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(回答先: Gゼロ時代、日中の衝突不可避 米国際政治学者、イアン・ブレマー氏に聞く 投稿者 MR 日時 2012 年 10 月 30 日 01:18:16)
「冷たい反日」長引く
ある愛国活動家の独白
2012年10月30日(火) 張 勇祥
パンダ、諸葛孔明、麻婆豆腐。四川省・成都に抱くイメージはこんなところだ。
もう少し詳しい人なら、四川省で2008年に大きな地震が起き、ずさんな工事で倒壊した小学校の父兄が訴訟を起こしたことや、イトーヨーカドーの大繁盛店があることが頭の片隅にあるかも知れない。そして、ここ10年ほど断続的に反日デモが起きていることも。
成都、長沙、蘇州、上海と、中国のいくつかの都市を回った。少し視線が厳しい感じはするが、表立った日本排斥はなかった。日本食のレストランが店名を隠したり、日本車に中国国旗を掲げたりする動きも収まっている。しかし日本車の売れ行きは回復せず、オフィス用品などで日本製品の購入を控える動きが見られるなど「冷たい反日」は途絶えることなく続いている。成都で、かつて反日運動に身を投じ、いくつかのデモでリーダー役を務めた人物に接触した。彼の主張は極端な部分も随所に見られるが、共鳴する若者が少なくないのも事実だ。彼の独白は、中国人が何を感じ、考えているかを探る材料にはなるだろう。
日本車の販売が急減速するなど、日本製品を避ける動きが続いています。さらに長引きますか。
「先に少し近況を話すと、今はもう直接にはデモなどに加わっていない。過去のデモで当局に拘束されたことがあり、さらに(反日運動に)身を投じるのは危険だ。中国の当局は国民が色々な不満を持っていることを知っていて、デモを利用してガス抜きをしようとしている。ただ、コントロールしきれなかったり、自らに批判が及んだりすることは絶対に避けようとする。この辺りは日本の状況分析に近い」
「質問に答えると、日本製品の買い控えは長く続くと見るのが自然だ。日本車の燃費が良く、安全性能に気を配っていることも中国人は知っている。値段もそこそこだ。日本製品の優位性が崩れたわけではない。それでも、今の中国の消費者には多くの選択肢がある」
「トヨタや日産、ホンダでなくとも、ドイツ車や韓国車、国内ブランドと消費者は選り取り見取りだ。日本車の相対的な優位性が崩れたわけではなくとも、選択肢そのものが大きく広がっていることがこれまでと違うところだ。日本製品がいやなら、他の国の製品の中から自分が欲しい商品を自由に選ぶことができるのだ」
軍事衝突、お互いのためにならず
尖閣諸島を巡る軍事的な対立がエスカレートする可能性をどう見ますか。
「日本の方と中国人で、この点が最も認識が異なるところだろう。さすがに、一般的な知識レベルの中国人が軍事衝突を望んでいる訳ではない。ただ、状況をこのように分析している。両国が振り上げた拳の置き所をつかめない中、今も中国の艦船が接続水域あたりを航行している。日本の船も監視に来ている。下手をすると、この状況はずっと続く。風が強く吹く日があれば、海が荒れる日もあるだろう。両国にそんな意思がなくとも、偶発的に何かが起きる可能性はゼロとは言えない」
「軍事衝突がお互いにとって何のためにもならないことは誰でも分かる。それでも、中国国営テレビでは経済の専門家が『軍事衝突が起きれば中国の経済規模は10年前に逆戻りするだろうが、破たんするわけではない』などとやっている。中国は豊かになって軍事的にも強くなった。過大評価の面もあるだろうが、とにかく中国人はそう考え、誇りに思っている。個人的な感想だが、自分の懐が傷むことになってでも戦争を支持する中国人は過半に上るだろう。もちろん、多くが戦争を知らない世代で、危うさはある」
(筆者注 さすがに過半が戦争を支持するというのは言い過ぎだと思われる。ただ、接触した一般の中国人の中にも軍事衝突の可能性を指摘する人がいた)
さすがに過激な意見に聞こえます。
「中国の政治家は表立って領土で譲歩はできない。大手ウェブサイト新浪や、微博(ウェイボー、中国版のツイッター)を見て欲しい。領土問題に関する特集が多く組まれ、ものすごい数のページビューを稼ぎ、コメントが寄せられている。為政者もこうした世論に耳を傾けざるを得ない。これには過去の歴史が大きく関わっている。日本との戦争だけでなく、清朝末期は列強の侵略を受け領土面の譲歩を余儀なくされてきた。中国の国民はこれを屈辱的なことと捉えている」
「だから何より、日本政府が国有化を表明したことがまずかった。国有化というフレーズへの敏感さを、やはり理解していなかったのだろう。9月9日、野田首相は胡錦濤とAPECで10数分、立ち話をした。このとき、胡錦濤は脅迫めいたことは言わず、自制を求めた。それなのに野田首相は翌日に釣魚島の国有化を閣議決定すると表明してしまった。感情を抜きとしても、これでは胡錦濤のメンツは丸つぶれだ」
日本は、中国人の関心が薄れるのを待て
落としどころは、もうないのでしょうか。
「実は、なくはないと感じている。ヒントは、数年前にようやくまとまった中国とロシアの国境画定にある。極東のアムール川、ウスリー川にある島を巡る画定作業において、中国はロシアに相応の譲歩をしている。しかし、これを問題視する中国人などいなかった。中ロとも大きく喧伝しなかったし、そもそも多くの国民にとって利害関係のない土地だったからだ」
「尖閣も同じだ。実際にはそれほどの資源もないし、あの小島に何か実質的な意味があるわけではない。それでも、日本は国際法的には日本の領土だとし、中国は歴史的な正当性を主張して引くに引けない。であれば、細心の注意を払って世論の関心が薄れるのを待ち、改めて棚上げするしかない」
「またテレビの話になるが、中国では毎日のように日中戦争や国共内戦のドラマが流れている。国民は影響を受けざるを得ない。一方で日本側も政治家が靖国神社を参拝するなど中国人を刺激している。祖霊を慰めるためだと一定の理解を示す中国人も少しいるが、大多数はそうではない。日本人も『中国はいつまで戦争のことを持ち出すのか』と感じているだろう。このような状態では事態の収拾は不可能だ」
「1つのきっかけとなるのは日本の政権交代だろう。安倍氏が新しい首相になると言われているようだが、彼は『極右』だと中国では見なされている。であるからこそ、ほんのわずかな譲歩でも落としどころになる可能性はある。先ほど、中国人におって反日はガス抜きだと言ったが、一方でそれぞれの人々が抱える問題の解決にはならないことも明白だ。高すぎる不動産価格や景気の減速、老後の不安など中国人の心配事を掲げるとキリがない。中国人の意識を自らの問題に目を向けてもらうのが良策だ」
「安倍氏は前回、首相になった時にまず中国を訪れ、日中関係の改善に成功した。このようなシグナルを送れるか。また、憲法改正や軍備強化といったタカ派的な主張も声高にせず、激しやすい中国国民を刺激しないように淡々とできるかがカギになるだろう」
張 勇祥(ちょう・ゆうしょう)
日経ビジネス記者
記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20121026/238629/?ST=print
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