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焦点:中国が航空機エンジン開発に大規模投資計画、技術流用困難で
2012年 10月 31日 15:11
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[香港 30日 ロイター] 中国は核ミサイルを設計し、有人宇宙飛行を実現させたが、1つの重要な技術にはまだ手が届いていない。何十年という研究開発期間にもかかわらず、まだ信頼に足る高性能のジェットエンジンの製造に成功していないのだ。
もしかしたら、この状況が変わるかもしれない。中国政府は、一体性に欠け、資金不足に陥っているエンジン開発事業を活性化させるべく、1000億元(160億ドル)規模の投資を検討している。
関係筋によると、国営企業で軍用機や民間機の製造分野で支配的な地位を築いている中国航空工業集団(AVIC)が、政府の資金支援を熱心に働き掛けてきた。既に自前でも約100億元を向こう3年でジェットエンジン開発に投じるために用立てている。AVICは、40万人を超える従業員と上場20社を含めた200の子会社を抱える巨大企業だ。
AVIC傘下の主要軍用機エンジンメーカーの西安航空動力(600893.SS: 株価, 企業情報, レポート)幹部のZhao Yuxing氏は電話取材に対して、政府の上層部でエンジン開発の資金提供問題が議論されていると表明。「われわれが承知しているのは、当社がエンジン製造事業の支援と大いなる発展を目指すこの戦略的プログラムに組み込まれているということだ」と語った。
中国の軍需産業は総じて、天安門事件を受けた欧米による武器輸出禁止措置に苦しめられてきた。さらに外国エンジンメーカーは中国への技術移転を極度に嫌っており、技術の差を埋めるいつもの手であるコピーも阻まれている。
こうした中で一部の中国航空業界の専門家は、政府は最終的に今後20年でジェットエンジン開発に3000億元(490億ドル)を支出するだろうと予想する。
上海の東方証券の防衛セクターアナリスト、Wang Tianyi氏は「中国の航空エンジン部門は明らかに投資が足りない。1000億元というのはエンジン業界ではそれほど大きな金額ではない」と指摘した。
<企業秘密流出を強く警戒>
独立系の軍事航空シンクタンク、エアパワー・オーストラリアの創設者であるカーロ・コップ氏は「歴史的に航空業界の主要企業はすべて、機体とエンジンの双方の設計能力を備えている。競争力のあるエンジンの設計と生産ができるようになるまでは、中国の航空機設計の能力と実績は、彼らが輸入を認められた技術によって重大な制約を受けるだろう」とみている。
中国の設計技術者にとって、手っ取り早いのは合弁相手の外国企業から知的財産を抜き出したり、単純に外国の技術をコピーすることだったが、これまでのところ成果はほとんど上がっていない。
米ゼネラル・エレクトリック(GE.N: 株価, 企業情報, レポート)やフランスの防衛大手サフラン・グループ(SAF.PA: 株価, 企業情報, レポート)傘下のスネクマ、ロールスロイス(RR.L: 株価, 企業情報, レポート)、米ユナイテッド・テクノロジーズ(UTX.N: 株価, 企業情報, レポート)傘下のプラット・アンド・ホイットニーといった外国エンジンメーカーは、企業秘密の流出を防止すべく目を光らせている。このため中国側がノウハウを移転させたり、知的財産を盗用する機会は限られる。
<エンジン問題がボトルネック>
AVICの計画では、ばらばらに存在するエンジン開発・研究機関は統合されて競争や作業の重複が最小限にとどめられる。
毛沢東時代の名残で中国のエンジン研究機関、航空機メーカーなどは瀋陽や西安、上海などの都市に散在している。
西安航空動力が発表した昨年の年次報告書によると、同社はAVICの計画の下で主要エンジン関連事業に編入される。報告書は「中国の航空業界において、エンジン問題が発展を制約する要因、すなわちボトルネックになっているという広範な合意が存在する」としている。
ただ、中国が向き合っているのは気の遠くなるような課題だ。エンジン製造の専門技術を習得できたのは、米国と欧州、ロシアの一握りの企業にすぎない。香港を拠点に中国軍事問題を分析し、「カンワ・エイシャン・ディフェンス・マガジン」を編集しているアンドレイ・チャン氏は「現代のジェットエンジン技術は、動力における産業革命のようなもの。欧州と米国、ロシアには長年蓄積した経験があるが、中国はわずか30年足らずの取り組みにとどまる」と話す。
かつてロールスロイスの北東アジア地域ディレクターを務めたリチャード・マーゴリス氏は「なぜエンジン製造の成功者が非常に少ないのかといえば、それが極めて難しいからだ」と断言した。
それでも高性能の軍用機エンジンは、海空軍部隊において第一線級の戦闘機と攻撃機を増やそうという中国政府の長期計画にとって欠かすことはできない。こうした軍用機は、台湾や東シナ海、南シナ海などでの航空優勢をいずれは確立しようとする上で重要なのだ。
中国は西側諸国の武器禁輸措置のためにこれまで、ロシアから輸入した戦闘機のリバースエンジニアリング(分解による構造分析作業)を通じてデッドコピーや一部独自設計を取り入れた軍用機を生産する方法に頼ってきた。これによって2000年以降、米国の新鋭機にほぼ見劣りしない性能があると思われる戦闘機と攻撃機を500機以上も増やし、旧ソ連時代に設計された古い機種の多くを退役させた、と軍事専門家は説明している。
<ロシア模倣品の性能は不十分>
中国の軍用機の近代化が進んでいることを示す明らかな例の1つは、最近になって国産の「J─15」戦闘機が就役したばかりの空母「遼寧」から離発着訓練をしている画像が公開されたことだ。
この最新鋭機の1つである「J─15」のエンジンは、ロシア製の「AL─31」ターボファンであることは内外の軍事専門家には自明で、中国の第一線機のほぼすべてに搭載されている。中国国内では、瀋陽黎明発動機製造集団が「AL─31」を模倣した国産エンジンの「WS─10」を開発したものの、「J─15」などに搭載した飛行試験ではまだ目標性能に達していない。
中国の防衛セクターアナリストによると、向こう20年でさらに1000機の新鋭機が配備される見込みだが、ロシアは中国側の無断コピーに対する怒りや中国の軍事力増大への警戒感から、「AL─31」よりも新型のエンジンを供給することには消極的になっている。専門家は、もしこうしたエンジンの輸入もしくは国内製の模倣品がなければ、中国は米国やロシアの最新鋭のステルス機に太刀打ちできる機種を製造できないとみている。
これらの軍用機が中国にとって戦略的に重要な分野である一方、同国の商用機の市場はより大きくなる可能性を秘めている。
米ボーイング(BA.N: 株価, 企業情報, レポート)は、中国は2031年までに大型旅客機があと5260機は必要になると予想。カナダのボンバルディア(BBDb.TO: 株価, 企業情報, レポート)は、同じ期間に中国のビジネスジェット機需要が2400機に達するとの見通しを示している。どちらの航空機もエンジンが最低2基とそのスペアが必要になるため、エンジンの総需要は1万6000基に上る可能性があり、現在の価格でみて1基当たりは平均1000万ドルと見積もられている。
中国は商用機市場でも国産機で外国勢に競争を挑むことを計画している。ただ、いくら研究開発を強化し、外国企業との合弁から技術移転ができたとしても、中国の航空機エンジン市場を支配するのは外国製である状況は続く、というのが一部の専門家の見方だ。カンワ・エイシャン・ディフェンス・マガジンのチャン氏は「こうした構図は10年や15年では変わらない」と述べた。
(David Lague、Charlie Zhu記者)
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http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE89U04Q20121031?sp=true
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