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私の両親の人生には、戦争が色濃く影を落としている。
太平洋戦争の狭間で、父は二十歳のとき、母は十四歳のときに、一度死んだという意識を強く持ったという。
その後の人生は、二人にとって余生だったようだ。
母からは、
「きちんとした教育を受けていると判断力がつく。国は国民を騙す。国に騙されないようにするためには、
自分自身で身分の身を守るしかない」と話した。
彼女は、沖縄戦で逃げ惑う中、隠れ潜んだガマの中に、東京外事専門学校を卒業した英語の通訳をする兵隊がいたそうだ。この兵隊から「この戦争は負ける。アメリカ軍は婦女子・子どもを殺すことはない。あなたは自決などしないで捕虜になりなさい」と耳打ちされ、それで生き延びられたという体験をもつ。母は「兵隊は、アメリカについての正確な知識があったから、その判断ができたのだ」という話をした。
父からは、
「先生の言うことを鵜呑みにせずに、自分の頭できちんと考える習慣をつけることが大切だ。政治や思想を専門にする大学教授は、学生を使って自分の思想を実験しようとする。そういうことに付き合うと、自分の人生を無駄にする」とよく言った。
その後、仕事の関係で、インテリジェンスという世界に少し触れることとなり、様々な海外のインテリジェンス組織や、それに属する人々と接することとなった。
私は、インテリジェンスの専門教育を受けたこともない。だから具体的なノウハウは説明できないが、両親の教えや、仕事の経験から「インテリジェンスは、知識の量ではなく、生き残るために知をどのように活用するかという『構え』の問題である」と思っている。
そして、インテリジェンスというのは、入手した情報により
「自分の弱いところを出来るだけ隠し、強いところを必要以上に誇張する技術であり、国家や国民が生き残るための術」であると思う。
例えば、イスラエルのような小国は、自国を取り巻く情報の判断を誤った場合、それこそ国家が消滅してしまう危険性がある。だから国家の存続において、インテリジェンス力は重要なのである。
一方、軍事力が圧倒的に強い大国は、すぐれたインテリジェンス機関が育ちにくいようだ。
情報力に頼らなくても圧倒的な軍事力で何でも解決できるからだ。
その場合の情報の有無は、「解決にかかるコストがどの程度か」という問題にすぎないのだ。
現在の日本は、国の周りを、軍拡をつづける中国やイラン、北朝鮮や、日米安保条約付随する問題などが絶えず発生しており、そこから目を背むけられない状態だと思う。だから、正確な外交政策の判断基準として、日本独自の精度の高いインテリジェンス情報の入手が不可欠だと思う。
個人的には、日本において、最優先とされるべきインテリジェンス情報は、沖縄と北海道の辺境地区の掌握だと思う。
日本は資源小国だと思い込んでいる人が多いと思う。しかし、探査や堀作技術が進む今日、日本近海の排他的経済水域には、メタンやハイトレイトなどの膨大な海洋資源が眠っている。そしてその要となるのは、沖縄だ。
一方、日本政府との外交ネットワークが消失していまっているロシアとは、4月にプーチンが再選され、北海道の根室でそのシグナルを察知することができる。
大国間の衝突は、サイバースペースや、宇宙空間、そして海底に移りつつあるが、
日本では、辺境の動向を窺うインテリジェンス感覚を研ぎ澄ますことが重要なのだ。
周辺国が日本の国境を収縮させる力をかけていれば、垣間みることができるのだ。
ただ、これを実行するにあたって、日本政府内には大きな課題を残している。
2006年、安倍晋三氏が官房長官時代に、「日本版CIA構想」というものを立ち上げた。警察庁、外務省、防衛省、公安調査庁を中心として、内閣情報会議、合同情報会議などを総動員して、官邸直轄の対外情報機関を創立し、海外に情報要員を配し、国際情報や安保保障に関する情報を収集させ、内外のテロ情報に目を光らせることを目指したものだ。
しかし、この「日本版CIA構想」構想は、各組織の障壁や情報の出し渋りなどで、せっかく得られた優れたレアな機密情報が遮断され、結局は失速した。
これにみれるように、日本政府内には、戦前から脈々と受け継がれる悪習(高級官僚よる情報操作や組織間の障壁)が存在する。そもそも有益なインテリジェンス情報は、国益や、外交戦略、戦争の回避策などに活用すべきであり、間違っても、私の両親が戦時中に受けた「自国民への情報操作」のために使ってはならないのは当然なことであるが・・。
これが改善されないかぎり、海外に要員を配しても、有用な情報が入手できるとは思えない。
そもそも、インテリジェンスの世界に完璧な情報など存在しない。巨額の調査費と人員を注ぎ込んでいるアメリカでさえ、イラクにおいて、質の高いヒューミント(現地エージェント)を築き上げることはできなかったのである。
(インテリジェンス人間論より)
http://hellow42.blog.fc2.com/blog-date-20130102.html
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