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似非・社会保障と税の一体改革
2012年06月12日 :(日本一新の会。)
◎「社会保障と税の一体改革」は改革の名に値するか!
日本一新の会・顧問 戸田 邦司
○大事を成した人の笑顔
平成10年1月のことだったと思う。日本ヨット協会の新年パーティーに顔をだしていると背中を軽くたたかれた。振り向くと、あの竹下登さんが、決して人をそらすことのない笑顔で「戸田ちゃん元気か、わしは昔このヨット協会の会長をしていたのでな!」と、当時の私は自由党所属の参議院議員だったので、話題は盟友の平野貞夫議員のこととなり、「消費税の本を出した時、中味は平野貞夫君が書いて、わしは総理をやめてヒマだったから、ゲラ刷りの校正をしたんだ」といって、屈託のないご様子。「消費税制度成立の沿革」(竹下・平野監修)である。
○あまりにも短兵急で国民不在の増税案
民主党が消費税増税を言い出したのは、前回参院選に臨む菅首相の政見発表の時と記憶する。それまで党内で議論された形跡もなく、極めて唐突であったのを憶えている。自民党は10%までの引き上げを選挙公約として発表していたから、菅元首相のいつもの「浅はかな抱きつきキャンペーン」であったかも知れないが、党内外の猛烈な反対にあって、簡単に引っ込めた。しかし、これが参院選の結果に与えた影響は計り知れないものがあったし、参議院の捻れはこれが要因であることは、多くの国民が知っている。この時から国民の民主党に対する信頼も、政治に対する期待も潰えたといってよい。
これまでの消費税の歴史を見れば、消費税増税がいかに困難なもので、国民の理解を得るには、多くの時間を要するものであるかは理解に難くなかろうが、民主党が増税方針をはっきりと打ち出したのは、野田政権になってからであるし、増税法案提出までの間の党内論議や、法案の内容を国民にしっかりと説明した形跡はない。
政府は「社会保障と税の一体改革」と言っているが、社会保障制度改革と言ったところで、これまでの保険制度に薄化粧を施してホッチキスで綴じたようなもので手つかずといって差し支えない。財源の消費増税と一緒に議論しているから「一体改革」だと言い張ったところで、それほどの一体感はないし、一体的に議論されるべき項目は結論が得られていない課題が多い。
国民一人一人の生活がかかっている税制の大幅改正であるなら、野党に呼び掛けて国会だけ通せばよいというものではなく、先ず、国民一人一人の理解が得られるような努力が必要なのだが、国民はカヤの外に置かれたままである。
○あまりに未完成な法案
税制は、国民納得の上で正直者がバカを見ることが無いように、公正で簡素で、かつ事務的負担の軽減にも資するようなものでなければならないだろう。
それにしても国会の議論を聞いていると、今から検討しなければならないことがあまりにも多い。国民背番号制もその一つである。私など、北欧に3年半も暮らしたから当然背番号があったし、永久労働許可があったから、番号は今でも残っているかもしれない。しかし、日本における国民番号制は、おおかたの先進国では遠の昔に実行されているというのに、未だ、いつどのような形で実現するかさえ定かでない。これが無ければ実行できない部分があるというのにである。たとえば、低所得者に対する消費税の逆進性緩和の為の所得の把握は、この背番号に依るというのだから、今回提出の法案では完結してない。逆進性の緩和には複数税率の検討も課題だと答弁しているから、余計わけがわからなくなる。
所得の把握をより完全なものにするには、企業、団体、国の機関、地方自治体等あらゆる支払いが把握できるよう、それらに対する背番号も必要になるに違いないが、そんな議論は聞いたことも無い。
いずれにしても、質疑のなかで指摘されていたように、関連法案を来年提出しますとか、後から来ますとか言う部分が多く、内閣法制局もよくこれらの法案の提出に応じたものだと思う。内閣法制局自身がどうせこの法案は通らないと思ったかもしれないが?。
○税制は政治理念の具現化
今回の消費税増税でひとつの論点となっているのは、低所得者に対する逆進性対策で、民主党としては給付付き税額控除方式、つまり、一定額以内の所得者に対しては、支払った消費税の一定割合を返還する方式とすることを決定したと言っている。この具体的内容は何一つ決まっていないし、一方で、複数軽減税率も検討の対象などと言う。企業経営的なセンスで考えるなら、事務が煩雑でコストがかさみ、該当者が届け出なければならない給付付き税額控除方式など論外であるのに。
ヨーロッパや北欧などの多数の国で採用されている「ゼロ税率」や「軽減税率」は低所得者に対する逆進性対策として考えられたものではない。そもそも人間生きていくために最低必要なものには課税しないという思想(国のあり方、人の生き方)が出発点となっている。
だからノルウェーの場合などは、最初からゼロ税率ありきで、教育、文化、医療、家屋の取得、家賃などがその対象であるし、食料品は英国ではゼロ税率であるが、ノルウェーでは、軽減税率が適用されている。ちなみに、極寒の地で人間が生きていくために欠かせない家屋には、消費税のみならず固定資産税も無い。消費税を国家の基幹税とするなら、まずはこんな議論が先にあるべきだ。
今回提出されている法律案が成立するか否かは別にして、今や消費税10%時代を迎えようとしているのだから、逆進性緩和の為にも、多数の国において実施されているゼロ税率を含む軽減税率の導入のほうが遥かに理に叶っており、事務的に煩雑で行政コストが嵩む、給付付き税額控除などと言う拙劣・姑息な方策は採るべきではない。
レジが対応できないからなどというのは、ガセもいいところである。今や、POSレジーは中小の商店にも完備されているし、不備があれば助成制度を設けるのも経済活性化ではないか。多数の外国でできていることが、なぜ我が国のような技術立国においてできないのか。多少の金はかかろうが、スマートフォンなどより、はるかに簡単な技術で品目別税率の変化に対応できるのである。
なお多くの国においては、年金を含む社会保障費は所得税とあわせて徴収している。我が国においてはこれも難しいという。このようなことをしていたら、企業ならとっくの昔に敗退している。
税制は国民に対して教育的でもあるべきだ。「皆さん、生活に必要なものの税金は安くしてありますから、頑張ってください」というか、あとで一部を返しますから一旦は収めて置いてください」というか、政治的立場としてどちらがよいかの問題である。
高校授業料無償化にしても、保護者が高額所得者であれば除外してよいなどと言う人たちがいて、至極当たり前と受け止められている面もあるが、実はこの人達は所得税をしっかり収めている人達なのだから、何をか言わんやである。高額所得者を探し出して、その子弟からは授業料を取るようなヒマがあったら、高額所得者にお願いして、もう少し累進性を高めてもらったらよいではないか。要は、教育に対する基本姿勢の問題である。それを「バラマキ」などと批判されて怯み、政策の根源性・一貫性を捨て去ったのが、野田民主党政権である。
元記事リンク:http://blog.goo.ne.jp/yampr7/e/23f87c1cc764e475ff5a5d34dac83bd5
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