02. 2013年10月26日 15:19:28
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【第51回】 2013年10月26日 降旗 学 [ノンフィクションライター] パンツを売る女子高生と、それを買う男たち サイバー補導で性犯罪は防げるか!? 去る十月十日、埼玉県川口市に住む三〇歳の会社員・志部谷彰容疑者が、女子高生から下着を買い、さらに自分の下半身を触らせた等々の疑いで逮捕された。 容疑は、東京都青少年育成条例違反である。すなわち、淫行。 容疑者はまだ三〇歳と若く、本当は名前を伏せてやりたいとも思ったが、性犯罪に関しては断固たる姿勢で臨む必要があると私は考えているので、すでに報道されたように、私も実名で記させてもらう。 志部谷容疑者が悪いことをしたのは、今年の四月二一日。この日は日曜日で、冬のように冷え込んだ一日だった――、と私の日記には書いてある。そんな寒い日に志部谷容疑者は秋葉原の“JKお散歩”のお店に行き、女子高生とお散歩を楽しんだ。 JKとは、女子高生(Joshi Kousei)の略で、KYとかMG5なんて隠語のような略語が流行ったころに登場した言葉だ。JKお散歩とは、料金を払って女子高生と街をデートできるシステムを言う。 ちょっと前には、“JKリフレ”といって、お金を払えば女子高生が添い寝をしてくれる商売が社会現象になったが、摘発が相次いだために考案された、としか思えない新しい商売だ。この手の商売は、本当に次から次へと現れる。 JKはお店に登録し、バイトとして働いているのだそうだ。 街頭で配られているチラシには、三〇分五〇〇〇円、六〇分八〇〇〇円、一〇〇分一万二〇〇〇円。風俗店ではありません、デート感覚で二人きりの時間を――、等々の文言が書かれているらしい。一時間のコースのほうが割安なんだね。そーいう問題じゃありません。 どうやら、志部谷容疑者は振りの客だったわけではなく、最初から理由があって店を訪れていたようだ。その理由というのが、JKの下着。この女子高生は、前々から、 「JKお散歩店で予約を入れてくれれば下着を売る」 といった書き込みをインターットの掲示板に書き込んでいた。 だから、おそらく、志部谷容疑者はこの掲示板を見ていたのだろう。お店に予約を入れて、川口から秋葉原に向かう道中、彼はどんなことを考えていたんだろうね。浮き浮きしていたのかな。 ちなみに、志部谷容疑者は、女子高生の“生脱ぎ”下着を一万八〇〇〇円で購入していたそうです。そして、容疑者にパンツを売った女子高生は、以前にもネット掲示板で知りあった男性四人に、自分の下着を販売していたことも判明した。 では、何故、志部谷容疑者の犯行が発覚したかというと――、警視庁の捜査員がインターネット上の掲示板を“パトロール”していたからです。 そして、たまたまこの女子高生の書き込み(パンツ売ります)を見つけ、客を装って接触し、補導。その捜査線上で志部谷容疑者の名が浮かんだ。 こうした捜査は、“サイバー補導”と呼ばれている。 インターネットを利用した未成年者の買春や、今回の事例のように、下着売ります等々の書き込みを見つけ、性犯罪を事前に食い止めることを目的とした捜査方法だ。 ということは、少年育成課に所属するお巡りさんは、日々、掲示板の書き込みをチェックしているということだね。なんだか、ビデ倫の審査員みたいです。日本ビデオ倫理協会には、アダルトビデオの内容に問題がないか、ひたすらビデオを見まくる専門職がありました。 が、二〇〇七年、モザイクが薄く、本来なら処理のやり直しを命じなければならないAVの審査を恣意的に通していた事実が発覚し、当時の審査統括部長が逮捕。ビデ倫は二〇〇八年をもって審査業務を終了しています。ちなみに、ビデ倫のお偉いさんは、ほとんどが警察からの“天下り”です。 職員ひとりに対して理事が三人も四人もいる団体でした。ずっと以前、ビデ倫に取材を申し込んだことがあるのですが、担当理事は木曜日しか出勤しないから木曜にかけ直せと言われ木曜日に電話したら理事は休んでいるからまた来週と言われたことがあります。 それで年収一〇〇〇万強。いいなー、天下りって。 という話は措いといて、このJKお散歩、かなり早い段階から問題視されていた。いちばんツッコんだ取材をしているのが産経新聞で、今年の二月の段階で記者さんの潜入ルポが紹介されている。十月になって朝日新聞も体験ルポを載せていますが、なんとな〜く産経の焼き直しといった感じ。 もしかして、朝日って、さりげなく産経の後追い取材を十八番にしているんじゃないだろうか。このコラムの第四八回で、新任管理職を無人島に放り出す日清食品ホールディングスの研修を紹介したとき、出典を朝日新聞と記したのですが、あのあと調べてみたら一年以上も前に産経新聞が取り上げていました。 という話も措いといて、このサイバー補導は二〇〇九年から静岡県警が試験的に実施し、過去四年間で五九人を補導するといった成果を上げていた。四年で約六〇人ということは、少なくても一ヵ月にひとりはパンツを売ろうとしたり、買春を誘うような書き込みをしていたということだ。 そのため、今年四月から、警視庁をはじめ大阪府警、兵庫県警、神奈川県警など大都市を抱える十都道府県警もサイバーパトロールに踏み切ったところ、九月末までの半年間で九七人の未成年者が補導された。 「割り切りで優しくて楽しく会えるひとのみ募集」 「使用済みパンツ一〇枚、ブラジャー二つ……、セットで四万円で買ってくれる方」 こんな書き込みが発見されたのだそうだ。 補導された九七人のうち、援助交際の相手を求めていたのが三三人で、五三人の少女が下着を売ろうとしていた(両方やろうとしていたのが三人)。 一八歳未満で、過去に児童買春などの被害に遭っていた少女は、四三人もいた。 「ネット上に広がっている出会い系掲示板やコミュニティサイトなどでは、未成年者からデートや食事のほか、金額を示して買春を誘うケースが後を絶たない。下着の買い取りを呼びかける書き込みも多く、その後、売春にエスカレートする例もある」 警察幹部はこんなふうに言っている。 掲示板への書き込みが、イコールJKお散歩と結びつくわけではないが、警視庁では、JKお散歩も性被害や児童買春の温床になる可能性がある、と見ている。 「両親は心配して、やめろって言うけど、給料がよくて……、女の子はお金がかかるんだ。わたし、身体を触らせたりとかは絶対しないし。でも、ホテルに行ったり、身体を触らせたりとか、個人的にやってる子の話は聞くよ。裏オプションある? と訊かれることもあって、怖いけど、わたしはちゃんと断るから」 朝日新聞の記者さんが体験ルポした際の、女子高生のコメントだ。 客は一日に二、三人。三〇代〜四〇代が中心らしい。追加料金を払えば制服での散歩や写真撮影などの“オプション”もあるのだという。 女子高生の“手取り”は料金の六〇%で、月の収入は約二〜四万円。 パンツを売ったり身体を売ったりするよりは健全のようには見えるが、しかし、ティーンエイジャーがこんな安易な方法で月に数万の小遣いを得るのは……、なんて思ってしまうのはおじさんの繰り言だろうか。 今月二日には、JKお散歩の店が客を恐喝するといった事件も起きた。 外神田にあるJKお散歩の店『ここなつ』の店長・杉野直容疑者(二五歳)ら男女四人が、四九歳の男性客に対し、少女の肩を触っただろう、規約違反だと因縁をつけ、現金三〇万円を脅し取った疑いだ。 ここで、少し……、かなり長い余談を――。 これまでに出会った男性の中で、いちばんの美丈夫だと思ったのは、シドニーで知りあったトニー・リトルという男性だ。私に倒錯した趣味はないが、男の私ですら見惚れるほどのハンサムボーイだった。 当時、彼は二十歳。出会ったのは、彼が服役を終えて一年が過ぎたころだ。 彼は、いわゆるストリートキッズ(ストリートチルドレンという言葉が広まる前の呼称)だった。一〇代の半ばで家を飛び出し、空き家を見つけては忍び込んだり、路上で寝泊まりしていた。 当初は、自宅から持ち出したテレビやビデオデッキを売りさばいて生活していた。 だが、自宅に入り込めなくなると、次は窃盗だ。そして、ガソリンスタンドやコンビニ強盗。銀行だけは危険だから襲わなかったらしい。 悪い仲間とつきあい始めた彼は、自然の流れのようにマリファナや覚醒剤にも手を染める。彼が愛用していたのはスピードという覚醒剤のひとつで、当時の彼は“スピードトニー”という渾名がつけられた。スピードを愛用していたからでもあるが、短気ですぐにキレるからスピードトニーだった。 驚くほどの端整な顔立ちとは裏腹に、手のつけられないワルだったのである。 シドニーには、キングスクロスと言って、日本で言えば歌舞伎町のような歓楽街があるのだが、彼は一六歳にしてキングスクロスの顔だった。トニーの姿を見かけただけで、店主はいつでも警察に通報できるよう受話器に手をかけたほどだったという。いつブチキレて、何をしでかすかわからなかったからだ。 だが、不思議と人望だけはあった。 自身も有名なトラブルメーカーだったが、仲間のトラブルを率先して解決する潔さがあり、また、娼婦に手を挙げるポン引きや、売り上げをピンハネする元締めには強烈な拳をお見舞いする正義感があったからだ。というより、怖いもの知らず。 あるとき、彼はガソリンスタンド強盗に失敗して現行犯逮捕される。 少年裁判所で読み上げられた彼の罪状は、窃盗一五件、未遂を含むガソリンスタンド強盗三件、登録番号を削り落とした拳銃の不法所持と発砲六件、警察官への侮辱罪と公務執行妨害多数および覚醒剤の所持と使用さらには売買等々だった。 彼は、未成年者が収容される少年刑務所ではなく、一般の刑務所に送致された。 そこでも彼は大立ち回りを演じる。五歳の女の子を強姦し収容された服役囚に殴る蹴るの暴行を働き、病院送りにしたのである。 「あんな下衆野郎だけは許せなかったんだ」 トニーの発言を、私は多くの人に知ってほしい。 世界の標準では、もっとも忌み嫌われる事件のひとつが強姦で、その中でも最低の犯罪が、未成年者への性的暴行だ。強姦犯は、刑務所内の服役囚にも嫌われるのだ。 余談ついでにお話しすると、私は、トニーが収監された刑務所に行き、当時の看守の話も聞いた。 「あの子は、刑務所に来るのが不思議なくらい礼儀正しい子だった。育ちの良さもすぐにわかってね。こういうところじゃ、身についている習慣がすぐに出るんだよ。掃除や食事の仕方とか、言葉遣いでね。だから、やってきたことは大変な内容だったけれど、この子はすぐに出られると思ったよ」 そして、彼の実家を訪れて、さらに驚いた。 彼の父親は、当時、外資系企業の重役を務める傍ら、九〇件もの物件を所有する不動産業を営んでいた。リトル家と言えば、シドニーでも知られた資産家だったのである。 自宅は大豪邸で、五部屋のベッドルームにバスルームが三部屋、ダイニングとキッチンとは別に来客用の食堂とフォーマルダイニングがあり、さらに書斎とオーディオルームがあった。そりゃ持ち出すものがいくらでもありますがな。 子どもの頃から何人もの家庭教師がつき、悪さをすれば机の端に両手をついて、尻を鞭で叩かれるような、まるで貴族のような躾を受けてきた。その雁字搦めのような生活が嫌で、彼は家を飛び出し、路上生活を送っていた。 トニーと親しくしていたからか、私は彼の父親に気に入られ、クリスマスディナーに招待されたり、ン千万もするクルーザーを借りたり、所有する島の別荘で遊んじゃったりしたけど、確かに肩が凝るようなお父さんだった。お母さんの前では冗談ひとつ言えない感じで、トニーも、両親の前だと貴公子みたいにしゃんとしてたし。 出所後のトニーは、教会の保護監察下にあったが、キングスクロスに舞い戻った。 あのワルがまた戻ってきた、と街の住人は警戒したが、トニーのあまりの変わりように誰もが驚いていた。彼が万引きをするなと言えば、不良グループは万引きをやめ、店で暴れるなと言えば誰もが従い、ここでマリファナや覚醒剤を売るなと言えば、売人たちは別の場所に移動した。 警察官が見まわるより、トニーが街を歩くほうが効果があるのだという。キレたときのトニーの無茶ぶりを知っている者は、誰も逆らわないからだ。 そして、彼は、教会のボランティアをしながら、未成年者の麻薬撲滅運動を続けていた。あの豪邸に戻ることもなく、教会にある部屋の住み込みだ。両親も理解を示し、教会に多額の寄付をしてくれるらしい。 たいへん長い余談になってしまいましたが、私が言いたかったのは、どんな良家の子息子女でも、転落の危険性をはらんでいること。多感な思春期であればなおのこと、些細なことで道を踏み外しかねないのです。 また、性犯罪はこのうえなく下劣な犯罪であるということ。 それと、若いときの躓きは、いくらでもやり直しがきくということ。 だから、性犯罪に巻き込まれるやもしれぬ危険を未然に防ごうとする“サイバー補導”には、賛成なのです私は。一八歳未満が補導されると、“少年補導票”が作成され、保護者に通知されます。補導歴が残るんですよ。事案によっては、その子が通う学校に連絡をすることもあります。一八歳や一九歳も、未成年なのだから、もちろん補導の対象。 警察庁が発表した、今年上半期のまとめによると、淫行などによる青少年保護育成条例違反は、昨年より五〇件増の三八三件。 児童買春が、八七件増の二〇五件。 強姦事件が、二件増の七件。 児童ポルノ事件の摘発は七六三件。被害児童の数は三一六人にも及びます。 昨年のデータになるが、日本性教育協会というところが、女子高生と女子大生の性交渉の経験率を公表している。調査はほぼ六年に一度の割合で実施される(前回調査は二〇〇五年)とのことだが、一九七四年の調査開始からずっと上昇傾向にあった“経験率”が、昨年は下がったそうだ。 調査は全国十一の地点で、中学、高校、大学生約七七〇〇人を対象に行なわれた。以下は、二〇〇五年と二〇一二年の経験率の推移です。 性交渉経験のある高校生男子:27% → 15%台 性交渉経験のある高校生女子:30% → 24%台 キスの経験がある大学生男子:72% → 66% キスの経験がある大学生女子:72% → 63% キスの経験がある高校生男子:48% → 37% キスの経験がある高校生女子:52% → 44% だそうです。中高生のお嬢ちゃんをお持ちのお父さんは、どんな気持ちになるのかしら。調査した場所等にもよりますが、現役女子高生のおよそ四人にひとりが経験しちゃってるってことですね。そーいう目で見ちゃいけません。 サイバー補導は、これまでは十都道府県警での試験的な取り組みだったが、今月二一日から、全国の警察でいっせいに導入された。頑張れよ、サイバーポリス。 と思っていたら、サイバー補導全国導入の翌二二日、警視庁の四二歳巡査部長が、児童買春・児童ポルノ禁止法違反で告発された。氏名はまだ公表されていません。 この巡査部長は、今月六月、三万円払うからつきあって、と一七歳と一八歳の少女二人をホテルに誘い、彼女らに“わいせつ”な行為をしたうえ、さらに警察手帳を見せて一八歳少女を強姦した、との疑いが持たれている。 驚いたことに、巡査部長が寝入ったあと、少女らが警察手帳を持ってホテルを出たため、この男は“被害届”を出していたのだそうだ。自分を被害者だと言ったわけですね(少女らは八月に窃盗で逮捕)。 が、ホテルで何をしたかを少女が訴え、弁護士に告発された。タイミングよくサイバー補導導入の翌日に。 警察のメンツ、丸潰れです。 未成年を補導する立場の人間が、未成年者への強姦事件を起こしたんだもの。 それとも、サイバー補導ってのは、警察が身内を取り締まる捜査なのか?
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