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スペイン:66年米軍機事故で水爆落下、土壌放置進む汚染
http://mainichi.jp/select/news/20121113k0000e030192000c.html
毎日新聞 2012年11月13日 15時00分
【パロマレス(スペイン南部)篠田航一】東西冷戦期の1966年1月、スペインのパロマレスで米軍機が搭載していた核兵器の水素爆弾4個が落下し放射性物質プルトニウムが漏れ出した「パロマレス事故」で、当時撤去の対象とされず現場に放置されていた土壌5万立方メートルから、プルトニウムが変化し、同程度に有毒性の高いアメリシウム241が検出されたことがスペイン科学省の調査で分かった。土壌撤去には特殊な技術が必要なためスペインが米国に協力を要請しているが、米側は応じていない。米西間の外交問題に発展している。
事故は米軍爆撃機B52と米空中給油機が空中で衝突し、水素爆弾4個のうち3個が陸地に落下。2個からプルトニウムが流出した。1個は海中から引き揚げられた。両機の乗員7人が死亡。住民に死傷者はなかった。
事故後、現場周辺では1平方メートル当たり最高120キロベクレルのプルトニウムを検出。墜落現場はその10倍に達した。現場周辺の放射線量は86年の旧ソ連・チェルノブイリ事故で移住対象とされた数値に匹敵。米軍は当時、汚染土砂1300立方メートルを撤去した。
しかし、最近になって同省が現場周辺で詳しい調査を実施したところ、「土地使用制限基準値の1グラム当たり1ベクレルを超す高レベルのアメリシウムを含む土壌が5万立方メートル残る」(同省エネルギー環境技術センター)ことが分かったという。
アメリシウム241は半減期が432年と長く、人体に有害な放射線アルファ線を放出する。現場周辺は立ち入り禁止となり、一部住民からは被ばく反応が出たとの報道もあるが、センターは「事故との因果関係を証明できる事例はない」としている。
マドリード・コンプルテンセ大学のラファエル・モレノ・イスキエルド教授(50)が情報公開請求で入手した米国防総省報告書(75年)によると、米スペイン両政府は当時、欧州への核兵器配備を重視。一部地域の「除染を断念する」ことで合意していた。
◇アメリシウムとは
プルトニウムが変化してできる有毒性の高い放射性物質。使用済み核燃料などに含まれる。自然界には元来存在しないとされ、核実験場や原発事故現場の周辺で検出されている。プルトニウムとウランの混合燃料を使う福井県敦賀市の高速増殖原型炉「もんじゅ」でも運転停止期間中に燃料の一部がアメリシウムに変化したことが確認された。1940年代、原爆製造に携わった米物理学者シーボーグ博士らが発見した。
◇
スペイン:汚染土壌、核配備優先し隠蔽…米軍機の水爆落下
http://mainichi.jp/select/news/20121113k0000e030193000c.html
毎日新聞 2012年11月13日 15時01分
米軍機の事故で放射性物質がスペイン南部の村を汚染した66年1月の「パロマレス事故」で、汚染土壌から有害なアメリシウムが検出されたことが判明した。半世紀近く後の今も汚染土壌が放置される背景には、東西冷戦という当時の国際情勢の下で、欧州への核兵器配備の支障となることを懸念した米・スペイン両国政府が事態収拾を急いだことがある。放射能漏れの事実を1カ月以上も隠蔽(いんぺい)するなど徹底した情報統制も繰り広げていた。【パロマレス(スペイン南部)篠田航一】
米国は60年代、ソ連のミサイル先制攻撃を恐れ、核兵器を積んだ戦略爆撃機を欧州で24時間態勢で飛行させていた。パロマレス事故はその過程で発生した。2年後の68年にも米軍はグリーンランド(デンマーク領)で同様の水爆落下事故を起こし、放射性物質を飛散させている。核兵器の紛失や関連事故は米軍内部で「ブロークンアロー(折れた矢)」と呼ばれ、50〜80年代に少なくとも32件発生したことが後に判明している。
事故現場の大半は米本土の空軍基地周辺や海上だったが、パロマレス事故は欧州本土で起きた「冷戦期の一大事件」(パロマレス村を管轄するクエバス・デル・アルマンソーラ市のカイセド市長)だった。
当時のスペインの親米フランコ独裁政権は反共を掲げ、核を積んだ米潜水艦の寄港を事実上黙認したとされる。両政府の政治的思惑により事故の情報開示は遅れ、除染も不十分なまま幕引きが図られた。
90年代からマドリード・コンプルテンセ大学のモレノ教授が情報公開請求などを通じて当時の状況を調査。米エネルギー省の報告書(66年2月)によると、水爆の捜索は当初「飛行機の残骸と機密材料の回収」とされていた。また、75年の国防総省報告書によると、事故後の1月下旬に米海軍は情報公開を訴えたが、同省が拒否。3月2日にようやく「土壌と草木に少量の放射性物質がある」と認め、一部土壌を撤去したという。
パロマレスでは、住民のがん発生率が高いとの報道もある。現場周辺では「風評被害で特産物のトマトやスイカが売れなくなる。何十年たっても事故の話はしたくない」(70代女性)といった反応も少なくない。
土砂撤去にはスペイン政府が米国に協力を要請している。クリントン米国務長官は昨年7月、「深刻に受け止めている」と述べたが、具体策には言及しておらず進展はない。
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