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検察の捜査開始と同時に反日の勢いなくした李明博大統領
あの発言は人気取りのためだけだったのか?
2012年11月9日(金) 趙 章恩
李明博大統領が退任後に住む私邸のために購入した土地を巡り、10月から、特別検事による捜査が本格的に始まった。この土地購入を巡って、いくつかの疑惑がある。1つは、契約者の名義を李大統領ではなく李大統領の長男にしたこと。不法贈与と不動産実名法違反(不動産投機)の疑いがある。2つめは資金の出所だ。李大統領の長男は、叔父――李大統領の兄――からお金を借りて購入したという。だが、大統領の兄がどのような経緯で大金を所持していたのか、詳細は明らかでない。
第3は、李大統領の長男と大統領警護室が共同所有にしたことだ。大統領警護室は、退任後の大統領の警護に使う施設を建てる必要がある、という理由を挙げている。大統領警護室の予算(国民の税金)を使い、李大統領が土地を安く買えるようにした、とみられている。国民の税金で李大統領の長男が安く土地を取得した、不動産実名法に違反した、ということになれば、李大統領の兄と息子、大統領夫人まで処罰を避けられない(大統領は免責)。
李大統領の任期の最終年である2012年になって、同大統領の親族や側近らが次々と検察の取り調べを受けている。検察は7月、政治資金法違反とあっせん収財罪で同大統領の兄を起訴した。この問題に関して李大統領は、7月24日に国民に謝罪した。現役大統領の兄が検察の取り調べを受けたことも、長男が検察の取り調べを受けたことも、いずれも史上初めてのことだ。検察は11月5日、11月中に大統領夫人も事情徴収する方針であると発表した。
李大統領がもたらした“メンタル崩壊”
この後に起こったのが、李大統領の突然の竹島(韓国名:独島)訪問である。日本からの抗議に対して、同大統領は「韓国の大統領が韓国の領土を訪問して何が悪い」と反発。この後、李大統領の支持率は一時期アップした。しかし、もし日本が無視していたら、韓国の人々は、あまり反応しなかったかもしれない。
李大統領はこの後、口を開ければ「日本は〜」と反日を訴えていた。だが、検察の捜査が本格的に始まった10月中旬から、反日の勢いをすっかりなくし、表舞台にも登場しないでいる。大統領の暴走が止まったことで、韓国の人々は、日本との関係を冷静に見つめなおすようになった。
李大統領の発言は、すべて記録に残っている。にもかかわらず、10月8日に麻生太郎元総理と面談した際、「そんなこと言ってない」「天皇に謝罪を求めたわけではない。真意が伝わってない」と言い訳をした。このため、韓国中がメンタル崩壊(韓国の流行語、魂が抜けていく気分、パニックになるという意味)を経験した。また、親日に戻ったわけだ。
李大統領は2008年4月に日韓首脳会談を行った際に、天皇を日王ではなく「天皇」と表現し、韓国に招待したいと自ら提案した。韓国では当時、大騒ぎになった。大統領が、天皇訪韓を突然言い出したのは社交辞令なのか、それとも本気なのか、と。李大統領は、韓国の大統領として日韓関係を考えて発言するのではなく、自分に有利になるようコロコロ発言を変えてきたとしか言いようがない。
麻生元総理との面談内容を報じる記事は、いずれも、李大統領の一連の反日発言の真意が何かについて明確には書いていない。李大統領の発言の真意は何かを追及する媒体もない。李大統領の発言は信頼を失い、取材する価値もないということなのだろうか。
これらの記事に付くコメントを見ると、次のような主旨のコメントが多い。「李明博は自分の祖国である日本に帰れ」「李大統領は自分の真意が伝わらず日本が誤解したというが、その真意とは何か?やっぱり骨の髄から親日だったのか」。李大統領が反日のふりをして支持率を上げようとしたことに対して怒っているのだ。
李大統領は反日から、また急に親日に戻った。李大統領の反日発言を本気にして、「今度こそ歴史問題を繰り返さないように決着をつけるべきだ」「日韓の歴史観の違いについて話し合うべきだ」とネットに書き込み真摯に議論した国民は、バカにされた気分である。
韓国の安保理入りを日本が支援
もう一つ、韓国の雰囲気を変えたのは国連安全保障理事会の動向である。10月18日、韓国は安保理非常任理事国になった。韓国の安保理入りは1996〜97年以来2度目である。韓国の非常任理事国入りに日本が賛成し、投票したことを、韓国のマスコミも大々的に報道した。
「中国と北朝鮮がカンボジアに投票したので、日本としては韓国しか選択の余地がなかった」「中国をけん制するための選択だ」という分析もある。しかし、日本と韓国はやっぱりパートナーになるしかないことを再確認するきっかけになった。
別所浩カ氏が10月末、新任駐韓日本大使として着任した。韓国のマスコミはこれをトップニュースとして報道した。別所大使は金浦空港で韓国の記者らに、「日韓関係はアジアと世界にとっても大事」「難しいところもあるが、それを克服して良い関係を築きたい。日韓の信頼関係を構築するのが私の使命」「両国がお互いを深く理解しないといけない。私も韓国について勉強する」と話した。
「韓国の話もよく聞き、日本の立場もよく説明する」という別所大使の言葉が印象的だった。2013年になって韓国の政権が交代すれば、新しい大統領と新しい駐韓大使が新しい一歩を踏み出す――そんな期待を持たせる発言だ。
韓国と日本の関係が、落ち着いて対話できる関係になることを願う。歴史認識が違うからと一方的に攻撃しあうのではなく、韓国の話も聞き日本の立場も説明する、韓国も日本の話を聞き韓国の立場を説明する。これまで、何かあるとすぐ「韓国は被害者、日本は加害者」といって反日感情を刺激し、支持率を上げようとする韓国政治家が多かった。だが、もうこの手の扇動はうまくいかないだろう。ネットやTwitterでは、「反日」ではなく「外交」として日韓関係を考えなければならない、という書き込みが目立っている。
趙 章恩(チョウ・チャンウン)
研究者、ジャーナリスト。ソウルで生まれ小学校から高校卒業まで東京で育つ。韓国ソウルの梨花女子大学卒業。現在は東京大学社会情報学修士。ソウル在住。日本経済新聞「ネット時評」、西日本新聞、BCN、夕刊フジなどにコラムを連載。著書に「韓国インターネットの技を盗め」(アスキー)、「日本インターネットの収益モデルを脱がせ」(韓国ドナン出版)がある。
「講演などで日韓を行き交う楽しい日々を送っています。日韓両国で生活した経験を生かし、日韓の社会事情を比較解説する講師として、また韓国のさまざまな情報を分りやすく伝えるジャーナリストとしてもっともっと活躍したいです」。
「韓国はいつも活気に溢れ、競争が激しい社会。なので変化も速く、2〜3カ月もすると街の表情ががらっと変わってしまいます。こんな話をすると『なんだかきつそうな国〜』と思われがちですが、世話好きな人が多い。電車やバスでは席を譲り合い、かばんを持ってくれる人も多いのです。マンションに住んでいても、おいしいものが手に入れば『おすそ分けするのが当たり前』の人情の国です。みなさん、遊びに来てください!」。
日本と韓国の交差点
韓国人ジャーナリスト、研究者の趙章恩氏が、日本と韓国の文化・習慣の違い、日本人と韓国人の考え方・モノの見方の違い、を紹介する。同氏は東京大学に留学中。博士課程で「ITがビジネスや社会にどのような影響を及ぼすか」を研究している。
趙氏は中学・高校時代を日本で過ごした後、韓国で大学を卒業。再び日本に留学して研究を続けている。2つの国の共通性と差異を熟知する。このコラムでは、2つの国に住む人々がより良い関係を築いていくためのヒントを提供する。
中国に留学する韓国人学生の数が、日本に留学する学生の数を超えた。韓国の厳しい教育競争が背景にあることを、あなたはご存知だろうか?
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20121107/239173/?ST=print
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