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(回答先: テスト 投稿者 赤かぶ 日時 2012 年 9 月 17 日 06:44:10)
小沢一郎裁判の原点・西松事件の審査を担当した検察審査会メンバーの告白(第4回)
http://g2.kodansha.co.jp/14299/14412/16577/16578.html
G2 今西憲之(ジャーナリスト)
議論がかなり煮詰まってきた時、議長が「議決をとりましょうか」と声をかけると、事務局から、それぞれの審査員の手元に用紙が配付された。
検察審査会法では、審査員の8人以上が「起訴」と判断すると「起訴相当」。6人以上だと「不起訴不当」。それ以下だと「不起訴相当」という意見になるとされている。
配布された用紙には「起訴相当」「不起訴不当」「不起訴相当」とプリントされていて、いずれかに印をつける仕組みだった。簡単な理由を書くような欄もあったという。その用紙を投票箱に入れて、多数決で議決されたそうだ。
室内のホワイトボードには、先にペンで「起訴相当」「不起訴不当」「不起訴相当」と書かれていた。「正」の字で票数が表されていく。
圧倒的に「起訴相当」の意見が多い。結果、国沢元社長には「起訴相当」と議決。二階派の政治資金管理団体の関係者は「不起訴不当」とされた。
「国沢元社長については『起訴相当』を支持する投票が最初から伸びていました。自分と同じように思う審査員が多いんだと感じました。審査員の表情を見ると、『やっぱりそうだろう』って顔してうなずいている人が多かったような印象があります」(Aさん)
事務局が国沢元社長を「起訴相当」、二階派関係者を「不起訴不当」とした議決理由書の文案をまとめはじめた。再度、それぞれが意見を述べて、とりまとめていく。文案を印刷した用紙が審査員にまわされて、全員でチェックした。
「みんなの言いたいことを事務方はきちんとまとめてくれていると思いました。最初、事務局は頼りない感じがしたが、最後はなかなかのものだと思った。補佐役の弁護士ですか? 私の審査会議には、いたのかな。いなかったように思います」(Aさん)
終了したのは、午後3時半だった。最後に、事務局員はこう言ったという。
「明日の新聞などで、この議決が大きな記事になっているはずです」
■新聞報道に興奮する事務局員
翌6月17日の新聞各紙では、Aさんたちの議決が、事務方の言葉通り大きな記事になっていた。
〈二階派への政治資金 西松前社長に「起訴相当」議決〉〈検察審、二階氏側不起訴は「不当」〉
「自分たちの議決がこんな記事になるとは、正直、ドキドキって高揚した感じでした。どの新聞もしっかり議決した理由を掲載してくれていたので、報道内容には納得でした」とAさんは率直に語る。
国沢元社長の「起訴相当」の議決から、わずか10日後の6月26日に、東京地検は国沢元社長を二階ルートのパーティ券購入に関して、追起訴していた。東京地検は検察審査会の議決をそのまま呑み込んだ恰好となったのだ。
そして、7月最初の検察審査会議があったのは7日。最初に事務方から先日の議決を報道した新聞のスクラップのコピーが配付された。議決後に、東京地検が国沢元社長を追起訴したという記事もあった。誰もが改めて、反響の大きさを実感していた。
「事務局の男性は『すごいことになりましたよね』ととても興奮していました。私たちの決定があの検察を動かしたと、議決の重さと胸を張るような気持ちを、誰もが持っていた」(Aさん)
ある検察幹部は、検察審査会の重みが増した動きだったと、裏事情を解説してくれた。
「一度、起訴しないと決めた事件を、10日もの短期間でひっくり返して起訴するのは異例のこと。法的拘束力がある検察審査会の起訴相当の意見を重視した。法改正前は、国沢元社長のように量刑が変わらない時は、起訴しないことも多かった。人手や時間の問題からだ。しかし、検察側の勝手な都合は受け入れられない時代になった。それに、起訴相当を2度議決されると、強制起訴の手続きをとられる。今回の場合、起訴できる証拠があるものだから、批判をかわすために、自分たちの手で起訴したほうがよいという事情もあった」
だが一方で、この検察幹部はこうも話した。
「これからは、検察内部でも、検察審査会にしっかりした対応をとる必要がある。捜査資料を出して検事が説明するだけでは、検察の下した不起訴処分が正しいと説得できない」
Aさんはその後も、何度か審査会議に出席。当初からの予定通りの審査員の任期を終えた。
検察審査会議への出席メンバーは毎回ほぼ同じ顔ぶれだから、回を重ねるたびに雑談もするようになった。昼食の時に一緒になった審査員もいた。しかし、連絡先や名刺を交換するようなことはなかった。
「感想を言い合うようなことはありましたが、お互いあまり親しくならない方がいいという、暗黙の了解のようなものを感じましたから……」(Aさん)
Aさんは、重い議決を下した「大役」を終えてからはごく普通の生活に戻った。だが、半年間、検察審査会を通じてかかわった事件であるだけに、どうしても新聞記事やニュースを通して、西松建設事件、陸山会事件の裁判や検察の動きが気になった。
その後、またも検察審査会の存在がクローズアップされる事件が浮上した。小沢の陸山会事件である。
2010年1月、東京地検特捜部は政治資金規正法違反容疑で、小沢の元秘書で民主党の衆院議員の石川知裕容疑者ら元秘書3名を逮捕した。西松建設事件ですでに逮捕されていた大久保隆規容疑者も再逮捕されたのである(一審で有罪判決、現在控訴中)。
現職の衆院議員だった石川容疑者は、国会会期中だったので逮捕許諾請求までして捕まえた。大久保容疑者は西松建設事件の公判がすでに始まっている最中だった。
「特捜部の、絶対に小沢(逮捕)までやるという、意気込みの表れでした」と検察幹部の一人は言う。
逮捕の容疑は、小沢の政治資金管理団体「陸山会」が2004年に東京都世田谷区の土地を約3億5000万円で購入した時の原資4億円を政治資金収支報告書に正しく記載しなかったという、虚偽記載の罪である。検察側が、その4億円の中に小沢の地元の胆沢ダム建設工事を下受け受注した水谷建設からの賄賂が含まれていたと主張したことから、「政治とカネ」の問題にまで波及し、注目が集まった。
小沢自身も、市民団体などから同様の容疑で告発されたものの、東京地検は不起訴処分とした。市民団体は検察審査会に不服申し立てを行い、2010年4月、東京第五検察審査会が小沢に対して「起訴相当」を議決したのである。
それを受けて、東京地検特捜部は再捜査を開始し、2010年5月、再度、不起訴処分とした。同年10月、東京第五検察審査会は2度目の「起訴相当」、つまり「起訴議決」の判断をする。ここで小沢は国会議員として初めて「強制起訴」されることになったのである。
そして、2011年10月、東京地裁で小沢の公判が開始された。
◇
小沢一郎裁判の原点・西松事件の審査を担当した検察審査会メンバーの告白(第5回)
http://g2.kodansha.co.jp/14299/14412/17051/17052.html
■捜査報告書が捏造された理由
私の手元には、一通の捜査報告書がある。2010年5月17日に作成されたもので、〈(罪名)政治資金規正法違反 (被疑者)小沢一郎〉と記されている。
石川議員を取り調べた東京地検特捜部の田代政弘検事が、上司である佐久間達哉特捜部長に宛てたものだ。小沢に対する1度目の「起訴相当」議決後に、再捜査のため、すでに保釈中だった石川議員を取り調べた記録である。取り調べに応じる義務はなかったが、弁護士と相談して任意の取り調べに応じた。後にこの報告書は検察審査会に資料として提出された。
捜査報告書には〈取調日時・場所〉として東京地検908号室で、午後0時50分から午後6時まで5時間以上取り調べたと記されている。
小沢の事件で大きな争点になっているのは、石川議員が虚偽の内容を記した政治資金収支報告書について報告を行い、小沢が了承したかどうかだ。それについて捜査報告書では、1月の逮捕時のことに触れて、石川議員がこう語ったと記されている。
〈私(石川議員)が、「収支報告書の記載や定期預金担保貸付については、私自身の判断と責任で行ったことで、小沢先生は一切関係ありません。」などと言い張っていたら、検事から、「貴方は11万人以上の選挙民に支持されて国会議員になったんでしょ。そのほとんどは、貴方が小沢一郎の秘書だったという理由で投票したのではなく、石川知裕という候補者個人に期待して国政に送り出したはずですよ。それなのに、ヤクザの手下が親分を守るために嘘をつくのと同じようなことをしていたら、貴方を支持した選挙民を裏切ることになりますよ。」って言われちゃったんですよね。これは結構効いたんですよ。それで堪えきれなくなって、小沢先生に報告しました、了承も得ました、定期預金担保貸付もちゃんと説明して了承を得ましたって話したんですよね〉
だが、この部分について、石川議員が取り調べに応じるに当たってカバンに忍ばせていたICレコーダーには、まったく録音されていない。
捜査報告書では〈「うーん。」と唸り声を上げ〉とか〈突き放さないでくださいよ〉と石川議員の臨場感たっぷりの言動も記されているが、それも録音にはない。石川議員は周囲にこう漏らしているという。
「田代検事ではなく、逮捕時に特捜部の吉田(正喜)副部長に話した内容が捜査報告書にはあるのはおかしい。全体的には、明らかに意味合いが違う。検察が都合よく私の供述をつなぎあわせている。検察審査会で、小沢さんのイメージを悪くして、強制起訴させるためにわざわざ作ったのでは、と思いたくなる」
ある検察幹部はこう語る。
「検察審査会への資料は、事件を担当した特捜部や刑事部が出す。どのような資料が提出されるのか監督、決裁するシステムはない。検察審査会法が改正され、議決に拘束力があるようになってからは『丁寧に説明できるように』として捜査にはなかった報告書などを作ることはあるが、珍しいケースだ。今回の問題は、小沢を起訴したいという一部の検察幹部が、決裁がないことをうまく利用したものではないか」
検察審査会の疑惑、あり方を追及している民主党の森ゆうこ参院議員は言う。
「検察審査会は非公開と言いつつ、その審議内容を含めて、最高裁にはさまざまな報告があがっていることが、私の資料請求で明らかになった。一方で、審査員に対しては、審査内容を外部に漏らさないよう、罰則規定までもうけている。私が資料請求しても、判で押したように『非公開』と拒絶されました。検察審査会の中身を誰もチェックすることができない。審査会議では検察側は説明ができても、被疑者側は書面を出すことくらいしかできないのは公平ではない。これでは国民の信頼は得られないのではないか」
■検察は不偏不党か
検察審査会に半年間かかわったAさんは、西松建設事件とリンクする小沢の公判の報道も注意深くみてきた。今、大きな疑念が心をよぎりはじめている。
Aさんが審査員を務めた半年間、資料のなかに「捜査報告書」はほとんど見た記憶がない。あったとしても、事件現場を解説する「実況検分」のようなものだった。また、検察側から示される資料で、事件の被疑者の反論を示すものはあまりなかった。
前述したように、西松建設事件で国沢元社長を「起訴相当」と議決した理由の大きなポイントは木村検事の説明だった。
「起訴しても、量刑には関係ない」という木村検事の説明を、審査員は疑問視した。
「資料は分厚く、相当の捜査を行ったという印象は一目でわかった。だが、起訴できるのにしないという木村検事に、まったく、悔しそうな表情はない。私は木村検事が言外に『政権与党(当時)の自民党は守る。民主党はやっつけたい』と言っている印象がした。不偏不党の検察が、実は非常に恣意的ではないかと疑問に思った。また、事務局が『起訴相当』の報道が大きいことをことさらに強調して新聞記事を配ったのは、いま思えばやり過ぎではないか。素人の審査員が冷静さを失う可能性があった」
検察審査会のあり方は、まだまだ再考の余地がありそうだ。
(文中敬称略)
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