を招く。経済成長率が落ちて、共産党支配への政治的な挑戦を生む。指導部はその対策として国内では弾圧を強化し、対外的にも攻撃的な姿勢を激しくする。中国の国内の失敗を補うためのこの対外的な冒険主義は米国に対し単なる地域的だけでなく、グローバルなチャレンジを突きつける。その結果、中国は多数の諸国から不信を招き、国際経済システムからも排除され、国内経済をさらに停滞させる。

 以上の3つのシナリオのうち、米中関係にとって最も好ましいのが第1の展望であることは当然である。だが同書は現状のままだと、第2あるいは第3のシナリオが現実になる見通しが強いと予測する。その理由としては中国自身の現在の言動が挙げられる。

 「軍事力近代化という名の下での大軍拡、自国国民の政治の自由を奪う処遇、台湾への威嚇的な意図の表明、米国の有力同盟国の日本に対する欠陥のある対処、国際秩序を崩すイランや北朝鮮への支援、自由な国際秩序への造反」などがその実例であり、これらの特徴は米国の利益に反するだけでなく、「中国の無責任」だと断じる。

オバマ政権には中国への「ヘッジ」姿勢が足りない

 では米国はどうすればよいのか。

 「ぎこちない抱擁」という書は以下の骨子をオバマ政権への政策提言として明記する。

・中国との経済関係の保持は重要だが、中国側の知的所有権の侵害や貿易国際規則の違反には手厳しく対応する。経済関係の改善が自動的に中国との対外的な冒険主義を和らげるという幻想も抱かない。

・米国政府は中国のイランへのエネルギー分野での経済投資のような安全保障がらみの活動に対して、十分な制裁や報復の措置を取ることを恐れるべきではない。その結果、米国自身に経済損失が予測されても、ためらってはならない。

・イランや北朝鮮の核兵器開発のような問題で、中国が建設的な役割を果たすことは期待できない。そのため米国は、中国の冒険主義的な行動を抑止するため、米軍の適切な配備や日本、オーストラリア、インド、韓国、シンガポール、フィリピン、ベトナム、台湾などの同盟国、友好国との有志連合の結成を進める。

・米国にとっては、中国に対し「関与」とともに「ヘッジ(万が一の事態に備えての防御)」の態勢維持が不可欠となる。そのための軍事力保持が重要となる。そのヘッジにより、中国の軍拡への抑止と均衡を保ち、中国の軍事がらみの国際的な秩序や安定を乱す動きは断固、抑える。

 以上のような安保面でのヘッジ策を保ちながら、なお経済面での関与を続けていくことが米国にとっての中国との「ぎこちない抱擁」だというのである。そして同書の共著者のブルーメンソール、スワゲル両氏はオバマ政権がこの硬軟両面での対中政策を十分に取ってはおらず、特にヘッジ策への措置がまだ足りないという趣旨の警告を発するのだった。

 中国の威嚇的な行動に悩まされる日本にとっても参考になる、21世紀の対中政策の勧めだと言えよう。


 

JBpress>海外>ロシア [ロシア]

アジアへの恐怖がもたらしたロシアの膨張政策
ロシアと中国(1)〜最初の出会い
2013年01月16日(Wed) W.C.
 ロシアと中国という2つの国が初めて出会ったのは、今から400年ほど前の、日本で言えば戦国末期の頃になる。ロシア人が支配領域を広げながら東に向かい、彼らの方からまず中国の門を叩いた。

 そこから最近までの両国間の交渉史を垣間見ると、今の中ロ関係を支えたり規定したりする要素が多々浮かび上がってくる。それも、これら2国間だけではなく、ヨーロッパともアジアとも話は陰に陽につながってくる。

 昨年末に誕生した日本の新政権には、従来にも増してこれら両国に対して政策の歩を進めることが求められている。そのために、彼らが互いにどう付き合ってきたかの歴史をなぞってみることで、その今に到る間柄を知っておくことも幾分かの意味があるかもしれない。

 ならば、そのそもそもの馴れ初めから始めてみよう。

モンゴルの支配から生まれたトラウマ

 4世紀前になぜロシアが中国と接するようになったのかを探るには、ロシアの歴史をそこからさらに4世紀ほど遡って、モンゴルに征服された時代から眺める必要があるようだ。

 1200年代の初めにモンゴル全部族の長となったチンギス汗は、東へ西へと侵攻作戦を繰り返し、我々が歴史の教科書で習っている通りの向かうところ敵なしだった。

 軍勢だけで30万(そんな大軍は当時のヨーロッパ人には想像すらつかない)、しかも引き連れる馬の数150万頭、羊に到っては900万頭という説まであるのだから、それらを食わせるだけで、文字通り彼らの行軍の後にはペンペン草も生えなかっただろう。

 強力な弓を持ち、飛び抜けた行軍速度の軽装騎兵部隊は、敵の歩兵や陣地に火力と速攻の電撃戦で襲いかかった第三帝国の機甲師団のようなものだ。当時はまだ諸民族の戦争で銃が出現していなかったことも幸いして、騎馬戦での一人勝ちになる。

 広大なロシア平原に点在したスラブの諸都市も、チンギス汗の騎馬軍団の襲来を受けて抵抗空しく破壊されていった。

 今でこそ、モスクワの中心には石造りのクレムリ(城砦)の城壁がそびえている。だが、モスクワでもその他のロシア諸都市でも現在に残る姿の城壁が築かれたのは、モンゴルに手酷い目に遭わされてから100年以上も後のことだ。木造建築で何一つ身を守れなかった教訓が、こうした防御壁の建設を学ばせたのだろう。

 1230年代にスラブ世界はモンゴルの足下にひれ伏すことになった。この過程でどれだけの人的損害を蒙ったのかは分からない。研究者の推定ではロシアの人口は、1000年代の750万人から1200年代の600万人へと減少している。

 その通りなら、人口の5分の1が昇天したか、領外のどこかへ逃走してしまったということだろうか。

 モンゴルに支配された時代をロシアは「タタールの頸木(くびき)」と呼んでいる。ある程度の自治が許されていたとはいえ、約2世紀半にもわたって他民族に従属させられた。その長さで見れば、江戸時代すべてが異民族の支配下に置かれたようなものである。

 日本はモンゴル襲来を神風で撃退し、中国だって支配されたのはたかだか90年と一寸、なのになぜヨーロッパ人の我々がこんなにも長く、とロシア人は過去を嘆いてもみたくなる。

 それだけではない。モンゴルの支配はロシアにとって取り返しのつかない結果をもたらした。

ヨーロッパからロシアが消えていた時代

 この時代はロシアがヨーロッパの地図から消えていたと言われ、その間にロシアでは、西ヨーロッパとも、またポーランドやチェコのようなカトリック系のスラブ民族とも異質な世界が形成されてしまったからだ。

 今日、西側諸国とロシアとの間を隔てる西側から見たロシアの異質性(露骨に言えば後進性)は、元をたどればアジア人によって無理やり強いられたもの、という思いを抱く人々がロシアにいてもおかしくはないだろう。

 中国でも、モンゴルの侵略が行われた1200年代で北部の人口が、一説によればその3分の1に当る3500万人を失ったとも言われる。

 その衝撃は想像を絶するもので、それから歴代の為政者が夷狄嫌いになって海禁政策に走ったという解釈すらある。それもあながち間違いではないだろう。モンゴルは両国の人々や歴史を大きく変えたのだ。

 2世紀半にわたる長いアジアの支配から脱した後のモスクワ公国で、1400年代後半のイワン3世の時代に初めて「ロシア」という国の名前が使用され始めた。

 彼は名門・東ローマ帝国(その頃にオスマン・トルコの攻撃で滅亡)の皇室から妃を迎えて、モスクワが第3のローマたる地位を得たことを大いに喧伝する。そして、東ローマ帝国の紋章であった「双頭の鷲」を公国の国章として継承した。これは今のロシアの国章でもある。

 帝国を名乗り、ロシアという名前でデビューしてもまだ大国と呼ぶには程遠い。当時の支配領域は40万平方キロを多少超える程度で、隣国とはドングリの背比べ。せいぜい今の日本より幾分大きいというレベルだから、東山文化の時代には、ロシアも日本も支配領域の広さでは同じような規模の国だった。

 しかし、そのまま放っておいたなら、どの隣国がいつまたロシアに侵攻して来るか分かったものではない。もう支配されるのは御免だ。こうしてロシアの拡張が始まる。

 対外膨張の始まりは16世紀の、名が体を表す雷帝と呼ばれたイワン4世の時代だった。彼は今のロシア領内に蟠挙した東や南のイスラム国家群を制圧し、次には矛先をもっぱら西や北の欧州諸国に向けていく。

 その後の300年と少しで領土を60倍近くにも広げたのだから、陸続きの大陸国家だったからとはいえ、それはそれでロシアは大したことをやり遂げた、と認めるしかないだろう。

 西方との戦に向かった雷帝が、ウラル山脈の東にも興味を持っていたのかは、今となっては知るすべもない。もし持っていたとしても、さすがにそう簡単には八面六臂になれなかっただろう。ならばその制覇を他人に委ねるしかなくなる。

 そこへ都合よく出てきたのが、毛皮の収集に熱心だった豪商・ストローガノフ家で、雷帝はこの商人に「シベリアの地をお前にやるから、開拓して税(毛皮)を持ってこい」となる。

東進にコサックが果たした役割


V.スリコフ 「エルマークのシベリア征服」1899年=ウィキペディアより
 とはいえ、ウラルの東の広大な土地(今の西シベリア)は、皇帝が支配権を確立していたわけでも何でもなかった。

 だから、住んでいる土地を自分たちが知らぬところで勝手にやり取りされた原住民にしてみれば堪ったものではない。当然ながら、怒り捲(めく)って侵入者を襲ってくる。

 そうなると、こうした外敵から自分たちの新たな権益を守るガードマンが必要になる。だが、あいにく皇帝の軍は他の方面で超多忙だから、侵入者・ストローガノフ家はコサックたちを私兵として雇うしかなかった。

 そのコサックとは、ロシアの南部辺境地に集まった税逃れの農民や犯罪者たちで、自由民といえば聞こえはいいが、要は税も払わねば陛下の命令にも従わない狼藉者どもだった。

 彼らの侵攻や略奪に手を焼いた公国側が懐柔策を何度も繰り返して、その一部を何とか取り込みながら公国の辺境防衛に当らせるようになる。ストローガノフ家に雇われたのも、こうした半公認のコサックたちだった。そして、彼らがその後の中国との出会いでの主役になっていく。

 コッサク兵とその頭領のエルマークは、16世紀の後半(日本史で言えば「本能寺の変」の少し前あたり)にシベリア侵攻を開始し、数年でシビリ汗国の首都を陥れた。

 アウトローたちはこの功績で、めでたく皇帝の赦免に浴してまともに扱われるようになる。ロビン・フッド、あるいは『水滸伝』のロシア版、とでも言ったところだろうか。

 ストローガノフ家は、新たな征服地での毛皮採取とその取引を拡大する。新天地の開拓を任されて商売を拡大するというこの種のビジネスモデルは、のちの英国の東インド会社(特許状は1600年)にもわずかながら先んじるものだった。

 その後の戦いでエルマークは命を落としたが、一度動き出した車輪は止まらずにコサックたちは戦いを続け、1604年までに遠征の前線はすでに西シベリアのトムスクに到達していた。

 当時のロシア東端のカザンから今日の鉄道路線キロで計算すれば、トムスクまでの2500〜2600キロを20年余りでものにしている。海路を使って中南米を制覇したコルテスのそれにはかなわないが、陸路ではチンギス汗に次ぐ進軍速度だろう。

 雷帝の後の皇帝は、コッサク兵に加えて正規軍の銃兵も遠征に投入するようになった。官民パートナーシップを維持しながらも、東進が次第に国家政策の色彩を帯びてくる。

 遠く東へ向かって勢力(国境線)を広げようとした意図が国策に変わっていった裏には、毛皮販売での利益もあろうが、タタールの頸木で身に染みた「凶暴なアジア人種」への恐怖感があった。これが、アジア民族に征服された経験のない他のヨーロッパの面々との大きな違いになる。

ポルトガルに遅れること100年

 もう1つヨーロッパとの違いを挙げるなら、海路で先にアジアへ向かったポルトガルやスペインがキリスト教の布教を伴っていったのに対し、少なくとも1700年代の後半まではロシアはそうした動きを見せなかった点だろう。

 東への勢力拡大に従って教会もシベリアに建設されて行くが、それは主としてコサック兵に続き農民としてその地に移住してきたロシア人のためであった。

 宗教改革以来の失権回復でマーケッティングに精を出さねばならなかったカトリック教会と、そうした立場には置かれていなかった正教との違いが出たようだ。それに、シベリア全体でもわずか20万人といわれた当時の人口では、布教も何もあったものではない。

 このことは、ロシアが東方を征服するに当たって、教会を通じた文化・文明の伝道者という側面が希薄だったであろうことを推測させる。アジアから先進国への崇敬の念を引き出せなかった。

 1618年 ― ロシアではロマノフ王朝初代皇帝ミハイルの治世、中国では明の万暦帝晩年の御世― に、コサックのペトリンを団長とするロシアからの非公式な(皇帝の親書を携えない)使節が初めて北京を訪問した。

 これが、公式にはロシアと中国の初めての出会いということになる。1517年に広東へヨーロッパの国として初めて到達したポルトガルに遅れることほぼ100年である。

 そこに中国があったから会いに行った、というわけでもなかったようだ。どうやら、対中取引の魅力を英国から仕入れたかららしい。

 当時、明との通商を求めて先行するポルトガルに追い付こうとしていたのは英国だった。1500年代の英国の冒険商人組合は、毛織物輸出市場の開拓を目的として、対象とする大きな市場ごとに販売会社を設立していく。

 進取の気運といえば聞こえがいいが、当時の英国や欧州の国内経済は貧相なものだったから、外需に頼らねばやっていけない。「後進地域・欧州」にとって貿易は死活問題だった。

 その中にはロシア向けの販売会社もあった。だが、彼らの狙った市場開拓先はロシアだけではなく、ロシアを経由して遠く中東や明へたどり着くことまで視野に入れていた。

 それがポルトガルに追い付くための作戦で、海路での遅れを陸路で取り戻せ、である。のちに7つの海を支配した英国にもそんな時代があった。

 人に言われるまでは自分でアジアに向けて他国との通商競争に参入することなど、思い付く余裕などあるわけがないロシアであった。しかし、英国がこの陸路案への許可を求めてくると、そんなに旨そうな話なら他人にやらせるより自分で、となる。これがどうもロシアのペトリン使節団派遣の動機だった。

中国の10分の1程度だったロシア経済

 とはいえ、当時のロシアの為政者が持っていた中国についての知識は限られたものだったろう。ヨーロッパでも中国についての知識と言えば、書かれてから300年近くも経たマルコ・ポーロの『東方見聞録』か、1585年にスペインのメンドーサが著した『シナ大王国記』程度だった。

 これらの書は、いずれも総じて中国や中国人のことを好意的に書いている。余談だが、『シナ大王国記』には「(中国の)手洗い所が実に清潔」といった下りもあり、当時のヨーロッパの衛生水準がいかに酷い状態に置かれていたかも想像させてくれる。

 こうした紙の上での知識が西方からすでに流れ込んで、ロシア人のアジア人種一般への恐怖感を多少は和らげたかもしれない。

 また、中国についての情報は、明と隣接する辺境民族におちぶれたモンゴルや、中央アジアの諸民族・商人からの伝聞によっても手に入れることができただろう。その点で、ヨーロッパより中国(明)に関する情報をむしろ多く得ていたと見える。

 ロシア語では中国を「キタイ」と呼ぶ。マルコ・ポーロは『東方見聞録』で中国を「カタイ」と呼んでおり、この書からロシア語に中国の意として入ったのかもしれない。当時のモンゴル語で中国を意味する「Qitad」からきた、という説もある。

 だが、しょせんはどんな相手かよく分からないことには変わりない。だから、いきなり咬み付かれても困るので、最初は情報収集を目的として非公式な使いを出す程度にとめたようだ。ロシア皇帝が送り出す正式な使節団はこの30年以上後の、中国で王朝が清に代ってからが最初になる。

 明の側では、1602年に李之藻が「坤輿万国全図」を作成している。来訪したヨーロッパ人の知識を基に中華とその周辺を1つに描くという、従来の中国の世界図から外へ踏み出したものだ。しかし、その地図の中でロシアの存在は全くと言っていいほど目立たない。

 今ならどんな地図だろうと厭でも目に入る「北方の広大な(そして威圧的な)国・ロシア」のイメージなど、その片鱗すらまだどこにもない。

 故A.マディソンの推計によると、1500〜1600年で旧ソ連に属す地域(現在のロシアとウクライナ、ベラルーシ、バルト、コーカサス、それに中央アジア)全体でのGDP(国内総生産)は85〜115億ドル(1990年の米ドル換算、以下同じ)、人口は1700〜2000万人ほどだった。

 対する明は同じ時期で、GDPは600〜960億ドル、人口は1億〜1億6000万人だから、当時の人々がそれを知る由などなかったにせよ、国力が自分たちより10倍近く大きな国にロシアは交際を求めたことになる。

 しかも、北京を目の当たりにしたペトリンはその規模に肝を潰したであろう。当時の人口が70〜100万人の北京は世界最大の都市だった。ロシアの首都・モスクワの同じ頃の人口がせいぜい10万人足らずだったから比較にもならない。

 目立つわけでもないうえにペトリンは非公式な使いに過ぎないから、皇帝への謁見は許されない。万暦帝から「付き合ってやらんわけでもない」という返事だけをもらってスゴスゴと引き上げるしかなかった。こうして交渉の第1ラウンドは中華帝国と蛮族の差で終わる。


06. 2013年1月17日 02:30:45 : KjDe3Re6QA
JBpress>日本再生>国防 [国防]
セオリー通りに“報復”の対中ミサイル配備を
軍備は強力な方が戦争を招かない
2013年01月17日(Thu) 北村 淳
 拙論「マスコミが伝えない中国の対日攻撃ミサイル」(2012年12月25日)で指摘したように、現時点においても中国や北朝鮮の各種長射程ミサイル(弾道ミサイル、長距離巡航ミサイル)は日本各地の戦略目標を破壊することが可能である。

 このような軍事的優勢を外交的恫喝として用いさせないためにも、一刻も早く何らかの抑止力を保持しなければ対等な外交交渉のテーブルにすら着けないことになる。

日米同盟は万能な抑止力ではない

 日米同盟が存在する以上、中国もアメリカの軍事介入を恐れざるを得ず、対日長射程ミサイル攻撃など絶対に実施しない、と日米同盟を“万能な抑止力”と考えるのはあまりに身勝手な考え方にすぎる。

 対日ミサイル攻撃の可能性をちらつかせての恫喝外交に日本が直面している段階では、日米安保条約に基づくアメリカによる本格的軍事支援はなされない。アメリカの軍事力にそこまで期待するのならば、同盟関係でなく服属関係に変更してアメリカの属領になることを意味する。中国にせよ北朝鮮にせよ、強力な長射程ミサイルによる対日攻撃能力を恫喝的外交に用いさせないために、独立国としての日本は独自の抑止力を保持する必要がある。

受動的な抑止力構築は非現実的

 現在自衛隊が運用している弾道ミサイル防衛システム(イージスBMD・PAC-3)は外敵が発射した弾道ミサイルが日本に向かって飛翔してくるのを待ち受けて迎撃する“受動的”弾道ミサイル防衛システム(BMD)である。

 BMDと違い長距離巡航ミサイルに対する専用の迎撃システム(CMD)の開発はいまだにヨチヨチ歩きの段階であり、現状では各種防空システム(早期警戒機、戦闘機、駆逐艦など)を総動員して日本に向かってくる長距離巡航ミサイルを探知・追尾・迎撃することになる。したがって、これもまた“受動的”長距離巡航ミサイル防衛態勢ということができる。

 これらの受動的な防衛能力を飛躍的に強化して、日本に飛来する長射程ミサイルをことごとく発見し撃墜できるようにすれば、相当強力な抑止力となり得る。

 しかし、そのように“完璧”に近い受動的ミサイル防衛態勢を構築するには、まず大前提としてアメリカミサイル防衛局と日本をはじめとする同盟国が協力して開発推進中のイージスBMDの迎撃精度が100%に限りなく近づかなければならない。

 そして、イージスBMD搭載艦、駆逐艦、潜水艦、艦載ヘリコプター、PAC-3、早期警戒管制機、早期警戒機、戦闘機、空中給油機、などを現有量の2〜3倍増する必要がある。さらに理想的には、新規装備として無人偵察機、偵察衛星、攻撃原子力潜水艦も必要である。

 もちろんそれら増強システムの運用要員も同様に必要なのは当然であるため、海上自衛隊も航空自衛隊も現在の3倍の規模に膨張しなければならない。

 長射程ミサイル防衛に直接関与しないように見える陸上自衛隊とても、PAC-3をはじめ飛躍的に増大するミサイル防衛装備や対空ミサイル貯蔵施設ならびに関連基地・施設の警戒警備に人員を割かねばならなくなり、現在の風潮のように「海・空を増やす代わりに陸を減らす」とは反対に、最悪でも現状維持は絶対に必要になる。

 要するに、受動的な抑止力を建設するには、兵力50万、各種水上戦闘艦100隻、攻撃潜水艦40隻、各種戦闘機600機、各種警戒機50機、PAC-3対空ミサイルシステム600セットを擁する自衛隊が必要になる。この規模の軍隊は、アメリカ軍にははるかに
及ばないとはいっても、国際軍事水準から見ると質・量ともに極めて強大な軍事システムを構築し維持しなければならないことになる。

 このような防衛能力強化は、現在日本が直面している軍事的脅威に即刻備えるための抑止能力構築である以上、可及的速やかな完成が必要である。したがって、おそらく今後5年間近くにわたっての国防費は現行の5倍以上は必要になる。単純に考えても、これらの高価な装備の大量調達や人員大増員に伴う人件費や諸経費の増大に対処することは、GDPの僅か1%を自分たち自身の国土と国民を防衛するための国防費に支出することにすら躊躇している現状では、とても無理な相談ということになる。

 このように、現行の受動的ミサイル防衛態勢を強化して対日長射程ミサイル攻撃を抑え込んでしまおうという戦略は絶望的なアイデアと言えよう。

強力な報復攻撃力で対日攻撃意思を封じ込める

 それならば、いかにすべきなのか?

 “報復的抑止力”を手にするしか現在のところ方策は見当たらない(詳細は拙著『尖閣を守れない自衛隊』宝島社新書を参照していただきたい)。

 報復的抑止力というのは、いずれかの外敵が日本に対して弾道ミサイルなり長距離巡航ミサイルなりを打ち込んで日本の社会的インフラを破壊し日本国民の生命を奪った場合、そのような攻撃を加えた外敵の軍事施設や社会的インフラを徹底的に破壊してしまう強烈な報復攻撃を実施する軍事力を意味する。このような能力を日本自身が手にすることにより、甚大な報復攻撃を恐れて外敵は日本に対する長射程ミサイル攻撃の意思が挫かれることになる。

 日本が強力な報復攻撃能力を保有すれば、外敵は日本に対する軍事攻撃を躊躇し、戦争といった事態には至らない公算が極めて大きくなる。強力な軍備の方が弱体な軍備よりも戦争を招来しないのは、古今東西の戦史を分析すれば導き出せる“公理”のようなものである。生来的平和国家日本では「報復攻撃」と言うと好戦的な響きを持つ言葉かもしれないが、軍事常識からすればごく普通の用語であり、強力な報復攻撃能力は外敵の攻撃意思を挫く強力な抑止能力を意味している。

 報復攻撃と言うからには、攻撃側に損害が生じては報復にはならない。味方に損害を生ぜしめないで敵に甚大(質的または量的またはその両者)な損害を加えるために最適な兵器の筆頭は弾道ミサイルあるいは長距離巡航ミサイルである。つまり、報復攻撃は現在日本が直面している最大の脅威である長射程ミサイルを逆に用いて実施することになる。

 とはいっても、日本には日本本土からにせよ、水上戦闘艦や潜水艦それに航空機からにせよ、敵の地上目標を攻撃するための長射程ミサイルは存在しない。したがって、中国や北朝鮮の長射程ミサイル攻撃を抑止するためには、中国や北朝鮮の政治・軍事・経済中枢に痛撃を与えるだけの弾道ミサイルあるいは長距離巡航ミサイルを可及的速やかに調達しなければならないことになる。

とりあえず大量のトマホーク巡航ミサイルを配備する

 H2ロケットで人工衛星を打ち上げる技術力を持つ日本には、弾道ミサイルを製造する潜在的能力がある。しかし、極めて高価な弾道ミサイルは、実質的には核弾頭を搭載しなければコストパフォーマンスが悪すぎるうえ、核報復攻撃力ではない報復的抑止力には不適である。

 一方、長距離巡航ミサイルの各種性能は飛躍的に向上してきたため、極めて正確なピンポイント攻撃が可能となっている。したがって大量の長距離巡航ミサイルを手にして、極めて強力な報復攻撃力=抑止力を保有する方策が取られるべきである。

 残念ながら自衛隊は長距離巡航ミサイルを保有していないだけでなく、日本の長距離巡航ミサイル関連開発技術は中国からは大幅に立ち後れており、長距離巡航ミサイル運用に必須の衛星測位システムは米国のGPSに全面的に依存している状況である。したがって、日本独自の長距離巡航ミサイルを開発し自律的に運用するまでの途は遠いと考えざるを得ない。

 そこで、日本が独自に長距離巡航ミサイルを開発し運用できるようになるまでの期間は、実戦で多用され性能には定評があるアメリカのトマホーク長距離巡航ミサイルを調達するしか方法はない。日本が長距離巡航ミサイルを配備するのは、日本に対する非核弾頭搭載の長射程ミサイルによる攻撃やその可能性を背景にした恫喝を排除するための報復的抑止力としてであるため、当然ながら非核(高性能爆薬)弾頭搭載トマホークミサイル(TLAM-C)を調達することになる。


イギリス海軍潜水艦から発射されたトマホークミサイル(イギリス国防省)
 トマホークミサイル(TLAM-C)には、水上戦闘艦から発射するRGM-109と潜水艦から発射するUGM-109がある。海上自衛隊の水上戦闘艦のうち、垂直発射装置(Mk41)が装備してある艦艇からはRGM-109が発射可能であり、海上自衛隊のすべての潜水艦の魚雷発射管からはUGM-109が発射可能である。

 また、ミサイル発射コントロールプログラムはトマホークミサイル用に変更しなければならないが、アメリカ海軍はミサイル発射装置・コントロールシステムに互換性を持たすように開発したため、アメリカ海軍と共通の発射装置を採用している海上自衛隊の軍艦にはコントロールソフトも容易に移植が可能である。

 現在、海上自衛隊の水上戦闘艦に装備されている垂直発射装置には最大で約700基、潜水艦の魚雷発射管には最大でおよそ100基のトマホークミサイルをそれぞれ連続的に発射する能力が備わっている。もちろん駆逐艦の垂直発射装置や潜水艦の魚雷発射管全てにトマホークミサイルを装填して作戦行動をするわけにはいかないのだが、報復攻撃を実施する場合には少なくとも200基のトマホークミサイルによる飽和攻撃は可能で、単時間内での反復攻撃も可能である。

 水上艦艇発射型トマホークミサイル(RGM-109)の最大射程距離は1700キロメートル前後である。また、潜水艦発射型トマホークミサイル(UGM-109)の最大射程距離は1200キロメートル前後である。したがって海上自衛隊艦艇は、自分自身が攻撃を受ける恐れのない安全な海域から、トマホークミサイルを発射して中国や北朝鮮に対して報復攻撃を実施することが可能なのである(地図参照)。


トマホーク長距離巡航ミサイルの射程圏(『尖閣を守れない自衛隊』より)
 要するに、アメリカからTLAM-Cトマホーク巡航ミサイル(RGM-109・UGM-109)を必要数購入すれば、それらを海上自衛隊艦艇に配備した瞬間から日本は強力な報復攻撃力=抑止力を独自に保有することになるのである。

1000億円で抑止力を調達する

 日本が報復的抑止力として調達しなければならないトマホークミサイルは最低でも500〜600基、理想的には1000基以上と考えられる。TLAM-Cは1基あたり100万〜150万ドルと言われているが、当然のことながら大量調達に伴いコストダウンが期待できる。ただし、これらのTLAM-Cは短期間のうちに取り揃えていく必要があるため、アメリカの製造メーカーによる大増産と日本のメーカーによるライセンス生産の同時進行が必要になる。ライセンス生産の場合コストが跳ね上がるため、緊急増産期間は日本メーカーでのノックダウン生産ということになるであろう。

 いずれにせよ、1基あたりおよそ1億円とすると、1000億円程度の投資によって日本自前の報復的抑止力が身につくのである。同時に、アメリカの主力産業である防衛産業の上得意客となることにより、首相が「日米同盟の深化」というお題目を何百回繰り返すよりもより確実に日米同盟は深化されるのである。


何に怯えている、丹羽宇一郎・前中国大使
文藝春秋の独占手記に強い違和感を覚える
2013年01月17日(Thu) 宇佐 静男
 民間出身では初の中国大使を務めた丹羽宇一郎氏が、月刊誌文芸春秋2月号で「日中外交の真実」と題し、独占手記を発表した。手記の中で、丹羽氏は2年半弱の駐中国日本大使勤務を振り返り、「尖閣に始まり尖閣で終わった」と感想を漏らす。

 悪化の一途を辿る日中関係について、「私のせいではない」という言葉は使わないものの、全体を通じてやや自己弁護的なトーンが感じられるのは「回顧録」や「独占手記」に特有の傾向なのかもしれない。

国益に対する深慮遠謀が感じられない発言の数々


北京の日本大使館を出る日本政府の公用車。丹羽大使時代には襲撃を受けて国旗を奪われる事件が発生した〔AFPBB News〕

 筆者は日中関係悪化の原因を彼に押しつけるつもりは毛頭ない。ただ、手記に書かれている事実を題材として、民間出身大使の是非をも含め、ここまで悪化した日中関係について総括する必要があると考える。

 丹羽氏は「脱官僚」「官僚バッシング」の風潮に乗り、2010年7月、民主党政権によって中国大使にノミネートされた。手記にもあるが、当時「民主党は素人に外交を任せるのか」といった批判が挙がった。

 これについて彼は、数々の政府の仕事の経験、つまり「経済諮問会議議員、地方分権改革推進委員会や総務省の独法(独立行政法人)評価委員会の委員長、税制調査会の委員」などを通じて国の重要政策に携わってきており、「日本が直面していた問題も把握していた」と述べ、だから問題ない(明確な言及はないが)というニュアンスで記述している。

 今後、同様な人事があり得ることを考えれば、これを好機として真摯に振り返ってみることも有益であろう。

 2012年は日中国交正常化40周年であり、本来なら日中友好の節目となるはずだったとしながらも、予想外の事件、つまり石原慎太郎前都知事による尖閣諸島購入計画発表があったと述べる。

 着任間もない2010年9月7日に起きた中国漁船と海上保安庁巡視船衝突事件でギクシャクした日中関係が好転する手ごたえがあったが、都の購入計画発表で期待は大きく裏切られたとする。

 都の購入計画が明らかになってから中国外交部も非常に神経質になっていたと言うが、その2カ月後、丹羽大使は「フィナンシャル・タイムズ」紙のインタビューに応じて「もし計画が実行されれば、日中関係にきわめて深刻な危機をもたらす」と述べている。

 ここで釈然としないのは、中国側が神経質になっているという認識があれば、プロの外交官ならこういう発言を公にするだろうか、しかも外国メディアを使って・・・という疑問である。

 氏の目的は何だったのだろう。大使ともなれば、片言隻句、一挙手一投足に至るまで意図があり、国益への深慮遠謀がなければならない。

 この発言により都に対し購入をやめさせようとしたのだろうか。もしそうであれば、国内の問題であり、アンダーテーブルで動くべきものである。まさかこの発言で中国側を宥めようとしたのでもあるまい。いずれにしても、この評論家的発言の意図が分からない。

 日本国内でも様々な批判が上がったが、都が公式に購入計画を発表した後であり、この発言は火に油を注ぐこととなった。

 結果として日中双方を後戻りできない状況に陥らせたという意味で、駐中国日本大使としては極めて不適切な発言であったと言える。素人の民間出身大使の負の側面が出たと言われてもやむを得まい。

 手記では、この発言について、「今になって、自らの発言についての是非をコメントするのは控えたい」「『あのボールが失敗でしたね』などと、後出しじゃんけんのような真似はしたくない」と述べて多くを語らない。

 今は語れないということかもしれないが、いずれかの時点で後世のために当事者が率直に語るのは元大使としての責務であろう。総括なきところに進歩は生まれない。

 あの時点において、外国メディアのインタビューを受ける是非はさておいても、大使としては国際社会に向かって、次のように情報発信すべきだったのではないだろうか。

外交官ではなく評論家?


暴徒化した反日デモで略奪と破壊され尽くした日系スーパーのジャスコ〔AFPBB News〕

 「都の購入は『所有権の移転』に過ぎない。土地の所有が認められていない共産主義国家では分かりにくいかもしれないが、日本は民主主義国家であり、土地の所有は認められている。もともと日本人個人が所有していた土地を都が買い取るという所有権の移転に過ぎない」と。

 インタビューについて丹羽氏は「都が購入に踏み切っていいタイミングなのかという観点で、自分なりの意見を申し上げた」と述べている。だが、意見を述べるだけであれば評論家にすぎない。

 もし購入のタイミングがふさわしくないと考えるのであれば、あらゆる手段を使って石原都知事に翻意させる努力をすべきだったろう。万策尽きて翻意させることができなかったならば、次の一手として、事態の悪化を抑制すべく中国政府への働きかけ、そして国際社会へ上記のような説明をすべきだった。

 都に対する意見を外国メディアを通じて述べるなど、外交センスを疑われてもしようがない。

 次に彼の持論である「係争の存在を認めるべし」という点である。丹羽氏は昨年12月20日、日本記者クラブでの会見でも、尖閣を巡る中国との関係について「外交上の係争はある。『ない』というのは理解不能だ」と述べ、日本政府の「領土問題はない」とする立場を変更するよう求めている。

 手記の中でも、尖閣諸島については、「歴史的経緯、国際法に照らし合わせても、我が国固有の領土」ではあるが、「外交上の係争は存在する」と認めるべきだと主張する。でないと「交渉のテーブルに着くことすらできない」と述べる。

 そもそも中国との領有権問題について交渉のテーブルで解決できると考えているのであろうか。もしそうであれば、あまりにもナイーブ過ぎる。だが、文中を見る限り、そこまでナイーブでもなさそうだ。

 「現在、日本と中国の国力は均衡しており、そう簡単に白黒がつきません。物理的な力が加わらない限り、100%解決しない。つまり戦争以外に完全解決の道はない。これは断言できます」

 そう言いながらも「係争の存在」を認めてテーブルに着けという交渉の目的は何であるのか。このままでは中国の軍事力行使がやがて生起すると情勢を判断し、それを防ぐためと考えたのか。もしそうであれば、低い軍事的知見によって情勢判断を誤っていることになる。これについては後述する。

 「歴史的経緯、国際法に照らし合わせても、我が国固有の領土」であると述べる尖閣諸島について「係争の存在」を認めることは、日本側の譲歩であるに違いない。

 記者会見で、「日本が係争の存在を認めれば中国の挑発行動は治まるか」との問いに対して丹羽氏は、「それ以外、道はない」と述べた。相手のブラフに怯えて展望なく譲歩するのは外交の敗北であり、まさに中国の思う壺である。

 他方、フランスとドイツ国境に位置するアルザス・ロレーヌの400年近い紛争の歴史を持ち出し、第2次大戦後フランス、ドイツが和解し、ここにイタリア、ベルギー、オランダなどが加わりECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)が結成され、後のEU誕生の礎になったと説く。

アルザス・ロレーヌとは事情が全く異なる


尖閣諸島海域で中国の漁業監視船を監視する海上保安庁の巡視船〔AFPBB News〕

 尖閣もこの例に倣え、とばかりの主張である。だが、価値観があまり違わないフランス、ドイツの例を、価値観ばかりか政治体制も180度異なる日本と中国の係争に当てはめようとするのはあまりにも乱暴すぎる。

 丹羽氏は、商事会社で務めてきたビジネスマンらしく次のように述べる。

 「相場の世界には『森羅万象、売りか、買いか』という言葉があります。(中略)本当の相場のプロは、この二つの選択肢だけでなく『待つ』『休む』というカードを持っている。今の尖閣諸島をめぐる日中の状況を考えると、この『待つ』という判断が必要なのではないかと私は考えています」

 この点については筆者も全く同感である。だが、一方で丹羽氏は「係争を認めろ」と主張する。「係争を認める」のは、1つの譲歩であり「待つ」ことではない。「待つ」というのは、「領有権をめぐる問題はない」との主張を変えず、海保による実効支配を維持した今の状態を継続することである。

 「日本の総理、大臣には、短期的に考えるのではなく、長期的視点にたって、もっと外交の現場の声をくみ取って尊重してほしいと思います」とも述べているが、短期的に考えているのは氏自身なのではないだろうか。

 「現場の声をくみ取る」ことは重要なことである。だが、国益という大所高所から国家戦略を考えぬき、時には「現場」を犠牲にしてでも貫徹することがあるのが国家の政策というものではないだろうか。

 昨年12月の領空侵犯についても述べられているが、対領空侵犯措置の現場に長年いた筆者としては、いささか違和感を覚える。

 「中国側の安易な挑発行為に、日本が過敏に反応することがあってはなりません。(中略)過度に応じることがあれば、両国は後戻りできない事態になるでしょう」

 暗に航空自衛隊の対領空侵犯措置の中止を求めているようにも窺える。そもそも丹羽氏は日本の対領空侵犯措置の実体を御存じなのだろうか。

 氏に限らず、日本の指導者層に軍事的知見が乏しいのは、日本の宿痾のようなものである。軍事的観点なき外交などは存在しない。最低限の軍事知識さえ持たないようでは、情勢判断を誤り、時として国益そのものを毀損する可能性があることを自戒しなければならない。

 陸に警察があり、海に海保があり、平時、日本の領域の治安、秩序を維持している。だが、空には航空警察という組織がない。

 従って空の秩序維持は、航空自衛隊が航空警察の役割を果たしている。それが「対領空侵犯措置」であり、実施していることは防衛行動ではなく警察行動である。

日本の厳格なポリシーこそ国際社会に向けて発信すべし


中国の航空機による領空侵犯に緊急発進する航空自衛隊のF-15戦闘機〔AFPBB News〕

 諸外国では警察行動と防衛行動の境界をあえて不明確にしている。状況に応じて臨機にこの境界を乗り越えることがあり得る。であるからこそ、奇襲にも対応できる即応性が維持できるわけである。

 航空自衛隊の場合、この境界は明確かつ厳格である。高度な政治判断がない限り警察行動から防衛行動に移ることはあり得ない。

 国際法、国際慣習からの逸脱はあり得ない。武器の使用についても厳しく縛りがかかっている。某国のように民間旅客機でも領空侵犯したら撃墜するようなことは決してあり得ない。

 紙幅の関係上、詳細は省くが、一言で言えば海保が海上で実施する活動を上空で実施しているだけである。これ以上でも、これ以下でもない。

 「過度に応ずることがあれば」という言葉自体が、現場の実情把握不足を露呈している。さらには、中国に対して「過度に対応」できるかのような誤ったメッセージになる可能性もある。

 「過度に対応」云々を言う前に、元大使であれば、我が国の対領空侵犯措置のポリシー、厳格性、そして隊員の規律厳正さこそ国際社会に向かって公言すべきではないだろうか。

 「外交は血を流さない戦争であり、戦争は血を流す外交である」と言われる。氏の発言を引用するまでもなく、日本外交の弱点はこのような軍事的知識不足によるところも大きい。相手の軍事力に必要以上に気おされたり、威嚇に怯えたりするようでは、外交のオプションが狭められ、相手国の主張に譲歩するしかなくなる。

 そもそも、中国は尖閣諸島で軍事力を行使する可能性はあるのか。結論から先に言うと現状ではほとんどない。

 これまで中国は南シナ海では次のように領有権を獲得してきた。まず大量の漁船団を使って違法操業をさせ、文民を大挙上陸させて主権碑などを設置する。そして漁民、民間人保護の大義名分の下、軍事力を行使して支配権を獲得する。

 この南シナ海パターンは尖閣には適用できない。多数の人員を上陸させるには、大量の補給物資輸送が継続できることが条件となる。補給物資が滞ると「尖閣版ガダルカナル」となる。そのためには制空権、制海権を獲得することが必須である。

 中国空軍は現在、第4世代戦闘機は航空自衛隊の2倍以上保有する。だが、航続距離、管制能力ともに劣り、洋上での航空作戦能力はいまだ成熟の域に達していない。東シナ海上空での中国空軍の航空作戦能力は、航空自衛隊単独であっても凌駕することは難しい。

 戦力のパラメーターは自衛隊だけではない。日米同盟を考慮に入れると、日米共同の航空戦力は格段に中国に優っている。中国による東シナ海の制空権獲得は、現段階ではほぼ困難である。

軍事行動には出られない中国の国内事情

 制海権でも日本が優位を占める。海上自衛隊は対潜作戦や機雷掃海の実力で米軍に次いで世界第2位である。海上自衛隊のイージス護衛艦の能力は最新鋭の中国艦艇と比べても、ケタ違いの能力差を有する。海上自衛隊単独でも十分強力である。まして日米同盟が睨みを利かしている。

 米国は尖閣諸島が日本の施政下にあり、日米安保の適用対象であること確認する条項を2013年度国防権限法に追加した。日米共同ともなれば東シナ海の制空権、制海権の獲得は不可能なことを知り尽くしているのは人民解放軍自身である。中国首脳が冷静な分析をする限り、尖閣諸島での軍事力行使は現段階ではあり得ない。

 中国は国内事情によっても軍事力行使が大きく制約されている。中国の目下の最優先課題は経済成長である。これを失うと共産党独裁の正統性をも失いかねない。共産党一党独裁の維持は、中国では何より優先される。胡錦濤から反日強硬派と言われる習近平に政権が代わっても、この方針は変わらない。週刊紙「南方週末」に対する言論統制騒動を見ても分かる。

 欧州債務危機のあおりを受け、経済成長も政府目標である前年比7.5%を下回る懸念が指摘され始めている。中国は経済成長率が7%を切ると危険水域だと言われる。中国経済はグローバル経済に依存しており、国際協調路線が欠かせない。軍事行動を採ることによって国際的評判が失墜し、経済成長に響く事態は何としても避けたいのが実情である。

 近年、中国では国民の不満が鬱積している。ジニ係数0.61が示すように所得格差は驚くほど拡大し、公務員の腐敗は蔓延っている。暴動・デモの件数は年間20万件、1日平均548件と言われ、治安維持予算が国防予算を上回っていることからも事態の深刻さが分かる。

 国民の不満が鬱積している時の軍事力行使はリスクが高い。完璧な勝利を達成できれば共産党独裁政権への求心力は高まるだろう。だが、少しの失敗でも、不満が暴動となり、燎原の火のように全国に広がる可能性がある。

 過去二十数年間で国防費は三十数倍に拡大され、強化した軍事力を背景に対外強硬路線を望む者がいることも確かである。軍事の論理と経済の論理との相克はあるものの、米国を敵に回し、経済を犠牲にしてまで軍事力を行使するほど、中国首脳は冷静さを失っていない。

 では、中国が尖閣で軍事力を行使するとしたらどのような場合であろうか。1つは、何らかの事情で中国共産党の一党独裁が崩れそうになった場合である。

 「国内矛盾は国外へ特化せよ」というのは独裁者の常道である。だが米国との戦争を視野に入れねばならず、それは自爆テロに近い。

 2つ目は、軍事力を行使しても国際社会から非難を受けないで、日米同盟も機能しないような事態である。考えにくい事態であるが、日本に一方的に非があるような事態だろう。日本は間違っても先に手を出すような「真珠湾の罠」に二度と嵌ってはならない。

 丹羽氏の手記から多くの賛同できる点もある。例えば「尖閣問題は長期戦を視野に入れて」「中国を国際経済の表舞台に引っ張り出す」「歪められた日本人像を打ち消すためにも日本の文化を輸出する動きを強める」「外交には、一時の感情に流されることのない、総合的な判断が必要」等々である。

 だが、全体を通して読み取れるのは「無用な怯え」である。たぶん軍事的知見不足に起因する情勢判断の誤りであろう。

無用な怯えを排除し粛々と備えよ

 軍事力をもって尖閣領有権問題を解決できないことを最もよく知っているのは中国政府である。だからこそ、「不戦屈敵」、つまり武力を伴わない戦争である「三戦(心理戦、世論戦、法律戦)」に全力を傾注しつつある。軍事力を直接ではなく、間接に使い、経済、政治、外交を組み合わせて多様で総合的な威圧をかけようとするものだ。

 対日暴動、日本製品不買運動、通関手続きの意図的遅延、人的交流や友好行事中止、露骨な公船による領海侵犯、海軍艦艇による周辺航行、戦闘機の防空識別圏侵入などは「心理戦」なのだ。これらにオロオロするようでは、既に「心理戦」に負けている。危機を煽るだけのメディアも「心理戦」に荷担していることを忘れてはならない。

 国連での対日非難演説に見られるように、今後はさらなる国際社会での宣伝攻勢、つまり「世論戦」も強めてくることが予想される。尖閣領有権主張の理論的根拠を詰めて「法律戦」にも臨んでくるだろう。

 中国の挑発行動は始まったばかりである。これからの長期戦に臨もうとする時、ただ見えない影に怯えて「領土係争を認めるべきだ」「国有化以前の状態に棚上げすべきである」といった主張が国内で出てくることは憂慮すべきことである。

 我が国が今、なすべきことは、丹羽氏が述べる「相場の世界」でいうところの「待つ」ことであり耐えることである。

 中国外交には「相手国の徹底した抵抗と国際社会の非難には敏感に反応」するという特徴がある。今後、さらに海保を充実させながら実効支配を維持するとともに、防衛力を強化して日米同盟の緊密化を図ることであり、脅しや嫌がらせなどの「心理戦」に屈しないことである。

 併せて国際社会に対し日本の領有権の根拠を堂々かつ理路整然と主張し続け、「世論戦」「法律戦」にも負けないことが大切なのだ。


JBpress>海外>ロシア [ロシア]
米諜報機関が作成した2030年までのロシア
「Global Trends 2030」を読み解く
2013年01月17日(Thu) 杉浦 史和
 多くの主要国で重要な選挙があった2012年が過ぎ去り、新しい政権の枠組みの中で2013年が始まった。これからのロシアはどうなるのか。様々な諸条件が複雑に絡み合う中で展望は容易ではないが、年の初めの初夢にかこつけて、半ば強引に考察を試みたい。

 まず、周知の通り、昨年はロシアではウラジーミル・プーチン氏が大統領職へ返り咲いた。一方、米国では共和党のミット・ロムニー候補の挑戦を、辛うじて現職のバラク・オバマ大統領が退け、まもなく2期目に突入する。

丁々発止を続けるロシアと米国


米国人による養子縁組禁止に支持を表明するプーチン大統領〔AFPBB News〕

 前回の拙稿掲載時点からの動向を記しておけば、ロシアのWTO(世界貿易機関)加盟承認に関わる恒久的正常貿易関係(PNTR)の付与は認められたものの、いわゆるセルゲイ・マグニツキィ法が成立して米国はロシアの非人道的統治のあり方に対して異議申し立てを継続している。

 これに対して、ロシア側も反養子引き渡し法を採択し、ロシア人の養子を米国人に引き渡すことを禁止する方策に出た。これはロシア出身の養子が米国で「非人道的な」取り扱いを受けていることに抗議するものである。米ロ関係のジャブの応酬はまだまだ続くようだ。

 そんな折、2012年12月、米国の主要な情報機関が結集して編纂された「2030年の世界(“Global Trends 2030”)」リポートが公表された。

 これは1996年から4年おき4度発表されており、米国の外交政策策定の基本的なシナリオとなるものであり、これを解析することは今後の世界の動向を見据えるためにも重要である。

 日本についての展望もあり、それはそれで非常に興味深い論点をたくさん含んでいるのではあるが、ここでは米国がロシアの近未来をどう見ているかについてピックアップしながら、紹介することとしたい。

 まず、「2030年の世界」リポートの基本線だが、中国およびインドの国際的な影響力の増大の一方で、欧州、日本、ロシアの影響力は低減すること、ならびに、いわゆる非西欧の新興国が影響力を強め、とりわけこれら新興国が集団として連帯することで世界システムにおける一大勢力になるとしている。

 従来の大国からなる国際システムの様相が様変わりし、ロシアの影響力の減退は、避けられないものというのが基本的な見方だ。

 では次に、ロシアの今後20年の姿について、より詳細に見ることにしよう。

 まず人口動態についてだがロシアでは、2010年の1億4300万人から2030年に1億3000万人まで人口が減少するとみられる。

 欧州諸国と出生率では遜色はなく、それが経済成長の引き下げ要因であるのは同じだが、若年世代での喫煙習慣、アルコールの過剰摂取やこれに関連した事故のために男性の寿命が短いので、高齢化はゆっくり進む。

ロシアの1人当たりGDPは2020年、2万7000ドルに


シェールガス革命に沸く米国。写真は油田を視察するオバマ大統領〔AFPBB News〕

 2007年からロシアの労働可能人口の規模はすでに減り始めており、今後もその傾向は続く。また、現在14%程度を占めるムスリム系の人口が2030年までに19%にまで増加することからくる民族間の対立の深刻化の可能性も指摘されている。

 次に食糧事情であるが、ロシアは穀物の主要産出国であるがゆえに、食糧問題が価格高騰などを通じて国内的に問題となることは少ないと見ている。

 一方、エネルギー問題では、特段の指摘はないが、いわゆるシェールガス革命が、地球規模でエネルギー産業の構図を大きく変化させると見ており、ロシアへの影響も避けられないだろう。

 こうした動きを踏まえて、ロシアの1人当たりの国内総生産(GDP)は2020年に2万7000ドルへと増大する見込みで、これは同時点で中国の1万7000ドル、ブラジルの2万3000ドルを上回るようだ。

 以上の見通しに立って、米国はロシアの近未来を次のように描写する。エネルギー産業に依存した経済の弱みは、近代化努力の進捗がはかばかしくないこと、および労働力人口の減少ならびに高齢化が原因となって、経済成長の重石となる。

 しかし、WTOへの加盟など明るい展望もあり、外資を受け入れるための投資環境を改善し製造業の進展に努めれば発展の余地はある。一方で、対西側および対中国関係が、より安定的で建設的なものになるか、敵対的で攻撃的なものになるかによっては、見通しは大きく変わる。

 特に経済成長の停滞が人々の生活水準の低下につながり、そこから生じる国民の不満をよりナショナリスティックな感情の発露へと政治指導部が導くようなことがあれば、ロシアと周辺諸国との間の紛争の可能性が高まり、不安定要素となる。

 その際、ロシアと旧ソ連共和国との間に軍事的衝突が起こる場合には、米国および北大西洋条約機構(NATO)が仲介する可能性が高いことから、これが地域紛争にとどまらず、地球規模の紛争となる可能性を指摘している。

 したがって、ロシアの近未来のシナリオは次の3つである。

(1)他国と親和的なパートナーとなるシナリオ。これはそのよって立つ価値観に基づくのではなく、それが便宜的に有効かどうかによる。指導部にとっては、ロシアの西欧派とスラブ派の伝統的な対立が、戦略的方向性を決定する際の難題となる。

(2)他国との二律背反的な関係を続けるシナリオ。ロシアが軍事力を強化して、中国の膨張と対立することを望むのであれば、次の20年は国際的な協調にとって難しい関係となり得る。

(3)周囲にとってきわめて気むずかしい国となるシナリオ。旧ソ連の近隣諸国に対して軍事力を用いてこれを支配しようとするならばあり得る。とりわけ国民の生活水準の低下からくる不満を、解消する方策とする場合には。

中国のようなスタイルの発展は望めない

 米国および周辺国にとってはシナリオの(1)が実現するような方策を模索することになるだろう。逆に言えば、ロシアの繁栄の道は、より世界各国に親和的な勢力となり、国際経済への一層の統合を進めていくほかに道はない、というのが本報告書の立場だ。

 かような見方に対して1点コメントしておけば、筆者はロシアの製造業が外資の力を得て復活するという可能性には少なからぬ懐疑を持っている。

 人口構成や賃金水準などの要因から、中国が経済的離陸を成し遂げたのと同じようなレベルで、ロシアがいわゆる労働集約型の製造業の育成をテコに経済成長をすることは難しい。

 そのため外資の進出動機はどうしても国内需要を満たすことにとどまり、国内市場の成長余力も限られているなかではこれが経済成長のための強力な牽引力になりえないからだ。要すれば、開放的かつ対外親和的な政策を取ったとしても、ロシアの成長余力は、その国内要因により限定的なものとなると考えられる。

 これから20年間という中長期のシナリオ作成の振幅はどうしても大きなものとならざるを得ない。したがって、こうした未来予測は、ある意味、当たるも八卦、当たらぬも八卦という世界ではあろう。

 しかしながら、特に筆者の関心を引いたのは、現時点の世界状況を過去の歴史に求めた歴史的なアナロジーに関する分析である。

 報告書は、現在の世界を1815年から第1次世界大戦までのいわゆるウィーン体制の国際環境に似ているという。

 当時との類似点として、社会的、経済的、技術的そして政治的な変化が急激であることと、現時点での国際システムが、G20の形成に見られるように、おおむね多極主義的なことである。

 しかしとりわけ重要だと思われるのは、19世紀を通じて英国は圧倒的な支配力があったわけではなかったが、実際のパワーよりも大きな役割を果たすように努め、それに成功したとしていることである。

中国対応で米国と協調する可能性も

 1830年時点で、ロシアとフランスの国民総生産(GNP)は英国のそれとほぼ同じ規模であり、また第1次世界大戦前夜の米国、ロシア、ドイツの経済規模は、英国よりもはるかに大きかったにもかかわらず、英国は、地球規模の金融・経済的地位、ヨーロッパ諸国のオフショアバランサーとしての役割、ならびに英国の海外植民地を結ぶ商業航路の安全を守る役割において何ものにも替えがたい重要性を持ち、そのことが英国を世界システムにおいて傑出した存在としていたのだ。

 現在の世界情勢もまたきわめて多極的な制度となっている。このことの含意は、どの一国も単独では自分の意思を他国に押しつけることができないというものである。

 実際、本報告書が想定するように、2030年までのいずれかの時点で中国が米国の経済規模を上回ることが確実ななか、米国は中国を思った通りに操ることはできない。

 そうだとしても、19世紀の英国による巧みな勢力均衡政策に倣えば、米国は失われつつある覇権を何らかの形で維持することが可能だとしているのだ。

 この点を踏まえれば、ロシアが対中国という立場から、米国との協調に踏み出すという可能性もあるのだろう。米国がロシアに対して送っているメッセージをロシアはどう読み解くであろうか。興味津々である。

(お詫びと訂正)前回の記事の中で、セルゲイ・マグニツキィ氏のことをユコス事件の被告側弁護士と述べましたが、正しくはエルミタージュ・ファンドの弁護士でした。お詫びして訂正させていただきます。


07. 2013年1月18日 08:00:13 : Pj82T22SRI
「戦争に備えよ」:中国メディアの論評を分析する
好戦ムードの真意〜中国株式会社の研究(198)
2013年01月18日(Fri) 宮家 邦彦

最近の報道を見ると、今にも戦争が始まりそうだが・・・(写真は中国中央テレビ局(CCTV)が放映した同国海軍初の空母「遼寧」の艦載機「殲15(J-15)」の着艦試験の録画映像)〔AFPBB News〕

 この数日、中国について気になる報道が増えてきた。例えば、こんな感じだ。

●中国では対日開戦議論が沸き起こり、好戦ムードが高まっている。

●中国人民解放軍総参謀部が全軍に対し軍事訓練で「戦争にしっかり備えよ」と指示した。

 ふーん、本当にそうなのかねぇ。天邪鬼の筆者は逆に懐疑的になる。

 中国の「戦争準備」に関するこの種の報道は一体どこまでが真実なのか。今回は予定していた共産党中央委員205人の「出世パターン」の話を来週に繰り越し、今中国メディアで花盛りの「好戦的論評」につき、筆者の独断と偏見をご披露したい。

2013年全軍軍事訓練指示

 まずは、いつもの通り、事実関係から始めよう。

 日本では、解放軍報を引用し、解放軍総参謀部が1月13日の「2013年全軍軍事訓練指示」の中で、「戦争思想を強化し、危機意識を高めよ」「戦争にしっかり備え、実戦の必要性から出発し、部隊を厳しく訓練せよ」「戦争能力を高めよ」と全軍に指示した、などと報じられている。

 一部マスコミは、今年の軍事訓練指示が「開戦と戦争の遂行を異例の調子で強調」したと書いている。本当にそうなのだろうか。以下は、1月14日付の解放軍報が報ずる、総参謀部の具体的指示内容だ。

●全軍及び武装警察部隊は、戦う能力を持ち、戦って勝つという目標をしっかりと中心に据え(全军和武警部队要紧紧围绕能打仗、打胜仗的目标)、

●軍事闘争準備任務を牽引し(以军事斗争准备任务为牵引)、

●軍事訓練の実戦化を大いに強化し(大力加强实战化军事训练)、

●情報化環境下での訓練モデルを実践・創新し(实践创新信息化条件下训练模式)、

●素質の高い新たな軍人をしっかりと養成し(加紧培养高素质新型军事人才)、

●部隊訓練を実戦に近付け、大学等での教育を部隊に近付けるべきだ(进一步推动部队训练向实战靠拢、院校教育向部队靠拢)。

1年前の指示内容


北京で行進する人民解放軍兵士〔AFPBB News〕

 続いて、以上の内容が「異例の調子」なのかを考えてみよう。以下は昨年(2012年)1月10日に出された「2012年軍事訓練指示」の概要だ。2013年版との比較に留意しながら、しばしお読み頂きたい。

●総参謀部は全軍及び武装警察部隊に対し、重大戦略思想のテーマと大筋を徹底的に実行し(总参要求,全军和武警部队要认真贯彻主题主线的重大战略思想)、

●軍事闘争準備任務の発展深化を牽引し(以拓展和深化军事斗争准备任务为牵引)、

●情報系統体系作戦能力のレベルを高めることを出発点・終着点とし(把提高基于信息系统的体系作战能力作为出发点和落脚点)、

●情報化条件下の訓練を全面的に推進し(全面推进信息化条件下训练)、

●情報化条件下の訓練モデルを積極的に創出し(积极创新信息化条件下训练模式)、

●素質の高い新たな軍人を大いに養成し(大力培养高素质新型军事人才)、

●情報化条件下の訓練体系を早急に構築し(加快构建信息化条件下训练体系)、

●新しい出発点に立って軍事訓練の転換を深く推進すべきである(在新的起点上深入推进军事训练转变)。

何が変わったのか

 確かに2013年版で用語とトーンは変わっている。12年度版には「実戦」「打仗(戦う)」「打胜仗(戦って勝つ)」などの表現はなかった。

 一方、報じられるような「戦争」という言葉は2012年版、13年版どちらにも使われていない。それ以外の表現は概ね従来通りだ。

 そもそも、この指示は軍事訓練に関するもの。軍隊が「実戦」を戦うために「訓練」するのは当たり前であり、戦う以上は「勝利」を目標にすることも当然だろう。逆に言えば、今回の用語やトーンの変化は軍事的意味よりも、政治的意味の方が大きいのではなかろうか。

 筆者が尊敬する中国軍事専門家によれば、今回大きく変わったのは「軍事訓練指示」の内容ではなく、むしろ、その前後に出された軍人・非軍人による評論の内容だそうだ。されば、今回の「軍事訓練指示」では、軍事面よりも、政治面の変化を考えるべきではないか。

日英に翻訳された社説

 では、このような中国側の変化をいかに読み解けばいいのか。ここで参考になるのがまたもや「環球時報」だ。最近同紙ではやたらこの種の「好戦的」評論が増えているのだが、中でも興味深いのは1月11日の社説である。


1月11日の尖閣諸島(中国名・釣魚島、写真)に関する社説が、日本語と英語に全文翻訳されたことに注目〔AFPBB News〕

 「釣魚島(注:尖閣列島)への軍用機出動は中国世論の主流」と題されたこの社説に筆者が注目する最大の理由は、その内容が中国語だけでなく、日本語と英語に全文翻訳されているからだ。

 環球時報社説はすべてが翻訳されるわけではない。まして、1つの社説が同時に日英に翻訳されるケースは多くない。

 過去1年ほどの経験で、もしかしたら中国側が重要と考える社説は、日本語なり、英語なりに、適宜翻訳されているのではないか、と思うようになった。

 筆者の仮説が正しければ、11日付の社説は日米双方に対するメッセージである可能性がある。中国側の本音に御関心の向きは、お時間があれば、同社説の日本語訳を(後段だけでも)お読み頂きたい。

好戦的論評の本音

 同社説の中で最も興味深いのは最後の部分だ。全編にわたり好戦的レトリックが並んでいるようだが、所々には次のような慎重な表現も鏤められている。読者の皆さんは以下を読んで、中国側の意図をどう思われるだろうか。

●(中国側の)戦闘機が出動した以上、中国は情勢の一層の悪化に対して全面的な準備をする必要がある。・・・中国は昨日第1歩を踏み出した。もう第2歩、第3歩で怖じ気づくわけには決していかないのだ。

●中日は長期的なライバル、さらには敵となり、日本は米国による中国封じ込めの忠実な先鋒部隊となる可能性がある。中日間で局地戦が起き、米国が舞台裏から表舞台に出てくる可能性がある。

●中国は先に発砲はしない・・・、今後も戦争行為の規模を自ら拡大はしない・・・、われわれの戦略目標は限定的なもの、・・・つまり中国の釣魚島政策の受け入れを日本に余儀なくさせることであり、日本と「まとめてかたをつける」まで拡大することではない。

●中国は・・・歴史の復讐という激情に飲み込まれることなく、冷静さを保たなければならない。中国と日本の間には巨大な規模の貿易その他経済協力がある。われわれは落ち着いて日本に対処すべきだ。

●インターネット時代における中国社会の団結力が釣魚島情勢によって大きく試されている。中国は力を互いに消耗するのではなく、結集できなければならない。中国はこのより肝要な問題において自らを証明する必要がある。

やはり、分かり易い中国

 最後に、この社説の行間から滲み出てくる「中国側の本音」に関する筆者の見立てを述べよう。

●対日、対米関係について中国国内の意見が未収斂であることは困ったことだ。(だからこそ、社説は国内諸勢力の「相互消耗」ではなく、中国社会の「団結力」を強調するのだろう)

●中国は日本との全面戦争など望んでいない。(だから、中国側は発砲も事態の拡大も望んでいない、中国の目的はあくまで限定的だ、などと強調するのだろう)

●しかし、情勢がエスカレートしてしまった以上、中国もあとには引けない。日本側もこのところを察して、自制してほしい。米側も日本をうまくコントロールしてほしい。(これに失敗すれば日米・中の全面戦争となり、中国の損失の方が多くなることはよく分かっているはず)

 要するに、報じられるような「好戦的」評論は一部の軍人や中国版「ネトうよ」などに限られており、共産党本流の意見とは異なるらしいということだ。やはり、中国・中国人は非常に分かり易い国・国民である、という筆者の見立ては当分変わりそうもない。


08. 2013年1月18日 08:00:48 : Pj82T22SRI
中国の改革:国民の大きな期待
2013年01月18日(Fri) The Economist
(英エコノミスト誌 2013年1月12日号)

「労働矯正制度」の改革は歓迎だが、遠からず、さらなる改革が実施されなければならない。

 昨年8月湖南省で、唐慧さんが1年半の「労働矯正」処分を言い渡された。唐さんの罪は、11歳の自分の娘を誘拐、強姦した男を厳罰に処すよう要求したことだった。以前なら、唐さんは単に消息不明になっていたことだろう。

 ミニブログが盛んな今の時代には、何千人もの怒れる中間層が唐さんの処分を取り上げた。唐さんは釈放され、1月7日、政府は労働矯正制度を見直すと発表した。

 広東省では1月初め、改革派の週刊紙「南方週末」の社説が、広東省共産党委員会宣伝部の部長命令により発行前に改竄されたと伝えられている。元々の社説は中国の憲法が定める権利をもっと尊重するよう訴える記事だった。修正後は、共産党と中国の政治制度を称賛する内容になっていた。

大きく変わった国民の期待


1月8日、広東省広州にある「南方週末」の本社前に集まったデモの参加者〔AFPBB News〕

 南方週末の記者たちはストライキを実施し、南方週末の支持者たちは、1989年以降中国の街頭では滅多に聞かれることがなかったような政治的スローガンを唱え、広東省の同社社屋の外で抗議活動を行った。

 どちらの事件も、中国の憲法に違反しているのは当局側だ。その点は何ら新しいことではない。当局はいつもやってきた通りのことをしたまでだ。

 変わったのは、国民の期待の方だ。中国国民はもはや、経済成長とスローガンでなだめられたりしない。彼らは政治改革を求めている。

 中国の新しい指導者である習近平氏が高まる改革への圧力にどう対処するかが、習氏自身、そして習氏が率いる国の未来を決めることになる。

 司法制度と報道の自由は、民衆が抱える不満の本質的な要因となっている。「労働教養」として知られる労働矯正制度は、1957年、毛沢東の支配下で始まった。

 中国の制度は、司法制度によって裁かれた受刑者が収容される通常の刑務所制度や強制労働施設とは異なる。「反革命派」を処分するために設置された労働教養院は、今では軽犯罪者や売春婦、陳情者など、政府のメンツを傷つける人間のための施設になっている。

 裁判なしで最大で4年間、労働教養院に拘束されることもある。被収容者は16万人前後、あるいはそれ以上に上ると言われている。

重労働と言論の自由

 制度改革の計画がどれだけ真剣なものなのかは、まだ判然としない。ベテランの司法ジャーナリストはミニブログで、司法担当の政府高官が、政府は1年以内に労働教養制度の「運用を停止する」と発言したと投稿した。しかしその数時間後、国営の新華社通信は、この制度は「廃止」されず、「見直される」と報じた。

 過去にも改革が約束されたが、結局、何も起きなかった。そして、もし労働教養院の収容者が弁護士をつけることを認められ、裁判所での審問を許されたとしても、中国の司法制度は被告に対してほとんど保護を与えない。それでも、多くのアナリストたちは期待を抱いている。

 一方で、広東省では(たとえ奇妙なものだとしても)通常の体制に戻ることを認める取引が成立したと報道される中で、南方週末の記者たちが、数日間にわたるストライキの後、仕事に復帰したようだ。すなわち、報道機関は自主的に検閲を行い、検閲機関は編集者に対し、政府が行う日常的な助言以上の厳しい介入を行うことはないという取引だ。

 しかし宣伝部長は職務にとどまっており、自由化の兆しは一向に見られない。共産党の指導者たちは依然として報道の自由を、汚職のチェック機能としてではなく、混乱を生む処方箋として扱っている。

 中国では1990年代初頭から、統治する者と統治される者の間に暗黙の了解があった。すなわち統制される者が自由を過度に求めない限り、統治する者は繁栄を保証するというものだ。

 しかし今や多くの人がこの暗黙の了解を破っているように見える。国民は繁栄を享受したが、自由も求めている。インターネットの検閲が批判的な記事やツイートを削除していく端から、もっと大勢の怒れる中間層が議論に加わり、新たな不満を投稿し始める。

 1月7日、著名な映画女優で、そのミニブログのフォロワーが3000万人を超える姚晨(ヤオ・チェン)が南方週末を支持して、アレクサンドル・ソルジェニーツィンの「一片の真実の言葉は世界全体より重い」という言葉を引用した。

 体制側の人間でさえ、政治改革を求めている。先月、学者や法律家を中心とした尊敬される市民72人が抜本的な改革を求める請願書に署名した。

 リベラルな欧米人からすると、検閲や強制労働の廃止は道徳的な義務だ。実利的な権威主義者である習氏には、それとは異なる計算が働いているが、もし習氏が、自分にとって、また自分が治める国にとって何が利益になるかを理解すれば、同じ答えに行き着くだろう。

改革を避けるリスク

 抑圧を通じて支配力を維持しようとする共産党の取り組みは、安定ではなく不安定さを招いている。改革にはリスクが伴うが、改革を避けることは、それ以上にリスクが高い。

 習氏は、特に汚職と役人の贅沢という問題に対する国民感情の強さを理解している。習氏は国内を視察した際、お決まりの恭しい晩餐会を避けた。「四菜一湯(4種の副菜と1種のスープ)」は、質素でオープンな習氏の姿勢をメディアに示す謳い文句となっている。

 しかし、汚職撲滅のスローガンでは、もはや中国国民を鎮めることはできない。習氏は制度改革に着手しなくてはならない。先日広東省で掲げられていた横断幕には、こう書かれていた。「四菜一湯が真の改革ではない。報道の自由こそが真の改革だ」――。


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