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パレスチナ、イスラエル、国連:再び高まる緊張
2012年11月20日(Tue) The Economist
(英エコノミスト誌 2012年11月17日号)
イスラエルとパレスチナの指導者は、ガザ地区で再び始まった武力衝突をエスカレートさせ、外交交渉の再開を一層困難にするつもりなのだろうか?
ガザ地区と、そこに隣接するイスラエルの一部地域で突然激化した憂慮すべき武力衝突は、イスラエルが国連でパレスチナ人に屈辱を味わわされそうな見通しと相まって、この地域の平穏を脅かしている。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、来年1月22日のイスラエル総選挙に向けて、これまでの平穏をアピールしたいと考えていたが、その希望はかなわないかもしれない。
将来のパレスチナ国家の主要部分となるはずのヨルダン川西岸地区を管理するパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長が、11月29日の国連総会でオブザーバー組織からオブザーバー国家への格上げを勝ち取るという約束を果たした場合、ネタニヤフ政権はアッバス議長の失脚まで視野に入れた報復措置を取ろうとするかもしれない。
緊迫するガザ情勢
ガザ情勢は一気に緊迫している(写真は11月15日、イスラエル南部スデロトから撮影した、イスラエル軍の空爆を受けるガザ地区の様子)〔AFPBB News〕
そして、イスラム主義組織ハマスが支配するガザ地区におけるイスラエルとパレスチナ人との最近の衝突が手に負えなくなれば、エジプトのイスラム主義政府が、イスラエルとの和平協定を破棄する恐れがある。
中東地域全体が混乱状態にある中、これらの事態のどれ1つをとっても、得をするのは戦争屋だけだろう。
11月上旬に、ガザ地区から発射された1発のロケット弾が国境を越え、イスラエル軍のジープに命中して4人の兵士が負傷した。ここから事態は過熱し始めた。ロケット弾を発射したのは、恐らく、ハマスよりもはるかに過激なパレスチナ人組織だ。ハマスは2009年以降、ほぼ非公式停戦を守ってきた。
今回の攻撃に対するイスラエル側の報復空爆により、葬儀に参列していたパレスチナ人4人が死亡した。パレスチナ側からは、ハマスによるものも含め、さらに多くのロケット弾が発射された。その後、11月14日にハマスの軍事部門指揮官アハマド・ジャバリ氏がイスラエルの空爆で殺害され、ハマスの反発は激化した。
翌日、状況は一層きな臭くなり、ガザ地区とイスラエル最大の都市テルアビブの間にある町で、ロケット弾により3人のイスラエル市民が死亡した。
過去1年間にガザ地区からイスラエルに向けて数百発のロケット弾が発射されたが、そのほとんどは命中精度の低い手製装置で、今年は今回の衝突以前にロケット弾で死亡したイスラエル人は1人もいなかった(2004年以降でも約20人しかいない)。そのため、ここでイスラエル人に犠牲者が出たことで、ネタニヤフ首相がさらに激しい報復に向かう可能性がある。
本誌(英エコノミスト)が印刷に回された時点で、世界中から自制を求める呼びかけが行われているが、相変わらず何の効果も見えない。
その結果、国連の雰囲気は、パレスチナ格上げ決議案の投票に向けて一層熱を帯びるだろう。
焦点となるパレスチナ格上げ決議案
マフムード・アッバス議長は今月末、国連で「非加盟のオブザーバー国家」への格上げを目指す〔AFPBB News〕
イスラエルの閣僚は、もしアッバス議長が国連でパレスチナの(正式な加盟国にはなれなくとも)地位格上げを勝ち取ったなら、パレスチナ自治政府への財政援助を打ち切ると圧力をかけている。パレスチナ自治政府は、1994年に全関係者の合意によりパレスチナ問題の実務管理のために設立された組織だ。
一方パレスチナの指導者たちは、もしアッバス議長がこれまで同じように土壇場になって引き下がったりしたら、たとえ格上げが象徴的意味しか持たないとしても、政治的に前に進めない自治政府は崩壊すると述べている。
アッバス議長は精神的、外交的勝利を切実に必要としている。「パレスチナはもはや占領された地域ではない、占領された国家になるのだ」と、アッバス議長に近いムハンマド・アル・シュタイエ氏は言う。
対するネタニヤフ首相は、パレスチナが提出する決議案が承認されれば、国内の政敵から、ガザ地区での衝突拡大に加えて外交上の失策でも非難を受けることを心配している。イスラエルは既に、イスラム国家で唯一イスラエルと友好関係を築いていたトルコとの長年の親交を放棄してしまっている。
再選された米国のバラク・オバマ大統領は、敗れたミット・ロムニー候補と比べると、ネタニヤフ首相に対してはるかに冷たい態度を取る。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は再選確実と見られていたが・・・〔AFPBB News〕
イスラエルと対立する近隣諸国や、かつてはガザ地区を巡ってイスラエルを非難することに反対していた多くの国で、イスラム主義者が勢力を強めていることから、イスラエルは再び孤立感を深め始めるかもしれない。
選挙で負けないと思われていたネタニヤフ首相は、突然立場が危うく見えてくるかもしれない。
イスラエルのユバル・シュタイニッツ財務相は、もし国連の決議案が通ったなら、パレスチナ自治政府の予算の約半分を占める税収の送金を凍結するだけでなく、代行徴税そのものを完全に停止すると、パレスチナ側に圧力をかけた。
イスラエル国内にも様々な思惑
しかし、イスラエル軍の司令官たちは、自治政府の5万人の治安関係者が食物を手に入れられなくなれば、その後大きな混乱が続くのではないかと危惧している。
実は、イスラエルは自治政府の財政危機を怖れるあまり、過去3カ月間に自治政府に対して2億ドルを前倒しで支払い、ヨルダン川西岸地区に住むパレスチナ人にイスラエルで働くための許可証を数千人分追加発行した。
ある当局者は様々な非常事態対策を勘案し、「自治政府を維持することはイスラエルの利益にかなう」と述べている。
すべてのイスラエル人がこれに同意するわけではない。
ネタニヤフ政権の連立与党である極右政党党首で、外相を務めるアビグドール・リーベルマン氏は、パレスチナ自治政府の解体を繰り返し求めてきた。リーベルマン氏の政党は今年10月、ネタニヤフ首相のリクード党と総選挙での共闘で合意しているため、外相の意見は以前より重みを増すかもしれない。
一部のタカ派のイスラエル人は、「ヨルダンはパレスチナである」という古いスローガンに立ち返り、(イスラエルとパレスチナが平和共存するという)2国家共存策はもはや死に、ヨルダンが西岸地区の残りの地域を再び支配すべきだというヨルダン人有力者の発言を歓迎している。
アッバス議長は、どんな小さなものでもいいから手に入る限りの政治的功績を必要としている。国連への提案を発表したアッバス議長にイスラエル人が浴びせかけた痛烈な批判は、多少はパレスチナでの議長の評価を高める役に立った。
そのわずか数日前には、議長はイスラエルのテレビ番組に出演して、パレスチナ難民の不可侵の権利と考えられてきた、国際的にイスラエル領と認められている故郷(アッバス議長の場合はガリラヤ地方のツファット)へ帰還する権利に関して譲歩したという理由で、同じパレスチナ人の多くから裏切り者と糾弾されていた。
アッバス議長はまた、ガザ地区を含むパレスチナの領土全体に対する統治権を再確立するために、国際的支持を必要としている。
ガザ地区がパレスチナの新たな中心であるという同地区の――そしてハマスの――主張は、裕福なカタールの首長や、バーレーンの王子や、エジプトの閣僚が、イスラエルに包囲されたこの細長い沿岸部を訪問したことで重みを増している。
ハマスへの攻撃が裏目に出る恐れ
ハマスは、ヨルダン川西岸地区に対しても再び野望を抱き始めているのかもしれない。パレスチナ自治政府とイスラエル政府の高官はともに、ハマスは、ガザ地区の占拠で評価を落としてから5年が経過した今、西岸地区でも支持基盤を強化していると語る。
恐らくそのこともあって、ネタニヤフ首相はロケット弾攻撃を機にハマスの勢力を削ぎたがっているのだろう。しかし、ネタニヤフ首相はその努力により、結果として御し難いイスラム原理主義者への同情を集め、最も平和志向の強いパレスチナ人であるアッバス議長の足を引っ張っているのかもしれない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36572
イスラエルがガザ地上侵攻の用意、外交的解決望む=高官
2012年 11月 19日 22:20 JST
[エルサレム 19日 ロイター] イスラエル高官は19日、同国はパレスチナ暫定自治区ガザへの地上侵攻の用意が整っているものの、外交的解決を望んでいると明らかにした。
高官はロイターに対し「南部のイスラエル国民の平和を保証する外交的解決を望んでいる。それが可能なら、地上作戦は不要になる」と指摘。一方で「外交努力が奏功しない場合には、地上軍を投入するしか他に方法がないだろう」とした。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE8AI00G20121119
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