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図1 ソーシャルメディアの年代別利用数と利用経験(出典:次世代ICT社会の実現がもたらす可能性に関する調査研究報告書
寝落ちするまでLINE漬け 友達はネットの中に
ソーシャル新人類の不夜城(1)
2014/5/2 7:00
スマートフォン(スマホ)の普及が、子どもたちの「つながり」の姿を急速に変えつつある。生活の大半をLINEに費やしたり、実名や顔写真をネットに公開したりしている。知り合ったネットの「親友」とメッセージを交わし、空気をうまく読めないといじめの対象になる――。今やソーシャルメディアは子どもたちを吸い寄せる「不夜城」と化した。その実態と危うさ、そして対応するための処方箋を、元小学校教員でITジャーナリストの高橋暁子氏が解説する。1回目の今回は、ソーシャルメディアに依存する子どもたちの実像を明らかにする。
「1日中LINEをやってる)。(トークが投稿されたという)通知はずっと来てるから、正直ウザい。でもトークを返さないとクラス内で生きていけなくなる。友達の連絡先はLINEしか知らない。このままつながらなかったらと思ったら心臓がバクバクしてきて、目の前が暗くなって、本気で死ぬかもって思った」(高校1年女子)
「みんなゲームをやってる。最近は男子はパズドラ(パズル&ドラゴンズ)が多いかな。仲間で遊ぶ時は、並んで黙ってゲームしてることもある。クレジットカードを使って親のお金を使い込んだ仲間もいる。自分もWi-Fi(無線LAN)は禁止されてるけど、パスワードを破って使えるようにするのは簡単だった。スマホとか持ってない友達も、別の友達に借りて(ゲームを)やってるし、やばい動画とかも見てる」(高校1年男子)
「友達がTwitterで炎上した。悪い人間じゃないのに、知らない連中に叩かれて吊るし上げみたいにされてた。同じ学部の学生は特に敏感になってる。初めて会った人に大学名を教えると事件について言われることもあるし、同級生の女子は「就活に影響ある」と怒ってた。(友達は)停学が終わって(元の生活に)戻ってきたけど、なんかあるたびみんなに(炎上事件について)言われるし、この先も大変だと思う」(大学1年男子)
ここに挙げたのは、どれも普通の高校生や大学生の素の声だ。中学生・高校生を中心とする10代はソーシャルメディアに大きく依存しており、そしてソーシャルメディアに疲れている。
総務省の「次世代ICT社会の実現がもたらす可能性に関する調査」(2011年)では、年代別にソーシャルメディアの利用者を聞いている。調査によると、ソーシャルメディアを利用している人の割合は若年層ほど高くなっており、10代では71.7%が利用している。
若年層ほど複数のサービスを利用する割合が高くなり、10代では利用者の49.7%が複数を利用している。年齢層が下がるにしたがって、ソーシャルメディアの重要度が高まり、切っても切れないサービスになっている(図1)。
■「昨日もスマホを握ったまま寝落ち」
もう少し具体的に理解できるよう、以下に典型的な高校生女子の日常を描いてみた。特定の人物の話ではなく、取材した何人かの話を基に1日の生活に仕立てたものだ。
朝はスマホの目覚まし時計機能で目を覚ます。昨日もまた、スマホを握ったまま「寝落ち」していた。いつ眠ったのかは記憶にない。起きたあとも疲れが取れない感覚があって、頭痛がする。
起きてまず布団の中ですることはスマホのチェック。朝食を食べているときもLINEを見ている。親は嫌な顔をするが「返事が遅いっていじめられた子がいる。見られないならご飯は食べない」と主張したら使えるようになった。
トークが届いたら、すぐに既読を付けようと心がけている。以前、グループで最も影響力を持つメンバーが、「既読が付くのが遅くてイラつく」と、他のメンバーに怒っていたのを聞いたからだ。疲れることもあるが、自分に関係ある話が出た時には最優先でトークを返すようにしている。
通学の電車の中でも、ずっとLINEを見ている。LINEの話題から、その日の宿題を知って慌てたこともある。スマホを自宅に忘れたら、遅刻してでも取りに帰る。1日ずっとLINEを我慢するのは辛い。見ていないうちに何かがあったら大変だし、クラス内で築いた自分のポジションが崩壊してしまう。
学校内では携帯電話もスマホも使用禁止となっているけど、みんな隠れて使っている。授業が始まるまで友達と並んでスマホを見ていることが多い。話したいことがあっても、LINEとかTwitterを見ている相手には邪魔になるから、話をせずに黙っている。
SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)を見たくなってイライラするから、お風呂にもスマホを持って入る。ジップロックに入れてスマホをいじっている。一度、浴槽にスマホを落とした時は親に強く怒られて、お年玉とバイト代で代金を払う羽目になって辛い思いをした。
さっきLINEで、まだ会ったことがない友達からトークが届いた。この友達とはTwitterで知り合った。同じバンドが好きという共通点で盛り上がり、そこからLINEでつながった。
LINEで知り合って、実際に会いに行った人もいる。LINEで知り合った友達の中には会ったことがない人もいるけれど、相談に乗ってくれるし、みんな大事な友達だと思う。
試験の前日は机に向かうけど、手元にはスマホがある。試験の範囲がよく分かってなかったけど、友達にLINEで聞いたらすぐに分かった。友達とは、「今日はがんばろうね!」「ファイト!」というスタンプを送り合ってから教科書を開いた。
勉強している間も通知がたくさん届くから、ついトークの内容を見てしまう。LINEで「超やる気起きない、マジやばい」とか書いている友達がいて、「同じ同じ」と返事をして盛り上がった。返事をするうちに、勉強に身が入らなくなった。気が付いたらもう夜中で、結局は試験勉強をそこそこで諦めた。
もう寝る時間。でも、布団に入ってもLINEは止められない。眠くても、自分の話題が出た時には返さないといけないから、画面をずっと見ている。見てない時になにか言われていると思うと耐えられない。今日もきっと寝落ちしてしまうのだろう。
ここで書いた日常生活だけでなく、ソーシャルメディアを通じた友達との接し方にも、10代にはこれまでを覆すような“常識”がいくつもある。
LINEあるいはTwitterでのコミュニケーションを取ることが彼らの日常となっている。大切な話はネット上で済ませることが多い。
しかしその相手について、最近の高校生は「仲良しだけど、メールアドレスも携帯電話番号も知らず、LINEのIDしか知らない」のがほとんどだ。「LINEだけが唯一の連絡手段であり、ブロックされたら連絡がとれない」(高校2年女子)という。
■ネットとリアルの境界線が上の世代とは異なる
ネットとリアルの境界線についても、上の世代とは意識とは大きな違いがある。10代は誰かと対面しているときに、LINEやTwitterなどでほかの人とコミュニケーションをとることに抵抗感が少ないという。
ベネッセコーポレーション調べの「子どものICT利用実態調査」(2008年)によると、友達と一緒にいる時に、友人が「かかってきた電話に出る」ことについて、「いや」と感じる人(「とてもいや」「少しいや」の合計)は中学生で23.2%、高校生で18.7%だった。これに対して、「いやではない」(「それほどいやではない」「まったくいやではない」の合計)は中学生で75.3%、高校生で80.8%と大勢を占めていた。10代の子どもたちにとって、ネットはリアルの延長線上にあるというわけだ。
現在の10代にとって、ソーシャルメディアでコミュニケーションを取る相手はイコール友達であり、面識がない人とネット知り合いになって、実際に会うことにも抵抗がない。
デジタルアーツ調べの未成年者の携帯・スマホの利用に関する実態調査結果(2012年)によると、知らない人と知り合いになったSNSは「Twitter」が34.9%、「mixi」が22.8%、「LINE」が21.0%だった。さらに「これから会いたい」という回答は女子高生に限ると40.8%に達しており、「既に会っている」という回答も12.3%に及ぶ。
■埋まらない子どもたちと大人のギャップ
筆者はITジャーナリストをしているが、小学校教員の経験があり、学校教育の現場や子どもたちの考え方がよく分かる。取材や講演、座談会などの際に子どもや教員、保護者から話を聞く機会が多く、最近のソーシャルメディアの利用やトラブルについて多くの実態を耳にしている。
近年子どもたちの間で、携帯電話やスマホでのトラブル、TwitterやLINEなどのソーシャルメディアでのトラブルが急速に増えている。それにつれて筆者も炎上やいじめ、依存など様々なトラブルの実態や防ぎ方、対処法について、学校や都道府県・市町村で教員・保護者・子どもたちに話す機会が増えてきた。新聞や雑誌、テレビ番組などでも同テーマについて話をしてきた経験から、今、この問題の解決が強く求められていることを感じている。
現在、子どもも教員も保護者も困っている。10代の子どもたちと教員・保護者たち大人世代との間にはソーシャルメディアを巡り、とても大きなギャップがあるからだ。
物心ついた時から利用しているソーシャルメディアネイティブ、スマホネイティブの子どもたちと、大人になってからネットや携帯電話、ソーシャルメディアを使い始めた世代とでは、使い方や考え方が違って当たり前だ。その間に相互理解がないことが、ギャップを大きくしている。
この連載では、両者のギャップを埋め、理解を促し、最終的には10代のトラブルを防ぎ、対処するための処方箋を考えていく。
高橋暁子(たかはし・あきこ)
ITジャーナリスト、情報リテラシーアドバイザー。SNSなどのウェブサービス、子どもの携帯電話利用をはじめとした情報モラル教育、電子書籍などに詳しい。元小学校教員であり、昨今の教育問題にも精通している。本や記事の執筆のほか、携帯電話やSNSなどをテーマに講演、セミナー、監修、アドバイザーなども手がける。近著は『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』(日本実業出版社)、『ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条』(共著、マイナビ)。
[ITpro 2014年3月5日付の記事を基に再構成]
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK22029_S4A420C1000000/?dg=1
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