2. 2015年9月16日 17:54:34
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あなたに迫る 老後ミゼラブル 2040年、未曾有の高齢化社会がやってくる。首都圏も高齢者が大幅に増え、高齢者の入居する施設は今後、整備が追い付かなくなっていく。これから高齢者になっていく現役世代を待ち受けるリスクとは。足元に見え始めた「未来の兆候」を探りながら、検証していく、「日経ビジネス」2015年9月14日号の連動企画。 ⇒ 記事一覧著者プロフィール 鵜飼 秀徳 鵜飼 秀徳 日経ビジネス記者 新聞記者を経て、「日経おとなのOFF」編集部。主に芸術を担当。2012年〜「日経ビジネス」記者。北方領土やチェルノブイリなどのルポを執筆。専門は、宗教、美術、ライフスタイル。 >>プロフィール詳細 河野 紀子 河野 紀子 日経ビジネス記者 日経メディカル、日経ドラッグインフォメーション編集を経て、2014年5月から日経ビジネス記者。流通業界(ドラッグストア、食品、外食など)を中心に取材を行う。 >>プロフィール詳細 林 英樹 林 英樹 日経ビジネス記者 大阪生まれ。神戸大学法学部卒業後、全国紙の社会部記者として京都・大阪で事件を取材。2009年末に日本経済新聞社に入り、経済部で中央省庁担当、企業報道部でメディア・ネット、素材・化学業界などを担当。14年3月から日経BP社(日経ビジネス編集部)に出向し、製造業全般を取材している。 >>プロフィール詳細 武田 安恵 武田 安恵 日経ビジネス記者 大学院卒業後、2006年日経ホーム出版(2008年に日経BPと合併)に入社。日経マネー編集部を経て、2011年より日経ビジネス編集部。主な担当分野はマクロ経済、金融、マーケット。 >>プロフィール詳細 http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/090700033/
孤独死現場を「リセット」する人たち
現場に残された「5000万円」の真実 2015年9月11日(金)鵜飼 秀徳 日経ビジネス2015年9月14日号の特集は「あなたに迫る 老後ミゼラブル」。現代ニッポンに生きる誰もが直面しかねない「老後ミゼラブル」の現実を浮き彫りにした。誌上でも取り上げた「3大ミゼラブル」の1つが孤独死だ。 近年、孤独死する高齢者が増え、遺品整理業が活況を呈している。死後、時間が経過した現場は悲惨そのもの。一方で、遺品に紛れて金品が見つかることも多々あるという。「特殊清掃」を手掛ける福岡県の遺品整理業者が、孤独死現場の真実を明かした。 (聞き手は鵜飼秀徳) 岩橋ひろし氏(友心・まごころサービス代表取締役) 1976年、福岡市生まれ。39歳。専門学校を卒業後、嬉野温泉旅館「和多屋別荘」にて全国初の男性中居「男組」の中居頭を務める。2004年7月、自動車販売店アクション・ロードを創業。2012年3月、遺品整理士を取得し、4月から福岡県大野城市で「友心・まごころサービス」を立ち上げる。生前整理、遺品整理・特殊清掃、空家整理、家屋解体、相続関係手続き、不動産売買、各種お祓い・供養・納骨などの一連の関連業務をワンストップで実施。(撮影:松隈直樹) (注:本文中に、一部現場の生々しい描写があります。ご了承ください) 今年に入って、孤独死現場の清掃依頼はどのくらいあったのですか。 岩橋:既に40軒は超えていますね。年々増えてきている印象です。 「遺品整理」と「特殊清掃」とは何が違うのですか。 岩橋:遺品整理は故人が使っていた家財道具一式を片付けることです。通常は病院や自宅で誰かに看取られながら亡くなり、葬儀などを終えて落ち着いた頃に、遺族が依頼します。 それとは別に「特殊清掃」というものがあります。特殊清掃を含む遺品整理というのは、自殺、殺人、孤独死などでご遺体の発見が遅れた部屋の清掃です。当然、そんな凄惨な現場には誰も入りたがらない。自殺や孤独死の場合、匂いで近隣の人が気付いて通報するということが多いです。 そうした現場には残存家財が残っている。ご遺体そのものは運び出された後なんですが、体液や毛髪などは残されたままで腐敗し、異臭を放っています。ご遺体の跡を片付けてから遺品整理です。これが特殊清掃です。 特殊清掃を始められる前は、中古車販売業をされていたとのことですが。 岩橋:はい、中古車販売業をやっていましたが2011年にハウスクリーニングのフランチャイズの業者さんから、遺品整理の話を聞いたのが事業を立ち上げたきっかけです。調べてみると遺品整理士認定協会というのが立ち上がっていて、その資格を取得しました。 当時は遺品整理に対し世の中のニーズが高まりつつあったけれども、遺品整理を専門にする業者がまだ少なかったということですか。 岩橋:そうです。先行する業者が少なく、参考にできなかった。例えば、どういうところに営業に行けばいいのか、どこにニーズがあって、どういう仕事につながっていくのか、というものも見えない状況。広告の打ち方も分かりませんでした。 遺品整理士の認定は何番目くらいだったのですか。 岩橋:117番目です。今では1万1000人を超えていますから、いかに遺品整理業がここ数年で伸びているかが分かります。 遺品整理はリサイクル業に似ている 遺品整理業者すべてが特殊清掃をしているわけではない? 岩橋:そうです。多くの業者さんが、「お宝探し」の一環でやっています。処分を頼まれた家財、家電を再販し、儲けを出すのもこの仕事のひとつの側面です。 リサイクル業に似ている? 岩橋そうですね。実際、リサイクル業者さんが遺品整理を手掛けるのが、ほとんどです。 遺品整理業が増え出したのは、東日本大震災がきっかけだとか。 岩橋:そうです。しかし、残念なことに、言い方は悪いですが、火事場泥棒的な要素があったと思います。遠く離れた都会で暮らす遺族が、東北の現地でムチャクチャになった部屋の整理なんてできないじゃないですか。だから業者に依頼するしかない。極端な例で言うと、30万円という見積もりに対して、300万円で請求したりするような過剰請求もあったと聞きます。 業者の一部が、そういったことをやったために業界のイメージが悪くなった側面は否めません。そのイメージダウンを払拭するために、北海道にある数社が集まって、遺品整理士認定協会を立ち上げ、遺品整理士という資格が生まれたのです。 岩橋さんとスタッフ(撮影:松隈直樹) 岩橋さんが福岡で遺品整理と清掃を始めて、3年が経過していますが、この間の需要の高まりや変化の様子を教えて下さい。
岩橋:確かに遺品整理の需要は高まっています。しかし、特殊清掃を必要とする現場、要は同業他社が嫌がるような現場を避ける業者がほとんどです。孤独死した家族のニーズに業界全体が応えられているかといえば、まだまだです。 遺族は「遺品整理」と言う言葉は知っていても、「特殊清掃」というキーワードを知らない人がほとんどです。孤独死をしてしまった現場のご遺族が、いざ、インターネットで探そうとする場合、「遺品整理」という検索の仕方をする。そうして業者に現場に見積もりに来てもらう。 しかし、玄関前で既に異臭がしており、ハエが飛び交っている。当然、室内の様子が想像つくので、「これはうちの専門じゃないのでできません」と断わられる。別の1社が来ても、「うちでも無理」という感じです。遺品整理業者のほとんどが特殊清掃を手掛けていないのが実情です。 特殊清掃は、業者も敬遠するということですか。 岩橋:先ほども申し上げましたが、遺品を再販する目的での「お宝探し」の要素の強い遺品整理業界で、特殊清掃を必要とする現場に残された遺品は、すべてが商品にならないんです。家具、家電、もうすべてに匂いが付着し、再販は不可能です。だから、メリットが少ないと捉える業者も多いでしょう。 過酷な特殊清掃の現場 特殊清掃の現場は、全ての家財道具に匂いが付くほど、過酷だということですか。 岩橋:過酷ですね。入って3分くらい室内にいるだけで、皮膚に匂いが浸透し、髪の毛にも染み付く。その匂いを取るだけでも大変です。 岩橋さんが初めて入った特殊清掃の現場では、相当ショックを受けたのではないですか。 岩橋:最初の現場はマンションの4階でした。しかし、1階のエレベーターの中から、ほのかに、今までちょっと嗅いだことのないような匂いが漂っていたんです。 エレベーターの中の四隅には芳香剤が置いてあった。当時は「おかしいな」って思いましたが、当時、エレベーターで遺体を運んでいますから、その時に匂いが籠って残ったようなんです。エレベーターが開いた瞬間、もっと強い匂いがふんわりとやってきました。 セルフネグレクトでゴミ屋敷と化した室内。ペットボトルの中は尿である [画像のクリックで拡大表示] その方は、どういう状態で亡くなられていたんですか。
岩橋:ごみ屋敷状態の中で、1人で孤独死をされていました。俗に言う「セルフネグレクト(生活を維持する意欲や能力を失った状態のこと)」です。50代ぐらいの方でした。 高齢者の孤独死も増えています。 岩橋:ものすごく多いです。親族がいたとしても遠方に住んでいて、お互い行き来がなくなっている。今は、お互いの生活をしていくだけで、精一杯の時代です。だから、身内が身内でないみたいな状態です。結局、独りで亡くなって、警察から電話が掛かってきて初めて事実を知るという……。 孤独死体が発見された後、どういう手順を取るのですか。 岩橋:まずは警察が来ます。事件性がないと判断したら、遺体の搬出に掛かります。拾えるだけの遺体の一部を、大きなパウチに入れて、持っていきます。 身寄りがない老人の場合なんかは、どうやって岩橋さんのところに連絡が来るんですか。 岩橋:集合住宅の場合はオーナー(大家)さんからの依頼ですね。 特殊清掃をしなければ、次に誰も入らないということですね。 岩橋:そうですね、当然貸せなくなります。 そこで見つかった身寄りのない方の金品が見つかった場合、どうされるんですか。 岩橋:当然、依頼者に全部お返しします。しかし、そのまま懐に入れてしまう業者は多いです。 今までご覧になった現場で印象に残っているのはどういうケースですか。 岩橋:2年前の夏のことです。84歳の女性の孤独死体が見つかりました。死後1カ月半くらいだったでしょうか。すごい状態でした。当然、匂いも強烈です。 場所はどこで。 岩橋:トイレの前です。ふすまのレールも、切断して取らないといけない状態でしたね。遺品搬出後に、オゾン発生器をかけて終了しました。2Kの部屋でしたが、日数的にも4日くらいかかりましたね。 オゾン発生器も使うのですか。 岩橋:はい2次感染を防ぐためのものです。 ワンルームで50万円かかるケースも そこまで徹底的にやって匂いは取れるものなんですか。 岩橋:空間の匂いはある程度取れるんですが、木に染みた匂いは取れない。徹底的にリフォームを入れない限り匂いは残ってしまいますね。 冬場の現場は? 夏よりましですか。 岩橋:匂いはあまり出てないです。腐乱するスピードも遅いです。亡くなった場所にもよりますが。 孤独死現場の特殊清掃って、コストはどれくらいかかるのですか。 孤独死の現場はハエが大量にわく [画像のクリックで拡大表示] 岩橋:亡くなっていた場所にもよるんです。例えば、古い木造アパートの1階部分であれば、床下がすぐ土というところが少なくないです。床下の土にも体液が染み、土からどんどん新しいウジが生まれてハエになってというのを繰り返しているケースがあります。
そうした場合、土を40センチ以上掘って、という作業にもなりますので、ワンルームであっても50万円くらい掛かる場合があります。 結局は、孤独死を出さないようにするということが一番コストがかからないと。 岩橋:そう思います。実際、孤独死が多いから、高齢者は部屋を借りることができないんです。大家さんにしてみれば空室は困るけれど、孤独死はもっと困るということなんです。 孤独死現場で見つかる大金 日ごろ遺品整理をされていて、現場から現金や金塊、美術品などが見つかることもあるのですか。 岩橋:はい、ありますね。孤独死の現場は遺族も入りたがらないので、何もかもいらないという依頼が多いんです。そういった中で、丁寧に確かめずに次から次へと捨てる業者が多いです。しかし、うちは1点1点、細かくチェックしながら整理していくことを心掛けています。すると、帯が付いた現金が出てくる場合があります。 どういうところから見つかるんですか。 岩橋:タンス預金というのは、大体が分かりにくいところに隠してあります。押し入れの中とか。それも普通の紙袋の中に無造作に入れているとか。現金の上に服も一緒に入れていたりするから、見た感じは一見、全部可燃のごみと思ってしまうんです。でも、よくよくその服をよけていくと、さらに紙袋が出てきて、中から札束が見つかるとか。 岩橋さんが見つけた現金。旧紙幣が混じっている。 最高でいくら発見されましたか。
岩橋:1つの現場で5000万円弱ですね。 5000万円? それは金庫に入っていたのですか? 岩橋:いや、紙袋の中やお菓子の缶の中から出てきました。至るところに隠してありました。 その方の身寄りは? 岩橋:ご遺族は一応いらっしゃいましたよ。「一応」というのは、30年以上連絡を取っていないお子さんでした。この方の元に、ある日突然、警察から電話がかかってきました。「あなたのお母さんが亡くなられたので確認しに来てほしい」と。30年も連絡を取っていない母子関係なので、推して知るべしです。そのお子さんにしてみれば、「何で今ごろ」という思いがあったのでしょう。 遺族からすれば、色々と考えを巡らします。賃貸物件で、ひどい孤独死体で発見された場合、原状回復にいくら掛かるんだろう、などとね。これは大金が掛かるなと思えば、すべて放棄して「あとはお任せします」と言いたくなるのが当然です。ほとんどの依頼主が、現場に立ち会うことはありません。「全部捨ててくれ」という依頼がほとんどです。 そこで、たまに現金が見つかったりすると。 岩橋:そうですね。依頼者の値切りがあって、ギリギリのコストで請け負った場合、現金が見つかったときに業者が誠実に依頼者に返すかどうか。業者のモラルが求められます。 遺書なんかも見つかることがあるのですか。 岩橋:はい、さっきの5000万円の現金が見つかったケースの続きがあるんです。1点1点遺品を精査していたら、古新聞と古雑誌が積み重ねてある間から遺書が出てきました。 遺書は、女性が亡くなる10年前に書かれたものでした。おひとりで亡くなる前提の遺書を書かれていた。遺書には「自分が亡くなったときは無縁仏として永代供養をしてほしい。お寺さんに1000万円払って永代供養してもらいたい。残りの一部は恵まれない方に寄付してほしい。残った分は、最後のお世話をしてくれた方にすべて差し上げます」という趣旨の文面が書かれていました。 最後のお世話をしてくれた人、というのは、岩橋さんだったわけですよね。 岩橋:そうですね。結果的にそうなったんですが、そこは亡くなった女性の遺産であるし、絶縁状態とは言え血縁関係者が見つかった以上は、その方にお返しするのが筋だと思ってお返ししました。 故人の声を届ける 遺品整理をしていますとね、子供が小さい頃の思い出の品を取ってあるものなのです。でも、子供はそんなものは目もくれずに「そんなものいらない」と言って、捨ててしまう。貴重品だけ全部持って帰って、ね。 私はアルバムとか記念品などを見つければ、段ボール1箱くらいはご遺族にお戻しするようにしているんです。これは思い出として残しておかれたらいかがでしょう、と。 子供は親に孤独死をさせてしまった、という後悔はあるものでしょうか。 岩橋:それはあると思います。「年末までは元気にしていたんだけど、まさかこんなふうにして亡くなるとは思わなかった」などとおっしゃいます。 言い訳ということですか。 岩橋:言い訳でしょうね。だから、「お母様は生前こういうふうに思っていたみたいですよ」ということが伝わる何かを探して渡してあげるんです。何年も前のはがきとか。親の子供に対する気持ちを死後、初めて知って涙を流されるということはありますね。 孤独死は「寂しい死」か 先ほども言いましたが、故人の残された側に対するメッセージが出てきた時に「ああ、こういうふうにお父さんは思っていてくれたんだ。ありがとう」、という気持ちに変わったりするところを目の当たりにすると、この仕事をやっていてよかったな、という気持ちになります。 孤独死は、「寂しい死」と思われますか。 岩橋:そうですね……確かに、特殊清掃をしている時は「寂しい死」という印象なんです。しかし、我々を故人がもしどこかで見てくれていて、感謝の思いに変わり、天国に逝っていただけるのであれば、業者冥利に尽きます。 誰も孤独死を望んでいるわけじゃないんですよ。何らかの理由があって孤独死してしまった場合も、私ども遺品整理業者が仲立ちになって、故人と遺族とを結びつけることができると思います。だから、僕らの仕事というのは質の高い業界ではないといけないな、と改めて思います。 http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/090700033/090800001/
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