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SOSが届かず両足切断、引きこもり高齢化の調査報告が暗示する社会 貧困転落への第一歩「医療費の申請忘れ」はあなどれない 
http://www.asyura2.com/12/social9/msg/783.html
投稿者 軽毛 日時 2017 年 4 月 20 日 19:04:02: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 



2017年4月20日 池上正樹 :ジャーナリスト
SOSが届かず両足切断、引きこもり高齢化の調査報告が暗示する社会


引きもこり支援の途絶事例が増え続けている。周囲から隠蔽され、傷つく引きこもり当事者たちの現状とは(写真はイメージです)
 長期高齢化の進む引きこもり当事者の家族が窓口に相談しても、何らかの福祉サービス受給に結びついた事例は22%あまりにとどまる一方、支援の途絶事例が約45%に上るなど、家族の間に相談窓口への失望感が広がっている実態が、「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」の調査で明らかになった。

 この調査は、全国の生活困窮者自立支援法に基づく自治体の151窓口と、同家族会支部からの回答をまとめ、この4月に公表されたもの。タイトルは『長期高齢化したひきこもり者とその家族への効果的な支援及び長期高年齢化に至るプロセス調査・研究事業報告書』。今年1月に当連載で紹介した、中間報告の最終版だ。

周囲から隠蔽され、助けを
呼べずに傷ついて行く人々

 特に今回は、40代以上の高年齢に至った人の事例の背景を初めて掲載。家族から周囲に隠蔽されている中で、助けを呼ぶことができないまま周囲の対応が遅れたために、その中には両足切断に至った40代男性の痛ましい事例もあった。

 この男性は、30代のときに会社をリストラされたが、それまでは普通に仕事をしており、しばらくは友人との交流もあった。その後、10年以上にわたり、実家の離れで1人引きこもった。

 男性の部屋は、生活のゴミで溢れ、身動きが取れない状況だったにもかかわらず、両親が子どもの存在を隠し続けた。

 ところが、ある日突然、本人が「痛くて我慢できない。救急車を呼んでほしい」と大声で叫んだ。何事かと思い、救急車を呼んで診療を受けたところ、すでに病原菌が足の膝に感染し、壊死状態になっていた。両足を切断せざるを得ない状況だったという。

「困った」「助けて」と言えない人たち。そんな引きこもらざるを得なかった人たちの一面が、今回の報告書から浮かび上がる。

「一緒に暮らしているようで、暮らしていない。こうなるまで家族の誰も気づかない、希薄な関係性が見えてくる。今日は元気かなとか、純粋な関心だけは向けていてほしかった」

 同家族会のスタッフは、そう明かす。

 第三者による介入の在り方については、本人がサポートを望んでいるのかどうか、緊急性があると客観的に判断できるのかどうかを見極める必要がある。いきなり知らない人から訪問されることに、どれだけ本人たちが恐怖感を抱いているか想像もできないような“支援者”に訪問されたことによって、よけいにこじれてしまった事例も数多く報告されているからだ。

 なぜ、支援が途絶してしまったのか。同報告書には、58事例に関する検討が加えられ、実際、家族側から見た「支援の途絶」26事例の背景が、「生の声」として紹介されている。

いきなりドアを開けるのは
絶対にやってはならないこと

 中でも興味深いのは、次の3つの「失敗」事例だ。

<保健所から保健師の訪問を受けていた。その時の担当保健師は、月1回、ドア越しの簡単な声掛けに留めていた。しかし、担当保健師が異動になったので、後任の保健師が担当した。後任保健師が2回目の訪問時に本人の部屋のドアを開けたところ、本人が奇声を発する。後任保健師は驚き、以後、保健所からの訪問は途絶える>

 まさに、いきなりドアを開けるという、絶対にやってはならないことをやってしまったのである。

<持病を診てもらい病院へ行ったが、看護師に無職だとばれ、『いい年なのに』的なことを言われ、帰宅後暴言を吐くなどして荒れた。母親としてはそれを契機に精神科も受診させ、手帳や年金を取得させようと算段を立てていたがとん挫した。本人の医者嫌いを何とかしようと考えていたが、余計に不信感を募らせる結果となった>

「いい年なのに」という言動自体、問題外のケース。そもそも、医療機関や支援機関の中には、「本人をここに連れてきてください」などと言って、家族だけでは対応してもらえないところも多い。こうして支援が途絶し、長期化高齢化が進む一因にもつながるため、まずは相談に訪れる家族をサポートする機関や体制づくりが必要だ。

<ピアサポーターの訪問で本人ハンガーストライキ。訪問に対し本人への同意なしでの対応が気に入らなかったのか。以降、訪問も拒絶。支援側の本人へのアセスメント不足>

 ピアサポーターがどういう立場の人だったのかはわからないが、本人の同意がないのなら同意がないなりの声のかけ方、配慮の仕方が大事なはずなのに、本人をどうにかして出そうという焦りが先走ってしまったのかもしれない。

「たとえば、身体のチェックで『体調とか気になるところはありますか?』など、声かけ1つでもいいと思う。ゴミが捨てられていないのであれば、『ゴミ捨て手伝いますよ』とか『体がしんどいんじゃないですか?』とか、サインが出ている。生活面と身体面での困り事は、チャンスでもあるんです」(同家族会)

 とはいえ身体面の困り事は、本人が声を出せなければ周囲にはわからない。しかし、本人にとって安心できる関係性や環境が構築されていなければ、声を上げることなどできないだろう。

 引きこもる人たちの特性の1つは、あらゆる感情のエネルギーが自身の中に吸収され、内省化されていくことだ。冒頭の40代男性も、痛みは相当なものだったであろう。それでも、我慢に我慢を重ねることでエネルギーを使い果たしていたのか、ついには「もう我慢できない!」と叫び声を上げたのではないかと想像する。

 家庭訪問などの支援に「成果」を求めてしまうと、声を上げられないような本人や家族が置き去りにされていく。

本人の意思に合わせて
寄り添うことの大切さ

 こうした調査から伝わってくるのは、本人の意思や気持ち、タイミングに合わせて、周囲で支援する側が一緒に寄り添っていくことの大切さだ。

 自治体の151相談窓口の調査では、「ひきこもり支援において、現在は実施していないが、必要性を感じている支援内容」の最終集計を見てみると、「本人の居場所」が56%と最も多かった。次に「家族会・家族教室」(33%)が続き、「ピアサポート」(30%)、「インターネット相談」(17%)、「同行支援」(17%)という傾向は、1月の中間報告時と変わらない。

 一方、「家庭訪問」は16%、「宿泊型施設」はわずか6%にとどまった。

「支援者が訪問に行って、会えなくてもいい。がんばって何とか会おうとするのではなく、会えないことを感じながら、支援者のペースではなく、本人のペースを感じてほしい」

 そう家族会スタッフは言う。

 本人が行きたいと思ったときに、行ってもいい場所がある。そんな地域づくりが、これから求められている。

※この記事や引きこもり問題に関する情報や感想をお持ちの方、また、「こういうきっかけが欲しい」「こういう情報を知りたい」「こんなことを取材してほしい」といったリクエストがあれば、下記までお寄せください。

otonahiki@gmail.com(送信の際は「@」を半角の「@」に変換してお送りください)
http://diamond.jp/articles/-/125454


 


2017年4月20日 早川幸子 :フリーライター
貧困転落への第一歩「医療費の申請忘れ」はあなどれない


 貧困に陥った原因を探っていくと、最初は些細なことがきっかけだったりする。そのひとつが、「病気やケガで医療費がかさんだ」というものだ。

 Aさん(55歳・会社員)は、急性心筋梗塞で倒れて入院。手術で一命を取り止めたものの、その後も入退院を繰り返すことになった。

「狭くなった心臓の血管を広げる手術を3回受け、その都度、病院の窓口で50万〜60万円の医療費を請求されました。仕事も辞めざるをえなくなって、気がついたら300万円あった貯蓄が底をついていたのです」

 なぜ、このようなことになってしまったのだろうか。

 実は、Aさんは、健康保険に「高額療養費」という制度があることを知らなかったのだ。

高額療養費を申請すると
自己負担は9万円に

 医療を市場原理に任せる部分が大きいアメリカとは異なり、日本の医療制度は公的な保険で運営されている。有効性と安全性が科学的に証明された治療には健康保険が適用されており、誰でも少ない自己負担で治療を受けられるようになっている。

 健康保険が適用された治療費(保険診療)は、診療報酬と呼ばれており、全国どこで治療を受けても一律の価格に設定されている。診察や検査、手術、入院費にいたるまで、すべての診療行為の価格は一つひとつ決められており、その患者に行った治療内容を積み上げて医療費を計算する。ただし、患者の体調や病気の状態によって、実際に行われる治療内容には若干の違いが出るので、同じ治療を受けてもまったく同じ価格にはならない。

 Aさんが受けた心筋梗塞の手術も保険診療で、1回の入院にかかる医療費の目安は約187万円(全日本病院協会「疾患別の主な指標」(2013年1〜3月)」。

 これは医療費の総額で、窓口で患者が負担するのは年齢や所得に応じて、このうちの1〜3割。55歳のAさんの自己負担割合は3割なので、50万〜60万円程度だ。

 さらに、健康保険には医療費が家計に過度な負担を与えないように配慮した「高額療養費」という制度ある。これは、1ヵ月に患者が自己負担する医療費に上限を設けたもので、現在、70歳未満の人の限度額は所得に応じて5段階に分類されている。

 一般的な所得(年収約370万〜770万円)のAさんの限度額は、【8万100円+(医療費−26万7000円)×1%】。心筋梗塞の手術を受けて1ヵ月の医療費が187万円だったAさんの場合は、【8万100円+(187万円−26万7000円)×1%=9万6130円】が自己負担限度額だ。

 つまり、本来187万円かかっている医療を、健康保険があるおかげで、9万6130円で受けられるということだ。

 治療がもっと長引いて、直近1年間に高額療養費が適用された月が3回以上あると、4回目からさらに限度額が引き下げられる「多数回該当」という制度もある。一般的な所得の人は、4回目以降の限度額は4万4400円になる。

 ところが、Aさんは高額療養費を利用できることを知らなかったため、窓口で50〜60万円の医療費を支払ったままになり、貯蓄を食いつぶしてしまったのだ。

せっかくのおトクな制度も
申請しないと利用できない!

 健康保険をはじめとした社会保険は、国民を貧困に陥らせない「防貧機能」を備えているので、制度を正しく利用すれば、社会で起こるさまざまなリスクから自分の身を守ることが可能になる。

 ただし、こうした制度は原則的に申請主義だ。

 高額療養費の対象者には、加入している健康保険組合が「お知らせ」を送ってくれるところが増えているが、せっかくの制度も書類に記入して申請しなければ、利用することはできない。

 その結果、Aさんのように申請できるのに、申請し忘れて損している人がいまだに存在するのだ。

「申請しなくても医療機関の窓口で高額療養費の手続きをしてくれればいいのに」と思うかもしれないが、医療機関は健康保険証を見ただけでは、5つに分類された患者の自己負担限度額は分からない。

 そのため、いったん窓口で1〜3割を負担したあとで、患者自らが高額療養費を申請して、限度額を超えた分のお金を払い戻してもらう手続きが必要になるのだ。

 ただし、現在は、高額療養費の所得区分を証明する「限度額適用認定証」を医療機関の窓口で提示すると、払い戻し手続をしなくても、最初から限度額のみを支払えばよくなっている。

 限度額適用認定証は、加入している健康保険組合で発行してもらえるので、入院することがわかっている場合は事前に入手しておくといい。

 高額療養費の申請期限は、診療を受けた月の翌月1日から2年間だ。たとえば、2017年4月20日に診療を受けた場合は、2019年5月1日までが申請期限になる。

 過去2年の間に医療費が高額になったのに、高額療養費の手続きをしていないという人は、申請できるかどうか健康保険組合に確認してみよう。

保険料を払った分だけ
メリットある社会保険

 高額療養費のほかに、もしもAさんが知っていれば貧困に陥ることを防げたかもしれない制度が、健康保険の「傷病手当金」だ。

 通常、会社員が体調を崩したりして会社を休む場合は、年次有給休暇を利用することが多いはずだ。付与されている有給休暇の日数は勤続年数によって異なるが、最大で年間20日間だ。

 病気やケガをして、有給休暇を使い果たしてしまうと欠勤になるため、「もう会社にいられない」と早まって会社を辞めてしまう人もいる。

 だが、会社員が病気やケガをして仕事を休んで、会社から給与をもらえなかったり、減額されたりした場合は、健康保険から傷病手当金をもらうことができる。1日あたりの給付額は、標準報酬日額(1ヵ月の給与を30日で割った額)の3分の2で、会社から給与が支払われていても、この金額に満たない場合は差額を支給してもらえる。

 給付期間は、病気やケガで3日連続して休んだあとの4日目から、最長1年6ヵ月の間に実際に仕事を休んだ日数だ。この制度があることを知っていれば、Aさんは慌てて会社を辞めることもなかったはずだ。

 貯蓄を使い果たすこともなく、傷病手当金の給付を受けながら病気療養をして、体調が戻ったら仕事に復帰することもできたかもしれない。

 ほかにも、Aさんが貧困に陥った原因としては、「助けてくれる家族や友人の存在がなかった」「病気が長引いてしまった」など複合的な要素も考えられるが、健康保険の制度を知らなかったことも大きな原因であることは間違いない。

 本来なら使える制度の存在を、ただ「知らなかった」というだけで人生が大きく変わるということもある。

 毎月、給与から天引きされている健康保険料の数字を見ると、「高いなぁ」と思うかもしれない。だが、その金額には、病気やケガをしたときに3割負担で受診できるというメリットだけではなく、大きな病気やケガをしたときの治療費や所得保障も含まれている。

 保険料はただ取られるだけのものではなく、払った分だけメリットも受けられる。いざというとき、自分が加入している健康保険からはどのような保障を受けられるのかをきちんと把握しておきたい。

 高額療養費や傷病手当金に限らず、「知らなかった」というだけで損してしまうことは、世の中にたくさんある。国の制度は、誰もが平等に利用できるのが理想ではあるが、個人の知識の有無によって実際の保障が左右されている部分もある。

 制度を提供する側の意識改革も必要だが、今を乗り切るためには「知らなかった」で損しないように、国民も制度の内容を知っておくことが大切だ。それが、いざというとき、自分や家族が貧困から守るに陥ることを防ぐ知恵になる。

(フリーライター 早川幸子)
http://diamond.jp/articles/-/125451

 

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