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赤の他人に「お父さん!」と呼ばれる不快感
テレビにあふれている「非常識」と「ステレオタイプ」
2018.12.18(火) 筆坂 秀世
テレビタレントはコシのあるうどんをいつも絶賛するが・・・(写真はイメージ)
(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家)
テレビの旅番組や食べ歩き番組などを見ていると、タレントが見ず知らずの人に対して「お父さん」とか「お母さん」、時には「おじいちゃん」「おばあちゃん」などと声をかけるシーンがしょっちゅう出てくる。
何というデリカシーのない言葉遣いなのだ、と呆れてしまう。いきなり知らない人から「お父さん」「お母さん」などと声をかけられて愉快な気分になる人などいないだろう。以前、私の知り合いが見ず知らずの老婦人に「おばあちゃん」と声をかけた際、「私はあんたのおばあちゃんじゃないよ」と怒られた話を聞いたことがある。その通りである。
私も先日、実に不愉快な思いをした。それはS新聞の販売店の店長が、購読延長の依頼に訪れた際、私のことを「お父さん」と呼んだからだ。こんな呼ばれ方をしたのは初めてだった。購読延長の依頼を断ろうかと思ったほどだ。
テレビに出るタレントの意図は分かっている。親しみを込めているつもりなのだ。だがそれは大きな錯覚であり、思い上がりである。「私はタレントで有名人だから、『お父さん、お母さん』と呼ばれれば、みんな喜ぶはずだ」とでも思っているのだろう。上から目線なのである。
見ず知らずの大会社の社長や大学教授に、いきなり「お父さん」と呼ぶ人間はいないだろう。この呼び方がいかに非常識なものか、分かるだろう。こんなことも分からないとすれば、テレビというのは、実にデリカシーのない媒体だということになる。
私は兵庫県生まれだが、関西の方では、あまりこういう呼び方はしなかったように思う。最近のことは知らないが。「こんにちは」とか、「すみません」とか、普通に声をかければ良いだけのことだ。新聞販売店の店長であれば、「筆坂さん」と呼べば良いのだ。そうすれば、私の背中に虫唾(むしず)が走ることはない。
麺類はコシがあれば良いのか
若いタレントの食レポもまったくいただけない。そば、うどん、ラーメンなどの麺類を食べた際、漏らす感想がほとんど同じなのだ。「コシがありますね」「コシがすごいですね」、これだけだ。麺類はコシがあれば良いと思っているのだ。
私はコシのあるうどんが美味しいと思ったことはない。大坂のきつねうどんで育った私にとって、うどんの命は喉ごしだと思っている。もちろん美味いつゆが必要だが。噛まなければ食べられないようなうどんは、私にとっては最悪である。
新大阪駅に新幹線の改札を出て、在来線の方に移動すると左手に立ち食いうどん屋さんがあった。入り口で「きつねうどん」と頼むと即座に「きつねうどん一丁!」と調理場に声がかけられ、おつりを受け取ってカウンターに行くと同時に、きつねうどんが出てくるという素早さだった。柔らかいうどんだから、二、三度熱湯にくぐらせれば出来上がりなのである。
博多のうどんも柔らかく、喉ごしが良い。今、讃岐うどんが流行っているが、私が香川県で食べた本場の讃岐うどんは、東京などで食べるうどんよりも柔らかかった。関東の人は固いうどんが好きなのかも知れないが、コシがあれば良いというものでもないのだ。
そばやラーメンだって基本は同じだ。ぼそぼそは駄目だが、コシが強いというわけでもない。すすーっと入ってくる喉ごしは、やはり麺類には不可欠なのだ。“麺類はコシ”などというのは、テレビが作った誤解でしかない。
そもそも二十歳、三十歳くらいの若いタレントが、それほど美味いものを食ってきたわけがない。食レポができるほどの舌には、まだ育っていないはずなのだ。
人の好みは千差万別
サバの有名ブランドに「関サバ」(せきさば)というのがある。豊予海峡で漁獲され、大分市の佐賀関で水揚げされることから「関サバ」と呼ばれている。「関アジ」も有名である。私も以前、大分や博多で食したことがある。昔から「サバの生き腐れ」と言われてきたように、食あたりが発生しやすいので、酢じめにするか、煮るか、焼くかで食べられてきた。だがこの関サバは、生のまま刺身食べることができる。まさに絶品である。
私の田舎は京都に近いので、京都の食文化の影響を強く受けていた。母は、毎年、蕪(かぶら)の千枚漬けを作っていた。秋祭りの時期になるとサバの棒寿司を数十本作っていた。まだ冷蔵庫もない時代からそうだった。だからサバが大好きだった。ところが30年位前、高田馬場の寿司屋でサバの握りがあまりにも美味しかったので6貫ばかり食べて帰宅した後、激しい腹痛に見舞われた。蕁麻疹(じんましん)が出るどころではなかった。夜中、タクシーを呼んで病院に行ったところ、腸閉塞だった。
2年程して、「もう大丈夫だろう」と思って、またサバの握りを食べた。またも腸閉塞になって入院した。以来、煮サバ、焼きサバは食べるが、サバ寿司の類いは我慢している。
そんな時に、博多に行った時、友人が食事に誘ってくれ、新鮮な魚で美味い酒を飲んだ。その刺身の一つが関サバだった。この高級なサバに、箸を付けないわけにはいかなった。思い切って一切れだけ食した。幸い腸閉塞にならず、蕁麻疹も出なかった。
話が横道に逸れてしまったが、それほど関サバは美味なサバなのである。確かNHKだったと記憶しているが、夏場に大分で関サバの刺身を食べる場面が映し出され、若い女性タレントが「脂が凄くのっていますね」と感想を述べた。すると、大分の漁業関係者だったと思うが、「いえ、今の時期は、脂はあまりのっていません」と返答したのだ。これには笑ってしまった。
肉でも、魚でも、若いタレントが言うのは、「脂が凄くのっていますね」ばっかりなのだ。脂が少ないが美味い食材はいくらでもある。一方、脂がのっていて気持ちの悪い食材もいっぱいある。
要するに、本当に美味いのか、美味くないのか、正直に語らないから、こういう恥をかくことになる。麺類でも、魚でもそうだが、人の好みは千差万別である。それを無理矢理一方向に持って行ってしまうのが、テレビの悪いところなのだ。
テレビが取り上げる行列店は本当に美味いのか?
今年(2018年)の6月に、妻と広島に旅行した。原爆ドームに行き、妻が宮島に行ったことがないというので宮島にも行った。せっかくの広島だったので、お好み焼き屋さんに行くことにした。テレビで紹介された店や行列ができる店もたくさんある。
混んでいる店も嫌なのでうろうろしながら、結局、広島駅の中にある店の一軒に入った。だが、がっかりだった。焼き上がりも乱雑だし、味も良くなかった。東京で食べた広島お好み焼きの方がはるかに美味かった。
翌日タクシーに乗ってその話しを運転手さんにすると、「テレビで紹介され、行列ができている店で美味しいところなんかありませんよ。路地を入っていったようなところでひっそりおばあさんがやっているような店の方が美味しいですよ」と言ったのに続いて運転手さんが言った言葉が実に名言だった。
「お客さん、そもそもお好み焼きなんて大したご馳走じゃないんですから。そんなもんですよ」。妙に納得してしまった。この一言で“まずいモノを食わされた”という恨み辛みは吹き飛んでしまった。
1945年8月6日の原爆投下から73年、破壊し尽くされた広島だったが、見事に大都市に変貌した。今や中国地方随一の街である。私が入った店は失敗だったが、本当はもっと美味しいお好み焼きがあるはずだ。広島は、ふらりと訪れただけでは分からない奥深い魅力に満ちているのだ。この日はマツダスタジアムで広島東洋カープの試合があり、駅周辺は赤い色で埋められていた。広島の人たちが、熱狂的な広島カープファンであることが分かるような気がした。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54989
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