06. 2013年1月07日 23:53:59
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2013年 1月 07日 16:49 JST 【オピニオン】緊迫の度合い増す日中関係 軍事衝突回避に向け今なすべきこと By STEPHANIE KLEINE-AHLBRANDT 東シナ海における世界第2位と第3位の経済大国間の領有権争いは先月、軍が初めて直接関与するという不穏で新たな段階に突入した。昨年の12月13日、日本は尖閣諸島(中国名:釣魚島)上空を飛行する中国の小型プロペラ機を追跡するために、航空自衛隊のF15戦闘機8機を緊急発進させた。日本政府によると、これは1958年以来初の中国による領空侵犯だった。 この一群の小島をめぐる対立の根は相当深い。偶発的な衝突や事態の深刻化のリスクを回避するためには、危機緩和のメカニズムを早急に復旧させ、日中政府間のコミュニケーションを密にする必要がある。日本の我慢の限界を探り続ける中国の行為は、日米安全保障条約にも影響を及ぼしかねない危険なゲームだ。 画像を拡大する Agence France-Presse/Getty Images 尖閣諸島 中国は日本の実効支配への挑戦として、問題の海域のパトロールを強化している。日本がこの一群の小島と岩礁を最初に併合したのは1895年だった。第2次世界大戦後は一時米国の支配下に置かれたが、1971年の沖縄返還協定で日本に戻っている。その数年前に周辺に海底油層がある可能性が浮上したため、尖閣諸島の価値はより高まった。尖閣諸島に関しては台湾も領有権を主張しているが、台湾と日本は概して友好的な関係を保ってきた。その一方で日本は台湾を独立国家として認めていない。 昨年9月、日本政府が尖閣諸島の3島を民間の地権者から購入すると発表したことがきっかけとなり、日中間の領有権問題が再燃した。日本政府が尖閣諸島の国有化に踏み切った主な理由は、大胆なナショナリスト、石原慎太郎前東京都知事が発表していた都による購入計画を阻止するためだった。 中国政府はこうした一連の「コンビネーションパンチ」を受けて、経済報復を示唆したり、海軍・空軍・戦略ミサイル部隊の合同演習を実施したり、10月に東京で開催された国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会への参加を拒否するなどした。それと同時に中国各地では、2005年以来で最大規模となる暴力的な反日運動も勃発した。 尖閣諸島をめぐる中国側の最も重大な一手は、40年に及ぶ日本の実効支配を終わらせようとするものだった。中国政府は独自に設定した領海基線を発表し、問題の海域に国家海洋局所属の海洋監視船を派遣した。この新たな戦略は、領有権問題を棚上げにし、天然資源に関しては日本との共同開発を目指すとしたケ小平(1978-1992年の中国共産党の最高指導者)政権下の政策から著しく逸脱している。 こうした根本的な意見の相違を棚上げにするというケ小平氏の決断は、この領有権問題の解決がいかに難しいかを物語っている。中国ではこの問題が、日本の侵略戦争と関連づけられているため、過去の敵意が蘇り、中国の国家主義に火がつくのである。また、中国共産党はその正当性を強固にするために過去の侵略や国家主義を昔から利用してきたので、統治権をめぐる交渉はどれもきわめて複雑なものになってしまうのだ。 この新たな緊張の激化の背景には、東アジアにおける経済力・勢力のバランスの変化がある。自国の上昇基調に対し、日本が下降基調にあると見た中国は、領有権争いで強気に出るときだと感じている。国際法では、そこを占拠していたり、主権を行使するための措置を講じている国が有利となる。そうした措置には国連への申請、島の命名、海図の作成、法執行機関によるパトロール、そして最終的にはそこでの建造物の建設や居住などが含まれる。中国は、尖閣諸島が日本の実効支配下にあったこの数十年間、そうした機会を逸してきたと感じているのだ。 日本による国有化の発表以来、中国政府は自国の立場を強めるための法的・軍事的措置を取ってきた。より強大な海洋国家になることを明らかに標榜している中国は、南シナ海でも同じような手段に出ることで領有権の主張を強化している。 この問題に関しては、日本にも中国にも確かな法的根拠がない。日本の主張は、1895年に同諸島を併合したとき、人が住んでいたり他国が支配していたりした形跡がなかったという断定を軸とする「先占の原則」に基づいている。一方で中国は、その島が明王朝時代(1368-1644年)に発見、命名、利用され、1895年には清王朝の統治下にあったが、日清戦争中に日本に編入されたということを示す歴史的・法的証拠があると主張する。したがって尖閣諸島は、日本による中国の領土権の放棄を約束した第2次世界大戦後の和平条約に基づいて返還されなければならないというのが中国政府の言い分である。 この地域の平和維持は日中両国が見解の相違にうまく折り合いをつけられるかにかかっている。相互信頼を築き、具体的な利益を得る実際的な方策としては、領有権を破棄するのではなく、ひとまず棚上げにし、東シナ海の共同資源管理で協力していくのがいいだろう。2008年、日中両政府はそうした合意形成に近づいたが、結果的に国内のナショナリストたちの反対に屈してしまった。 緊張が急激に高まる以前、海上衝突の危険性に気付いていた両国政府は、双方の防衛・法執行機関同士でコミュニケーションが取れるシステムの構築に真剣に取り組んでいた。ところが感情が理性に勝り、こうした話し合いは頓挫してしまった。 軍事衝突はどちらの利益にもならないということは日中両国が明言しており、これは朗報と言える。それでも平和を維持するためには、誤射事故を避けたり、事故が小競り合いに発展するのを防ぐための早急な協力が必要である。ナショナリストたちの怒りを鎮めるのに必要な措置も含めると、共同資源管理の交渉には長い時間がかかるだろう。しかし、両国が真剣に軍事衝突の回避を望んでいるのなら、妥協点はまだ見つかるはずだ。東シナ海での緊張を和らげるチャンスを得た日中両国の新しい指導者は、これを生かすべきである。 (筆者のステファニー・クライネ・アールブラント氏は独立系シンクタンク、国際危機グループの中国・北東アジア担当責任者) |