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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140822-00000012-wordleaf-soci
ネットで増える“私刑”は許されるのか?
THE PAGE 8月22日(金)10時52分配信
中古品やマンガ本を販売する「まんだらけ」(東京都中野区)が、万引き犯人の顔写真の公開を予告し、話題になった。今回に限らず、このところネットで「悪い人」を懲らしめようとする動きが相次いでいるようだ。このような行為は、いったい何が問題なのだろうか?
かつてアメリカで「私刑」が公然と行われていた時代がある。中日新聞(2011年3月11日)によると、18世紀のバージニア州で、ある人物の一味が私設の法廷を開設した。彼らは次々と「悪い人」を捕らえて裁き、絞首台送りにしていった。その人物の名は、ウイリアム・リンチ大佐。彼の名「リンチ」がやがて、「私刑」「集団による制裁」をそのまま意味するようになる。
だが、近代の法治国家では、「私刑」は認められていない。日本大通り法律事務所(横浜市)の喜多英博弁護士は「日本は法治国家ですから、人を罰するときは、警察が捜査をし、裁判所が証拠を見て犯罪事実の有無を認定します。これを一市民がやろうとすると、個人的な恨みから、罪のない人を罰したり、軽い罪の人に重過ぎる罰を与えたりするケースが頻発するでしょう。罰を受けた方も納得がいかず罰した人を非難して逆に罰しようとするかもしれません。酷い社会になります」と説明する。
まんだらけの事件は8月上旬に発生。同社は1体25万円のブリキ製人形が万引きされた被害を受け、防犯カメラに映った犯人の顔写真の画像を「1週間以内に返しに来なければ、公開する」とネット上で宣言。これが「やりすぎではないか」と物議を醸した。結局、警察側からの要請を受け入れる形で、公開を中止。警視庁は19日に千葉市の男性(50)を逮捕した。
このケースでは、「私刑」は実行されず解決されたが、過去にもツイッターなどで「拡散希望 この人が犯人」などと、写真などの個人情報が発信されるケースが散見される。今年7月には、男性の顔写真付きで「痴漢にあいましたが、逃げられました。必ず見つけて訴えたいので拡散お願いします」というツイッターの投稿があった。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140822-00000012-wordleaf-soci&p=2
このようにネット上で“悪人”を追及する動きは珍しくない。サイト「現代ビジネス」の記事(2012年10月17日)では、ブロガーのイケダハヤトさんが、悪事を働いたとされる人物の個人情報を暴くことで処罰を図る「ネット自警団」と呼ばれる人たちの存在を紹介。記事によると、過去の事例として
・ツイッター上で悪事(飲酒運転、喫煙)自慢をした19歳の女子短大生の個人情報を暴き、ミクシィ、ツイッターを退会に追い込んだ(2011年)
・ホームレスをいじめたことをミクシィ上で自慢した大学生を内定取り消しにした(2009年)
・虚偽の申告でサイゼリヤから3000円の返金を得たことを自慢した男子高校生の、自宅の電話番号、学校名を暴き、自宅と学校に嫌がらせの電話を殺到させた(2008年)
これらのケースを紹介。そのうえで、イケダさんはネットでの私刑について、「勘違い・人違いという初歩的なミスが発生しうる」「憂さ晴らしの域を出ない」などとして、否定的な見解を示している。それでも、ネット上では、「犯人がプライバシーで守られるのも変な話」「万引き被害者の心情としたら(顔写真公開も)理解できる」「悪い人を追及するのがなぜいけないのか意味が分からない」などと、肯定的な意見も少なくない。
著名人の中にもそうした意見はある。タレントの中川翔子さんも、自身のブログで「された側がされた損になる世の中じゃ嫌だな。意識的に窃盗してる犯人甘やかすことない。盗むって最低。犯罪なんだから」と述べ、顔写真公開にも理解を示す姿勢を見せた。
タレントの加藤浩次さんも「万引きで警察が、現行犯じゃなくて動くっていうのはあまりない」と指摘した上で、今回の騒動について「まんだらけさん的には、これはうまいことやった」と、テレビ番組で評価するコメントをしたと報道されている。
ただ、作家の芥川龍之介は、警句集「侏儒の言葉」で、「輿論(よろん)は常に私刑であり、私刑は又常に娯楽である。たといピストルを用うる代りに新聞の記事を用いたとしても」とつづっている。「新聞の記事」を「ネット」に置き換えれば、現代にもそのまま当てはまりそうな指摘だ。
被害を受けた当事者はともかく、そうでない第三者が“私刑”に走るのは、芥川に言わせれば「娯楽」なのだろう。前出の喜多弁護士は「私たちは、罰し合うのではなく、お互いに話をよく聞いて相手を尊重することにエネルギーを使った方が良い社会を作れるのではないでしょうか」と話している。
(文責・坂本宗之祐)
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