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北朝鮮の核ミサイルに日本が狙われる日 テポドン再発射は核実験への布石か?
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36659
2012.12.04 黒井 文太郎 :JBpress
北朝鮮が、12月10日から22日の間に衛星を打ち上げると発表した。2012年4月13日にも打ち上げを試みて失敗しているが、同じ東倉里の西海衛星発射場から同じ南方向への打ち上げとのことである。打ち上げに使うロケットは、やはり前回と同じ「銀河3号」だが、これは弾道ミサイル「テポドン2改」のことだ。
北朝鮮は国連安保理の制裁決議で、弾道ミサイルの技術を使ったロケットの発射を禁止されており、打ち上げは明確に違反になるが、自分たちではあくまで平和的な宇宙開発だと主張している。金正恩政権は4月の失敗で完全にメンツを失ったかたちになっており、再発射はいずれにせよ既定路線だったろう。おそらくあとは、タイミングの問題だったと思われる。
では、なぜ今なのだろうか? 7つの可能性が考えられる。
(1)「技術的な日程」
単に、前回の失敗の要因が改善され、技術的に再打ち上げの準備が整ったから。北朝鮮の弾道ミサイル開発は純粋に安全保障の問題で、政治日程よりも優先されるため、「できるようになったから実行するだけ」ということ。
実際、前回は失敗したものの、2009年には3段式ブースターの2段目までが3000キロメートル以上の飛翔に成功している。おそらく技術的には、すでにかなり確立されていたものと推測される。
(2)「韓国の衛星打ち上げに合わせた」
韓国が11月29日に衛星の打ち上げを計画していたので(トラブル発生により延期)、北朝鮮はその直後に発表するという日程を準備していた。韓国が衛星打ち上げをしているのだから、北朝鮮だけ禁止というのはおかしいとの理屈だ。
(3)「韓国大統領選に合わせた」
韓国が12月19日の大統領選でバタバタしているため、激しい反応を避けられるとの期待があった。韓国メディア各社も「大統領選を牽制する狙いがあるのかも」と言及しているが、北朝鮮の挑発行為はむしろ対北強硬派に有利に働くので、それはあまり関係ないように思う。
(4)「金正日の命日に合わせた」
4月の金日成生誕100周年での衛星打ち上げ(失敗)は、故・金正日の遺言によるものだった。この12月17日はそんな金正日の一周忌であり、故人を称える意味を込めて時期を合わせた。
(5)「金正恩の実績作り」
金正日の一周忌ということは、金正恩政権発足1周年でもある。衛星打ち上げは金正恩政権1周年の祝砲となり、同時に金正恩・第1書記の実績となり、カリスマ性・求心力をアップすることが期待できる。
(6)「軍部の掌握」
金正恩政権はこれまで、4月に禹東測・国家安全保衛部第1副部長を、7月に李英鎬・総参謀長を粛清したうえ、11月29日までに金正覚・人民武力部長を更迭するなど、軍部の実力者をことごとく排除している(金正覚更迭により、2011年末の金正日の葬儀で霊柩車に付き従った軍部トップ4人組は全員がオモテ舞台から排除されたことになる)。そのため軍部内に動揺が生じているが、軍事的な大きな成果を上げれば、それを抑え込むことが期待できる。
(7)「核実験への布石」
いきなり核実験を行えば、アメリカを中心とする国際社会の大きな反発が予想されるため、北朝鮮としては、「アメリカが理不尽な敵視政策を強行したため、自衛のために核開発を余儀なくされた」という構図にしたい。そこでまずは衛星打ち上げを行い、アメリカ主導の制裁を引き出すことが必要となる。つまり核実験がメイン目的で、衛星打ち上げはそのための布石である。
以上において、どれか1つだけが理由とは限らない。複数の理由が存在することも当然考えられるが、いずれにせよ北朝鮮は国家的悲願である核とミサイルに関しては、政治的要素よりも軍事的要素を優先させてきているから、筆者としては(1)「技術的な日程」が可能性としては最も高く、副次的な意味で(2)「韓国の衛星打ち上げに合わせた」(5)「金正恩の実績作り」あたりの意味合いがあったのではないかと推定している。
■テポドン発射を核実験につなげるつもりなのか?
ただ、これらの中で、最も警戒すべきは「核実験への布石」だ。テポドン2改自体は既存のロケットの改良版で、軍事的にはその打ち上げにさほど大きな意味はないが、これが核実験に繋がれば、日本にとっても死活的な脅威になる。北朝鮮が小型の核爆弾を完成させれば、日本列島はいよいよ核ミサイルの射程に入ることになるからである。
4月の打ち上げ失敗の後も話題になったが、北朝鮮はこれまで、2006年、2009年と、実際にロケット打ち上げを核実験に繋げてきている。
4月の打ち上げは、金日成生誕100年という北朝鮮最大の慶事に合わせて日程が組まれるという、あくまで政治目的優先のもので、核開発の日程とはおそらくリンクしていなかった。しかし、今回はそれほどの政治的必然性があるわけではない。
だが、韓国KBSテレビは11月15日、吉州郡豊渓里の核実験場でトンネル掘削作業が活発に行われている形跡があると伝えている。国際社会の反応次第というところもあり、今回すぐに核実験となるかは現時点では断定できないが、北朝鮮の国家安全保障にとっては、ミサイルと核はセットであり、基本政策として核ミサイル開発は絶対に中止されない。いずれ近い将来に核実験を必ず行うと見るべきで、そこまで見越して今度の衛星打ち上げ時期が決定された可能性を軽視すべきではない。
北朝鮮はすでに2006年に初の核実験を行って部分的に成功し、2009年にほぼ完全な形で2度目の実験を成功させた。その後、核爆弾を実戦仕様にするために、ミサイルに積めるまでに小型化する研究・開発に邁進している。その開発が実現すれば、躊躇なく実験に踏み切り、実質的な核武装国家になろうとするだろう。
ここで1つ指摘しておきたいのは、ニュース解説などでしばしば言及されている「外交カード」という用語への疑問である。
北朝鮮の核ミサイル開発について、「国際社会から援助を引き出すため」とか「アメリカを交渉の場に引きずり出すため」の外交カードという見方があるが、違うと思う。北朝鮮はアメリカの軍事力に怯えており、体制生き残りのために核武装を国家的悲願としている。軍事力は体制生き残りの最重要分野であり、何よりも優先されるものだ。
これまでの北朝鮮の行動パターンを振り返ると、アメリカから見返りを得るために、ことさら挑発行為を行ってきたわけではない。彼らは常に、こっそり核とミサイルの開発を進め、それを米韓の監視網にキャッチされ、仕方なく交渉に臨み、妥協を強いられてきた。その際に、タダで譲歩することもあるまいということで、いわば「行きがけの駄賃」として経済援助を引き出したにすぎない。もしも米韓が北朝鮮の密かな企みを発見しなければ、北朝鮮は全力で核ミサイル開発に邁進していただろう。
■一貫して核ミサイルの技術開発に邁進している北朝鮮
もっとも、米韓に発見されるたびに表向きは施設建設・稼働あるいは実験を凍結したりしてきたが、それで北朝鮮が核ミサイル開発を放棄したことなど一度もない。一貫して着々と開発を進め、技術的に必要な実験は必ず行っている。ただし、実験が国際社会で問題になるから、その理由付けのために外交で布石を打つのだ。
外交カードというのは、むしろ逆で、軍事が主、外交はその道具である。交渉は単なる時間稼ぎであり、そうして結局は核爆弾やテポドンを手に入れてきた。
北朝鮮は核とミサイルの開発に関しては、政治的日程というよりは、軍事的・技術的な開発タイムスケジュール優先で進めてきている。北朝鮮の核ミサイル開発に関しては、今春のような具体的な発射や実験準備のニュースがないと、なんとなくストップしているような錯覚に陥りがちだが、彼らは常に一貫して核ミサイルの技術開発に邁進しているということを忘れるべきではない。小型起爆装置の開発がどの程度進んだかは知る由もないが、前回の核実験から3年以上が経過していることなどから考えて、技術的にはすでにかなり進んでいる可能性が高い。
11月30日未明、NHKの「NEWS WEB24」で視聴者のツイッターを紹介していたが、「北朝鮮は国際社会を挑発したいだけだから、大騒ぎするのは思うツボ。無視すればいい」というような意見が意外に多かった。「外交カード」論が日本国民の意識に広く浸透していることが窺えるが、国際社会が無視するなら、北朝鮮は喜んで核ミサイル開発にさらに邁進するだけだろう。
現在、金正恩新体制はもちろん限定的ではあるが、社会や経済の改革開放を少しずつ進めようとしているように見える。対外的にも、以前よりはオープンな姿勢を見せつつあるようだ。ただし、それと軍事はまた別だ。核ミサイル武装は、北朝鮮の安全保障戦略としては合理的な選択であり、それを放棄する徴候は見られない。
さらに、おそらく金正恩政権は、プルトニウム型核ミサイル武装を進めるのと同時並行で、エネルギー政策というタテマエでのウラン濃縮も継続する。これはもちろん将来の核大量生産を見越した戦略だが、北朝鮮は当面、平和利用目的で押し通すだろう。
そのための布石として2010年から建設中だった寧辺の軽水炉だが、韓国KBSテレビはやはり11月15日、衛星写真をもとに「軽水炉の建設が終了したようだ」と報じている。
この軽水炉は2011年12月に建設が凍結されていたが、2012年5月から建設が再開されており、国際原子力機関(IAEA)も同8月には「建設がかなり進んでいる」と報告していた。IAEAの天野之弥・事務局長は11月29日の会合でも、「北朝鮮が核兵器製造用物質の生産能力を高めるために軽水炉建設を進めている」と言及している。
他方、ウラン濃縮の進捗状況については、よく分かっていない。北朝鮮は寧辺のウラン濃縮施設の存在を公表しているが、現在、それが稼働しているかどうかは確認されていない。
もっとも、アメリカは、この寧辺の施設以外に、どこかに同じような施設が隠されているのではないかと疑っている。実態は分からないが、それでも北朝鮮がただ軽水炉だけ完成させて、その燃料となるウラン濃縮を放棄するなどということはまず考えられない。
■北朝鮮の核ミサイル武装が日本の国家安全保障を崩壊させる
おそらく金正恩政権は、「社会・経済の改革」「オープンな外交」「エネルギー政策というタテマエのウラン濃縮」「安全保障の強化としてのプルトニウム型核ミサイル開発」の4点同時実現を目指していくのではないか。それ自体は、国家のサバイバル戦略として合理的である。
中でも金正恩独裁体制の存続のために最優先されるだろうものは、やはり核ミサイルだが、北朝鮮は「自衛のための権利だ」という論法を必ず立ててくるので、前述したように、平時にいきなり強行するということはなく、外交上、「追い詰められた北朝鮮」を演出するだろう。その布石として、北朝鮮が核武装に関して発言を始めたら要注意だ。
11月5日、IAEAは北朝鮮の核開発に懸念を示す年次報告書を国連総会に提出したが、それを受けて北朝鮮の国連代表部次席大使は、「アメリカがさらなる敵対心で威嚇と脅迫を強めている」と発言した。まさに、アメリカによって自国は追い詰められているとの論法だ。
いずれにせよ、北朝鮮が衛星打ち上げや核実験を決意した場合、それを外国が止めるということは困難だ。北朝鮮の核武装に対する中国の出方が不明だが、中国といえども介入には限界がある。もちろん事前に軍事攻撃でもしない限り、米韓にもどうすることもできない。国連安保理でさらなる制裁が採択されようとも、北朝鮮としては核ミサイル武装が実現すれば、国家安全保障上のとてつもない加点になる。
この事態で最もダメージを受けるのは、他ならぬ日本だ。いよいよ核ノドンの射程に入ることになるが、イージス艦やPAC-3でも、すべてのノドンを絶対に撃ち落とせるとは限らない。核ミサイルは1発でも着弾すれば、破滅的な被害をもたらす。つまり、日本の完全なる国家安全保障は崩壊するのである。
それでも北朝鮮の核ミサイル武装は時間の問題であり、日本の安全保障政策は近い将来、根本的に見直しを余儀なくされるだろう。そう考えると、自衛隊最高指揮官である総理大臣が誰になるのかは非常に重要だ。
野田佳彦総理か安倍晋三総理か、はたまた石原慎太郎総理か、あるいは将来的には石破茂総理か橋下徹総理か・・・。振り返れば、ちょっと前には菅直人総理や鳩山由紀夫総理だったこともあるが、こうして見ると、誰が総理大臣かで日本国民の安全は結構大きく左右されることが分かる。
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