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どうして今「ガザ空爆」なのか? 冷泉彰彦(作家・ジャーナリスト)
ニューズウィーク日本版 11月19日(月)17時40分配信
アメリカは明らかに狼狽しています。イスラエルが妙な動きをしているという兆候はありました。例えば、先週の11月11日前後には、イスラエル軍はシリアの政府軍とゴラン高原で砲火を交えています。
この事件に関しては、長年にわたるアサド父子とイスラエルの確執が再燃したという恐怖感も多少はあるものの、イスラエルが「シリアの反政府勢力の中に反イスラエルの動きがある」として、反政府勢力のある部分を攻撃するというシナリオに比べれば、まだ国際社会としては「理解可能」だからです。
何よりも、アサド政権がトルコとイスラエルの影響力排除を試みているという文脈から理解できるというだけでなく、「国際社会が何らかの支援を考えている反政府勢力」が「イスラエルの敵」になるという錯綜した関係は回避できるからです。
ですが、11月14日に始まったガザへの大規模な空爆は、中東和平の枠組みを揺さぶるインパクトを持っておりアメリカを始めとする国際社会は、週明けの最重要課題として動かざるを得なくなりました。
イスラエルはガザ地区を実効支配しているハマスの幹部(ジャバリ参謀長)を15日に殺害すると共に、大規模な空爆を加えており、ネタニヤフ首相はこの週末に至って「地上戦力の投入も考慮」という激しい発言を始めています。
アメリカはこの間、大統領選があり、その直前にはハリケーン「サンディ」による被災があり、更に大統領選後は「財政の崖」問題に取り組むための大統領と議会指導者の交渉が始まったり、その一方では「ペトレアス・スキャンダル」があったりと、中東情勢に関心を向ける余裕がなかったのですが、完全に虚を突かれた形です。
このガザ侵攻ですが、直接の原因としてはハマスによるガザ地区「発」のイスラエル領内へのロケット弾攻撃がエスカレートしていたという問題がある一方で、西岸地区を基盤とするパレスチナ国家のアッバス議長はパレスチナの国連加盟を模索しており、イスラエルとしては政治的に「反攻」したいというタイミング的な動機があったということも言えるでしょう。
更にはガザ地区の背後にあるエジプトで公選により「ムスリム同胞団」系のモルシ政権が発足しているという問題があるわけです。また、その大きな背景としては、ここ数年続いている問題としてイスラエルを公然と敵視するイランによる核兵器の開発が進行しているという懸念があります。
大枠で捉えるならば、イランの核開発は継続しており、シリアのアサド政権はまだまだ安泰、エジプトでは新政権が反イスラエル的色彩を濃厚にしているという「全体像」を考えると、イスラエルの側からは「自分たちに対する包囲網」が切迫しているという認識になるのだと思われます。
イスラエルはこうした認識を持った場合は、その歴史の中で「先制的な攻勢」をかけることで知られています。国家存亡の危機感から、動物的な防御本能が激しい攻勢という行動として現れてくるのです。結果的に、その矛先はロケット弾攻撃の「火元」であり、背後にエジプト新政権を抱えるガザに向かったと考えられます。
更にこれにはイスラエルの国内事情が絡んでいます。イスラエル国会(クネセト)は10月に既に解散されており、2013年の1月22日に総選挙が行われるのです。保守派のリクード系が優勢と伝えられてはいるものの、こうした「危機」に対しては「行動」しないと選挙では負けてしまうという判断もあったと思われます。
国際社会は戦闘の大規模化を恐れています。フランスのオランド大統領は、以前からイスラエルのイラン攻撃を「認めない」という発言をしていますが、今回のガザ攻撃についてもネタニヤフ首相に即時停戦を求め、かえって反発を招いています。
オバマ大統領は、間の悪いことにカンボジアやミャンマーなど南アジア歴訪に出ていますが、今のところは「イスラエル支持」というアメリカ的には無難な声明を発表しているだけです。更に、この欄で何度もお話したように、アメリカの軍事、外交関係の責任者については、現在「オバマ2期目」へ向けて人事が流動的なわけです。
こうしたオバマ政権の対応状況について、共和党の保守派は「対応が遅い」とか「今言われているスーザン・ライス国連大使では次期国務長官には不適任」などと、色々な批判を出してきています。中には、共和党内からの声として「中東和平はオバマには無理だから、ビル・クリントンが出てこい」などという意見も出ています。
もしかしたら、今回、ヒラリー・クリントンが国務長官を辞任するのは、自身の2016年の大統領選出馬準備ということと同時に、イスラエルに冷淡であったオバマとは「別の道」を模索するためなのかもしれません。
以上、現状とその周囲の状況を整理しただけですが、少なくともこの問題、中東だけでなく、アメリカやヨーロッパの政治も巻き込んだ複雑な文脈の中で起きているというのは間違いないと思います。
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最終更新:11月19日(月)17時40分
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20121119-00000301-newsweek-int
イスラエルのガザ攻撃に潜む皮算用
Unbeatable Bibi
総選挙を控えたネタニヤフ首相はハマスに強硬姿勢を示すことで右派勢力の支持を固めたいという思惑も
2012年11月19日(月)12時37分
ダン・エフロン(エルサレム支局長)
強硬姿勢 イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザの大規模空爆を展開(11月16日) Ronen Zvulun-Reuters
[2012年10月24日号掲載]
イスラエルの選挙といえば、結果を予想しづらいのが常だった。パレスチナへの土地譲渡を望む勢力とイスラエル領土の拡大を求める勢力の力が拮抗し、どちらかが僅差で過半数を握るか、駆け引きと妥協で連立政権が生まれることが多かった。
だが近年、この傾向に変化が見られる。ネタニヤフ首相は10月、総選挙の前倒しを発表したが、この選挙では彼が率いる右派勢力が圧勝する見込みだ。
世論調査によると、ネタニヤフの支持率はライバルの2倍以上に当たる50%以上。右派連立政権を構成する政党の支持率も上昇している。
ネタニヤフは右派の支持を伸ばす上で大きな役割を果たしてきた。09年3月の首相就任以来、テロの発生率は下がり、多くの国が不況を脱するのに苦しむなかで経済も安定。テロも経済もイスラエルの有権者にとっては極めて重要な問題だ。
反イスラエル運動が高まるリスク
だが右派の勢力拡大の背景には、より長期的な流れもある。右派を支持する正統派と超正統派のユダヤ教徒がイスラエルで増えているのだ。現在、この両派は人口の約25%を占めているが、今後20年以内に40%に増えるという予測もある。
彼らがタカ派を好む政治姿勢を変えることはまずないだろう。宗教的信条から、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区に当たる地域の統治権はイスラエルにあると考えているためだ。
強固な支持層を握っていれば政権基盤は盤石に見えるものだが、紛争など突発的な出来事で政界勢力図が一変することもある。
長期にわたって政界を支配してきた左派勢力の権威が失墜したきっかけは、73年の第4次中東戦争だった。彼らが盛り返したのは約15年後。パレスチナ住民が大規模な反イスラエル闘争を起こした後だ。
西岸地区でのパレスチナ人の不穏な動きや、パレスチナとの和平プロセスの行き詰まりを考えると、新たな反イスラエル運動が起きる可能性もある。
そうなると、いずれ選挙の結果予想はまた難しくなるかもしれない。ネタニヤフもそれは承知しているだろう。96年の首相公選で彼がごく僅差で辛勝したのは、パレスチナ過激派のテロが激化していた時期だった。
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中東
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頼みの革命防衛隊も離反
アリ・ラリジャニ国会議長は先週、問題の80%は政府の政策にあり、20%は制裁にあると発言。「『ロビン・フッド経済』では絶対にうまくいかない」と、アハマディネジャドの経済政策を皮肉った。「ロビン・フッド経済」とは、2期目のアハマディネジャド政権による補助金のばらまき政策を指す。
政府が国民に直接補助金を配ることに対しては、制御不能のインフレを招くとして多くのエコノミストから反対の声が上がっていた。複数のリポートによると、現在のイランのインフレ率は30%を超えている(公式の数字は19%)。
アハマディネジャドはラリジャニの批判に対し、制裁が通貨危機の原因ではないとすれば、議会の対応が悪いのではないかと反論。制裁によって石油の輸出が困難になり、中央銀行の取引が制限されていることが問題だと主張した。同時にアハマディネジャドは、確かに石油輸出は減っているが、「神のおぼしめしがあれば、(輸出は)回復するだろう」と述べた。
同じく先週、アハマディネジャドは論議を呼んだ記者会見で、22人の首謀者がイランの為替市場に大混乱を引き起こしたと非難(氏名は公表しなかった)。情報省に捜査を命じた。
アナリストによれば、リアルの急落には複数の要因が関係している。「過去7年間、政府はオイルマネーにものをいわせ、リアルの価値を人為的に低く抑えていた。だが金融取引と石油に対する長期の制裁は、政府の歳入をかなり減少させた」と、カリフォルニア大学バークレー校の中東起業・民主主義プログラムの責任者ダリウシュ・ザヘディは言う。
「国民は深刻化する金融危機、国際関係の危機に対処する政府の能力を信用していない。状況が悪化し続けるのは確実だと思っている」と、ザヘディは指摘する。「政府は制裁のせいで外貨準備を使えなくなったか、外貨準備が急激に枯渇しかけているかのどちらかだと、人々は考えている」
ザヘディはこう付け加える。「アハマディネジャドの任期中、政府は資金の流動性を600%も高めた。そのため今は資金が雪崩を打って安全な投資先に殺到している。さらに金利がインフレ率を大きく下回り、電気などの公共料金と資源価格の急騰、安価な中国製品の大量流入によって国内の製造業が大打撃を受けているため、資金が外貨や金などの安全な投資先に流れ込み、両者の相場を高騰させている」
05年、アハマディネジャドが大統領に就任した当初は、最高指導者のアリ・ハメネイ師と革命防衛隊、議会から全面的な支持を得ていた。だが今は、議会も革命防衛隊も大統領に背を向けている。
アハマディネジャドは先週の記者会見で半国営のファルス通信を非難。同通信は「ある治安機関(革命防衛隊を指す)の支配下にあり」、自分に対して心理戦争を仕掛けていると主張した。
さらにアハマディネジャドは、辞任の可能性をほのめかして脅しをかけた。「もし私の存在が耐え難いというのなら、一筆書いてもいい。『さよなら』と」
先月末、アハマディネジャドがニューヨークの国連総会で演説している間に、革命防衛隊は大統領の広報担当顧問モハンマド・アリ・ジャバンフェクルの身柄を拘束した。アハマディネジャドとかつての盟友たちの間で、権力闘争が激化していることを物語るエピソードだ。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2012/11/post-2758.php?page=2
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