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第2期オバマ政権に突き付ける「イランの核」 失策続き、中東問題の“どろ沼”から足抜けできない
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投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 08 日 06:35:58: cT5Wxjlo3Xe3.
 

第2期オバマ政権に突き付ける「イランの核」

失策続き、中東問題の“どろ沼”から足抜けできない

2012年11月7日(水)  菅原 出

 11月6日、大接戦だった米大統領選挙を制したのは現職のオバマ大統領だった。9月末まではオバマ大統領の優勢で選挙戦を進めていたが、第1回目の候補者同士の討論会で共和党のロムニー候補が株を上げ、一気に差を縮めた。第2回、第3回の討論会ではオバマ大統領が巻き返したものの、その後支持率に大きな変化はなかった。


米大統領選挙 第3回候補者討論会(写真:ロイター/アフロ)
 10月末に米東部を襲ったハリケーン・サンディーでは、オバマ大統領が現職の強みを活かして被災地の救援に指導力を発揮したことや、10月の雇用統計で失業率がわずかながらも減少するなど、最後の最後にオバマ大統領に追い風が吹いたことも間違いない。

 いずれにしても、これだけの大接戦となったということは、対立候補である共和党への支持やオバマ大統領の政策への不満もそれだけ高かったことを意味しており、2期目の政権運営に大きな障害となっていくであろう。

 今回の大統領選挙では、対立候補のロムニー氏が、選挙戦終盤で外交問題を争点にすることを諦め、ほとんど経済問題に集中してしまったために、オバマ政権の外交分野の失敗があまり浮き彫りにされることはなかったが、ここではオバマ新大統領が今後直面するであろう外交的課題を整理しておこう。

第2期オバマ政権が直面する新たな「テロ問題」

 第3回目の討論会は外交がテーマだったが、この時に「米国に対するもっとも大きな脅威は何か?」というモデレーターの質問に対し、ロムニー候補はイランの核問題をあげ、オバマ大統領はアルカイダなどの国際テロ勢力をあげていた。この2つは、第2期オバマ政権にとって間違いなく外交・安全保障政策の最優先課題となるであろう。まずは、国際テロの問題から見ていこう。

 国際テロの問題というと、アフガニスタンやパキスタンで米軍やアフガン治安機関に対して自爆テロなどを実行しているアルカイダやハッカーニ・ネットワークといったイスラム過激派勢力のことを思い浮かべるだろう。しかし、最近米国で俄かに注目を集めているのは、中東や北アフリカで見られたいわゆる「アラブの春」によって出来た新体制の下で、新たな自由を得てしまった武装勢力のことである。

 その新しい脅威が誰の目にも明らかになったのが9月11日にリビア東部の都市ベンガジの米領事館が襲撃された事件であった。米国政府の出先機関である領事館が武装勢力に襲撃され、米国大使を含む4名の米国政府関係者が殺害されたのだが、これを実施したのは無名のローカルな武装民兵集団だった。このような反米武装勢力が中東各地で増殖していることは、米国にとって新たな脅威が出現したことを意味しており、このような事態を招いたのはオバマ政権の中東政策の失敗だ、と一時期ロムニー候補はオバマ氏を激しく非難していた。

 「リビアにおいてわが国の人々を殺害し、他の多くの国々で我々の大使館を襲った責任は、もちろんそれらを実行した者たちにある。だが、事態に翻弄されるがままにしておくのではなく、米国の偉大な力を行使して歴史をつくる責任は大統領にあるのだ」

 「オバマ大統領は戦争の潮流はおさまりつつあるなどと述べているが、今日の中東を見れば、イランは核兵器能力の取得に近づきつつあり、シリア紛争は中東全域の安全を脅かしている。中東全域で過激派の勢力が強まり、米国の大使や職員がアルカイダの手で殺害されるような事件が起きているのだ。中東における紛争のリスクは、オバマ大統領が政権の座について以来ますます強まっているのは火を見るより明らかだ」

 ロムニー候補は10月8日のヴァージニア州立軍事学校でのスピーチでこのように述べていた。結局、大統領選挙では、この問題でオバマ大統領は大きな失点をすることはなかったが、ロムニー氏が指摘したこの問題が解決されたわけではない。

明らかになるリビア領事館襲撃事件の真相

 実際、選挙戦中にこのリビア領事館襲撃事件の詳細が次々に明らかになっていったのだが、事実が判明すればするほど、事態の深刻さが浮き彫りになっていった。日本のメディアでは十分にカバーされてこなかったので、若干ここで補足説明しておこう。

 911の襲撃事件当日、ベンガジの米領事館の警備にあたっていたのは、米政府の外交警備要員5名と米政府が雇っていたリビアの民兵組織「リビア2月17日旅団」の警備員3名のみ。それ以外に領事館の近くにリビア人による緊急対応チームが1個チーム待機していたという。

 当初は反米デモに参加していた暴徒がエスカレートして領事館を襲撃したと伝えられていたが、後に明らかになった事実はベンガジの米領事館の前では実際には反米デモ運動は一切起きておらず、突然、武装集団による襲撃が夜の9時40分ごろに開始されたというものだった。

 すぐに警備は突破され領事館内への侵入を許し、近くに待機していた40名による緊急対応チームがかけつけて応戦したものの、武装勢力との激しい戦闘が続き、迫撃砲などによる攻撃に持ちこたえることができないと判断し、23時頃に領事館敷地から外に退避。領事館員たちは全員退避してそこから少し離れたセーフハウスに移ったが、そこにもすぐさま攻撃が加えられたという。

 明け方近くになり、やっと応援部隊がトリポリから到着してセーフハウスに到着したが、その時点でもさらに迫撃砲による攻撃が3方向から加えられ、この間の戦闘で外交警備要員の米国人2名が死亡。この後車両50台を超える大規模なリビア治安部隊の救援がきて、やっと米領事館員たちは空港まで離脱することができたのだという。

 つまり、911のリビア領事館襲撃事件は、その辺の不良が武器を持って勢いで襲ってきたものとは比較にならない大規模な攻撃だったのである。相当大掛かりかつ重武装した勢力による組織化された攻撃であり、領事館員たちのセーフハウスの場所や緊急対応チームの勢力まで事前に調べた上での周到な攻撃だったわけだ。

 しかもその後、米連邦捜査局(FBI)の捜査チームが、米軍のハードな警護に守られながら襲撃を受けたベンガジの米領事館の敷地に入ったのは事件が発生してから3週間後のことである。その間に領事館の全ての部屋が略奪にあい、外交的に重要な文書なども多数盗まれたことがわかっている。後に米メディアなどに持ち込まれた文書だけでも、米大使の行動日程や会談相手を記した文書、米領事館の警備のために契約していた現地の警備員の写真付きの履歴書など、テロリストに渡ったらさらなる殺害に発展するようなセンシティブな文書がダダ漏れになっていた。

パワーの空白で武装勢力の力がアップした

 今回の事件で明らかになったのは、武装民兵集団の拡散や彼らの武装レベルの高さ、攻撃のレベルの高さであり、米国にとっての新たな安全保障上の脅威に発展しているという問題認識であった。北アフリカから中東、そしてアフガニスタン、パキスタンに至るまで、この種の、この程度の規模の攻撃を実施することのできる武装集団が跋扈し、それを可能にする武器やノウハウが溢れ、またそのような攻撃の意思を持つ集団が野放しになっているということである。

 とりわけ北アフリカ、中東から南アジアまで、紛争や体制交代により国家のそれぞれの主権国家に及ぶパワーが弱まり、国境近辺を中心にパワーの空白が次々と生れ、そこに武器が流れ、さらに武装勢力の力がアップするという危険な負の連鎖が起きている。

 アラブの春に端を発する政権交代の波は、民主主義を生むのではなく、様々な勢力に活動の自由を提供する機会を与え、無秩序化が拡大し、その中で重武装した民兵組織が次々に台頭し始めている。イラク、アフガン、リビア、シリアで次々に紛争が続く中で、大量の武器と軍事的な能力を身につけた民兵や元兵士たちも拡散している。ベンガジの米領事館を襲ったようなミニ軍事作戦を展開するような能力を持つ勢力が、大量に発生しているのである。こうした勢力が新たな政権の体制に挑戦するだけでなく、これまで安定していた体制の秩序さえ脅かす存在に成長するリスクに、オバマ新政権は真剣に取り組まざるを得なくなるだろう。

第2期オバマ政権はイランとの外交交渉を再開する

 一方、イランの核開発問題も、第2期オバマ政権にとって「待ったなし」の大きな課題となるのは間違いない。イスラエルのネタニヤフ首相は、このままのペースでイランの核開発が続けば、2013年の夏にはイラン核武装化を防ぐ最後のレッドラインを超えると世界に警告を発しており、来年の上半期が、イラン核開発に歯止めをかける最後のチャンスだと考えられている。

 これに関して、欧米のイラン・ウォッチャーの間で、11月6日の米大統領選挙の後に、滞っていた欧米とイランの核問題をめぐる交渉が再開されるのではないか、との観測が強まっている。

 この問題が話題になったのは、これまたニューヨーク・タイムズ紙がすっぱ抜いた「米政府とイラン政府が2国間協議を行う事で合意した」との報道だった。第2回目の米大統領選挙の討論会の直前の10月20日に、「U.S. Officials Say Iran Has Agreed to Nuclear Talks」というタイトルのスクープ記事が配信されたのである。

 同紙は、「米国とイランが初めて、イランの核問題について2国間で交渉することに原則的に合意した」とオバマ政府高官からの情報として報じた。ホワイトハウスはすぐにこの報道を否定し、オバマ大統領も討論会の場で、同紙の報道は「本当ではない」と否定した。

 しかし、ホワイトハウス・スポークスマンの声明などを注意深く読んでみると、米政府は2国間協議について「最終的な合意に至った」というのは本当ではないと述べているだけであり、この記事が報じたそれ以外の部分を全面的に否定したわけではなかった。それどころか「オバマ政権は発足当初から2国間で協議をする準備ができていることは公にしてきた」と述べており、2国間協議をするということ自体は、自分たちの公約に反する事でも何でもないとの見解を示している。

 既にこれまでも欧米諸国とイランの交渉の際に、米政府とイラン政府の高官は継続的に接触・協議を続けてきている。欧州側からも、「これまでの議論では、テーマが余りに限定され過ぎており、お互いに妥協点を見出すことが困難だった。次回はもっとたくさんの要求ともっとたくさんの報酬を俎上に乗せて議論を行いたい」としている。

 欧州勢は、より多くの要求や報酬を議題に乗せれば、小さなステップから妥協が可能になり、少しずつ信頼醸成を積み重ねることができるのではないか、と期待しているようである。欧州勢の間では「more-moreアプローチ」などと呼ばれ、より幅の広い、包括的なアプローチでイランと交渉したいとの姿勢が出されている。

 状況が緊迫する中、大統領選挙が終わり次第、イラン核問題は、米政府がとりかからなければならない問題になってきているのは間違いない。オバマ大統領がすぐにイランとの核交渉を再開するかは微妙なところだが、今後数カ月以内にイラン核問題をめぐる外交活動が再び活発になり、少なくとも欧米諸国とイラン間の新たな交渉の道が開かれる可能性は高い。もっともイラン側が来年の大統領選挙までは国内がまとまらない可能性が高いので、交渉が再開されたとしても、何らかの合意に至るとは限らない。

 いずれにしても、第2期オバマ政権は、イラン核開発問題に多大な労力とリソースを注ぎ込むことになるだろう。

 アフガンからの米軍撤退問題やアジア太平洋・対中政策などについては次回に詳述しよう。(つづく)


菅原 出(すがわら・いずる)


1969年、東京生まれ。中央大学法学部政治学科卒。平成6年よりオランダ留学。同9年アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科卒。国際関係学修士。在蘭日系企業勤務、フリーのジャーナリスト、東京財団リサーチフェロー、英危機管理会社役員などを経て、現在は国際政治アナリスト。会員制ニュースレター『ドキュメント・レポート』を毎週発行。著書に『外注される戦争』(草思社)、『戦争詐欺師』(講談社)、『ウィキリークスの衝撃』(日経BP社)などがある。


隠された戦争

この10年は、まさに「対テロ戦争の時代」だったと言って間違いないだろう。そして今、この大規模戦争の時代が「終わり」を迎えようとしている。6月22日、オバマ大統領がホワイトハウスで演説し、アフガニスタンから米軍を撤退させる計画を発表したのである。
米国は一つの時代に区切りをつける決断を下したが、イラクもアフガニスタンも安定の兆しを見せておらず、紛争とテロ、混乱と無秩序は、世界のあらゆる地域に広がっている。そして東アジアでは、中国という大国が着実に力を蓄え、米国の覇権に挑戦し始めたかに見える。
無秩序と混乱、そしてテロの脅威が拡大し、しかも新興国・中国の挑戦を受ける米国は、これから限られた資源を使ってどのような安全保障政策をとっていくのだろうか。ポスト「対テロ戦争時代」の米国の新しい戦争をレポートする。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20121107/239169/?ST=print  

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コメント
 
01. 2012年11月08日 10:12:46 : YxpFguEt7k
問題の根っこはイスラエルの核だと思いませんか?という質問に、

池田香代子氏
「思います。イランが賛成してる核兵器禁止条約を米国も受け入れるというクリンチ作戦が上策かと」
https://twitter.com/ikeda_kayoko/status/266320397388115968

全世界同時に核軍縮に向かいましょう。やればできる。


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