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白河桃子「男と女の読書会」
「関係性の貧困」からJK産業に取り込まれる少女たち〜対岸に立つ中年童貞と女子高校生(後編)
2015.05.28コメント(2件)
声をかけるのは商品化しようとする大人ばかり
前編の「30歳以上未婚男の4人に一人は未経験」では「ルポ 中年童貞」について読み解いた。彼らの対岸にいるのはどんな女性たちなのだろうか? 秋葉原で中年童貞の男性たちが癒しを求める少女たちが気になった。
その答えをくれる、もう一冊の本が「女子高生の裏社会 「関係性の貧困」に生きる少女たち」だ。いわゆるJK産業の現場にどのような少女たちがいるのか? 彼女たちはなぜJK産業に流れつき、何が問題なのか? 中年童貞は社会的、性的な「ひきこもり」と言うべき薄闇の中にいたが、少女たちもまた「関係性の貧困」の中にいたのである。
そして皮肉なことに、「関係性の貧困」の度合いが高まるほど、男性は性から遠ざかり、女性は性に近くなる。いったい何としたことだろう。
『女子高生の裏社会』
仁藤 夢乃・著
光文社
821円
著者の仁藤夢乃さんは自らも渋谷ギャルであった経験から、少女たちが、家庭や学校での居場所を失い、セーフティネットからこぼれ落ちることを案じて、女子高生サポートセンターを立ち上げた。
夜の街に出て「帰るとこある?」「困ってない?」と少女たちに声をかけると、年齢の変わらない仁藤さんには心を開いてくれる。また「お姉さん」が声をかけてきたことに驚いてもくれる。彼女たちに「困ってない?」と声をかけてくれるのは、下心のある大人か、彼女たちを性産業に勧誘する、つまり商品化しようとする大人ばかりだからだ。
JKリフレ、JKお散歩、JK見学店…制服(またはなんちゃって制服)の女子高生たちが、道ゆく男性に声をかけ、一緒に「観光案内」をする。しかしそれだけですむわけがない。インタビューされたJKたちのほとんどが「危険な目」にあっている。
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支援してくれるのはJK産業の「店長」
男性たちにとっては「疑似恋愛」のつもりでも、少女たちにとっては「恐怖」でしかない。児童買春や犯罪の温床になるような仕事に彼女たちが流れ着くのは、そこに「困っている」子どもたちを救い上げる仕組みがあるからだ。
具体的な彼女たちを支える仕組み。それは専門用語では「包括的支援」という。「NHKスペシャル 調査報告 女性たちの貧困〜“新たな連鎖”の衝撃〜」というテレビ番組で、シングルマザーに、仕事、住まい、子どもの預け先、相談に乗ってくれる人などの包括的支援を与えてくれるのは、皮肉なことに「性風俗」であったという事実が明らかにされているが、困っている少女たちにも同じ現実があったのだ。
少女たちはJK産業の「店長」という大人を信頼する。「うちのお店は健全なんです」と店長をかばう。そして中には「宿題や受験勉強」の学習支援をしてくれる店まであるという。頼れるつながりや安心できる居場所がない少女たちは、知らずに「未熟さや性」を売り物にする産業に取り込まれ、搾取されていく。
相談できる、信頼できる大人がいない。親、学校、行政に対して助けてもらいたいと勇気を振り絞って声をあげたけれど「裏切られた」という経験すらある。
信頼してスクールカウンセラーに話したことが「親や教師に知れ渡っていた」というケースは珍しくないという。打ち明けたことで、親との関係がさらに悪化した少女もいる。日本では「子ども」の秘密は守られない。なぜなら子どもの権利が確立されていない国だからだ。
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女性は強い存在に惹かれる
少女たちの親も不安定で、幼い側面すらある。考えれば、少女たちの親は、実は中年童貞と同世代でもあった。
彼女たちに必要な「衣食住」と「関係性」を裏社会は提供する。行政のように親や学校に連絡したり、シェルターのように携帯電話をとりあげたりしない。しかし、それは踏み込めばもっと危険な闇につながる「見せかけのセーフティネット」にすぎないのだ。
だから仁藤さんは街に出て自分から声をかける。自分から「助けて」と言うことが、いかに難しいかよく分かっているから。仁藤さんは裏社会ではなく表社会から声をかけるスカウトになりたいと言っている。
最後に、対岸に立つこの男女がお互いに補完できることはないのか、考えてみた。
「ルポ中年童貞」の中に、自殺したAV女優と彼女に思いを寄せた中年童貞の広瀬君についての印象的な記述がある。
「勇気をもって告白していれば、彼女を救えたのではないか」と後悔する男性。著者の中村さんは嘆く。「彼女は勇気を振り絞った広瀬君を受け入れることはなかった。女性はどうして深く考えることなく、常に“強い種”を持っていそうな男に惹かれるのか? モテるのは、いつの時代もヤンキー、運動部のエースである。女性は無条件に強者を選択する」
彼の疑問にはこう応えるしかない。女性もまた、弱い存在であるのだと。
女性が弱い存在である限り、強い存在、または強そうな存在を求めてしまう。だから、女性たちが「深く考えることなく強い種」にひかれないようにするには、女性たちが自分で深く考え、賢さ、知恵を身につけ、若さや無知ではない武器を身につけなくてはいけない。大人ができることは、それを支えることだ。
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女性は自分を守るだけで精一杯
女子大生に結婚観アンケートをとると、「自分である程度のサラリーがとれる仕事につけるだろう」という希望が見える上位大学では「子どもが欲しくない」という意見はほとんどない。これが「卒業しても、それほど良い仕事にはつけないだろう」と希望を見いだしにくい下位大学になると「子どもが欲しくない」という人が出てくる。自分を守るだけで精一杯なのだ。
この社会の男の女の制度はもう疲弊しきって制度疲労を起こしている。今のままの状態で「男がだらしない」「女は残酷だ」と批判をし合ってもむなしいだけだ。
少女たちが「強く自分の武器を持てるようになるまで」に、支え、ともに歩む大人が必要だ。困ったときに、相談できる下心ない大人が必要だ。できれば直接関わるのは仁藤さんのような年齢のお姉さん的な女性がいい。
一方、中年男性を救うのは男性しかないだろう。男性たちは父性を持って、中年童貞に介入していくしかない。
この国を覆う「関係性の貧困」という闇は、男と女の制度だけでなく、労働市場まで壊していく。刺激的な本であると同時に、絶望とわずかな希望をくれる二冊である。
白河 桃子(しらかわ・とうこ)
少子化ジャーナリスト、作家。相模女子大客員教授、内閣府「あらたな少子化社会政策大綱策定のための検討会」委員、経産省「女性が輝く社会の在り方研究会」委員、昭和女子大学女性文化研究所 特別研究員。
白河 桃子
東京生まれ、慶応義塾大学文学部社会学専攻卒。婚活、妊活、女子など女性たちのキーワードについて発信する。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活」を提唱。婚活ブームを起こす。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア、男女共同参画、女性活用、不妊治療、ワークライフバランス、ダイバーシティなどがテーマ。
「妊活バイブル」共著者、齊藤英和氏(国立成育医療研究センター不妊診療科医長)とともに、東大、慶応、早稲田などに「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプランニング講座」をボランティア出張授業。講演、テレビ出演多数。
著書に『女子と就活――20代からの「就・妊・婚」講座』「妊活バイブル 晩婚・少子化時代に生きる女のライフプランニング」「「婚活」症候群」「『産む』と『働く』の教科書」。最新刊に「専業主婦になりたい女たち」がある。
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皆様からお寄せいただいたご意見(2件)
無理に結び付けているのではなく、対比する事で関係性が貧弱であることから起こる結果の男女の非対称性を語ろうとしているのではないでしょうか。(30代 女性 ライター) (2015年05月29日 14:44)
二冊の本の書評を無理矢理結びつけ、「中年童貞」「JK産業」「介護の現場」などキャッチ―な言葉で煽る適当な記事だなと感じました。
例えば、30歳以上の未婚男性の1/4が童貞だとして、流石にその全員が社会性が無く現場で問題を起こしているわけでもなければ、JK産業の顧客になっているわけでもないでしょう、中年童貞の何割がそういう問題を起こしているのでしょうか?
介護の現場に問題がある、JK産業に問題がある、それはそうなんでしょうが、この二つは本当に「中年童貞」という単語で結びつけるべきものなのでしょうか?
因果関係の薄いものを無理に結びつけて結論を出すと、解決策も的外れなものになります。
こういうデータの裏付けのない分析と提言を行う人が政府の仕事をしているのは税金の無駄になりそうで不安です。(エンジニア) (2015年05月28日 20:32)
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/shirakawa_toko/052600004/
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