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白河桃子「男と女の読書会」
「30歳以上未婚男の4人に一人は未経験」〜対岸に立つ中年童貞と女子高校生(前編)
2015.05.27コメント(0件)
モテないんじゃなくて、モテたくないんだ
30歳以上の未婚男性「4人に一人は女を知らない」
こんな衝撃的な帯で話題となったルポ「ルポ 中年童貞」。この数字の根拠は政府の調査によるもの。日本の童貞の数を政府が把握している。なぜなら、実はこの数字、大変少子化にも影響があるから。
『ルポ 中年童貞』
中村淳彦・著
幻冬舎新書
864円
4人に一人の中年童貞がいる。彼らがこのまま生涯未婚となると、自動的に結婚しない女性も増える。現在50歳で同窓会を開くと、男性100人集まったら20人が未婚、女性100人集まったら10人が未婚である。婚外子はわずか2%(欧米では30%〜50%)で、子どもが産まれることに結婚が前提である日本では、未婚者の数字はそのまま人口減少問題に直結するのだ。
じゃあ、彼らが童貞を卒業して結婚すればいいんじゃないの? 風俗でも行けばいいんじゃないの?
いやいや、そんな簡単な問題ではない。中村淳彦さんは彼らの特色を「過剰なプライドの高さ、コミュニケーション不全、潔癖な女性観」と言う。
「モテないんじゃなくて、モテたくないんだ」「リアルな女性は毛穴があるから嘔吐する」「処女以外は人間ではない」「好きな女性に自分の汚い性欲をぶつけるのは申し訳ない」
中村さんは丹念に彼らの「言葉」を拾って歩く。秋葉原で、ネトウヨやアイドル消費の現場で、婚活パーティで、時には労働市場で。
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中年童貞に出会ったのは介護現場
このルポを読んで、みなさんは驚くだろうか?
私にとっては彼らはなじみ深い人たちでもある。
婚活の現場で「会話のキャッチボールができないんです」「男性がどうも積極的ではない」と言われている男性たちは、行政の結婚支援担当者の悩みの種である。何割かは確実にこのルポにとりあげられる人たちだろう。
彼らは婚活の現場に現れる。一度も女性とつきあったことがないなら、まず婚活より恋愛ではないか? そう思うのは、あまり女性に不自由しない人生を送ってきた人だろう。全く女性と接触がない人たちは、女性に出会いたい=婚活となるのだ。
経験するも、しないも個人の自由である。しかし中村さんがこの本を書いたのは「社会問題としての中年童貞」を可視化する目的があった。前述したように、中年童貞問題は立派な少子化問題である。しかも政策で対応するのが最も難しく、本当の少子化の原因はここだと言えるほどの重要な問題でもある。
それでは、中村さんの「社会問題としての彼ら」との出会いはどこだったのか? 中村さんはそもそもAV女優のルポなどで知られているが、彼が中年童貞に出会ったのは、なんと介護現場である。
中村さんは出版不況のあおりをうけ、介護業界に経営者として関わっていたことがある。そこで「著しく社会とズレている」中年男性たちに出会った。常に人手不足の介護現場の末端で彼らが引き起こすたくさんのトラブルに巻き込まれる形で疲弊していった。(詳しくは「崩壊する介護現場」)。
「介護現場の末端で働く性交未経験の中年男性には大きな問題が潜んでいる」と中村さんは確信した。中村さんは、職場トラブルの末に、慢性的な人手不足で採用ハードルが低くなりがちな職場に流れ込んでくる彼らに出会ったという。それがこのルポにつながっている。
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性的な自立は社会的な自立に直結
なぜ彼らはコミュニケーションができないのか? なぜ彼らはトラブルを引き起こすのか? なぜ他人を、自分より弱い者を執拗に攻撃するのか?
「性的な自立は社会的な自立に直結します」(本書より)という言葉は重い。
「きっと過干渉や過保護の果てに母親に胎児扱いされた人なんじゃないか」
自身、支配的な母親に苦しんだ女性は言う。女性は同じことをされても、「いずれ自分が子供の面倒を見なきゃならないから、どこかで自立する」のだ。
しかし男性は母親に取り込まれたままだ。女性を過剰に子育てに囲い込み、依存させる家父長制や「良妻賢母思想」。その行きつく先が「社会に産まれ出ないまま」の男性たちだと本書は指摘する。中年童貞もまた社会が生んだもので、中村さんがうんざりした仕事場での混乱は「子離れできない毒母が存在する限り、なくなることはない」と愕然とする。
さらに中村さんは「中年童貞をどうしたらいいのか?」と真剣に悩み、NPOやAV監督に解決策を探しに訪ね歩く。
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彼らに必要なのは、父性だった
一条の光があるとすれば、ある中年童貞が一人の「父親的役割」の人に出会い、その人の根気強い介入で変化していくさまだ。たまたまこの「父親役の人」に心当たりがあったので、「これってXXさんですよね?」と聞いたらビンゴだった。
私も婚活の現場で会う、女性との関係性に深い「こじらせ」を持つ男性たちを前に「どうしたらいいのか?」と立ちすくむしかなかった。なぜなら、彼らは女性である私の言うことは聞いてくれないと経験上わかっていたからだ。(もともと男性に何か指南する本がかけるとしたら、それは「芸者」と「ホステス」の経験者だけだと思っている。)彼らに必要なのは、父性だったのだ。
さて、彼らの対岸にいるのはどんな女性たちなのだろうか? 秋葉原で中年童貞の男性たちが癒しを求める少女たちが気になった。
もう一冊の本がその答えをくれる。「女子高生の裏社会 「関係性の貧困」に生きる少女たち」だ。いわゆるJK産業の現場にどのような少女たちがいるのか? 彼女たちはなぜJK産業に流れつき、何が問題なのか? 中年童貞は社会的、性的な「ひきこもり」と言うべき薄闇の中にいたが、少女たちもまた「関係性の貧困」の中にいた。(以下、後編へ続く。)
白河 桃子(しらかわ・とうこ)
少子化ジャーナリスト、作家。相模女子大客員教授、内閣府「あらたな少子化社会政策大綱策定のための検討会」委員、経産省「女性が輝く社会の在り方研究会」委員、昭和女子大学女性文化研究所 特別研究員。
白河 桃子
東京生まれ、慶応義塾大学文学部社会学専攻卒。婚活、妊活、女子など女性たちのキーワードについて発信する。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活」を提唱。婚活ブームを起こす。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア、男女共同参画、女性活用、不妊治療、ワークライフバランス、ダイバーシティなどがテーマ。
「妊活バイブル」共著者、齊藤英和氏(国立成育医療研究センター不妊診療科医長)とともに、東大、慶応、早稲田などに「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプランニング講座」をボランティア出張授業。講演、テレビ出演多数。
著書に『女子と就活――20代からの「就・妊・婚」講座』「妊活バイブル 晩婚・少子化時代に生きる女のライフプランニング」「「婚活」症候群」「『産む』と『働く』の教科書」。最新刊に「専業主婦になりたい女たち」がある。
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/shirakawa_toko/052500003/?P=4
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