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コラム:女性の「リーン・イン」支える夫の役割
2015年 05月 12日 11:03 JST
Chana R. Schoenberger
[8日 ロイター] - 今月1日に休暇滞在先のメキシコで急死した米インターネット調査会社サーベイモンキーの最高経営責任者(CEO)、デイブ・ゴールドバーグ氏。同氏の訃報に対してはシリコンバレー内からだけでなく、各界からも多くの哀悼の声が寄せられた。
47歳でこの世を去ったゴールドバーグ氏は、IT業界の大物としては珍しい「ナイスガイ」として知られていた。同氏は自身が業界の重鎮であっただけでなく、米フェイスブックのシェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)の夫でもあり、2児の父親でもあった。
サンドバーグ氏はベストセラーとなった著作「LEAN IN(リーン・イン)女性、仕事、リーダーへの意欲」で女性に野心を保つよう勧めているが、同書の熱心な読者にとってゴールドバーグ氏は、その裏側を支える存在、つまり現代版の稀有な良き夫という顔が一番しっくりくるだろう。女性が仕事に身を乗り出す(リーン・イン)ためには、お互いのキャリアを対等に扱い、家庭での足りない部分を埋めてくれる夫の存在が大きな助けになる。
ビジネス界やその他の専門的職業で働く母親の成功についての国民的議論は、常に何らかの逸話に重点が置かれてきた。シリコンバレーで最も傑出した女性の1人であり、注目企業で指揮を執るサンドバーグ氏は、1人の女性がどこまで行けるかについて胸躍るストーリーを生み出している。トップレベルのキャリアを望む女性なら誰でも、サンドバーグ氏を手本と仰ぎ見ることができる。だからこそ、「リーン・イン」は一大ベストセラーとなったのだ。特筆すべきは、積極的な女性を表現するのに「威張りたがり屋(ボッシー)」という言葉を使わないよう同書が呼びかけたことで、女性とリーダーシップをめぐる議論が活発になったことだ。
ハーバード大学を卒業後、米財務省や米グーグル、そしてフェイスブックでキャリアを着実に積み重ねながら、母親業とのバランスも取っていたサンドバーグ氏だが、それを支えていたのはゴールドバーグ氏だったというのは誰に聞いても明らかだ。2人は何かを決める際、互いのキャリアを等しく重要に考えていたという。その結果、2人ともが輝かしいキャリアを持つ典型的な「パワーカップル」になった。
働く母親たち、特にサンドバーグ氏と同じように高等教育を受けた高い可能性を持つ女性たちに2人の関係性を持ち出すと、その反応は決まって「彼女はラッキー」というものになる。この問題は、サンドバーグ氏も籍を置いたハーバード大ビジネススクールが実施した調査によっても示されている。昨年12月にハーバード・ビジネス・レビュー誌に掲載された同調査は、経営トップ層での男女格差は、母親であることや親であることに関係なく、女性がただ単に男性とは同じスピードで出世していないことを示した。子育てのために「(仕事から)身を引いた」からでもなかった。
女性が出世の階段を上り、出張にもよく出かけ、夜遅くまで残業する時、とりわけ子どもを育てながらという時に、何が一番の助けになるだろう。それは、協力的で子育てにも積極的な夫に他ならない。妻の話を聞いて共感してくれるだけでなく、サッカーに通う子供を迎えに行くために午後4時にオフィスを出て、週末も子供の行事が終わるまで学校の体育館で待つことのできる夫だ。子供の遠足に関する教師からの連絡メモには目を通してサインをし、前日の夜にはお弁当を準備できる夫だ。子供の友達の誕生日パーティーにプレゼントを買っておくことも忘れてはならない。
モバイル化が進んだシェアリングエコノミー(共有型経済)に暮らすわれわれには、家事や育児のアウトソース化やバーチャル化の選択肢は増えつつある。しかし、自分自身でやらなければならない事は残っている。それは平凡ながらも時間のかかる「家庭の切り盛り」であり、夫が常に家にいる場合を除き、たいていは母親に降りかかってくるものだ。
仕事を持つ母親の陰には常に、この役割を埋めてくれる誰かの存在がある。在宅している夫や信頼のおけるシッターであったり、祖父母たちかもしれない(実際にミシェル・オバマ大統領夫人の母親は孫の面倒を見るためにホワイトハウスに移り住んだ)。デイケア施設や放課後託児所だけに頼っての子育ても可能かもしれないが、子供が成長して車での送り迎えが必要なほど活動範囲が広がってくるとそれは難しくなる。
パートナーの出世に熱心な「平等な夫」を持つことの強みは、子供の送迎や緊急事態がすべて「両親の問題」になることだ。子供が熱を出したと学校から連絡があったり、学校で保護者面談がある場合は、両親が交代で仕事を切り上げることができる。
もし夫がこうした対応を取れなければ、何が起きるだろうか。子供が生まれた後、男性のキャリアが軌道に乗る一方、女性は職場で行き詰まったり、仕事を減らしたり辞めたりというのは良く聞く話だ。女性の給料が男性より低い場合は特にそうだろう。
よくある現実の話をいくつか挙げてみよう。ある3児の母親はやりがいを感じていない仕事を10年近くも続けているが、その職場を離れないのはスケジュールに融通が利くという理由からだ。ある2児の母親は、子供の用事を済ませられるように、勤務日を週4日に減らした。ある女性は子供が生まれたとき、自分で勤務時間を決められるようコンサルティング会社を立ち上げた。
似たような境遇にいる女性は、そのほとんどとは言わないまでも、多くは充実感を味わっていると言う。実際に複数の調査では、最も幸せを感じている母親はパートタイムの仕事をしている人たちであることも分かっている。しかし、それがたとえ幹部クラスの仕事であっても、彼女たちが人生の早期に設定したキャリアのゴールを達成しているとは言えないだろう。月日がたつにつれて優先順位は確かに変わる。後になって再び激務に戻る女性もいる。しかし、そうした女性たちがフェイスブックやグーグルといった会社で経営幹部に上り詰める可能性は低いと言わざるを得ない。
今や大学生の半分以上は女性であり、一流ビジネススクールのMBA(経営学修士)取得を目指す学生の約3分の1も女性が占める時代だ。こうした有能な女性たちがサンドバーグ氏ほど責任のある立場に就くには、故デイブ・ゴールドバーグ氏のような夫がもっと多く必要なのだろう。
*筆者はニューヨーク在住のビジネスジャーナリスト。過去にはフォーブス誌やダウ・ジョーンズ、ウォールストリート・ジャーナル紙で活動していた。
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0NX04O20150512
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