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株式日記と経済展望
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中国のナショナリズムが燃え、習近平の政権は左派に引っ張られ、
対米戦略を協調姿勢から対決姿勢へと転換していくだろう。 田中宇
2012年9月28日 金曜日
◆尖閣問題と日中米の利害 9月27日 田中 宇
http://www.tanakanews.com/120927senkaku.htm
(前略)
文化大革命後、左派は中国政界の主流から追い出されている。胡錦涛主席や温家宝首相は中道派で、胡錦涛は米国との対立回避を重視した超慎重派だった。温家宝は、左派の突き上げに対抗し、リベラル的な政治改革によって貧富格差や人々の不満を解消しようとした(温家宝は、天安門事件以降、封印されてきたリベラル派の再起を望んだ)。これから主席になる習近平も中道派だ。しかし、高度成長の持続は中国社会にさまざまなゆがみをもたらし、その結果、経済至上主義の中道派を敵視する左派への草の根の支持が広がっている。左派は、胡錦涛から習近平への世代交代を機に、中国政界の主流に返り咲くことを模索している。そして左派の代表だったのが、今春にスキャンダルで失脚させられた重慶市党書記の薄熙来だった。(劉暁波ノーベル授賞と中国政治改革のゆくえ)
薄熙来は根っからの左派でなく、優勢な左派に接近し、左派的な政策をやって人気を集めて政治力をつけ、共産党の中枢で出世しようとした。薄熙来の策は成功したが、同時に党中央で主流の中道派の人々は薄熙来の存在に脅威を感じ、胡錦涛から習近平への世代交代の政治儀式が始まる今夏より前に、薄熙来をスキャンダルで引っかけて逮捕し、権力を奪った。薄熙来自身は逮捕され失脚したが、薄熙来を担いでいた左派の不満と、党中央の中道派に対する怒りは残った。(薄熙来の失脚と中国の権力構造)
そして、左派の不満がくすぶっていたところに起きたのが、尖閣問題での日本との対立激化だった。左派の人々は、毛沢東の肖像画を掲げてデモ隊を率いた。表向きは、日本に対する怒りが発露された。しかしその裏に、デモを激化させ、日本への怒りとは別の、貧富格差や役人の腐敗など中国国内の政治社会問題に対する怒りを発露させるところまで進める意図があった。このような政治的手口は中国でよくあるので、中道派はデモ発生の当初からその危険性を知っていただろう。当局は、各地でデモが激化してくると取り締まりを強化し、デモを終わらせた。だが、尖閣問題で日中が対立している限り、中国で反日デモが再発し、それを左派が国内政争の道具に使おうとする動きが続くだろう。(These Anti-Japan Protests Are Different)
中国では、日本が尖閣の土地国有化に踏み切った背後に米国が黒幕として存在するという見方が強い。米国が、日中対立を扇動しているとの見方だ。今回の尖閣土地国有化の動きの始まりは、今年4月に石原慎太郎・東京都知事が米国ワシントンのヘリテージ財団での講演で、東京都が尖閣の土地を買収する計画を唐突に表明したことだ。米政界のいずれかの筋が、石原に対し、尖閣を買収して日中対立が激化したら、米国は日本を支持し、日米同盟を強化できると入れ知恵(提案)した可能性がある。(東アジア新秩序の悪役にされる日本)
米国は、南シナ海の南沙群島問題でも、フィリピンやベトナムが領有権の主張を強めるのを後押しし、これまでASEANと中国の間で棚上げ状態にしてあった南沙問題を再燃させた。米国は、比越などを代理にして中国包囲網の戦略を展開し、比越に最新鋭の兵器を売り込んでいる。そして、南沙と同じ構図が尖閣でも起きている。米国は、石原を誘って、日本が尖閣問題で領有権の主張を強めて島を国有化するのを後押しし、これまで日中が棚上げしていた尖閣問題を再燃させ、日本にミサイル防衛関連の新型兵器(レーダーなど)を追加で買わせた。(南シナ海で中国敵視を煽る米国)(米国が誘導する中国包囲網の虚実)
尖閣問題も、南沙問題と同様、米国がアジア諸国を代理役にして中国との対立を激化させる策になっている。中国側は、背後にいる米国への敵視も強めている。尖閣問題で反日デモが激しくなった9月18日には、北京の米国大使館前で50人の市民が米国大使の車を取り囲み、車を傷つける事件が起きた。(Beijing demonstrators damage US ambassador's car)
中国は、1989年の天安門事件で米欧に制裁され、当時の経済発展が初期の段階にあった当時、今よりも重要だった投資や貿易、技術移転を何年も制限されて、経済発展に悪影響が出た。その教訓から、中国の経済発展を主導したトウ小平は「経済力が十分につくまで、米欧に挑発されても反撃せず我慢せよ」と命じる遺言(24字箴言)を残している。トウ小平の弟子たちである中国政界の中道派は、この家訓を忠実に守り、米国の中国敵視の挑発に乗らないようにしてきた。(中国軍を怒らせる米国の戦略)
だが、経済優先の中道派の姿勢に反発し、近年のナショナリズムの強まりに乗って政治力をつけた左派や人民解放軍は「米国の敵視策を見て見ぬふりして我慢する必要などない。米国に売られた喧嘩をかって反撃せよ」「中国は国際的にもっと自信を持った方が良い」「空母など新鋭機の開発、貿易決済の非ドル化や米国債の放出、発展途上諸国を味方につけて国際政治で米国を封じ込めるなど、米国の覇権を崩す策を強めるべきだ」といった主張を強めている。
中道派は、あと10年ぐらいトウ小平の家訓を守って慎重な外交姿勢を続けようとしているが、左派は、もう十分に経済力がつき、すでにトウ小平の家訓の範疇を過ぎたと考えている。ドルの過剰発行、イラクやアフガニスタンでの失敗など、米国の覇権が経済・政治の両面で失墜していきそうな中、次の10年間に中国が米国の敵視策にどう対応するかをめぐり、政権が胡錦涛から習近平に交代する今の時期に、中国の中枢で議論が戦わされている。(中国の次の戦略)
習近平政権の外交戦略が定まっていない今の微妙な状況下で、日本が尖閣国有化で中国のナショナリズムをはからずも(背後にいる米国にとっては意図的に)扇動したことは、中国政界で左派を力づけることにつながっている。尖閣や南沙の問題で、米国と同盟諸国が中国敵視を強めるほど、中国のナショナリズムが燃え、習近平の政権は左派に引っ張られ、対米戦略を協調姿勢から対決姿勢へと転換していくだろう。
日本政府や石原都知事にとって、尖閣問題で日中対立を煽った目的は、日米が共同して中国の脅威に対抗する態勢を強めること、つまり日米同盟の強化だろう。中国の左派が尖閣紛争を逆手にとってナショナリズムを扇動し、中国の日中に対する外交姿勢が協調型から対決型に転換したとしても、米国が今後も盤石な覇権国である限り、中国は米国にかなわないのでいずれ譲歩し、日米に対して協調姿勢に戻り、日米同盟の強化は成功する。しかし、これまで何度も書いてきたように、米国の覇権は経済政治の両面で揺らいでいる。ドルや米国債の下落、米国の財政破綻、国連での米国の主導権喪失が起こりそうだ。半面、中国はロシアなどBRICSや途上諸国との連携を強め、これらの諸国が集団的に米国から覇権を奪う流れが続いている。(ドル過剰発行の加速)
これまで米国の忠実な同盟国だったオーストラリアは、米国抜きのアジアを容認する外交戦略の白書を作り、近く発表する。「アジアの世紀のオーストラリア」と題する白書は、豪州が今後、中国、日本、韓国、ベトナム、インドネシア、インドとの経済関係を重視する戦略をとるべきだと書いている。米国に言及していない点が重要だ。豪州は米経済の回復に疑問を持ち、米国を軽視していると、WSJ紙が危機感をもって報じている。政治軍事的にも、豪州には、米国のアジア支配に協力すべきでないとする論調がある。豪州には、国家戦略を表だって議論して決める政治風土がある。国家戦略をこっそり決める傾向が強いアジア諸国(東南アジアや韓国など)でも、豪州と似た議論が起きているはずだ。(Oz Doubts U.S. Staying Power)(後略)
(私のコメント)
日米中の外交関係は時々刻々変化しているので目が離せませんが、日米中とも様々な勢力が入り組んで政権が動いているから、一口に日本は、アメリカは、中国は、と断定する事は間違いだろう。日本でも誰が首相になるかで外交政策も変わってくる。安部氏か石破氏かでも保守とリベラルとで大きく違ってくる。石破氏が党員投票で165票と言う過半数の支持を集めた事は以外ですが、「株式日記」でも書いたように石破氏は防衛通ではあっても野田総理より左翼であり、対中融和派であり靖国神社参拝に反対し、南京大虐殺を肯定し、慰安婦問題も認め、中国に謝罪すべきだと言う歴史観だ。
この点では安部氏と真っ向から対立しますが、テレビ討論や街頭演説会で石破は、この関係の発言はしなかった。多くの自民党員にとって石破氏は安部氏と同じタカ派の保守派と思っている人が多かったのではないだろうか。その証拠に石破氏は一度自民党を離党して新進党に加わっている。このようの自民党も民主党も左派と右派が入り混じっているから首相が誰かが大きな問題になる。
中国でも、改革開放路線の中道派と左派の対立があるようですが、太子党や上海派や団派や軍部などの勢力が入り組んでいる。アメリカでもネオコン産軍複合体やウォール街や親中派やリアリストなど様々な勢力が入り組んでいる。オバマ大統領はリベラル左派であり、イラク戦争に反対して大統領に選ばれた。中国の胡錦濤は団派で共産党青年団のエリートで中道派のケ小平の後継者として指名された。
次期中国の習近平は太子党であり、中道派ですが改革開放路線を継承するだろう。マスコミ報道では今回の反日デモは習近平が仕掛けたと報道していますが、習近平は文化大革命の犠牲者であり農村に下放された経験を持つ。二週間姿をくらましたのも一説には命を狙われたと言う説もある。田中氏も書いていますが薄熙来の失脚事件があり、左派の恨みをかって命を狙われたのかもしれない。だから反日デモでも毛沢東の肖像画が掲げられてデモが行なわれた。
今回の反日デモは左派の経済格差拡大に反対するデモであり、近いうちに改革開放政策は批判されて第二次文化大革命が起きるだろう。経済拡大が順調なうちは問題は大きくならないが、今回の反日デモで日本企業は中国離れを起こしつつあります。欧米の外資なども人件費の上昇やコストの上昇などでベトナムやミャンマーなどに工場を移すだろう。
経済は破綻すれば消費も落ち込んで車なども売れなくなり、外資にとっても市場としてのメリットは少なくなる。外資系のスーパーや工場がデモ隊に襲撃されて、賃上げストなども外資系が真っ先に行なわれており、アップルのアイパッドやアイフォーンの工場なども問題が起きている。既にケ小平の家訓も守られなくなって来ており、資産家や共産党幹部などの国外逃亡も始まっている。
中国人の中には、中国は経済大国になりアメリカに対抗して行くべきだといった軍部を中心とした勢力が台頭してきて、これに左派が同調して来ている。薄熙来はこのような左派の中心的な人物だったのですが田中氏は、「同時に党中央で主流の中道派の人々は薄熙来の存在に脅威を感じ、胡錦涛から習近平への世代交代の政治儀式が始まる今夏より前に、薄熙来をスキャンダルで引っかけて逮捕し、権力を奪った。薄熙来自身は逮捕され失脚したが、薄熙来を担いでいた左派の不満と、党中央の中道派に対する怒りは残った。」というように、今回の反日デモは左派の勢力によるものだったのだろう。
日本にとってアメリカの政権の動向ですが、オバマが再選されるかロムニーが勝つかは分かりませんが、中国のアメリカに対する対抗姿勢が強まれば、親中的な民主党よりも共和党が有利になるだろう。それよりも中東政策ではアメリカは深入りしすぎて動きが取れなくなっていますが、イスラエルに影響されすぎてイラク戦争を始めたりアフガニスタンにも侵攻して、次はイランと言う段階まで来てしまった。しかしアメリカにおける厭戦気分は高まっており、イスラエルを支持する勢力の力が無くなって来ている。
田中氏は、「中東では今、米国の威を借りてイラン敵視策をやってきたイスラエルが、米国からはしごをはずされている。9月25日、国連総会でのイランのアハマディネジャド大統領のイスラエル批判の演説に対し、席を立ったのはイスラエル代表団だけだった。これまでイラン批判をしてきた米欧はどこも席を立たず、イスラエルの孤立が浮き彫りになった。中東政治における攻守が逆転した瞬間だった。」というように、風向きが変わってきている。
アメリカはリーマンショックで金融立国戦略が上手く行かなくなり、それと同時にユダヤ金融勢力も異変が生じている。反ウォールストリートのデモまで起きるようになりましたが、金融エリート達のリストラ旋風で政治力が失われて来ている。アメリカ国内の製造業の復活の為には中国に出て行った工場を国内に戻す必要がありますが、その為には中国に排外主義的な政策を取らせる必要がある。その為に石原慎太郎が尖閣諸島を買い取ると言い出したのだろう。
アメリカも中国も米中対立を望む勢力が大きくなり、クリントン国務長官が産軍複合体の主体になって動いている。このまま中国が経済発展を続けていけばアメリカにとっても脅威になり、アメリカは経済的に破綻してアジアから手を引いていかざるを得なくなるだろう。オーストラリアも田中氏は次のように書いている。
「これまで米国の忠実な同盟国だったオーストラリアは、米国抜きのアジアを容認する外交戦略の白書を作り、近く発表する。「アジアの世紀のオーストラリア」と題する白書は、豪州が今後、中国、日本、韓国、ベトナム、インドネシア、インドとの経済関係を重視する戦略をとるべきだと書いている。米国に言及していない点が重要だ。豪州は米経済の回復に疑問を持ち、米国を軽視していると、WSJ紙が危機感をもって報じている。」
このような世界情勢なら、日本も腹を括ってオーストラリアのようにアメリカ離れを模索する時が来ているのだろう。安部氏が自民党総裁になったのは時代の流れであり、アメリカは金融破綻でいつアジアから撤退していくかわからない。それを見込んで中国が太平洋の外洋に出ようとしていますが、それを止められるのは日本しかない。
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