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尖閣紛争は長期の消耗戦へ突入、
いまこそ抑止力を考えるべし
2012年11月15日(Thu) 桜林 美佐
最近、雑誌やテレビなどで「日中もし戦わば」とか「開戦シミュレーション」といった特集をよく目にし、また私自身もそうした内容の執筆を依頼されることもあるが、何を以て「開戦」なのかは近年、曖昧になってきている。いきなりミサイルをぶち込まれたり、鉄砲を持った兵士が大挙してやって来るといったことは考え難い。
先日これらについて議論していた際、ある将官OBの方が「これは消耗戦ではないか」とつぶやかれ、蓋(けだ)し納得であった。
海上保安庁は1万人余りというかなり厳しい人員と装備を駆使して南西海域の警備を強化し、海上自衛隊の護衛艦や哨戒機による警戒・監視活動もますます多忙を極めている。航空自衛隊の領空侵犯対処も同様である。
ただでさえ縮小している人員と予算であるのに、この状態が長く続けばどうなるのか?
確かに、短期決戦では今のところわが方に利があると思われるが、そんなことは承知の相手があえて眠れる獅子を起こすような真似はしないだろう。
中国が「法律戦」「心理戦」「輿論戦」の『三戦』を実施していることは「防衛白書」にも明記されており、周知の事実だ。
自国本位の法律を作り、他国民のマインドに入り込み世論を都合のいいようにコントロールする、それらがすでに行われているとすれば、すでに戦争状態に置かれているのであり、敵の戦力を徐々に奪っていくという、これがまさにゲリラ戦なのではないか。そして双方は今、長期消耗戦という次の段階に入っていると言えるのかもしれない。
求められる長期の戦略
そのように考えると現在やらねばならないのは、まず海保や自衛隊が活動するための燃料費や人繰りなどについて余裕を持たせることだろう(国民の国防意識を取り戻す必要は言うに及ばず)。
それから、この時間を使って日本の防衛力を高めること。しかもそれは警戒・監視機能だけではなく、相手を踏みとどまらせるための抑止力たる陸上戦力の強化も重要となるが、ここがいま一つ理解されていないように感じてしまう。
そんな中、陸上自衛隊の部隊で今、最も脚光を浴びているのは、長崎県佐世保市にある「西部方面普通科連隊」(西普連)だ。
創設は2002(平成14)年で、今から10年前、約2500に及ぶ離島防衛や災害派遣などのニーズに応えるべく立ち上がった比較的新しい部隊である。昨今は「尖閣防衛」という大テーマが課されており、自ずとその訓練や装備にも変化が生じているようだが、おそらく当初から今のような状況も見据えていたのだろうと思う。
これまでいろいろな部隊を訪問させていただいたが、ここに足を踏み入れると独特の雰囲気があった。なにせ、すれ違う隊員さんが皆レンジャー徽章を着けている。そして、ここ相浦駐屯地内は訓練設備が充実し、待ち時間なしで常に誰しもが何かの訓練にあたっているというから気合の入りようが分かる。
やっていることも特殊で、ボートを使って目的地に進出し、ある地点から遊泳斥候員が泳いでいくといった、いままで陸自に求められなかった訓練も多々ある。着衣のまま重い装備を背負っての長距離水泳、また、上陸後の速やかな作戦行動、一発必中の射撃能力、そして何よりここで訓練に励んでいる彼らの目には刺すような鋭さがある。
西普連はまさに日本の切り札と言ってもいい部隊だ。抑止力を高めるためには、彼らのような精鋭をどんどん育成し、さらに「海兵隊的な」機能を付与する必要があるとよく言われる。確かにその通りである。
北海道は重要な練兵場
しかし、再三述べているように、陸海空自衛隊にプラスアルファの組織を作るのならともかく、縮小傾向の中で一部分を強化しようとすれば、どこかを削らなくてはならない。
目下、現実的なのは統合運用を強化・充実させることだろう。もちろん、米海兵隊との連携は前提条件だ。
そう考えると、水陸両用車など個別のアイテムを揃える必要性もあるが、陸海空が連携して行動するための通信機能がおぼつかない状況を打破しなければならないのではないか。この大事な取り組みがなかなか進まないことを、もっと深刻に受け止めるべきだろう。
一方、話は一気に飛ぶが、ちょっと気になることがある。それは、今、西普連がメディア等で取り上げられ、一部の識者の中でも「こういうところにこそ重点投資すべし」とか「特殊部隊を増やすべし」などといった極端な論調が見られることだ。
たまたま西普連に行った翌日に北海道の部隊に行ったから言うわけではないが、南西方面が今は重要だからと言って北方を削ぎ落としすぎることは問題がある。
すでに北海道の自衛隊は2つの師団が旅団化されるなど縮小の一途をたどっており、これは抑止力を低下させることになる。広大な土地を有する北海道には演習場も多く、日本の国内事情に鑑みて、兵を養うには最適な場所だ。ここが練兵場として欠かせない土地であることはおそらく将来も変わらないだろう。そのためには、常駐部隊は必要なのだ。
必要なのはバランスのとれた戦力配備
誤解を招いてはいけないので、改めてまとめると、西普連など南西方面対処を強化するのは今、当然であり、まだまだ投資しなければならない。ただし、だからといって北海道には我慢してもらうというわけにはいかない。どんな時代であってもわが国にはバランスのとれた戦力配備が必要なのだ。
とにかく日本は今、長期戦に備えなければならず、予算を減らしている場合ではない。しかし、世の中には「上陸された時はもうおしまい」という声も少なくなく、短いレンジでしか思考していないように見える。このあたりの意志の弱さがつけ入られる隙になり、ちょっかいを出されているように感じるのは私だけだろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36531
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