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2012年7月 5日 (木)
立ちあがり始めた市民が権力の暴走を許さない
メディアはノーベル賞の季節になると作家の村上春樹氏を大きく取り上げるが、村上氏の魂のこもったメッセージが発せられてもその内容を伝えることがない。
村上氏がエルサレム賞受賞記念スピーチで述べた「壁と卵」。
村上氏はこう述べた。
「高くて、固い壁があり、それにぶつかって壊れる卵があるとしたら、私は常に卵側に立つ」
「高くて、固い壁」とは権力、既得権益が築き上げたシステム
だとすれば、
「卵」は民衆だ。
彼は、巨大な権力の側に抵抗してぶつかる民衆の側に自分の足場を置く。
そして、3.11のあとに、村上氏がスペインのバルセロナで語ったスピーチ。私たちはいま、その言葉をもう一度かみしめる必要がある。
「僕が語っているのは、具体的に言えば、福島の原子力発電所のことです。
なぜこのような悲惨な事態がもたらされたのか、その原因はほぼ明らかです。原子力発電所を建設した人々が、これほど大きな津波の到来を想定していなかったためです。
何人かの専門家は、かつて同じ規模の大津波がこの地方を襲ったことを指摘し、安全基準の見直しを求めていたのですが、電力会社はそれを真剣には取り上げなかった。なぜなら、何百年かに一度あるかないかという大津波のために、大金を投資するのは、営利企業の歓迎するところではなかったからです。
また原子力発電所の安全対策を厳しく管理するべき政府も、原子力政策を推し進めるために、その安全基準のレベルを下げていた節が見受けられます。
ご存じのように、我々日本人は歴史上唯一、核爆弾を投下された経験を持つ国民です。
僕がここで言いたいのは、爆撃直後の20万の死者だけではなく、生き残った人の多くがその後、放射能被曝の症状に苦しみながら、時間をかけて亡くなっていったということです。核爆弾がどれほど破壊的なものであり、放射能がこの世界に、人間の身に、どれほど深い傷跡を残すものかを、我々はそれらの人々の犠牲の上に学んだのです。
そして原爆投下から66年が経過した今、福島第一発電所は、三カ月にわたって放射能をまき散らし、周辺の土壌や海や空気を汚染し続けています。これは我々日本人が歴史上体験する、二度目の大きな核の被害ですが、今回は誰かに爆弾を落とされたわけではありません。我々日本人自身がそのお膳立てをし、自らの手で過ちを犯し、我々自身の国土を損ない、我々自身の生活を破壊しているのです。
何故そんなことになったのか?
理由は簡単です。「効率」です。
原子炉は効率が良い発電システムであると、電力会社は主張します。つまり利益が上がるシステムであるわけです。また日本政府は、とくにオイルショック以降、原油供給の安定性に疑問を持ち、原子力発電を国策として推し進めるようになりました。電力会社は膨大な金を宣伝費としてばらまき、メディアを買収し、原子力発電はどこまでも安全だという幻想を国民に植え付けてきました。
そして気がついたときには、日本の発電量の約30パーセントが原子力発電によってまかなわれるようになっていました。国民がよく知らないうちに、地震の多い狭い島国の日本が、世界で三番目に原発の多い国になっていたのです。
そうなるともうあと戻りはできません。既成事実がつくられてしまったわけです。原子力発電に危惧を抱く人々に対しては「じゃああなたは電気が足りなくてもいいんですね」という脅しのような質問が向けられます。国民の間にも「原発に頼るのも、まあ仕方ないか」という気分が広がります。
高温多湿の日本で、夏場にエアコンが使えなくなるのは、ほとんど拷問に等しいからです。原発に疑問を呈する人々には、「非現実的な夢想家」というレッテルが貼られていきます。
そのようにして我々はここにいます。効率的であったはずの原子炉は、今や地獄の蓋を開けてしまったかのような、無惨な状態に陥っています。それが現実です。
我々日本人は核に対する「ノー」を叫び続けるべきだった。それが僕の意見です。
我々は技術力を結集し、持てる叡智を結集し、社会資本を注ぎ込み、原子力発電に代わる有効なエネルギー開発を、国家レベルで追求すべきだったのです。たとえ世界中が「原子力ほど効率の良いエネルギーはない。それを使わない日本人は馬鹿だ」とあざ笑ったとしても、我々は原爆体験によって植え付けられた、核に対するアレルギーを、妥協することなく持ち続けるべきだった。核を使わないエネルギーの開発を、日本の戦後の歩みの、中心命題に据えるべきだったのです。
それは広島と長崎で亡くなった多くの犠牲者に対する、我々の集合的責任の取り方となったはずです。日本にはそのような骨太の倫理と規範が、そして社会的メッセージが必要だった。それは我々日本人が世界に真に貢献できる、大きな機会となったはずです。しかし急速な経済発展の途上で、「効率」という安易な基準に流され、その大事な道筋を我々は見失ってしまったのです。
我々は夢を見ることを恐れてはなりません。そして我々の足取りを、「効率」や「便宜」という名前を持つ災厄の犬たちに追いつかせてはなりません。我々は力強い足取りで前に進んでいく「非現実的な夢想家」でなくてはならないのです。」
(上記の村上氏の発言はスピーチの部分抜粋を接続したものです)
原発フル稼働に向けて暴走を続ける野田佳彦政権。
「シロアリ退治なき消費増税阻止」を声高らかに宣言した人物が主導する突き進める政権が突き進む「シロアリ退治なき消費増税」
権力の暴走を止めるには、民衆がたとえ卵ではあっても、壁にぶつかってゆくしかない。
官邸前から発する市民の抗議の声を天高くこだまさせなければならない。
ひとりでも多くの市民が静かに声を発することで、現世を変えてゆかねばならない。
そして、本日、小沢新党の参院幹事長に就任する予定の森ゆう子参院議員が、新著『検察の罠』出版記念パーティーを開催する。
会は首相官邸前から歩いてゆける千代田区永田町1−1−1に所在する「憲政記念館」で開催される。
もうひとつ告知がある。
多くの死刑事件を請け負う人権弁護士安田好弘氏を追求したドキュメンタリー映画、『死刑弁護人』が、東中野にあるポレポレ東中野でロードショー公開されている。
映画パンフには以下の記述がある。
あなたの正義の根拠は何ですか?
マスコミや検察の情報を鵜呑みにし、
自分たちは絶対的な正義なのだと思い込み、
被疑者へのバッシングを繰り返す私たちに、本作は投げかける。
なぜ、いつも自分たちが正しいと思えるのか?
安田好弘とは尽きるところ何者なのか。
かれはなぜ、わが身を顧みずに困難な弁護活動に命を削るのか。
なにゆえこうまで権力の不正を憎むのか。
どうして割に合わない仕事を引き受け、
全霊で全うしようとするのか・・・・・。
これらの答えは、骨の髄まで腐った国家と社会の暗部にむけた、
かれの怯まぬ眼差しと憤怒から
演繹されなければならない。
われわれは弁護人・安田好弘を必要としている。
このドキュメンタリーはそのことを諄々と証そうと試みている。
私が巻き込まれた冤罪事件の再審請求についても、安田好弘弁護士はじめスタッフの方々が全面的に支援してくださっている。
この場を借りて、改めて心より感謝の意を表したい。
ドキュメンタリー映画の詳細については、ポレポレ東中野サイトhttp://www.mmjp.or.jp/pole2/
をご高覧賜りたい。
7月9日月曜日1900の回上映後には、安田好弘氏、森達也氏などが出演される公開鼎談も予定されている。
ひとりでも多くの市民に映画をご覧賜りたく思う。
・・・・・
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