02. 2013年9月24日 11:26:15
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【第46回】 2013年9月21日 降旗 学 [ノンフィクションライター] 「異性と交際するのが怖い」「声のかけ方がわからない」 厚生労働白書「若者の結婚に関する意識調査」より ふ〜ん、そーなんだー。へぇ〜、最近の若い人はねー。 と、思わず唸ってしまうような報告書を読んだ。 厚生労働省の年次報告『厚生労働白書』である(平成二五年度版)。その第一部『若者の意識を探る』の第二章第二節『結婚に関する意識』に目を通し、私は、ふ〜ん、そーなんだー、と思ったのである。 というか、ちょっと驚いたのである。若い人たちの恋愛意識・結婚観にも驚いたが、結婚に関する私の“考え方”が古いことを思い知らされ、驚いたと言ったほうがいいかもしれない。 まず、NHKが行なっている世論調査「日本人の意識調査」で、“人は結婚するのが当たり前と考えている”との質問に賛成した人は、全体の約35%だったのだそうだ(二〇〇八年実施)。 ということは、いまの日本では、既婚者未婚者を問わず、結婚はすべし、と考えている人は三人に一人しかいないということだ。ただし、“結婚するのが当たり前”に“結婚はしたほうがいい”との考えを加えると、その割合は一気に64.5%に増加するのだが。 しかし、それでも、残りの35.5%(約三人に一人)は、生涯にわたり結婚はしなくてもいい=個人の自由と考えているということだ。割合で言うと、二〇〜三〇代の60%以上が結婚は個人の自由と考えて、四〇〜五〇代は50%台、六〇代以上が約30%前後という結果だ。 もちろん、結婚は個人の自由だ。自由には違いないのだが、独身の後輩に、結婚はしたほうがいいぞ、と言い続けてきた私は、もう古いタイプの人間ということなのだろう。そーか、日本人の三人に一人が、べつに結婚なんかしなくてもいいんじゃないの、と思っているのか。内縁関係はどうなんですかね。 ちなみに、諸外国で同じアンケートを行なったところ、韓国は75.9%の人が、結婚はすべき、もしくはしたほうがいいと応え、アメリカは53.4%、スウェーデン、フランスでは、結婚はすべき・したほうがいいと応えた人は四割以下だったそうだ。 しかし、である。厚労省が行なった調査では、若い人たち……、と言っても、対象は一九歳〜三九歳の独身男女なのだが、六割以上が、結婚する・しないは個人の自由と応えているものの、彼らの結婚願望は、高い。 二〇一〇年の調査で、いずれ結婚するつもり、と応えた男性は全体の84.8%、女性は87.7%だ。対して、一生結婚する気はないと応えたのが、男性10.4%、女性8%だったとのことだ。 男女ともに、ある程度の年齢になるまでは結婚するつもり(55%強)、理想の相手が見つかるまでは独身でいい(45%弱)と考えているようだ。プランどおりにいけばいいけど……、というのはおじさんの嫌味だね。 白書が載せている次の設問は、独身にとどまっている理由だ。こちらは年代別に分けられているのだが、一八〜二四歳の男女の回答はこうだった。 「まだ若すぎる」(と応えた男性は全体の473.%。女性は41.6%) 「まだ必要性を感じない」(男性38.5%。女性40.7%) 「仕事(学業)に打ち込みたい」(男性35.4%。女性39.4%) この三つが上位に来て、そのあとに、適当な相手に巡り会わない、と続く。 これが、二五〜三四歳になると、回答が若干変わり、男女ともに独身理由の順位に変動が表れる。男性の回答は、こうだ。 46.2%「適当な異性に巡り会わない」 31.2%「まだ必要性を感じない」 30.3%「結婚資金が足りない」 二五〜三四際女性の回答はというと――、 51.3%「適当な異性に巡り会わない」 31.1%「自由さや気楽さを失いたくない」 30.4%「まだ必要性を感じない」 三五〜三九歳の回答(順位)も、男女ともに二五〜三四歳と同じだ。ただ、一位の適当な異性に巡り会わない、の割合が跳ね上がるが。 ちなみに“交際相手がいない”と回答した割合は、男性が62.2%、女性では51.6%だったそうだ。独身男性の三人に二人は彼女がいなくて、独身女性の二人に一人は彼氏がいないんだね。何てもったいない。私が独身だったら。 なんて不埒なことは考えないが、驚くべきことに、 「そもそも、異性との交際を望んでいない」 と応えたのが、男性では28.0%、女性では23.6%もいたということだ。 私が興味深く読んだのが、恋人を欲しいと思わない理由だった。男性の回答の上位五位までは――、 一位:自分の趣味に力を入れたい 二位:恋愛が面倒 三位:仕事や勉強に力を入れたい 四位:異性と交際するのが怖い 五位:異性に興味がない 女性の回答の上位五位はというと――、 一位:恋愛が面倒 二位:自分の興味に力を入れたい 三位:仕事や勉強に力を入れたい 四位:異性に興味がない 五位:異性と交際するのが怖い との順位になっている。さらに、異性と交際するうえでの“不安”についての回答はというと、男性は――、 一位:異性に対して魅力がないのではないか 二位:異性との出会いの場がわからない 三位:どのように声をかけていいかわからない 四位:どうしたら恋人になれるのかわからない 五位:恋愛交際の進め方がわからない だそうだ。女性は――、 一位:異性に対して魅力がないのではないか 二位:異性との出会いの場がわからない 三位:自分が恋愛感情を抱けるか不参 四位:どのように声をかけていいかわからない 五位:恋愛交際の進め方がわからない と応えている。さて、これをお読みの独身のあなた、いかがですか? これら回答を見て、なんだそりゃ、と思ってしまうのは私がおじさんだからなのだろう。異性との交際が怖いという人は、何が怖いのか……、もしかしたら、恋のABCを知らず、ステップアップのノウハウを知らないから不安で、それが怖いのかな。 あるいは、自分に自信がなくて、ただ恋に怯えているだけなのだろうか。 それとも、失恋が怖いのかな。恋に破れて落ち込む自分を見たくない、とか。 恋の成就から遠ざかり、自分は誰からも求められてないと思いたくないとか。 厚生労働白書は、こう書いている。 『かつては男女交際があまり活発ではないものの、ある程度の年齢となると、職場や親戚の斡旋によって結婚相手の候補となる異性に出会える機会(お見合い)が多かった。現在では、男女の交際機会の増大や自由化により、個人のコミュニケーション力に依るところが大きくなっており、結果として異性の友人すなわち結婚相手の候補がいない男女が増加しているものと考えられる』 『異性との交際に対して、男女で不安を持ちつつも、消極的な理由として、男性では異性との交際の始め方に戸惑っており、女性ではそもそも恋愛に対する関心が薄れているという違いが伺える』 だそうですよ。若い人たちの恋愛傾向を、お役人さんたちはこんなふうに分析しています。 私は、若い子に会うと……、それが女性だとセクハラ扱いされそうだから控えるが、男性には、必ずと言っていいほど、きみ、カノジョいるの? との質問を浴びせる。マスコミの後輩ともなれば、通過儀礼のごとく問い詰める。 いる――、と応えた子は、大丈夫だ。 いない――、と応えた子も、彼女と別れて一年以内なら、まだ大丈夫と判断する。 が、ときおり、彼女いない歴三年とか五年というやつがいて、それはもうダメなのです。言っておきますが、マスコミの人間のことですよ。彼女いない歴×年のあなたのことじゃありません。 何故、彼女いない歴が長いやつがダメかというと、女も口説けないやつが取材相手の懐に飛び込めるか、という理屈が成り立つからです。取材というのは、異性を口説く行為に似ているんですよ。ほとんど同じと言っていいくらい。 相手に、自分が怪しい者ではないことを伝える。そして、相手の信頼を勝ち得て、教えてほしいこと、相手の気持ちを聞き出す。相手のハートを引き出すのと同じです。 「ねえきみ、好きな人、いるの?」 「そんなこと言えないわ」 「××さんに収賄の疑いがあるので探っているんですが」 「そんなこと言えるか」 前者は、異性へのアプローチ、後者は取材でのやり取りだけど、どちらも、相手に関心を持ち、自分に関心を持ってもらうところから始まるからです。そこで思うことがあるのですが、どこで、とツッコまないよーに。 ここ何年か、若い子と話していて感じることがある。いまの若い子は、自分のことはよく喋るのだ。ぼくは頑張っているんです、ぼくはデキルんです、認めてください的なアピールは一生懸命。 だものだから、ちょっと褒めてあげたときなどは、顕著なほどによく喋る。 「そーなんですよ。ぼく、そーいうところが得意なんです。こーいう方面はずっとやってきたんで、はい、得意なんです」 とか何とか。難しい言葉で言うと、奥ゆかしさがなかったりする。 それでいて、他人のことには興味を持たない。周囲を見渡す能力がない。 「あいつのこと、ちょっとケアしといてくれ」 「えッ、××さん、何かあったんですか」 仲間のひとりに覇気がなく、様子がおかしかったことに気づかなかったりする。 数人で集まったあと、同席した女性がどんなイヤリングをつけていたかと訊いてもわからないと応え、それどころか女の子が着ていた洋服の色もあやふやだったりする。私が何を食べ、何を飲んだかを訊いても、まったく覚えていない若造もいます。 それがマスコミの後輩なら、きみたちの注意力はどこについているんだ、と小言を言うこともあるのだけど、本当に何も見ていないんだな、と感じる若い子はたくさんいます。こういうことを言うと、私はおじさんになったのだな思わずにはいられないが。 だから、おじさんの戯言として読んでもらってもいいが、自分のことには一生懸命で、認めてもらおうと躍起になっているくせに、周囲を見渡せず、他人に興味も持たず、相手の心理も読めないやつに、恋なんてできないんじゃないか、とちょっと思っていたりする。 ダメなやつには、気配りの心がないからね。困りものなのが、ちょっと注意をするとふくれる、腹を立てるやつ。あなたの周りにはいませんか、すぐ根に持つタイプの男性が。おそらく、彼女はいないと思います。 出会いの場がわからない、異性にどのように声をかけたらいいのかわからないという人は、スタンダールの『恋愛論』を読みなさい。アベ・プレヴォーの『マノンレスコー』、デュマ・フィスの『椿姫』、ヴィクトル・ユーゴーの『レ・ミゼタブル』、O・ヘンリーの『賢者の贈り物』に代表される短編の数々を読みなさい。 日本にも、中河与一の『天の夕顔』や、中勘助の『銀の匙』といった名作がある。 カレシカノジョがいないあなた、これらの一冊でも読んでますか。中世に書かれ、二一世紀のいまでも読まれているのは、恋愛が不変なものだからです。男が女を愛し、女が男を愛すのは、自然な心の趣きなのだもの(異性に興味がない人を除く)。 ハウツー本に学ぶより、こうした名作を読んだほうが、よほど愛について学べられると思いますよ。不器用な男の愛を知りたいなら『シラノ・ド・ベルジュラック』もいいね。 結婚するしないはもちろん本人の自由であり、決して強いるものではないけれど、でも、私は、知りあいには結婚を勧めるよ。 家に帰れば、部屋には明かりが灯り、自分を待っていてくれる人がいる。自分が先に帰れば、同じ家に帰ってきてくれる人がいる。休む前におやすみと声をかけ、目が覚めたとき、おはよう、と声をかけるのは、世界でいちばん好きになった人だ。 一日の始まりと終わりに、好きになった人との会話がある。たったそれだけのことで、心が安らぐ。それが結婚だよ。私は、とてもいいものだと思う。 その、とてもいいものを手に入れようと頑張るも、放棄するも、もちろん本人の自由です。でも、自分のことには一生懸命だけど他人に興味を示さず、周りを見渡す力のない人には、それを手に入れるのはちょっと難しいかも。 |