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中国人民解放軍の海軍兵士(共同)
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20121030/frn1210301825007-n1.htm
2012.10.30 夕刊フジ
日本の防衛省は、総兵力230万人の中国人民解放軍が抱える決定的な弱点を見抜いていた。中国政府が1970年代から進めた一人っ子政策で誕生した「一人っ子軍人」だ。兄弟姉妹のいない環境で過保護に育てられた別名「小皇帝」が軍内部で増加。有事でまともに戦えそうにない“本性”を、災害派遣などの場面でさらしているという。巨大な軍は、実は内部崩壊を招きかねない深刻な事態に直面している。
中国の軍事情勢を分析する防衛省関係者が、人民解放軍の足元を揺るがす問題を指摘した。
「両親から甘やかされて育った一人っ子たちが軍の中でかなり増え、わがままぶりを発揮しているそうだ。2008年にあった四川大地震でも、救援活動の派遣を『危険だから』と渋った若手軍人がいたと聞いている。いざ実戦となったら兵士として役に立たない。幹部級は彼らの扱いに苦慮している」
一人っ子政策は爆発的な人口の増加を受け、1979年に始まった人口規制政策。違反者は年収の3倍から10倍以上に及ぶ罰金を科せられるため、政策は短期間のうちに定着して成果をあげた。2008年には同政策による一人っ子が1億人を突破し、総人口の8%に達したとされる。
人口抑制策としては成功しつつも、育った子供たちには「わがまま」「協調性がない」といった悪評がつきまとう。横暴な彼らには「小皇帝」との呼び名もある。
生まれが1979年なら今年で33歳、90年代前半ならすでに成人している。先の防衛省関係者は「人口比率から考えると、軍内部には10万人近くいるのでは」とみる。
『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)などの著書で知られるジャーナリストの富坂聰氏は「軍は貧しい地方生活者にとって安定した収入が得られる職種。逆に言えばお金を稼ぐための単なる仕事にすぎない。両親にとっても大切なたった一人の子供なので、『もし戦場に出てもお前だけは生き残れ』と教え込む。中国軍は戦意が著しく乏しい兵士を抱えたまま戦わなければならない」と分析する。
わが子を守りたい両親たちが、戦争を阻止する巨大な抵抗勢力になるケースも考えられる。
「親がまとまって戦争反対の声をあげれば、かなりの数にのぼる。中国政府は人民の動きを無視できない。一人っ子軍人の増加により、軍と軍が正面衝突するリスクは低くなっているが、その分、中国は自軍を傷つけずに相手を攻撃する宣伝戦に力を入れてくるだろう」(富坂氏)
日本の防衛省、自衛隊はこうした状況が戦争のひとつの抑止力になっていると推察している。
もっとも、別の見方もある。近年、人民解放軍では、四川大地震や1998年の長江大洪水など、災害派遣での活動が人事の評価対象になっている。実戦はベトナムと戦った1979年の中越戦争から経験していない。
『国防の常識』(角川学芸出版)などの著書がある元航空自衛隊員の軍事ジャーナリスト、鍛冶俊樹氏が警告する。
「中越戦争では地雷原を人海戦術によって突破しようとするなど、無謀な作戦によって多くの中国兵が死んだ。こうした実戦の生々しい記憶が残っている幹部らはできるだけ戦争を避けようとする。しかし、実戦経験のない軍人にとって戦争は、バーチャルリアリティーの世界でしかない。ゲーム感覚で攻撃をしかけてくる危険はある」
わがままで協調性がないと評される小皇帝たちだけに、思わぬ行動に出る怖さはつきまとう。人口抑制策によって生み出されたモンスターは、自国の中国を悩ませ、隣国の日本を危険にさらしている。
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