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中国に露骨な戦争挑発 沖縄で離島奪還訓練計画 日本廃虚にする米戦略
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2012年10月17日 長周新聞
石原東京都知事の尖閣諸島購入騒ぎ、それに追随した野田政府の「国有化」強行のなかで日米両政府が中国への軍事挑発をエスカレートさせている。全国の批判世論を無視してオスプレイを沖縄に本格配備し、グアムで大規模な日米共同離島奪還訓練を実施。来月には沖縄で一万人規模の離島奪還訓練をやる方向である。イラクやアフガン戦争に敗北し窮地に立つアメリカは、アジア重視の新軍事戦略やTPPによる経済ブロック化でアジア市場の略奪を狙い、オスプレイ配備や基地増強を進めているが、その実行を日本の政府や政治家が国家主権を投げ出して買って出ている。現在の日本の状況は、見るも無惨な植民地属国の荒廃をさらし、人人はかつて世界大恐慌から戦争へ進んだ時期と同じような世相を肌身で感じている。そして日本を立て直し独立を目指す世論が全国で充満している。第2次大戦の最大の反省点である中国との軍事衝突、戦争を再び繰り返すわけにはいかない。アメリカの支配を断ち切り独立と平和、アジア諸国との友好・連帯が日本の将来をかけた第一級の課題となっている。
■独立が民族の命運かかる課題
7月に岩国に搬入した米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイは、朝鮮半島に近い下関沖で九月に飛行訓練をした後、沖縄・普天間基地に12機配備された。事前通告もなく市街地上空をわがもの顔に飛んだ下関と同様、沖縄でもオスプレイが県下全域を低空で飛び回った。「最大限に配慮する」「人口密集地は飛行させない」といって児童が遊ぶ小学校校庭や高校、民家上空にも出没。日本人を人間と見なしておらず、全国空襲や沖縄戦で焼き払った性根を改めて見せつける行動となった。
オスプレイはこれまで普天間に配備していたCH67に比べ、時速は520`で2倍、運べる兵員は24人で2倍、航続距離は5倍。格段の軍事力増強だが、それは「専守防衛」ではなく軍事侵攻を意図した配備であることを浮き彫りにしている。オスプレイは米軍佐世保基地の強襲揚陸艦ボノム・リシャールに乗せて洋上から出撃する想定で、同強襲揚陸艦の模擬甲板がある伊江島では年間6760回訓練する計画となっている。
米海兵隊は今後、高度150b〜60bの超低空飛行訓練、キャンプ富士(静岡)や岩国基地への短期展開、東北から奄美群島にかかる全国の低空飛行ルートでの訓練をやる予定だ。沖縄や日本全国で基地撤去、配備撤回世論が噴出しているが、野田首相はまったく聞く耳はない。「全国で負担を分かちあうとりくみを強化したい」と表明しており、全国に訓練を拡大し日本全土を出撃基地化する意図を示している。
■自衛隊前線投入を準備 米軍が軍事教育し
最近、露骨になっているのが離島奪還訓練である。8月におこなわれた陸上自衛隊による国内最大規模の実弾射撃訓練「富士総合火力演習」では、初めて離島防衛を想定した訓練が実施された。地上の演習場を洋上にみたて、海自のP3C哨戒機、空自のF2戦斗機などを動員して訓練したが、対艦ミサイル攻撃をおこなうなど、あからさまな離島侵攻訓練が内容となった。
8月下旬からグアム島とテニアン島で2200人を超す自衛隊と米海兵隊が離島奪還訓練を実施した。日本国内の演習場ではなく初めて離島を使う演習。参加部隊は自衛隊が九州や沖縄を管轄する西部方面隊で、米側は在沖海兵隊である。訓練は沖合に浮かぶ米海軍揚陸艦を出発した陸自隊員や米兵60人が七隻のゴムボートに分乗してグアム島西部の砂浜に上陸。海岸付近で自動小銃を構えて周囲を偵察して敵を制圧する内容を公開した。
さらに日米政府は来月、沖縄県の無人島で自衛隊と在日米軍による離島奪還訓練をやることを明らかにした。国内の離島や尖閣諸島の近くで離島奪還や離島侵攻を想定した日米共同訓練は初めてである。この奪還訓練は約1万人が参加する日米共同統合演習の一環で、訓練場所は那覇市の西北約60`にある渡名喜村・入砂島(0・26平方`、在日米軍の射爆場)。これも「他国軍に島が占拠された」という想定で、洋上からボートやヘリコプターなどで着上陸し敵部隊を襲撃して制圧するのが訓練内容である。すでに「専守防衛」はかなぐり捨てているが、交戦、侵攻を想定した軍事訓練に公然と乗り出している。
防衛省はこうした離島侵攻に有効ということで、来年度予算案の概算要求で、米海兵隊が離島奪還作戦に使う水陸両用強襲車を4両買う予算(25億円)を盛り込んだ。野田首相は7月の国会で自衛隊を尖閣問題で出動させる可能性を公言したことに続き、今月14日の自衛隊観艦式でも「領土や主権を巡るさまざまな出来事も生起している」「国防に想定外という言葉はない」「状況に果敢に立ち向かってほしい」とハッパをかけている。
こうしたなかアメリカは日米共同の離島奪還訓練でアジア諸国との軍事緊張を高めながら自衛隊に軍事教育を施し、いつでも米軍にかわって、日本の陸海空自衛隊をアメリカが企む対中国戦争の最前線に投入できる準備を進めている。尖閣問題騒ぎについてアメリカは「“日米安保条約第5条”の適用対象」(米国務省・ヌランド報道官)と何度も日本をたきつける一方で、「尖閣諸島」の領有権については「中立」の立場をとっている。それは武力衝突が起きれば、日本が解決すべき問題だといっていつでも逃げられる対応である。オスプレイも動員し、米軍や米軍家族だけさっさと日本国外に避難できる体制となっている。
■日本全土の基地化進行 米軍は後方に下げ
日本国内や米軍基地を巡る軍事動向は、石原知事の尖閣諸島購入発言、それに追随する野田政府の「国有化」、8・15を前後した尖閣諸島への上陸騒ぎ、オスプレイの運用、沖縄での大規模な離島奪還訓練と進み、エスカレートする一方となっている。それはアメリカが今年1月に打ち出したアジア重視の「新軍事戦略」の実行としてあらわれている。
この「新軍事戦略」はアメリカがアフガン・イラク戦争で敗北し、未曾有の経済恐慌で米国家財政が窮地に陥り、米陸上部隊の維持すらできないほど衰弱するなか、米陸軍の数を10年間で6万人減らし49万人体制にする。同時に対中国戦争をにらみ日本や韓国、フィリピンなどの兵員を前面に立たせ、米軍はハワイやグアム、オーストラリアなど安全な後方に下げるものである。中国の核ミサイル攻撃が届く九州、沖縄、台湾、フィリピンを結ぶ第一列島線のなかから米軍を外に移動させ、アメリカは通信ネットワークや精密誘導弾などを駆使した「遠隔誘導戦争」をやる作戦である。
アメリカは中国に戦争を仕かけるが、戦争が始まれば、日本やフィリピンなどの同盟国を盾にし、米軍は無人偵察機による遠隔操作で人的物的犠牲はすべて日本に押しつける方向だ。最初から岩国にしろ沖縄にしろ在日米軍基地はすべてミサイル攻撃を受ける想定である。そのための米軍再編であり、岩国や沖縄の基地の軍備増強であり、オスプレイ配備となっている。
すでに米軍は2000年代から日本中の民間港を物色し補給、出撃拠点作りを準備してきた。米海軍は下関(山口県)、博多(福岡県)、長崎、鹿児島、新潟、秋田の六港を朝鮮有事の重要港と位置づけている。下関、新潟、秋田が朝鮮半島、鹿児島は中国、博多と長崎が両方をにらむという位置づけで各地の港、空港、道路網整備を急いでいる。
市民生活にはなんの有用性もない人工島や巨大な道路、橋、トンネルなどに莫大な予算が投じられ、商店街は疲弊し、若者は働く場がなくなり、各地で取り壊された空き家や工場跡地が増加している。それがまた道路やヘリポートなどへ変貌し軍事都市化に拍車がかかっている。市民生活の疲弊と連動して日本全土が基地として戦火にさらされる危機が迫っており日本全体の問題になっている。
■アジア市場略奪を画策 TPP参加を迫る
それはまた、成長するアジア市場を奪いとるアメリカの経済政策と連動している。アメリカが持ち出したTPPは、アジア・太平洋で日本を中心とするアメリカの経済ブロック化をすすめ、中国と対抗して圧力をかけ、支配下に置くものである。すでに自動車など製造業は、尖閣問題に端を発した中国での販売落ち込みで生産が激減し、国内工場の生産縮小やリストラに乗り出している。輸出入や観光客の行き来にも甚大な影響を与えている。中国・アジア諸国との友好関係が日本の発展の道であることは明らかであるが、その関係を壊し、アメリカの意図に従って日本の富を根こそぎアメリカに差し出せというのである。
戦後アメリカに占領され、「民主化」と称し「高度成長で豊かになった」と騒がれたが、ここまできて日本社会をガタガタに崩壊させ、日本の富をすべてアメリカが巻き上げ、対中国戦争の盾として戦火にさらす現実が進行している。
かつて朝鮮、中国、アジア侵略を広げて大破たんした経験を持つ日本民族が、今度はアメリカの尻馬に乗ってふたたび中国・アジア諸国との戦争にかり出されるわけにはいかない。また、広島や長崎に原爆を投げつけ、沖縄戦で大殺戮し、日本全国を空襲で焼き払って基地を奪った民族絶滅政治がいまだに続いている。このアメリカへの従属を断ち切り、独立と平和の世論を全国的に束ねて60年「安保」斗争のような一大政治斗争をまきおこすことに展望がある。140年前、列強の植民地となることを拒絶する馬関攘夷戦争をたたかい、屈辱的な「開国」の道を進む徳川幕府をうち倒して、独立した新しい近代統一国家を樹立した父祖たちの誇りを、現代によみがえらせねばならない。
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