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焦点:ガザ攻撃でハマスが得る「戦果」、アラブの春で追い風も
2012年 11月 19日 16:04 JST
[ガザ 18日 ロイター] イスラエル軍が5日連続でパレスチナ自治区ガザ地区を攻撃した18日、パレスチナ人のアリ・アーメド氏は、3人の子どもたちのためにパジャマ姿で卵とチョコレートを買いに出掛けた。「本当に恐ろしい」と言うアーメド氏だが、ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの攻撃が、イスラエル側にも恐怖を与えていると満足気だ。
「ハマスはイスラエルと戦っていることを忘れていると思っていたが、私が間違っていた」。ガザ地区では、ハマスが2007年に武力制圧して以来、約170万人が不自由な生活を強いられているが、こうした反応はハマスにとって心地良い響きに聞こえるだろう。
イスラエルとハマスは2008年末から翌年初めにかけて、約3週間の戦闘を続けたが、ハマスと敵対するパレスチナ勢力は当初、ハマスによるロケット弾攻撃がイスラエルの地上侵攻を引き起こしたと非難。この戦闘によるパレスチナ側の死者は1400人を超えたが、イスラエル側も13人が死亡する結果となった。
今回は状況が一変している。「アラブの春」が中東の勢力図を塗り変え、ハマスはより強力な武器を手にしている。
フェイスブックには、避難するイスラエル人をあからさまに喜ぶ投稿が見られる。ユーチューブでは、ヨルダン川西岸出身の歌手2人がイスラエルにロケット弾を放つハマスを称賛する「テルアビブを攻撃せよ」という歌がヒットしている。
また、ハマスは外交的な成功も手にした。先週にはイスラエルの攻撃が続く中、エジプトとチュニジアの外相がガザを訪れ、パレスチナへの連帯を示した。
ガザが前回攻撃を受けた際、エジプトとチュニジアは欧米が支持する独裁体制だったが、アラブの春を経た今、ともにイスラム勢力による政権に交代。両国では、同じスンニ派のハマスを支持する国民が大半を占める。
<ハマスへの称賛>
普段はハマスに批判的なガザ地区の政治アナリスト、タラル・オカル氏も「われわれはハマスに敬意を表している」と評価する。「組織化されているように見えるし、自分たちの行動を理解し、目標達成のために代償を払う用意があるようにも思える。一般市民は彼らに敬意を示すしかない」と称える。
オカル氏は、イスラエルが地上侵攻を行った場合、エジプトをはじめとするアラブ諸国の指導者がどう対応するか、イスラエル自身には予想できないと指摘。「イスラエルはそれほど気に掛けていないかもしれないが、米国や欧州の同盟国はそうではない。欧米は新たな中東における自分たちの利益を心配している」と分析する。
イスラエルの対空防衛システム「アイアン・ドーム」が機能していることなどで、商都テルアビブに飛来したロケット弾による犠牲者や被害はこれまで出ていない。しかし、イスラエル市民が避難所に駆け込む様子にハマスはしたり顔だ。
今回の戦闘は依然として一方的な戦闘で、その勢力や戦果もイスラエルが圧倒している。14日にガザへの空爆が始まって以来、イスラエル側の死者は3人だが、パレスチナ側は65人に上り、そのほとんどが民間人だ。しかし、ハマスは世界的な世論をめぐる戦いでは、重要な勝利を収めつつあると考えている。
<陰に隠れたアッバス議長>
一方、パレスチナ自治政府のアッバス議長は、ハマスの指導者に連帯を示し、イスラエルの軍事行動を停止させるために最善を尽くす用意を表明した。
アッバス議長は、パレスチナの独立国家運動を推し進める指導者だが、ハマスをめぐるガザ地区での戦闘の陰に追いやられている。
商店や学校は閉まったままだが、テルアビブに向かうとみられる長距離ロケット弾の爆音が聞こえるごとに、通りで歓声を上げる市民も見受けられる。
ハマス軍事部門の広報官アブ・ウバイダ氏は、「前回の戦闘が22日間続いたなら、今回はもっと長く続ける準備はある。イスラエル側はそうではない」と士気を高める。
前回の2009年1月初旬と同様、今回もイスラエル軍による地上侵攻の危機は迫りつつある。ハマスには装甲車両や戦車はないが、新型の対戦車ミサイルを保有し、イスラエル軍が侵攻すれば、奇襲をかけるとしている。
そして、地上侵攻となった場合でも、パレスチナ人はイスラエルが得るものはないと考える。
前出のアーメド氏は、「イスラエルが侵攻すれば、何百人もの民間人が殺されるかもしれない。しかし、撤退すればロケット弾が追撃し、イスラエルは敗れる」と期待を込めるように語った。
(ロイター日本語サービス 原文:Douglas Hamilton、翻訳:橋本俊樹 編集:宮井伸明)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE8AI03920121119
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