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イスラエルとパレスチナ:古い争い、新しい中東
2012年11月26日(Mon) The Economist
(英エコノミスト誌 2012年11月24日号)
イスラエルとハマスの停戦は、思いも寄らぬ和平の礎になるかもしれない。
アラブ人とユダヤ人の間に平和が訪れる日は来るのか(写真は11月19日、カラチで、イスラエルの空爆で死亡したガザ地区の子供の写真の前にろうそくを供えるパキスタンの子供たち)〔AFPBB News〕
中東のアラブ人とユダヤ人の間で平和が続くことなどあり得ないのだろうか? またもや勃発した流血の事態は、そうした望みの空しさを示唆している。
どちらが先に手を出したかというお決まりの不毛な言い争いの間に、多数の建物が瓦礫と化した。140人を超えるパレスチナ人――そのほとんどは一般市民――と6人のイスラエル人が死亡した。
そして初めて、ガザ地区から発射されたロケット弾が、イスラエルの大都市テルアビブと聖都エルサレムの近くに着弾した。
だが、イスラエルとパレスチナが大昔から続く紛争から抜け出せないように見える一方で、それを取り囲む中東全域は変わりつつある。アラブの春は一帯に混乱を巻き起こした。好むと好まざるとにかかわらず、パレスチナとイスラエルも中東の激変に巻き込まれている。
ことによると、それは両者の争いを今まで以上に血なまぐさいものにするかもしれない。だが、この事態がこれまでの致命的な行き詰まりを打開し得ると考えてよい理由もある。
勝ち負けのない戦争
一見したところ、現段階で楽観的な見方を正当化するのは、極めて困難に思える。11月21日に合意された停戦が維持されたとしても、今回の交戦で、双方のタカ派の発言力が高まってしまった。
2007年からガザ地区を支配するイスラム主義組織ハマスの指導者たちは、ガザが徹底的に痛めつけられたにもかかわらず、自分たちがイスラエルを力ずくで追い払ったと主張するだろう。
イスラエルは、ハマスの指導者数人を殺害し、地球上でもとりわけ悲運で窮屈なこの一角に170万人の住民を押しこめているにもかかわらず、ハマスを粉砕できずにいる。それどころかハマスは、より穏健でハマスとは厳しく対立するファタハが現在支配するヨルダン川西岸地区でも支持を集めつつある。
さらに、ハマスの指導者たちは恐らく、時が自分たちの味方についていると判断することだろう。アラブ世界全体でイスラム主義勢力が影響力を強めていると同時に、ハマスには力と資金を持つ友人ができている。
復活した中東の大国トルコは、かつてはイスラエルの最も親密なイスラム教国の同盟相手だったが、今ではハマスの主張を支持している。ペルシャ湾岸諸国で有数の富と活力を持つカタールも同様だ。
歓喜に沸くハマスは、イスラム主義の三日月がイスラエルを包囲しつつあると発言している。北は武装組織でもある政党ヒズボラが影響力を持つレバノンから、イスラム主義的傾向を強める反政府軍がバシャル・アル・アサド大統領を打倒しそうなシリアを経由し、ハマスの同盟者たちが国王を脅かしているヨルダンへと至る三日月だ。
何よりも、イスラエルの南側、現在のところアラブ諸国で最大の人口を抱え、中東の要となっているエジプトで、ムハンマド・モルシ大統領率いるムスリム同胞団が台頭したことで、地域のバランスが変化している。
劇的に変わる勢力バランス
2011年の失脚まで30年にわたってエジプトを支配してきたイスラム色の薄い独裁者ホスニ・ムバラク氏は、ハマスをほとんど相手にしてこなかった。それに対して、イスラム同胞団はハマスの従兄弟とも言える組織で、その指導者たちは世論に耳を傾ける。今後は外交の舞台に、イスラエルと米国の力をもってしても締め出せない役者として、ハマスが姿を現すことになるかもしれない。
一方、イスラエルの強硬派は、正反対の結論を導き出すだろう。軍事面では、ハマスは再び追い込まれている。イスラエルのミサイル迎撃システム「アイアンドーム」はその実力を証明し、ハマスが発射したロケット弾の多くが破壊された。イスラエル人はこれまでよりも枕を高くして眠れるだろう――しばらくの間は。
外交面では、米国がこれまで通りイスラエルの確固たる味方となっている。欧州の多くの国も、今回の交戦で先に攻撃をしかけたとしてハマスを非難している。
何と言っても、イスラエルは、和平プロセスを概ね無視してきたベンヤミン・ネタニヤフ首相の下でとりわけ繁栄してきた。2004年以降、ガザ地区から飛来したロケット弾により合わせて約30人のイスラエル人が死亡しているものの、イスラエルは自爆テロをほとんど受けてこなかった。
それは1つには、将来のパレスチナ国家の主要部分となるはずのヨルダン川西岸地区に食い込み、国際法上は違法であるにもかかわらず拡大を続けるユダヤ人入植地を守る分離壁のおかげだ。
ネタニヤフ首相は有利な立場にいる。首相の率いるリクード党は、1月22日の選挙に向けて、アビグドール・リーベルマン氏の率いるさらにタカ派色の濃い政党と共闘することで合意している。
あの不誠実なパレスチナ人たちに独立した国家を与えて甘やかす必要があるだろうか? パレスチナ人が本当に西岸地区を支配したら、ガザ地区にいる仲間たちがしてきたように、ロケット弾を撃ちこんでこないとも限らないのではないか? ならば、壁の内側に囲い込んだままにしておいて、頭を上げたら打ちのめす方がいい――。
もしかしたら強硬派が勝利を収めるのかもしれない。だが、アラブの春が彼らの計算を狂わせる可能性もある。
エジプトやその他の国で政権を握っているイスラム主義勢力は、イスラエルにほとんど好意を持っていないとはいえ、それぞれの最優先課題は各国内の難問を解決することにある。イスラエルの防衛費は、隣接するアラブ諸国4カ国を合わせた額を上回る。地域の大国を相手に戦争を始めても、アラブ諸国の新政権が自国経済を修復する役にはほとんど立たない。
現実的なモルシ大統領がバラク・オバマ大統領と協力して停戦を実現させたのは良い兆候だ。これは、何かの始まりを示すものかもしれない。
イスラエル人も長期的な見方をすべきだ。アラブ世界で民主化が進んでいる今、パレスチナ人の自決権を奪うことは火種を生む。それはいずれ、イスラエルの支配する領土で爆発することになるだろう――つい先日テルアビブで爆破されたバスのように。
抑圧は既にイスラエルの民主主義を蝕みつつある。そして、アラブ世界の人口増加に伴い、人口動態の要素がその傾向に拍車をかけている。ハマスを抑えつけるために数年ごとにガザ地区に血なまぐさい攻撃を加えれば、外交面にも大きなツケが回ってくるはずだ。
どちらにも外部からの刺激が必要だ
この問題への回答はやはり、双方の良識ある人々や、パレスチナ・イスラエル以外の世界の大半、そして本誌(英エコノミスト)が強く主張している解決策だ。すなわち、2つの国家を立て、イスラエルが安全保障と引き換えに国土を譲渡することである。
短期的には小さいものだが、希望はある。今回の停戦をきっかけに、世界がもう少しだけ、その主張を実現に向けて推し進める影響力を手に入れられるかもしれないことだ。
エジプトは(まず、ただちにガザ地区への武器流入の食い止めに取りかからなければならないが)トルコやカタールとともに、ハマスを説得するために、これまでになく良い立場にいる。ハマスを説得して、土地交換とエルサレムの共有により1967年の境界線をもとにユダヤ国家を定める案を受け入れさせるのだ。
アラブ諸国は、ハマスとファタハの和解も後押しする必要がある。パレスチナ国家の建設を目指すなら、国連に間もなく提出される事実上の国家承認を求める決議案よりも、その方がよほど役立つだろう。
オバマ大統領にも、イスラエルを話し合いの席に着かせるために果たすべき役割がある。オバマ大統領は1期目に、和平に向けた自らの計画を示さなかった。再選を果たした今も、以前と同様、関わり合いになるのを渋っているように見える。それはあまりにも近視眼的すぎる。
米国にとって、中東の安定は重要な利益となる。そのためには、イスラエルとパレスチナの和平合意が必要不可欠なのだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36623
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