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私はウィンドウズは嫌いだが、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の活動は称賛に値すると評価している。
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雑誌『日経メディカル』のコラムの一つである「論文ピックアップ」を、昨年6月から担当している。このコラムは、『日経メディカルオンライン』の「海外論文ピックアップ」と同様に、the Journal of American Medical Association (JAMA)誌やLancet誌、British Medical Journal(BMJ)誌など、海外の主要医学雑誌6誌に目を通し、その中から注目すべき論文をピックアップするものだ。
その作業の中で、一昔前一世を風靡した名前をよく目にするようになった。それは「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」。もちろんこのビルとは、マイクロソフト社の創業者で会長であるビル・ゲイツだ。途上国が関連するような大規模な調査研究など、おっと目を引く論文は大抵この財団による資金援助を受けている。
ネグレクティドディジーズ(顧みられない疾病)という言葉がある。患者の多くが途上国に偏在するために新薬開発に見合う利益が期待できず、医薬品開発ニーズが高いにもかかわらず新薬の開発が進まない疾病を指す。
医薬産業政策研究所主任研究員の吉田一郎氏の調査によると、ネグレクティドディジーズに対する2010年の研究開発資金として、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の拠出金額は4.6億ドル。慈善団体の中でダントツ一位だ。ちなみに、米国は13億8740万ドル(GDP比0.01004%)を拠出(図参照)。一方、日本による拠出金額は850万ドルにとどまり、ビル&メリンダ・ゲイツ財団による拠出金額の5分の1にも満たない。また、GDP比は0.00015%で米国より2ケタも少ない。
「米国では、事業を興し経済的に達成しただけでは尊敬されない。その後、儲けたお金を他者がマネできないような慈善事業につぎ込んではじめて成功者として尊敬される」と、以前、米国滞在中に聞いたことがある。
昨年12月、New England Journal of Medicine(NEJM)誌に、マラリアワクチンのフェーズ3臨床試験の結果が発表された。この論文もよくみると、またもやビル&メリンダ・ゲイツ財団からの資金援助を受けていると記されている。
WHOによると、2010年におけるマラリアの推定患者数は2億1600万人、推定死亡数は65万5000人に上る。この死亡者の大半は5歳以下の小児だ。近年、マラリア治療薬に対するマラリア原虫の耐性化も懸念されている。予防法として最も有効といわれるのが蚊帳の使用とされることからも、マラリアワクチンへのニーズの高さが垣間見られる。しかし、患者のほとんどがアフリカなどの途上国にいることから、マラリアはネグレクティドディジーズの代表格だ。
今回報告されたフェーズ3は、生後6〜12週の乳児6537人を対象とした大規模なものだった。残念ながら、ワクチンによる予防効果は3割程度と、この研究に先だって報告されていた生後5〜17カ月の小児を対象とした臨床試験の結果(約5割)よりも低い。
この結果に対して、米Albert Einstein大のJohanna P. Daily氏は、「このワクチンが実用化され、ルーチンの予防接種に組み込まれることはないだろう。ただし、一部の小児に効果があったことは確かであり、より有効なワクチン開発の道を開くものだ」と評価する。
マラリアとの戦いはまだまだ続きそうだが、勝算はありそうだ。私はウィンドウズは嫌いだが、ビル&メリンダ・ゲイツ財団で、病気や貧困に立ち向かっている、今のビル・ゲイツはすごく尊敬できると思う。
また日本政府も、2013年度からビル&メリンダ・ゲイツ財団と組んでネグレクティドディジーズに対する研究開発に力を入れる計画だ。7億円のプロジェクト(外務省が25%、厚生労働省が25%、日本の製薬企業が25%、ビル&メリンダ・ゲイツ財団が25%ずつ負担)を計画しており、日本の製薬企業とも協力して、ネグレクティドディジーズに対する医薬品研究開発や供給支援を行う。国連開発計画(UNDP)と連携しながら開発途上国向けの医薬品の実用化を目指している。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/eye/201302/528950.html
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