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【第195回】 2012年9月28日 週刊ダイヤモンド編集部
実質始まった対日経済制裁
エスカレートすれば“共倒れ”
緊急特集・日中関係緊迫!(後編)
引くに引けない状況に陥り、エスカレートする日本と中国の尖閣諸島をめぐる綱引き。中国側の機関紙では、経済制裁の言葉まで躍る始末。さながらチキンレースの様相を呈している。(「週刊ダイヤモンド」編集部 前田 剛、宮原啓彰)
「日本はさらに10年を失いたいのか。もしくは、20年後退する準備があるのか」──。
尖閣諸島の領有権をめぐり、中国共産党機関紙「人民日報」(17日付)の海外版が、その論説において、経済制裁の発動までちらつかせた。
「日本の製造業や金融業、特定輸出商品、投資企業、戦略物資の輸入のいずれもが目標になり得る」という同紙に呼応するように、中国国営放送のCCTV(中国中央電視台)が3日間、日本製品の広告宣伝を一切止めたとされる。これには「中国共産党が『日本製品を買うな』と言っているのに等しい」と現地に駐在する電機メーカー幹部も驚きを隠さない。
一方、水面下でも「中国は徐々に日本からの輸出入品の貨物検査率を上げており、通関に影響が出始めている」(大手商社幹部)。中国による対日経済制裁は、一部で実質的に始まっているのだ。
この状況に「中国に首根っこをつかまれている」と震え上がるのは、自動車メーカー幹部だ。総販売台数の4分の1を中国市場に依存する日産自動車をはじめ、自動車メーカーは軒並み、対中依存が極めて高いからだ(下表参照)。
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日本製品の不買運動を呼びかける横断幕。一部小売店ではすでに日本製品の撤去が始まっている
Photo:AFP=JIJI
苦境は旅行業界も同じ。中国は年間365万人(2011年)の日本人が訪れる最大の海外渡航先。JTB幹部は「9月出発の中国への渡航者は前年同月に比べて1割も減った。新規予約もない」と頭を抱える。さらに影響が大きいのは、昨年比で7割増と東日本大震災の影響から回復基調にあった中国人観光客の減少だ。9月末から始まる中国の国慶節の連休に予定されていた日本行きのツアーでキャンセルが相次いでいる。
強硬姿勢の裏には、経済制裁を発動すれば、中国よりも日本のほうが痛手を被る、という自信が見え隠れする。
図1を参照してほしい。実際、日本の対中輸出入比率が高まる一方なのに対し、中国の対日輸出入比率は逆に下がり続けている。マクロの数字だけではなく、質においても同様だ。「中国側にはもはや、日本製部品に対するボトルネックの意識はない。半導体など多くの電子部品は韓国、台湾で手に入るからだ」と前出の電機メーカー幹部は嘆く。
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対中直接投資でトップ3
無視できない日本の存在
日本側に悲観論が広がる中、経済制裁の可能性を「心配していない」と語るのは、富士通総研の柯隆主席研究員だ。
「日中がどういう関係かを見れば明らか。中国に直接投資する多くの日系企業は、税金を納め、技術移転もし、何より雇用を生み出す。一部でも縮小すれば、中国は必ず手痛いしっぺ返しを受ける」
中国に進出する日系企業は09年末には2万2000社を突破、推計では2万5000社に達する。合併企業を含む日系企業の直接雇用者は100万人を超え、これらに関連する企業までを含めた雇用者数は1000万人に及ぶとの試算もある。中国政府が09年に目標とした年間雇用創出数が900万人だったことを思えば、決して小さな数字ではない。
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さらに中国にとって大きな弱みは、日本が香港、台湾に次ぐ3番目の直接投資国であることだ(図2参照)。11年の投資額は、前年比5400万ドル増の126.5億ドル(約1兆円)に上る。また、比率が落ちてきているとはいえ、中国にとっていまだ日本が最大の輸入国であることに変わりはない(図1参照)。
反日デモに加え、経済制裁まで発動すれば、「中国はもうこりごりと撤退することもあり得る。それは中国にとって、投資が止まることを意味する」(前出の電機メーカー幹部)。実際、他社に先駆けて中国に進出した別の大手メーカー幹部は「表では『一緒にやりましょう』と手を握っているが、中国は全幅の信頼を置けない国とわかっている。進出時から、いつ断絶してもいいよう手を打っている」と明かす。大手金融幹部も「いつでも逃げ出せるよう算段をしている」と異口同音だ。
加えて、「日本製部品の代替先となる韓国や台湾は、素材など技術の根幹部分でまだ日本に及ばない分野がある。経済制裁に踏み切れば中国への新技術導入が止まることになる」と大手メーカー幹部は指摘する。
レアアースは脅威でない
中国リスク回避した商社
とはいえ、相互依存関係や残り少なくなった技術の優位性にあぐらをかいていられないのも事実だ。05年、10年と大規模な反日デモが起き、今後も今回と同様の事態が起きる可能性は小さくない。可能な限りのリスク回避の手だてを講ずるに越したことはない。
時計の針をちょうど2年前の10年9月に戻そう。
尖閣諸島沖で、日本の海上保安庁巡視船に衝突した中国漁船の船長が逮捕されたことを契機に始まった事実上のレアアースの対日輸出禁止騒動。自動車やハイテク機器の製造に不可欠ながら、その9割を中国からの輸入に依存していたことで、日本の産業界がパニックに陥ったことは記憶に新しい。
「前回で中国リスクの怖さを痛感した」。別の大手商社幹部は、当時をそう振り返る。
だが、「前回はレアアースが、日本に対する強力なカードだったが、今回は違う」と明かす。他国でのレアアースの調達先を増やす傍ら、当初は経済産業省にも知らせず、中国からの輸入も第三国を経由して、日本に運び込むルートを確立したからだ。苦い経験を教訓に変えた好例といえる。
当然、中国側も経済戦争が生むデメリットを理解している。それでも人民日報は「中国には『味方が800人傷つこうとも、敵を1000人殺す』意志と耐える力がある」と強弁する。確かに、両国が経済戦争を繰り広げれば、日本が中国以上の窮地に追い込まれる可能性は十分にある。
しかしながら、経済の安定成長を重視し、景気減速による社会不安が政府への不満に転じることを最も警戒する中国政府が、人民日報の主張する“総力戦”に踏み切ることは現実的には考えにくい。指導部交代を控えた今はなおさらだ。中国にも決して、チキンゲームを楽しむ余裕はない。
http://diamond.jp/articles/print/25209
対中外交は、グローバリゼーションへの対応は?
指導国なき「Gゼロ」の世界で日本が取るべき針路
――コロンビア大学教授、ユーラシア・グループ代表
イアン・ブレマー氏に聞く
主要先進国によるG7の存在感が薄くなる一方、かといって新興国を含むG20は機能していない。米中によるG2体制も囁かれるがリーダーシップ面では問題があり、結果、現在は主導国なき世界「Gゼロ」の時代となっている――そんな国際社会の現状を説く気鋭の政治学者が、「ポストGゼロ時代」の世界と日本が取るべき針路を聞いた。(聞き手/ジャーナリスト 大野和基)
Ian Bremmer
地政学的リスク分析を専門とするアメリカのコンサルティング会社、ユーラシア・グループの社長で、ワールド・ポリシー研究所の上級研究員。スタンフォード大学で博士号取得後、世界的なシンクタンクであるフーバー研究所の研究員に最年少25歳で就任。その後、コロンビア大学、東西研究所、ローレンス・リバモア国立研究所などを経て、現在に至る。グローバルな政治リスク分析には定評があり、ロシアのキリエンコ元首相やアメリカの民主・共和両党の大統領候補者らに助言を行ってきた。1969年生まれ。Photo by Marc Bryan-Brown
――『「Gゼロ」後の世界』(日本経済新聞出版社)という本を出しましたが、かつて有力だったG7がG20へとシフトしたものの、今は主導国がないという意味でGゼロということですね。アメリカと中国はどうなったのでしょうか。
アメリカと中国がパワフルではなくなったと言っているのではありません。今の世界でその2ヵ国が、経済的に最大の強国であることは明らかです。しかし、「G2」という言葉を使うと、そこにはリーダーシップがあるという意味が含まれます。つまり、その2ヵ国が選択する方向に世界を導こうとするというニュアンスになります。協調してやるのか、対立しながらやるのか、いずれにせよ世界をリードするという意味が含まれます。
しかし、今の状態は、リーダーシップ不在です。シリアを見ても、ヨーロッパを見てもそれは明らかです。つまり、「Gゼロ」の状態なのです。
「Gゼロ」状態を招いた
5つの原因
――Gゼロの状態になった原因は何でしょうか。
5つあると思います。その5つはほぼ同じ時期に生じました。ひとつは影響力がある国が多すぎることです。多すぎると、対話することも難しい、調和することも難しい、国によって選挙の時期も異なるので、何かを成し遂げないことの言い訳が常にできてしまう。それがひとつ目の原因です。
ふたつ目の原因ですが、最近パワフルになった国は、ファリード・ザカリア(※)の言葉で言えば、The rise of the rest(他の国の台頭)ではなく、The rise of the different(異なった国の台頭)です。つまり、今までパワフルだった国とは、まったく違う国が台頭してきたのです。たとえば中には新興国もあります。非常に貧しく、政治システム、経済システムもまったく異なります。その結果、自分たちとは大きく違う国との同意が得られない状態になるのです。
3つ目の理由は、台頭してきた新興国がグローバルな経験をほとんど持っていないことです。日本、ヨーロッパ、アメリカには、グローバルな協力の長い歴史があります。世界中に外交官も配置しています。しかし、これはBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)には当てはまりませんし、新興国にも当てはまりません。
人口が400万人のニュージーランドの方が、人口が10億人以上のインドよりも、外交官の数が多い。これだけ見ても、こうした新興国にグローバル・リーダーシップを負わせるために、グローバル・ステージに載せることがどれほど難しいかを明確にしています。
4つ目の原因は、アメリカが今までのように世界のリーダーになりたいと思っていないことです。今の景気後退のスケールも関係していますが、アメリカ人のほとんどは、世界の警察にも、最後の貸し手にもなりたくないと思っています。ヨーロッパを救済したいとも思っていません。つまり、そういう面での議論を持ちたいという欲求がアメリカになくなっています。
5つ目は、アメリカがそうならば、それはアメリカの同盟国にも当てはまることです。日本はフクシマの問題、ヨーロッパは財政危機があります。この5つの原因は、我々の今の状態がGゼロであることを事実上、証明しています。
――ご存知のように、日本は尖閣諸島の問題で中国と激しく対立しています。これがどのように今後の日中関係に影響を与えるかわかりませんが、あなたの著書の英語のタイトルには、Winners and Losers(勝者と敗者)と書かれています。このGゼロ状態で勝者になるには何が必要ですか。
※インド系アメリカ人の著名国際ジャーナリスト。
以前にも増して重要になってくるのが、フレキシビリティです。そしてresilience(回復力、弾力)も重要です。この2つの性質が非常に重要です。Gゼロの世界では機会や経済システム、政治システムを作り出すワンセットの原理やスタンダードがないので、フレキシビリティは特に重要です。Gゼロの世界では、以前よりも世界がばらばらになっているのです。
ですから、異なる環境に迅速に適応できて、異なるタイプのスタンダードや、異なるタイプの通商協定をうまく利用できる国や企業が勝者になります。本の中で、pivot states(ピボット国家:片足を軸にして旋回し、複数の国と関係を持ち、その時々によって付き合う相手を変え、それによってリスクを分散できる国)について述べていますが、そういう国が、独自の方法でGゼロの世界をうまく利用できる国です。
もうひとつ回復力が重要だと言いましたが、Gゼロの世界は、さらに対立が生じ、不安定性が増します。世界中にある対立は手遅れになるまで解決しません。その結果、世界情勢はさらに悪化します。そういう環境では、回復力のある国が非常に重要になってきます。ショックを受けても崩れない国です。
日本について言うと、フレキシビリティはあまりない国だと思います。しかし恐らく回復力については、世界でもっとも強い国かもしれません。
Gゼロの世界で
日本は敗者になりつつある?
――その意味で日本は敗者になりつつあるのでしょうか。
今言ったように、日本はフレキシビリティをあまり持っていませんが、回復力があります。フクシマ後の日本を見ればそれは明らかです。節電について、みんなが支持したことも驚くべきことです。
でも日本が抱えている中国問題は消えませんし、日本はシンガポールやインドネシアやカナダのようにピボットできません。アメリカにくっつく方が、日本にとっては簡単だからです。日本が前進するには、中国問題が大きな弱点になっています。それは間違いありません。
――Gゼロの世界は、アメリカの衰退を意味しているのでしょうか。ハーバード大のジョセフ・ナイ教授は、「アメリカは衰退していない」と言いますが。
「アメリカが衰退しているかどうか」というのは間違った質問です。アメリカが衰退しつつあろうとなかろうとヨーロッパを救済すべきだと考えている人は誰もいません。アメリカが衰退しつつあると主張している人が多いことは確かですが、そうではないと言っている人も多い。しかし、シリア問題、ヨーロッパ問題をアメリカが解決すべきだと考えている人は誰もいません。つまりそれは、アメリカに解決能力があるかどうかの問題ではなく、その意思があるかどうかの問題です。Gゼロというのは構造的な問題であって、アメリカの衰退とは関係ありません。
――さきほどからピボット国家と言われていますが、なぜpivot(ピボット)という表現を使うのでしょうか。
そういう国は一つのセットの価値観やスタンダードから、別のものへと旋回する(pivot)能力があるからです。フレキシビリティがあり、適応能力があるのです。つまり大きな隣接国の影響で経済的、政治的、戦略的に縛られない国のことです。
――Gゼロ環境下での、勢力の均衡でもっとも重要な要素は何ですか。
geopolitics(地政学)が以前よりも経済によって動かされていることは明らかです。テクノロジーもかなり重要です。軍事力もかなり重要です。
資源に直接アクセスできるかどうかは、市場の効率が悪くなり、政治がさらに役割を果たすようになるにつれ、さらに重要になります。経済が中心的な要素になるとは言いませんが、地政学的に国家安全を保障する観点からの経済の重要性は、ここ2、3年高くなっています。
日本は中国に
どう対応すべきか
――さきほど日本の中国問題は消えないと言われましたが、日本は中国にはどのように対応したらいいのでしょうか。
非常に難しい質問です。日本は中国と関係を悪くしたいとは思っていません。しかし、同時に日本はアメリカとの関係を再確認する必要があります。TPPは日本にとって賢い選択です。というのも、もし米中間の関係が悪化すれば、TPPが決定的に重要になってくるからです。日本はアメリカと中国の間でできる限り、フレキシブルでありたいと思っています。
ポイントは、そう振る舞うことがさらに難しくなる点です。つまり選択を迫られたときに、アメリカか中国かのどちらかを選択しなければなりませんが、日本がアメリカを選択することは明白です。他に選択はありません。
これは、私がアメリカ人だから言っているのではありません。軍事的な意味でそう言っています。中国が不安定だからそう言っているのです。これからの20年、30年、40年を考えると、中国は、13億人の人口の経済の中で、尋常ではない政治上、経済上の変遷をしなければなりません。
選択しない方が日本にとってはいいことですが、アメリカと中国のどちらかを選択しなくてはならない場合、はるかに危険な選択は中国です。歴史的に見ても、国家安全保障の視点から見ても、政治的に見ても問題が多すぎます。中国が経済的に大きな市場であっても、その理由だけで日本は中国を選択することはできません。
――我々はアメリカ主導の環境の中で、グローバリゼーションが進化するのを見てきました。Gゼロ環境では、グローバリゼーションはどうなるのでしょうか。グローバリゼーションは多くの多国籍企業に恩恵を与えましたが、すでに勝者と敗者を出しています。そうした勝者、敗者はどうなるのでしょうか。
グローバリゼーションは消えませんが、もっと分裂したものになります。グローバリゼーション推進派の連携が見られるでしょう。地理的に連携する場合もあれば、テーマ的に連携する場合もあるでしょう。
過去50年間に我々が見てきたグローバリゼーションは、世界が一つになるようなものでした。ひとつの原理、ひとつの共通した市場でした。しかし、たとえば今のインターネットを見ると、ひとつのインターネットではありません。
中国では5億人の人がインターネットを使っていますが、彼らは彼ら独自の(閉ざされた)システムを使っています。でも他の国の人は別のシステムを使っています。つまり、インターネットは、かつてのグローバリゼーションのような形にはなっていないということです。インターネットは2つの市場に分裂しています。その2つの市場は世界経済では、ますます近づいていますが、昔とはかなり違っています。
分裂するグローバリゼーションのなか
日本が取るべき道は
――このように分裂した環境に日本はどのように対応すべきでしょうか。
日本はできるだけ長期間、選択するのを避けるべきです。しかし、どうしてもアメリカと中国の間で選択を迫られたら、アメリカを選択しなければなりません。また日本は、他の国と経済的な関係を深くしなければなりません。それはアフリカに投資をし、アフリカで主導国になることを意味します。
インドとも経済的な関係を深くしなければなりません。日本は国際的な役割をあまり果たしていませんので、それを果たさなければなりません。日本は他の国に説明することが下手です。日本政府は自国のプロモーションがもっとうまくならないといけません。それが中心的にやるべきことです。
――なるほど。さてヨーロッパの話になりますが、まだ混乱状態です。
まだまだ混乱状態が続きますが、ユーロゾーンは崩壊しません。難しいですが、財政上の共通の組合を作ろうとしています。本当に必要に迫られない限り、政府は緊縮政策をとりませんが、それと同じようによほど迫られないかぎり、実行しないでしょう。ドイツとトロイカ(欧州委員会、欧州中央銀行、IMF)がそれを強要しようとしていますが、時間がかかるでしょう。
――今中東で戦争が起きていますが、戦争が終わることはないのでしょうか。
大きな戦争が起きていますが、それが近いうちに終わることはないでしょう。それが現実です。小さな対立はもっと起きて、続きます。今すでに起きている対立はまだまだ持続します。米中はサイバー戦争をやっていますが、非常に深刻ですぐには終わりません。でも米中は貿易では機能的な関係にあります。ですから、戦争を始めることが何を意味するのかということは、Gゼロの世界では劇的に変わります。
http://diamond.jp/articles/print/25396
世界の人たちから見た尖閣諸島問題
同盟国・米国ですら日本には甘くない
2012年09月28日(Fri) 堀田 佳男
世界史を過去300年ほど遡ると、見方によっては戦争の歴史、つまり領土問題の歴史と言えるほど多くの争いが起きてきた。ここでは尖閣問題を、少し距離を置いたところから眺めてみたい。
日本のメディア報道の中には、世界へ向けて日本の立場を主張すべしとの議論がある。日本の立場を広く説くことで、他国に領有権の正当性を認めさせる意図がある。
日米安保が適用されるとの発言はあるものの・・・
中国で沸騰する反日デモ〔AFPBB News〕
ただ諸外国の関係者は、すでに日本が尖閣諸島の領有を主張している事実をよく知る。同時に、中国側が「釣魚島に対する主権は弁駁を許さない」(北京週報)と記す通り、同じように領有を主張していることも熟知する。
米国政府は1996年以降、「尖閣諸島で日中のいずれの立場も支持しない」との立場を崩していない。先日、来日したレオン・パネッタ国防長官も同じ内容の発言を繰り返した。
ただ、中国との有事が起きた時、日米安全保障条約第5条(米国の対日防衛義務)が適用されて、「条約の義務を遂行する立場は変わってない」とも述べ、交戦した場合は日本側に回ることを示唆している。
筆者の周囲にいるヨーロッパからの特派員数人に話を聞くと、尖閣問題では中立的な意見を述べる者が多い。ドイツの大手経済紙の記者は、
「歴史的な背景を探ると、日中両国はほとんど水掛け論を展開しています。ですから、どちらの国が『先占の要件』を満たしているのか、文献を読んだだけでは分かりません。すぐには解決しないでしょう」
と述べ、問題の長期化は必至だとの意見だ。
スイス人記者も尖閣諸島が日本固有の領土であるかは断言できないとする。
「両国の歴史学者が数百年前まで遡って尖閣諸島の領有権を主張していますが、説得力に欠けます。どうしてでしょう。誰も客観的に検証できないからです」
「かつてフランスやドイツ、ポーランドといった国は国境紛争で数限りない人の血を流しました。今は過去から少し学んで争いません。日中も冷静になって第三者を入れて話し合ってください」
尖閣諸島を係争地と定義する米、英両政府
尖閣諸島を目指す台湾の巡視船〔AFPBB News〕
日頃から中国に対して厳しい見方をする英国人記者は、同問題では日本に注文をつける。
「外務省は尖閣に領有権問題は存在しないという立場を貫いています。ところが米国政府も英国政府も、尖閣諸島は領土紛争の係争地と定義しています」
「当たり前です。どういう方向から解釈しても、今の尖閣は係争地としか思えません。ですから、問題を解消するにはこのあたりの態度から変えていかなくてはいけないでしょう」
国家間の領土問題というのはナショナリズムの台頭を呼び起こしやすい。それは「尖閣諸島(釣魚島)は我が国のもの」という前提が、論理展開の前に両国民の心に宿るからである。
冷静な識者であっても、日本人であれば日本固有の領土であると主張するし、中国人の学者は当たり前のように中国の領土であると述べる。
米国は日米同盟を結ぶ相方であるが、地政学的に関与の薄いヨーロッパ諸国からの見方は前出の記者の言葉通り、日本寄りであるとは限らない。
純粋に知的で冷徹な省察の末に導き出された結論であれば、日米両国の学者の何割かは「この島は我が国のものではない」と述べる方がむしろ自然だが、極めて少数である。
国際関係の視点からこの問題を論じるより、社会学のゲマインシャフト(血縁組織)という社会類型を採用した方が問題の的を射ることになるかもしれない。これは人間であれば本来備わっている意志によって統一された社会が対立しているという説明である。
領土問題はゲマインシャフトの1つ
ロンドン五輪で48年ぶりに金メダルを獲得したボクシング男子ミドル級の村田諒太選手〔AFPBB News〕
例えばロンドン五輪開催中、日本人であればほとんど無条件で自国選手を応援していたはずである。ほとんど名前を耳にしたことのない選手であっても、日の丸を背負っているだけで同胞としての意識を芽生えさせて応援する。
こうした感情を抱くのはもちろん他国の人も同じである。選手の性格や能力などにはほとんど関係なく、ほぼ無条件で応援の対象になる。同胞との意識が潜在下で予想以上に強く作用する。
共同性が個人を包み込み、同じ国の人間ということで心の結合を確認する。領土問題はまさしく形を変えたゲマインシャフトと言えなくもない。
ただ過去の領土問題を考察すると、戦争に勝った国が思うように国境を策定する権利を得てきたのが実情だ。それが実行支配というものであり、領土問題の多くはこうした「野蛮な方法」によって決着をみてきた。
1982年にアルゼンチンと英国が争ったフォークランドでも、独仏による因縁の地であるアルザス・ロレーヌでも、戦勝国が実行支配を続けている。
前出のドイツ人記者はこの件で、ドイツ人はほとんど諦観の境地に達していると言った。
「アルザス・ロレーヌは1648年に締結されたウェストファリア条約以降だけでも、何回もドイツとフランスが占領を繰り返しました。ここはもともとアルザス語を話すドイツ語系の人たちが住んでいた土地です」
「最後は第2次世界大戦でドイツが敗れてフランス領になって以来、ずっとそのままです。今ドイツ国内で取り返そうという気運はないです。もう血を流してはいけないと誰もが思っているからです」
この領土問題は力による古典的な決着で幕を閉じたため、「先占の要件」や「固有の領土」といった考え方が考慮されていない。
フォークランド紛争でも、「先占の要件」を満たしているのはスペインだが、彼らは領有権を主張していない。現実的にはアルゼンチンは英国軍の前に白旗を揚げざるを得なかった。ここでも力の論理が働いた。30年前でも軍事力の差で領土問題に決着がみられたのだ。
力に頼らない紛争解決方法を模索する時代に入った
ただノーベル経済学賞受賞者のトーマス・シェリング氏は著書『紛争の戦略:ゲーム理論のエッセンス』の中で、紛争解決の仕方が変わってきたと述べている。
大国はかつて、相手国から獲得する目標を設定し、それが成就した時点で勝利と捉えていた。しかし「相手から奪い取るだけが勝利ではない。多くの国家目標の中で何が一番大事かを見極める、これこそが一番重要なポイント」と指摘する。
そのポイントは国民が平和で安定した繁栄を築けるかどうかにかかっている。さらに同書では、対立する国家同士が「完全に対立し合う純粋な紛争など滅多にあるものではない」と書いている。
中国のナショナリズムの台頭が、問題解決を難しくしている障害の1つではあるが、両国が武力を行使しないことを共通の認識として交渉を重ね、相互依存関係を深めていくことは可能なはずだし、そうでなくてはいけない。
日本刀で竹を割ったような解決の姿は現実的にはむしろ困難かもしれない。1972年に田中角栄・周恩来会談で「棚上げ」にした妙案のように、緊張を保ちながらも平和を維持する方向は探れるだろう。
国際機関や第三国を仲介役に立てる手立てもある。いずれにしても戦火を交えることだけは避けなくてはいけない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36198
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中国の対日強行姿勢に対抗できない
日本防衛態勢の現状
2012年09月28日(Fri) 北村 淳
アメリカ国防総省パネッタ国防長官は、9月17日、森本敏防衛大臣との共同記者会見において、「尖閣諸島に関しては日米安全保障条約上の義務を遂行する」と述べるとともに、「アメリカは領土問題のような第三国間の国家主権の対立に関する紛争では原則的に中立を維持する」というアメリカの伝統的立場をも強調した。
同様に、アメリカ国務省キャンベル次官補は、9月20日、アメリカ連邦議会上院外交委員会(東アジア・太平洋小委員会)で、「尖閣諸島が日本の施政下にあり日米安全保障条約の適用範囲に含まれている」といった旨を証言した。
安保条約の適用範囲と軍事介入は別
日本のマスコミは、尖閣諸島領有権問題が浮上すると、「アメリカ政府が尖閣諸島を日米安全保障条約の適用範囲と見なしている」とアメリカ政府高官が語ったという報道を流して、あたかも日本の背後には日米安全保障条約によって派兵されるアメリカ軍事力が控えているかのごとき印象を与えてしまっている。しかしながら、尖閣諸島領有権問題がこじれて中国共産党指導部が対日軍事力行使に踏み切った場合、いくら日米安全保障条約(この場合第5条)が適用されるといっても、なにも在日アメリカ海兵隊やアメリカ海軍第7艦隊が自動的に対中国軍事行動を開始することを意味しているわけではない。
パネッタ長官が釘を刺したように、第三国間の領土紛争にはアメリカは直接軍事介入は行わないというのがアメリカ外交・軍事政策の鉄則である。
撃沈されたイギリス海軍駆逐艦コヴェントリー(写真:Royal Navy)
例えば、アメリカにとっては日本以上に密接な同盟国であるイギリスがアルゼンチンとの間でフォークランド諸島の領有権を巡って軍事衝突に突入する際に、イギリス本土から1万2000キロメートル以上も離れたアルゼンチン軍に占領されてしまったフォークランド諸島ならびにサウスジョージア島を奪還するための軍事作戦はアメリカの援軍なしでは極めて困難が予想されたにもかかわらず、アメリカは直接軍事介入は行わなかった。
アメリカ政府は軍事衝突を回避させようとイギリス政府に働きかけたが、「自国の領土を護る気概を失ったならば国家は滅亡したも同然」との持論を貫いた“鉄の女”サッチャー首相は、領土奪回軍事作戦実施を決定した(ただし、アメリカはイギリスに軍事情報提供を行い間接支援をした。また、万一イギリス海軍航空母艦が撃沈されてイギリス軍側が敗北の危機に直面した際には、軍事企業が運用する米国海軍強襲揚陸艦を貸与できるような計画を立案した)。
日本と違い自国の領土・領海を守るための能力を保持した海洋軍事力(海上戦力・海中戦力・航空戦力・水陸両用戦力)を維持していたイギリスは、多大の犠牲を払ったものの(戦死傷者およそ1000名、軍艦6隻と輸送船1隻が撃沈され、戦闘機10機とヘリコプター24機を失った)自国領域を奪還した。
フォークランド戦争の例は、もし“日中尖閣諸島戦争”が勃発しても、アメリカが直接軍事介入しない可能性が高いことを暗示している。
海兵隊が「やる気十分」でも話は別
アメリカ政府の基本方針はあくまでも第三国間の領土紛争には直接的軍事介入しないというものではあるが、アメリカ政府が、尖閣諸島領有権問題は中国による対日軍事行動の見せかけの口実の1つであると解釈して、日本に対する本格的軍事支援に踏み切る可能性がゼロというわけでもない。実際に、中国共産党による対日軍事力行使の口実はなんであれ、日本の防衛を主たる任務の1つとして沖縄を中心に日本に駐留しているアメリカ海兵隊第3海兵遠征軍やアメリカ海軍第7艦隊そしてそれらの上部組織である太平洋海兵隊や太平洋艦隊が、中国による対日軍事侵攻に備えて作戦計画を立案し訓練を積んでいることは事実である。
中国軍部の増長を抑えるために、沖縄や東シナ海それに南シナ海などで、アメリカ海兵隊・アメリカ海軍・海上自衛隊・陸上自衛隊それに航空自衛隊をも加えて大規模な共同訓練を実施すべきである、との構想を持つアメリカ海兵隊幹部も少なくない。
例えば、アメリカ海軍強襲揚陸艦にアメリカ海兵隊部隊と陸上自衛隊部隊が同乗し、海上自衛隊と第7艦隊の駆逐艦それに海上自衛隊や航空自衛隊の各種航空機で護衛しつつ沖縄周辺海域(もちろん尖閣諸島も沖縄周辺海域に含まれる)で艦隊機動訓練、上陸訓練、補給訓練などを実施すると極めて有効な対中抑止になるであろう、といったような具体案も筆者は耳にしている。
もっとも、アメリカ海兵隊側が、沖縄の海兵隊基地内での合同射撃訓練といった軽い共同訓練を陸上自衛隊側に持ちかけても、自衛隊を縛り付けている各種法令や、防衛問題などは二の次の政治状況のために自衛隊側から辞退されてしまうといった現状では、なかなかアメリカ海兵隊員と陸上自衛隊員が同乗した強襲揚陸艦が東シナ海を遊弋(ゆうよく)するにはほど遠いようである。
地道な努力を重ねている自衛隊
イギリスにはアルゼンチンからフォークランド諸島を奪い返す強固な意志と軍事力が存在していたが、日本にはそのような軍事力は存在しないし、少なくとも党利党略に明け暮れる大多数の日本の政治家にはサッチャー首相のような覚悟は見て取れない。
その一方で、国防問題には目もくれずに党利党略にのみ明け暮れている多くの政治家と違い、国防の責任を負っている自衛隊は人知れず日米同盟弱体化を食い止める地道な努力を続けている。
例えば、2011年秋には、アメリカ海兵隊が乗り込んだアメリカ海軍強襲揚陸艦を海上自衛隊駆逐艦が護衛してアメリカ海兵隊による上陸作戦を支援する訓練が実施された。また、2012年8月からはアメリカ海兵隊第31海兵遠征隊(2200名)に40名の陸上自衛隊西部方面普通科連隊隊員が加わってテニアン島やグアム島で水陸両用作戦の訓練が実施された。
このような海上自衛隊とアメリカ海軍、陸上自衛隊とアメリカ海兵隊の共同訓練は、日本の防衛にとって必要不可欠な「水陸両用戦能力」(現代的には「水陸空併用戦能力」)を構築するための重要な一歩と言える。
しかしながら、国家の防衛政策として日本自前の水陸両用戦能力を構築する方針を打ち出しそれなりの防衛予算を計上しなければ、遅々として進まないのは当然である。
また、水陸両用戦能力の大前提として海上自衛隊と陸上自衛隊(あるいは新設日本海兵部隊)の統合能力が不可欠であるが、海上自衛隊と陸上自衛隊によるこの種の訓練は極めて低調である。防衛省自衛隊内部での党派的対立を解消して統合運用体制が確立されない限り、いくら防衛予算が大増額され装備の調達が開始されても、何年経っても水陸両用戦能力構築には至らない。
国民をミスリードするマスコミ
さらなる大問題は日本のマスコミの対応である。確かに、陸上自衛隊がアメリカ海兵隊に師事して水陸両用戦能力を細々ながらも習得しようとしている状況を報じているが、現段階の訓練はとても水陸両用戦能力(まして水陸空併用戦能力)の本格的訓練とは言えないレベルのものである。このような程度で、あたかも日本自身が日本の島嶼を防衛するための軍事的能力を準備しているがごときに誤解を与えてしまうような報道は、国防費を負担している国民をミスリードしてしまう。
世論の形成、そして結果的には国防政策にも影響を与えてしまうマスコミは、ほぼゼロに近い現状である水陸両用戦能力だけでなく、広大な日本の領海や日本国民生活の生死を握る各種資源調達のシーレーンを防衛するには微弱としか見なせない日本海洋軍事力(海上戦力、海中戦力、航空戦力、水陸両用戦力)の現状を的確に報道しなければならない。
そうしない限り、いつまでたっても国民そして国防に関心がない多くの政治家たちには、日本の防衛態勢が日米軍事同盟にすがりついており自力では無防備に近いという情けない状況が伝わらないのである。そして、軍事的根拠なしに設定されている防衛費GNP1%枠や、自分で自分の首を絞めている武器輸出三原則などが未来永劫に撤廃されないのである。
ミサイルを飛ばさない「軍事力行使」の効果
過去数年間にわたって構造腐食した政党政治のゴタゴタで外交・防衛政策どころではない状況が続いている結果として、日本の防衛態勢は極めて弱体化してしまっている。また、普天間基地移設問題の紛糾や“オスプレイ恐怖症”による狂騒などで日米軍事同盟には深刻な亀裂が入ってしまい、これまた弱体化している。さらに、国防予算の削減やイランをはじめとする中東情勢の緊迫化により、口では「東アジア重視」と言っても現実には中東と日本周辺での二正面作戦を遂行するのはアメリカにとっては厳しい情勢となってしまっている。
日本防衛力の弱体化そして日本の頼みの綱である日米軍事同盟の大幅後退に反比例して、中国海洋軍事力(海上戦力、海中戦力、航空戦力、水陸両用戦力)は着実に強化を続けている。このような軍事的環境を踏まえて、中国共産党指導部が対日軍事力行使に踏み切る可能性は決して少なくはない。まして、中国国内での格差の広がりの深刻化や、デマも含めてだがインターネット情報の流布により、中国共産党指導部や中国人民解放軍指導部が何らかの対日軍事力行使に踏み切らねばならない局面が訪れかねない状況である。
軍事力行使というのは、なにもミサイルを発射したり上陸部隊により侵攻したりする目に見えた形での軍事行動だけを意味するのではない。自らの持つ軍事力によって相手国を攻撃するとの脅しを相手国側に伝達(公開あるいは非公開に)することにより、自らの政治的要求を相手国に押し付けることも軍事力行使の一類型である。
というより、孫子謀攻編に「不戦而屈人之兵、善之善者也」とあるように、軍事衝突をしないで軍事的脅威により相手を屈服させることこそ軍事力の最善の利用法であり、軍事力構築の究極目的なのである。
中国の軍事的脅しを跳ね返すために
中国第二砲兵隊は、日本の領域全体に打ち込むことができる核弾頭並びに非核弾頭搭載の長射程ミサイルを多数運用している。中国海軍並びに中国空軍は、原油や天然ガスを積載して日本に向かうタンカーの航行を、南シナ海で妨害する能力を保持している。中国海軍攻撃原子力潜水艦は、西太平洋から日本各地の戦略目標に長距離巡航ミサイルを撃ち込む能力を持っている。同様に、中国空軍ミサイル爆撃機は、日本領空からはるかに離れた空域から日本各地の戦略目標に長距離巡航ミサイルを撃ち込む能力を持っている。
日本領域を攻撃可能な中国人民解放軍長射程ミサイル(米国国防総省)
・CSS-6 SRBM(東風15型)弾道ミサイル:射程600キロメートル、先島諸島(青枠)
・CSS-5 ASBM(東風21型)対艦攻撃弾道ミサイル:射程1500キロメートル、艦船攻撃用ミサイル(黄枠)
・CSS-5 MRBM(東風21型)弾道ミサイル:射程1750キロメートル以上、小笠原諸島を除く日本全域(緑枠)
・DH-10 LACM(東海10型)長距離巡航ミサイル:射程2000キロメートル以上、硫黄島を除く日本全域(オレンジ枠)
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これ以外にも、中国海軍や中国空軍は日本の領域に浸入してミサイル攻撃、砲撃、爆撃そして機雷敷設などの近接攻撃を実施することも可能である。また、中国海軍陸戦隊は先島諸島などの離島部に上陸侵攻する能力を保持している。
中国共産党政府は、これらの多種多様な対日軍事攻撃能力により実際に日本に危害を加える以前に、攻撃敢行の可能性を日本政府に突きつけることによる強硬外交交渉を実施すれば、日本政府を屈服させることができる。
この種の軍事的脅しの段階では、アメリカ政府が日米安全保障条約第5条を適用して在沖海兵隊を先鋒とする日本防衛軍を編成し展開させることは不可能に近い。中国に限らずアメリカにしろ日本以外の多くの国々が外交能力と軍事能力を外交交渉の両輪として用いるのは日常茶飯のことであり、場合によっては外交交渉の舞台裏で軍事的恫喝(公然とではなくとも)が行われているのが国際社会なのである。
要するに、現状のように日本独自の防衛能力があまりにも弱体で日米軍事同盟にすがりつかねばならないような状況下では、中国そしてロシアといった軍事強国を相手として領土問題を解決しようとしても、とても無理な相談と言えよう。
もちろん日米軍事同盟は日本の防衛力にとって貴重なアセットとして再構築しなければならないのは当然であるが、日本独自の防衛能力の強化(人員や予算の拡大だけでなく日本防衛にとって適正な防衛方針に基づく強化という意味)を速やかに実施しなければならない。
そのためには、日本国民にとってはつらい作業ではあるが、日本防衛が置かれている現状を直視し正しく認識する必要がある。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36175
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