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韓国の「卑日」がこれから始まる
日韓関係悪化を「竹島以前」から予測していた木村幹教授に聞く
2012年9月6日(木) 鈴置 高史
韓国の李明博大統領が竹島に上陸する前から「日経ビジネスオンライン」の対談「日韓関係はこれからどんどん悪くなる」で日韓関係の悪化を予想していた神戸大学大学院の木村幹教授と日本経済新聞社編集委員の鈴置高史氏の2人が再び話し合った(司会は伊藤暢人)。
領土問題の存在を世界に宣伝してしまった李明博大統領
韓国の李大統領が竹島に上陸し、その後も従軍慰安婦問題で日本を非難したうえ、天皇に謝罪を求めるなど一気に日本への攻勢を強めました。
神戸大学大学院の木村幹教授(右)と日本経済新聞社編集委員の鈴置高史氏
木村:李大統領の竹島訪問は、日本では大きな話題となりました。ですが実際には既に韓国が実効支配している地域を訪問しただけで、長期的には韓国にとってはあまり効果的とは言えない行為でした。
というのは、韓国はこれまで竹島については「領土問題は存在しない」という立場を取ってきました。実効支配しているのですから、国際的には領土紛争が存在していないというスタンスを取る方が有利だからです。ちなみに、日本は尖閣諸島については同じ様な姿勢を取っています。ところが、今回の李大統領の訪問により、ここに領土問題があることを明らかにしてしまいました。
ただし、短期的には李大統領は国内の話題を集めることに成功しました。任期が残り6カ月となってレームダック化しているところで発生した実兄などが収賄容疑で逮捕されるというスキャンダルから、国民の目をそらすには十分でした。これで支持率が大幅に上がるというわけではないのですが。
「日王への謝罪要求」は計画的か?
鈴置:退任後の韓国大統領は歴代、悲惨です。民主化の後でも、4人のうち1人は投獄され、2人は子息が逮捕されました。残りの1人は自殺しました。前任者を徹底的に卑しめないと力を手に入れられない、とこの国の権力者は考える風があります。
企業でもそうで、日本のように交代の会見で新社長が「前任者の敷いた路線を踏襲する」などとは絶対言いません。前社長のかわいがっていた役員・社員を意思決定機構から外すことから手をつけるものなのです。
韓国では前の政権を否定するためにしばしば遡及立法が行われますから、李大統領も油断できません。「独島に大統領として初めて上陸し、日王(天皇)をしかるなど、よほどの功績を作っておかないと退任後、迫害される」と考えても不思議ではないのです。
竹島訪問後に「訪韓したいのならば天皇は心から謝罪すべき」という発言がありました。
木村:こちらについては深い思慮に基づいていたとは考えていません。竹島への訪問で話題になったので、次に日本人が注目しそうな天皇についても、刺激的なことを言ってみたというところでしょう。そもそも日本側は天皇の訪韓を打診していたわけでもありませんから。
鈴置:青瓦台(大統領府)の広報体制を考えるに、私は「日王への謝罪要求」も、国民に聞かせるため計算して話したと思います。一方、韓国への通貨スワップの一部打ち切りで対抗しよう、という日本の判断。これも「日王への謝罪要求」で固まった感があります。
「旧植民地だから」と脇の甘かった日本
ただ、「謝罪要求」がなくとも日韓関係は悪化するコースに乗っていました。20年ぐらい前までなら韓国が相当な無理難題を言ってきても、日本は「子供のように駄々をこねるなあ。でも、植民地だったのだから、しょうがないか」と“上から目線”で見逃してきました。
韓国人も「日本は宗主国だったのだから、これぐらい聞いてほしい」と堂々と日本人に語っていたものです。でも、韓国も経済的に自立し日本の助けは要らなくなりました。韓国は日本に対し遠慮がなくなって、さらに“無茶苦茶”を言ったりやったりするようになった。一方、日本は「もう、大人なのだからいいかげんにしろよ、と“韓国の我がまま”を許せなくなった」という構図でしょう。
いつ頃が転機だったのでしょうか。
鈴置:2008年頃までは「あまり反日をやると日本が部品の輸出を止めるかもしれない」などと自制する記事が韓国の経済新聞には載ったものです。でも、半導体の部品や素材も国産化が急速に進みました。一部、製造装置などに日本からの輸入が必要なものが残っていますが、今や「経済が縮み、貿易赤字に苦しむ日本には対韓輸出を止める余裕はない」と韓国人は見切っています。
さて、韓国の政治家は「経済的な自立に成功した以上は“日本から完全に独立した韓国”を内外に示す必要がある」と考えます。李大統領が竹島訪問後、語った2点が象徴的です。
竹島上陸は「独立宣言」
1つは、8月15日の“独立式典”で「韓国は先進国になった」と宣言したこと。もう1つは「子供の頃、私をいじめていた強い奴がいた。私が大統領に就任した後、その男と会った。彼は笑って近づいてきたが、私は許す気になれなかった」という趣旨の発言です。ある意味で、竹島上陸は力をつけた韓国の独立宣言だったのでしょう。
韓国では「日本から名実ともに独立した」ことや「強国になった」ことを世界に示すには、旧・宗主国の日本を卑しめ、おとしめる「日本たたき」が一番手っとり早い手と考えられがちです。李大統領でなくとも竹島に上陸する大統領は出てきたでしょうし、それ以外の日本たたきも本格化するでしょう。一連の“反日”というか、今や“卑日”に転じた韓国の行動を「李政権の特殊性」だけから考えると判断を誤ると思います。
木村:従軍慰安婦問題も、日本たたきを続けていくうえで、あえて指摘しておいたというニュアンスが強いと見ています。
日本政府が「10月末で期限の来る570億ドル相当の通貨スワップの打ち切りを検討する」と発表しました。
鈴置:日本にとって、それが残された少ない対抗手段だったからです。部品の輸出禁止は世界貿易機関(WTO)違反臭い。日本が実行したら、“尖閣でレアアースを止めた中国”になってしまいます。
国際ルールに違反せず、実効の上がる対抗策と言えばスワップしかないのでしょう。経済以外では、李大統領をはじめ竹島に上陸した韓国人を入国禁止にする手があります。しかし、有名人は確認できますが、普通の人に関しては難しい(「通貨スワップ打ち切りで韓国に報復できるか」参照)。
スワップは中国が肩代わりへ
木村:日本の総選挙がいつになるかにもよりますが、通貨スワップを現状の金額のままで維持するのは難しいでしょう。ただ日本が減額すれば、その分を中国が支援するでしょうから、韓国とすれば、短期的にはしのげるという読みも成り立つはずです。
韓国が通貨危機に陥る。しかし、竹島問題などで対立する日本は助けない。すると中国が代わりに助ける……。鈴置さんは2010年の段階でこうしたシミュレーションを小説『朝鮮半島201Z年』として発表していました。
鈴置:韓国への通貨スワップは国際的な地殻変動を映しています。1997年の通貨危機で韓国はまず米国にスワップを求めた。しかし、米韓関係が極度に悪化していましたから、米国は拒絶。そこで韓国は日本にスワップを頼みましたが「日本が貸したらお灸が効かない」と考えた米国からの“お達し”が回っていて日本も拒否。韓国はやむなくIMFに救済され、企業倒産が多発する厳しい改革をのまされました。これが韓国の反米感情の1つの源とも言われています。
2008年の通貨危機では韓国は米国からのスワップを比較的容易に取りつけられました。米韓関係が良かったからです。しかし、問題が発生しました。米韓 スワップだけでウォン売りは止まらなかったのです。そこで日本と中国にもスワップを結んでもらって、ようやくウォン崩落を食い止めたのです。市場は、世界の金融危機の震源地である米国の力を疑い始めたのです。
スワップに現れた米中の勢力交代
そして、2011年の通貨危機。「韓国が米韓首脳会談でスワップの約束を取りつけようとしたものの失敗。やむなく1週間後の日韓首脳会談で日本から570億ドルの増額をしてもらったが、それでも不十分。結局、中国に不足分を頼んだ」――と市場から見なされています。1997年には中国からドルを借りる、なんて誰も想像しなかったのですが。
米国と日本の凋落、中国の台頭が通貨スワップにもはっきりと表れるのですね。
鈴置:まさに、そこなのです。「竹島」や「日王謝罪」など、今始まった一連の卑日運動は、日韓の間の力関係の変化だけではなくて、米国や中国を含む世界的な地殻変動を反映したものです。その1つが通貨スワップで、韓国からすれば「米国はもう頼りにならない。日本とけんかしてもいい。中国にさえかわいがってもらえるようになれば」ということになります。表面的には、過去の反日の延長線上に見えますが、今、韓国は「離米従中」というベクトルで動き始めたのです。
注:「日経ビジネス」9月3日号のリポート「日韓関係はさらに悪くなる」に加筆修正して掲載しました。
著者プロフィール
鈴置 高史(すずおき・たかぶみ)
鈴置 高史 日本経済新聞社編集委員。
1954年、愛知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。
77年、日本経済新聞社に入社、産業部に配属。大阪経済部、東大阪分室を経てソウル特派員(87〜92年)、香港特派員(99〜03年と06〜08年)。04年から05年まで経済解説部長。
95〜96年にハーバード大学日米関係プログラム研究員、06年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)ジェファーソン・プログラム・フェロー。
論文・著書は「From Flying Geese to Round Robin: The Emergence of Powerful Asian Companies and the Collapse of Japan’s Keiretsu (Harvard University, 1996) 」、「韓国経済何が問題か」(韓国生産性本部、92年、韓国語)、小説「朝鮮半島201Z年」(日本経済新聞出版社、2010年)。
「中国の工場現場を歩き中国経済のぼっ興を描いた」として02年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。
このコラムについて
早読み 深読み 朝鮮半島
朝鮮半島情勢を軸に、アジアのこれからを読み解いていくコラム。著者は日本経済新聞の編集委員。朝鮮半島の将来を予測したシナリオ的小説『朝鮮半島201Z年』を刊行している。その中で登場人物に「しかし今、韓国研究は面白いでしょう。中国が軸となってモノゴトが動くようになったので、皆、中国をカバーしたがる。だけど、日本の風上にある韓国を観察することで“中国台風”の進路や強さ、被害をいち早く予想できる」と語らせている。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120903/236309/?ST=print
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