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出口治明の提言:日本の優先順位
【第139回】 2015年7月1日 出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長兼CEO]
「若者の草食化」に、大人ができることは何か
内閣府は6月22日、20代、30代を対象にした「結婚・家族形成に関する意識調査」を公表した。わが国の若者は草食化していると言われて久しいが、さて、結果はどうだったのだろう。
「恋人が欲しくない」が20代で4割
まず、未婚者、かつ現在恋人がいない人に「恋人が欲しいですか」とたずねると、60.8%の人が「恋人が欲しい」と回答した。男女間で大きな差は見られないが、20代では男子の39.7%、女子の41.1%が「恋人が欲しくない」と答えた。なお「恋人が欲しい」という人は過去に「交際経験あり」では69.7%であるのに対し、「交際経験なし」では47.0%にとどまる。格差は20ポイント以上ある。経験を積まないと恋愛の楽しさは分からないということだろうか。
なぜ4割もの若者が、恋人が欲しいと思わないのだろうか。その理由をたずねると(複数回答)、全体では「恋愛が面倒」46.2%、「自分の趣味に力を入れたい」45.1%、「仕事や勉強に力を入れたい」32.9%、「恋愛に興味がない」28.0%と続く。20代では「自分の趣味」が、30代では「面倒」がそれぞれ5割前後とトップになった。動物は生涯エネルギーの95%前後を恋愛のために消費しているという研究もあるが(すべての動物は次の世代のために生きているので当然ではあるが)、それに比べると「恋愛が面倒」「興味がない」とうのは動物である人間としてはいささか気になるところである。
次に交際への不安についてたずねると、「そもそも出会いの場所がない」55.5%、「自分は魅力がないのではないかと思う」34.2%、「自分が恋愛感情を抱くことができるのか不安だ」20.5%と続く。男性では「気になる人がいても、どのように声をかけてよいかわからない」21.6%、「どうしたら親しい人と恋人になれるのかわからない」21.6%、「恋愛交際の進め方がわからない」20.3%と、いずれも2割を超えている。僕たちの世代ではまだお見合い結婚が半数近くを占めていて、職場結婚も多かった。今は、恋愛そのものを苦手と考えているにもかかわらず、恋愛結婚の比率が上がっている、そういう時代なのである。
結婚相手の紹介依頼意向をたずねると、54.2%の人が「紹介してほしい」と回答した。ただし「恋人が欲しい」人では「紹介してほしい」が70.2%であるのに対し、「恋人が欲しくない」人では25.5%にとどまる。大人が紹介するにしても、本人の意向をよく確認する必要がありそうだ。
結婚観は68.1%がしたほうが良いと回答
結婚観をたずねると(既婚者を含む全員)、男性の72.1%が「結婚した方が良い」と回答したのに対して女性は65.2%にとどまった。合わせると68.1%がしたほうが良いと考えている。一方で、全体の「30.9%」、即ち3人に1人が「結婚しなくて良い」と答えているのである。少子化の根本原因の1つはこの辺りにあるのではないだろうか。この現実を直視しなくてはいけないと考える。
未婚者に、結婚意向に関する周囲からの影響についてたずねると、「周りの友人・知人が結婚や出産をする」62.7%、「友人の幸せな結婚や家庭の様子を感じる」50.5%、「周囲から幸せな結婚の話を聞く」41.3%がトップ3を占める。次いで「友人・知人・近所の人などから結婚について聞かれる」30.8%、「親や家族から結婚するよう言われる」30.1%と続く。やはり、ロールモデルが必要ということだろうか。
結婚生活を送る上での不安要素についてたずねると(未婚者かつ将来結婚したい人が対象)、「配偶者と心が通わなくなる、不仲になること」57.1%、「経済的に十分な生活ができるかどうか」56.5%、「配偶者の親族とのつきあい」46.6%と続く。結婚する前から不仲になることを心配してもどうかとは思うが、経済力が大きなポイントになっていることと合わせて気になるところではある。
家事・育児分担については(既婚者を含む全員)、「どちらも同じくらい負担する」43.3%、「どちらかというと妻のほうが多く負担」39.2%とほぼ拮抗している。女性は「同じくらい」の40.0%(男性47.7%)に対して「妻のほうが」45.3%(男性30.9%)と逆転している。女性のほうがリアリストであるということだろう。
現在結婚していない理由を未婚者にたずねると、「適当な相手にめぐり合わないから」54.3%、「自由や気楽さを失いたくないから」27.2%(男性29.1%、女性25.6%)、「結婚後の生活資金が足りないと思うから」26.9%(男性35.2%、女性19.2%)、「まだ若すぎるから」24.2%、「趣味や娯楽を楽しみたいから」23.7%、「結婚資金が足りないから」18.5%と続く。
結婚に向けた積極的な対応をとる年令を、未婚者かつ結婚に向けて行動を起こす人にたずねると、平均では32.1歳という答えが返ってきた(男性33.0歳、女性31.3歳)。
両立支援と性分業からの脱却を
仕事と生活の調和を図るために必要なことは何か(全員)。「職場が育児や介護などとの両立に配慮や理解があり、制度を利用しやすい環境であること」79.7%、「育児休業・介護休業などの制度が利用できること」72.8%、「有給休暇が取りやすいこと」70.9%と続く。女性では「夫が家事・育児に参加・協力すること」が76.0%と高い値を示した(男性は51.5%)。当然であろう。両立支援と戦後の性分業からの脱却(男女双方が家事・育児などを等しく分担)が、これからの政策の柱になるであろうことは間違いがあるまい。
女性の理想の働き方についてたずねると(全員)、全体で最も高い項目は次の通りである。「結婚して子供がいない時」では『急な残業もあるフルタイムの仕事』が40.1%、「末子が3才以下の時」では『仕事は持たず、家事・育児に専念する』が41.7%(科学的には否定されてはいるものの、未だ3才児神話が根強いということだろう)、「末子が4才以上小学校入学前の時」では『短時間勤務制パート・アルバイト』が35.6%、「末子が小学生の時」では『短時間勤務制パート・アルバイト』が36.4%、「末子が中学生の時」では『フルタイムだが時間の融通がきく仕事』が33.7%となっている。いまだ市民の意識は戦後の性分業から抜け出してはいないようである。
第一子が欲しい年令は29.1才(男性30.2才、女性28.4才)であった。また希望の子供人数は平均2.2人(2人55.1%、3人27.0%)となった。子育ての不安要素をたずねると(全員)、「経済的にやっていけるか」63.9%、「仕事をしながら子育てすることが難しそう」51.1%(未婚者57.1%、既婚者46.0%)、「きちんとした子供に育てられるか自信がない」40.7%、「子育てするのが大変そう」37.0%(未婚者48.3%、既婚者27.5%)と続く。実際に子育てをしてみると、「案ずるよりは産むが易し」ということだろうか。
妊娠・出産に積極的になる要素は何か(全員)。トップ5は、「将来の教育費に対する補助」68.6%(やはり高すぎる教育費が1つのポイント)、「幼稚園・保育所などの費用の補助」59.4%、「妊娠・出産に伴う医療費の補助」55.9%、「幼稚園・保育所などの充実」51.6%、「職場の理解」49.6%であった。
出産後の住まいは、「妻の親と近居したい」65.7%(男性53.1%、女性75.1%)がトップを占めた(夫の親は47.1%)。いざという時、誰が頼りになるかよくわかっているということだろう。
妊娠・出産の医学的情報について知っておくべきと考える時期は(全員)、中学生・高校生の頃が38.6%、大学生の頃が35.5%を占めた。
以上、調査の概要を見てきたが、少子高齢化の現在、参考にすべき事項は多いと思われる。大人に今すぐできることは、良きロールモデルとしてカップルで暮らすことは楽しく、子どもを育てることはワクワクすることであると、身をもって示すことではないだろうか。
(文中、意見に係る部分は、筆者の個人的見解である)
http://diamond.jp/articles/-/74214
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